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2010.06.05

『激突!』(1971年)

この作品はスティーブン・スピルバーグ監督、デニス・ウィーバー主演のカーアクションの入ったサスペンスのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1971年 ユニバーサル・ピクチャーズ アメリカ作品
ランニング・タイム◆89分
原題◆Duel
プロット◆タンクローリーの追いかけ回されて悪戦苦闘する話しのようです。要するに田舎者=ヒルビリーは怖いと言う話しでもあるようです
音楽◆ビリー・ゴールデンバーグ
ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント発売のDVDにて。画質は非常によいです。スクイーズ収録のフル表示です。画面サイズはスタンダードサイズです。元がTVムービーなのでそれはそうなのです。それでも上下に妙に余裕があるフレームの使い方をしています。最初から上下カットしたワイドスクリーンで劇場公開するつもりだったように思えます。
音声はドルビーデジタル5.1chのはずですがあまりそんな感じはしていません。普通です。効果音はステレオになっているとこもあった。

キャスト
デニス・ウィーバー→クルマに乗っても降りても泥沼なデビッド・マン
ケアリー・ロフティン→謎のタンクローリーの運転手
エディ・ファイアストーン→カフェの主人
ルー・フリッゼル→スクールバスの運転手
ルシル・ベンソン→蛇を飼ってるGSの女性
ジャクリーン・スコット→夫婦喧嘩中のマン夫人
アレクサンダー・ロックウッド→車の老人


スティーブン・スピルバーグ監督の演出はよいと思います。
この作品を見ると必ず思うタンクローリーの運転手は誰が演じているのか?です。
キャストを調べるとケアリー・ロフティンとなっています。誰それ?となりますが・・・、
実はケアリー・ロフティンはカーアクションファンにはとても有名な伝説のスタントドライバーで、数多くの作品に参加して素晴らしいカーアクションを見せているのです。
→代表作には『バニシング・ポイント』(1971年)があります。


スティーブン・スピルバーグ監督には無邪気というかそんな感じの偏見があるようです。ユダヤ人の息子だからか?
とにかく田舎者が怖い。これに尽きるようです。ですから要するにヒルビリーに絡まれる話しということです。


ユニバーサル・ピクチャーズのDVDだからまた日本語を選べから始まっています。
それから余計なアラートが延々と続きます。
ようやくメインメニューの画面になります。

黒味からクルマの主観ショットから始まります。
タイトル。
ケアリー・ロフティンはキャストにちゃんと表示されています。
スタントコーディネーターでもケアリー・ロフティンは表示されています。こっちが本職です。
脚本はリチャード・マシスン。

カーラジオでは野球の結果を言ってます。
ガレージを出て市街地を走りハイウェイに入ります。

主人公の赤い4ドアセダンのクルマは何でしょう?ボンネットにはプリムスのエンブレム、フロントフェンダーにはバリアントのエンブレム。とういうことはプリムス・バリアントとなります。
調べるとこの作品の登場してるのは1970-1971年式の直列6気筒3.2若しくは3.7リッターエンジン搭載車で出力140馬力、最高速度150km/h=90マイル/h程度らしい。

クライスラー社の赤いプリムス・バリアント 4ドアセダン。
後輪はリーフスプリングの固定。リーフリジッド。
装備はカーラジオのみ。
ナンバーはCalifornia 149 PCE

ハイウェイにて。さっそくタンクローリーが登場。
前にはナンバープレートがたくさん付いています。どれが本物?
後のナンバープレートは1つだけです。これが本物だ。
エンジン音がいい。エンジンを吹かすスロットルコントロールのタイミングがいい。煙突式の排気口から出る排気煙がいい。

プリムス・バリアントが1回追い越します。
タンクローリーが抜き返します。
登り坂でプリムス・バリアントが2回目の追い越しとなります。

GSに入るプリムス・バリアント。
続けてタンクローリーも入ります。給油機を挟んで並んで止まります。
このGSはセルフではなく係員がいます。で、雑な仕事ぶりを見せています。
下半身だけ見えるタンクローリーの運転手はジーンズにウエスタンブーツの定番の服装となっています。

