『八月の濡れた砂』(1971年)
この作品は藤田敏八監督、村野武範、広瀬昌助、テレサ野田、藤田みどり主演のメロドラマ?のようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1971年 日活 日本作品
ランニング・タイム◆90分
プロット◆何だかわかりません。つながらないエピソードの羅列となっています。
音楽◆むつひろし
パーフェクTV261チャンネルNECOにて。画質はまあよいです。
キャスト
村野武範→退学生の野上健一郎
広瀬昌助→退学生の知り合い西本清
テレサ野田→妹の三原早苗
藤田みどり→姉三原真紀
渡辺文雄→亀井亀松
原田芳雄→神父
山谷初男→五郎
TVレポーターをやっていた剛達人が出てました。この当時の芸名は知りません。
無名なのと若いので後は誰が誰だか全然わかりません。
藤田敏八監督の演出はよいと思います。
何故かやくざにヤキを入れられるとこを丁重に撮っています。
この描写は『天使を誘惑』(1979年)でも同じような描写があるので藤田敏八監督の特徴?のようです→色男の藤田監敏八督は昔ヤクザの女に手を出してヤクザにヤキを入れられたのかもしれない。そのせい?と思えてしまいます。
学校の木造旧校舎に鉄筋新校舎がつながってます。この絵は当時をよく象徴しています。よく考えればこれは構造的にかなりいい加減だと思えます。耐震強度等は何も考えていないでしょう。
バイクで砂浜を走っています。このようなことをするとエンジンやサスペンション等バイクのあらゆる部分に海水がしみ込んでマジでバイクが気の毒に思えます。日本映画のバイクの扱いはこんなのばかりです。うんざりします。バイクはホンダSL350だと思います。
クルマは箱スカのスカイライン2000GTのようです。後ろがオーバーフェンダーではないのでGT-Rではないと思います。
前タイトルでのキャスト紹介はありません。
村野武範は退学製の割にはあまり悪そうには見えないのが難ですが、見ている分にはこの方がいいのかもしれないけど。
この作品、ヌードがあるテレサ野田の方が有名ですが、実質のヒロインは藤田みどりのようです。
会話シーンで切り返しはやってません。と思ったらやってるとこもある。
赤のイメージは一体何だ?よくわからん。
ラストは歌謡映画のノリになるのが日活のスタイルのようです。怪獣映画の『大巨獣ガッパ』(1967年)でもラストには歌が流れてガッパが夕日に向かって飛んでいました。会社独自のスタイルというのがあるようです。
藤田敏八監督は1997年8月29日に死去しました。
享年65才。私は死亡記事で名前を『ふじたとしや』と読むと初めて知りました。『ふじたとしはち』の読みだと思っていました。実際そんなのものです。
◆そんな感じで日本語の名前と地名の正確な読みは日本人でもわかりません。バイクでツーリングに行った出先にて地名がわからない場合が多い。地名には発音表記を必須にしてもらいたいものです。
そんなわけで話しの方はよくわかならいけどまあまあな作品でした。
« 『潜在殺意』(1996年) | トップページ | 『変奏曲』(1976年) »
「映画」カテゴリの記事
- 『彼らは忘れない』(1937年)(2022.02.27)
- 『ギャングを狙う男』(1953年)(2022.02.26)
- 『ブラック・リッジ』(2020年)(2022.02.20)
- 『フローズン・ストーム』(2020年)(2022.02.19)
- 『私は逃亡者』(1947年)(2022.02.13)
「1970年代」カテゴリの記事
- 『見えない恐怖』(1971年)(2021.11.27)
- 『危険な愛の季節』(1975年)(2021.06.19)
- 『サイコマニア』(1972年)(2020.06.07)
- 『殺人ブルドーザー』(1974年)(2020.06.06)
- 『キラーカーズ パリを食べた車』(1974年)(2020.04.05)
「日本映画」カテゴリの記事
- 『海女の化物屋敷』(1959年)(2021.05.09)
- 『九十九本目の生娘』(1959年)(2021.05.08)
- 『カメラを止めるな!』(2017年)(2020.05.17)
- 『翔んで埼玉』(2019年)(2020.05.16)
- 『生きていた野良犬』(1961年)(2018.07.22)
これはまた、少年時代のトラウマに引き続き、青年期の始まりのトラウマがこの映画に対してはあります。
私達の世代には特別の映画の一つで、一種の「神話」と化しているかも知れない。
逆に言うと、この時代に青春期を過ごしていなければ、さっぱりわからない映画ではないでしょうか。
(例えば、なぜ「赤」なのか・・・とかね)
私なんか、テーマ・ソングのマンドリンの渚のさざなみのような音を聞いただけで、年甲斐もなくウルウルしてしまうのです。
完全にトラウマです。
私は当時の日活の、ロマン・ポルノ直前の映画に一番惹かれますが、別の一派の青春のバイブルは、東宝の恩智監督の三部作のうちの「あこがれ」「めぐりあい」がありますね。