公衆電話をかけます。コレクトコールで自宅にかけています。
夫婦喧嘩したので謝っている主人公。でもまた口論になっています。

先にGSを出るプリムス・バリアント。
エライ勢いでタンクローリーが追いかけてきます。
タンクローリーを抜かせるプリムス・バリアント。抜いたらわざわざノロノロ運転するタンクローリーです。仕事があり先を急いでいるのでイライラする主人公。

タンクローリーがプリムス・バリアントを抜かせないようにブロックをやり始めます。
左車線まで出てブロックしています。

タンクローリーが手を出してプリムス・バリアントを抜かせる合図を出します。
抜きにかかるプリムス・バリアントですが、これが大間違いで対向車が来て危うく正面衝突となります。さすがにこのへんからおかしいと思う主人公です。

いきなり急加速して抜きにかかるプリムス・バリアント。1回道路外に出てカッコよくタンクローリーを抜き去ります。
で、抜いたから早く行けばいいのにと思いますが、そこは映画だから。

チャックス・カフェの看板が見えます。

タンクローリーがエライ勢いで追いかけてきます。
登り坂が苦手ですが下り坂になるとスピードが上がるタンクローリー。
何となく階段が苦手な『ロボコップ』(1987年)に出てきた悪役のロボットED-209を連想します。

60マイル/hで走っています。後であおるタンクローリー。
80マイル/h。今度を後からぶつけてくるタンクローリー。こうなったら本格的におかしいとなります。
80マイル/h以上出しています。

ここまでは音楽はあまり入っていません。
なければないでいいんですけど。

90マイル/h出しています。まだタンクローリーは迫っています。
これはたまらんとチャックス・カフェの駐車場に突っ込むプリムス・バリアント。木製の柵に激突して止まります。
ここで田舎のお爺さんが能天気に声を掛けてきます。ますますイライラの主人公。
スピルバーグ監督の田舎者嫌いがよく出ています。怖いのか嫌いなのかよくわからんけど・・・。

カフェに入る主人公。
トイレで顔を洗っている時にモノローグが入る。
ペーパータオルで顔を拭いてて表を見ると何とあのタンクローリーが止まってます。驚愕する主人公です。
ということはこのカフェにあの運転手がいることになります。

トイレを出る主人公。
先ほどのGSで見た運転手はジーンズにウエスタンブーツでした。
で、ここの客達はヒルビリーなので全員服装がジーンズにウエスタンブーツです。これでは誰がタンクローリーの運転手なのかわかりません。
ジーンズにウエスタンブーツはヒルビリー=田舎の貧乏な白人の制服なのです。
ところでここにホントにケアリー・ロフティンがいるのか?

モノローグで妄想が広がってる主人公。
で、主人公は下手な手を打って大恥をかくことになります。しかも人違い。二重に大恥をかいてます。カフェの主人から出ていってくれと言われてるし。これで三重だ。
ここがイマイチなポイントです。
よく考えてみたら「あれがあんたのタンクローリー?」と最初に聞けばいいじゃんと思えます。そこはまあ映画だから。

この主人公はタンクローリーに追われることより、クルマを降りてからあちこちで大恥をかいてる方がもっと怖いような気がする。
こういうのが好きだな、スピルバーグ監督。

そうこうしてるうちにあのタンクローリーが発進して行っちゃいました。
このカフェにはいなかったようです。
驚愕の主人公はタンクローリーを走って追うけど追いつくわけありません。もう主人公の方もおかしくなっています。

壊した木製の柵をそのままにしてプリムス・バリアントを発進させる主人公。
昔TV放送で見た時はパタンパタンと効果音が入っていたけどDVDではありませんでした。そんなものらしい。

黄色いスクールバスと遭遇するプリムス・バリアント。
ここでまた大恥をかく主人公です。
オーバヒートして止まってるスクールバス。冷えたとこで今度はエンジンがかからん状態らしい。
バスをクルマで押してくれなんて普通はやらないと思うけど。まあ映画だから。
主人公が心配した通りバンパーがスクールバスの下に入り込んでスタックします。
ここで少し離れたトンネルのところにタンクローリーがいるのに気がついて驚愕の主人公。このシーンは確かにいい。トンネル内でヘッドライトを点灯するとこがまたいい。

そんなとこで子供達をスクールバスから降りてきてしまいこれは危ないからと主人公は中に戻そうとして大騒ぎ。これで変質者呼ばわりされ大恥をかいてます。
ボンネットの上で飛び跳ねて大恥かいてる主人公。
タンクローリーが来たので大慌てでようやくスクールバスからハマったバンパーを外したプリムス・バリアントを発進してズラかります。もうホトンド主人公の方が変質者と化しています。
そんな感じでここでも大恥のかきまくりの主人公でした。

で、タンクローリーはスクールバスを押してたりします。
少し離れたとこでこれを見てなんだいこりゃといった感じの主人公。

踏み切り前のプリムス・バリアント。
突然後からタンクローリーに押されて冷や汗をかくことになります。
これはサプライズで凄いシーンです。
今回見るとクルマを置いて逃げればいいじゃんと思えますが・・・。そこは映画だから。
タンクローリーは押すだけ押して列車が通過して踏み切りから飛び出し道路を外れてスタックしたプリムス・バリアントを置いて走り去ります。

再発進となるプリムス・バリアント。
30マイル/hで走行しています。超安全運転です。
タンクローリーが待っていました。驚愕の主人公。
プリムス・バリアントの前をゆっくりと走行のタンクローリー。

GSに入るプリムス・バリアント。
ここは蛇を飼ってるおばあさんが経営のGSです。よくある田舎のGSといった感じ。
公衆電話を使う主人公。警察に通報してます。
少し先に止まっているタンクローリーのエンジンが始動します。発進します。
突進して公衆電話を破壊するタンクローリー。この後もぐるりと回ってまた襲ってきます。ぐるりぐるりと都合4回襲っています。
「私の蛇が・・・」のシーンとなります。それにしても何か嫌なシーンです。田舎者に対する無邪気な嫌悪感をそのまま映像にしているような感じ。こういうのが好きだな、スピルバーグ監督。

これはタンクローリーからの電話はダメでクルマに乗れというサインだったようです。ホントか?

道路から外れて物陰に隠れるプリムス・バリアント。
タンクローリーをやりすごします。
ボンネットの前に付いてたプリムスのエンブレムは取れています。スクールバス騒ぎでボンネットに乗って飛んだり撥ねたりした時に取れたようです。
運転席で寝てる主人公。列車のクラクションと轟音にビックリとなります。
列車が通り過ぎたところでプリムス・バリアントを発進させます。

しばらく走行したらタンクローリーもしっかりと待っています。
少し対峙したところで急発進のプリムス・バリアント。ふさがれます。
後退してまた対峙となり、歩いて話しを付けようとする主人公。でも近づくとタンクローリーは走り始めてしまいます。
あくまでもクルマ対クルマのつもりらしいタンクローリー。

そんなとこに老人夫婦の古いクルマがやってきます。
電話だ乗せてくれと大騒ぎの主人公。完璧に迷惑してる老人夫婦。そうこうしているとタンクローリーがバックで迫ってきます。ここの音楽が『ジョーズ』(1975年)みたいと思ったがまだ製作前でそれはないから『サイコ』(1960年)でしょう。
大急ぎでUターンして逃走する老人夫婦のクルマです。
携帯電話があればと思わせます。

プリムス・バリアントに戻る主人公。
ドライビンググラスをかけます。シートベルトを締めます。エンジン始動。発進となります。

タンクローリーは先に行けと手で合図をしています。
急発進して先行するプリムス・バリアント。すぐに追うタンクローリー。
最後の決戦となるようです。

パトカーがいます。止まるのかと思ったら近づいてそのまま通り過ぎた。何で?パトカーではなかったのか?