投稿: lalaki | 2009.07.27 10:33
日活最後の作品になり、この冴えないポスターが新宿に貼ってあったのを憶えています。
当初は、沖雅也主演だったのだそうですが、冒頭の浜辺のバイクのシーンで転倒して怪我してしまいやり直しで、テレビで人気だった村野と、六月劇場にいた広瀬昌介がキャストされて撮り直されたそうです。この映画に出ていれば、沖雅也もどうだったのかなあと思いますが。
藤田敏八の本質は、私は劇作家のベケットの『ゴドーを待ちながら』だと思っています。途中までごたごたしていてドラマがなく何をやっているかと思っていると急に破局になる。藤田は、東大在学中に俳優座養成所にいたこともあり、不条理劇的だと私は思っていますが、いかがでしょうか。
藤田の本名は敏夫ですが、チーフ助監督の岡田祐介が『非行少年・陽の出の叫び』の時、間違えて藤田繁矢としてしまい、岡田が謝ると、藤田は
「それもいいなあ」とその後、当時の夫人の姓名判断で、敏八にしたそうです。
藤田敏八では、秋吉久美子主演の『妹』が最高だったと思います。
投稿: さすらい日乗 | 2017.04.16 08:58
さすらい日乗さん、コメントありがとうございます。
藤田敏八監督作品で、山口百恵主演の『天使を誘惑』(1979年)はアイドル映画だと思ったら結構上手く出来ていると思いました。
投稿: ロイ・フェイス | 2017.04.16 21:28
藤田敏八監督の「八月の濡れた砂」を紹介されていますので、コメントしたいと思います。
この「八月の濡れた砂」は、生きていくことの意味を見出せないまま、月日が流れている不安の中で自分を持てあましている青年の心の揺れを鮮烈に描いた作品だと思います。
夏の湘南海岸。高校を退学した健一郎(村野武範)と清(広瀬昌助)は、不良学生に暴行された少女・早苗(テレサ野田)を救ったことから、その姉の真紀(藤田みどり)と知り合う。
健一郎は、母に求婚している亀井(渡辺文雄)のヨットに、真紀と早苗を誘い、清と二人で襲おうとする。
流れる汗。やがて銃声が鳴り響くのだった-------。
石川セリのアンニュイに満ちた、けだるい歌とともに、いつまでも心に残って忘れられない映画、藤田敏八監督の「八月の濡れた砂」。
この映画は、広がる青い空、目に痛いほどのまぶしさでギラギラするような陽光をはねかえす海。砂の灼熱感。
あるいは、人の気配のない砂浜の風のそよぎ。打ち寄せる白い波。
海辺の様々な表情が、きらきらとした映像で鮮烈に表現されていますが、この海の描写は、すなわち登場人物たちが抱いている焦りや、いらだちや、不安や心細さや、やりきれなさの心象風景となっているのです。
人生の戸口に立って、やりたいことは、両手に抱えきけないほどたくさんあるのに、何から手をつけていけばいいのか、あるいは、きっかけを作ってくれる緒口がどこにあるのかが、つかめないという焦り。
自分なりの道は、何とか探し出したものの、その道の行く手を、無理解な大人たちの作り出した道徳や常識が、通せんぼしているということへの不満や怒り-------。
あるいはまた、自分が本当にやりたいことは何なのか、生きていくことの意味を見い出せないまま、月日が流れている不安。
そういった気持ちの揺れは、いつの時代でも、誰もが一度は経験することでしょう。
その揺れ具合によって、胸から溢れ出たエネルギーは、様々な形となって噴出する。
無軌道と呼ばれる、反社会的な行動となる場合もあるだろう。
風の吹き具合によって、おだやかな凪の日も見せれば、荒れ狂う表情に変わることもある海や、その周辺は、若者たちのエネルギーの象徴としては、まさに的確な場所であるとも言えるだろう。
この「八月の濡れた砂」の場合、ストーリーを追って、筋書きを楽しむ作品ではないと思います。
一歩ずつ、大人に近づきつつある今、自分がどう生きていったらいいのかが、つかめなくて、自分を持てあましている青年たちの、その心の揺れを、くみとり感じる映画だと思います。
とりわけ印象深いのは、ラストシーンのヨットの場面ですね。
海を背景に、若者たちのエネルギーを描いた作品としては、石原裕次郎主演、中平康監督の「狂った果実」があり、ラストシーンの、ヨットの場面が、名場面として語り継がれています。
兄と女の乗ったヨットに、モーターボートで激突していく弟。
次の瞬間、カメラは空中に舞い上がり、茫々とした海のただ中に、白い澪を引いてさまようモーターボートと、静かに沈みゆくヨットの帆を、延々と映し出していました------。
この「八月の濡れた砂」のラストも、その「狂った果実」のラストシーンに匹敵する名場面と言っていいのではないかと思います。
投稿: 陽炎 | 2023.04.06 23:03
陽炎さん、長文のコメントをありがとうございます。
この作品はよい作品です。
ですが日本映画はよい作品もあるんですがとにかく駄作が多い。
しかも批評は当てにならない。自分で全作見て判断するしかないのです。
しかしそんな時間があるわけがない。こまったものです。
手短な返事になりますがご了承ください。
投稿: ロイ・フェイス | 2023.04.08 17:49