通行止めされている脇を通るプリムス・バリアント。
ここを強行突破のタンクローリー。
脇道に入ったようです。まだ登り坂です。

サザンパシフィックの貨物列車と並走しています。
何故かクラクションを鳴らし合う列車とタンクローリー。

また通行止めです。
通行止めにぶつかって右折するプリムス・バリアント。
追うタンクローリー。

登り坂なので引き離しつつあるプリムス・バリアント。
ですがラジエーターホースが破損します。白煙を吹きます。驚愕の主人公。
最初のGSで店員のラジエーターホース云々のセリフがあったから一応伏線があったようです。
水温計が上がります。
タンクローリーが追いついてきます。
オイル警告灯が点灯します。

で、神頼みではなく下り坂になったのでまたスピードが出せる状態となるプリムス・バリアント。
エンジン停止状態でATセレクターをニュートラルにしての空走で下り坂を猛スピードで下って行きます。ブレーキアシスト機能は生きてるのか?これは危険です。

トラックはローギアで、ネクスト12マイルの道路標識があります。つまり下り坂が続くということです。
水温計は下がりつつあるプリムス・バリアント。それでもラジエーター液がないのでエンジンを始動すればすぐにオーバーヒートに戻ってしまいエンジンは焼き付きます。

下り坂を空走60マイル/hのプリムス・バリアント。
脇道にはいるヘアピンカーブを曲がろうして曲がれずに突っ込みスタックします。
タンクローリーが来る前に何とか再発進して脇道を上ります。

崖を背にしたところでエンジンをかけます。最後の勝負となるようです。
タンクローリーに向かって走るプリムス・バリアント。トランクをアクセルペダルに押し付けて飛び降りる主人公。
正面衝突するプリムス・バリアントとタンクローリー。

ところでタンクローリーはどうするつもりだったのだろう?プリムス・バリアントだけを崖から落として自分は止まるつもりだったのか?

勢い余ったのかプリムス・バリアント共に崖から転落するタンクローリー。
ところでこのタンクローリーはタンクに何を積んでいたのでしょう。爆発するかと思ったらしなかった。映画なのにめずらしい。というかここだけはTVムービー扱いで予算がなかったかもしれない。
転落したタンクローリーの空転する前タイヤ。まだ廻ってる運転席内の小型扇風機。そして空転が止まる前タイヤ。これでタンクローリーは息絶えたらしい。

夕日をバックに座り込んで呆然の主人公。生きててよかった?そんな感じか。
携帯電話があったらな?のわけないか。
エンドとなります。


そんなわけでタンクローリーに追われるサスペンス・カーアクションより、主人公の自滅気味な言動がしょうもないよい作品でした。


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コメント

この映画「激突 !」は、少し誇張して言えば、ここにスティーヴン・スピルバーグ監督の全てが、すでに顔をのぞかせているのがわかりますね。

デビュー作に表現者の生涯の全部が表れると言われますが、奇しくも日本での初登場となった「激突 !」の中に、スピルバーグの本質は、全て花開いていると思います。

普通車に乗って出張中の平凡なサラリーマンが、巨大なタンクローリーに執拗に追われる。
初めは気にもしていなかったのが、相手は「大」で、こちらは「小」、だんだん怖くなってくる。

次第に生命の危機さえ感じて、逃げて逃げまくる。
タンクローリーが地獄の底までつけまわしてくる。
最後にサラリーマンは、必死の覚悟でタンクローリー車に戦いを挑む。

「小」が「大」と戦う。そして、タンクローリーは谷底へ落ちていくのだった--------。

単純なストーリーだ。セリフはほとんどないし、だいいちセリフなんか必要がない。
映像が全てを語って余りある。

追いかけられる理由が全くない。
だから、不安が増してきて、いつか恐怖におののいて逃げまどう。

アメリカ西部の荒野を背景に繰り広げられるカーチェイス映画であり、延々と走り続けるという意味では、アメリカ映画お得意のロードムービーの伝統も引き継いでいるが、"不気味な不安と恐怖"が次第に高まっていくサスペンスが、実に見事だ。

私は、この映画を観ながら、フランツ・カフカの小説「変身」が脳裏をよぎった。
ある朝、主人公のザムザが目覚めると、大きな虫に変身していたという、有名な短篇小説だ。

主人公がなぜ虫になってしまったのか、その他、全ての「なぜ」に説明がないまま、彼はよりによって家族に殺されてしまう。
現代人の存在の根源的な不安を先取りした不条理を描いていた小説だった。

内容は違うが、この「激突 !」も何がなんだかわからないままに、追いかけられる。
これまた不条理。タンクローリーの運転手の顔は一度も映画に出てこない。

この映画の成功の大きな要素は、実はここにあるのだが、アイディアはスピルバーグの天才性を示していると思います。

相手がいかなる魂胆を持って追いかけてくるのか、想像することさえ拒否している。
いや、あらゆる想像が可能だ。だから不安が増す。

主人公の不安と恐怖は、現代という時代を象徴している。
現代は社会が肥大化し、機械文明が巨大化し、人間が機械を制御することが困難な時代だ。

いや、機械に人間が振り回されていると言ってもいいと思う。
なんとも恐ろしい。そんな不安と恐怖は、例えてみれば、理由もわからずにタンクローリーに追いかけられているサラリーマンの男に似ている。

現代に生きる人々は、いつ何どき同質の不安と恐怖に陥れられるかもしれない。
ある日、突然、虎になっていたという中島敦の「山月記」をも想起させますね。

そんな時代に我々は生活しているのだと思います。
日常の隣に、底なしの暗闇が我々を飲み込もうと待ち構えているようでもある。
だからこそ、この「激突 !」にリアリティを感じてしまうんですね。

とにかく、スピルバーグの不安と恐怖の雰囲気づくりが見事だ。
「第三の男」で見せたキャロル・リード監督の鮮やかなサスペンス描写に匹敵すると思います。

スピルバーグの演出のうまさに舌を巻いて観ているうちに、すっかり私は画面の中に吸い込まれるが、スピルバーグ演出の基本はリアリズムだと私は考えています。

スピルバーグは、大冒険活劇が得意であり、科学的ファンタジーの世界やら、恐竜時代を豊かな想像力で再現するなど、誰もが到達できなかった映像世界を切り開いた映画作家には違いありません。

だが、スピルバーグの出発はリアリズムだ。
初め、気楽にタンクローリーを追い抜き、また追い抜かされる遊びをやっていたサラリーマンに恐怖が生まれる。
そこに至る描写には種も仕掛けもない。
つまり、ファンタスティックなものが入り込む余地がないリアリズムだ。

ドライブインのシーンでの多少思わせぶりな演出を除くと、全編に嘘がない。
スタジオで撮ったテレビ・ドラマではなく、ほとんどが自動車の実写を含むロケで撮っているが、後にスピルバーグがSFXやCG技術を駆使して、いわば「作り物」の世界を、いかに本物らしくどのように大袈裟に作り上げて、観る者を喜ばすかに全知全能を傾けることになるのとは、全く違っている。

これが、スピルバーグの出発なのだ。
「激突 !」が追われる者の不安と恐怖を描く、すなわち不条理を押し付けるだけの映画だったならば、この映画の価値はさほど大きくなかっただろう。

原題がDuel=決闘とあるように、追い詰められたサラリーマンは、逃げまどいながらも、その不条理=悪と「決闘」する決意をし、土壇場で男気を出すのだ。
リアリズムから離れるとすれば、このラストだけだ。

不条理なものに対しては、己は例え小の虫であっても、不退転の決意で敢然と戦う。
この正義の心をはっきりと打ち出したところに、アメリカ的な理想主義があり、ヒューマニストであるスピルバーグのスピルバーグたる所以があると思います。

ヒューマニストとしてのスピルバーグは、早くもその第一歩の時点で、はっきりとその顔をのぞかせていて、この勇気と上昇的な気分がなければ、世界中でこれほどまでに支持される代表的な映画人にはなれなかったに違いありません。

スピルバーグ監督は正直言ってそんなにひいきの監督ではありません。
この『激突』だけは悪くはないと思いますがカーアクション以外の主人公の行動がどうもいけません。

『インディ・ジョーンズ』シリーズで、剣を持ったアラブ男を白人のインディ・ジョーンズがリボルバーで無造作に撃ち殺す。このシーンは白人のスピルバーグ監督のマイナスな部分がよく表れていると思えます。
それだったら『プレデターズ』で日本刀で挑む日本人ヤクザに飛び道具を使わずに仕込み剣のみで受けたプレデターの方がよいと思えてしまいます。
このプレデターの装備は仕込み剣のみという説もあるようですがハンドガンぐらいは持ってるだろと思える。

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