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2007.05.26

『マトリックス』(1999年)

この作品はアンディとラリーのウォシャウスキー監督、キアヌー・リーブス主演のSFアクションです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
斬新なアクションということで見ました。ですがお目当ての斬新なアクションは予告等のハイライトシーンでホトンド見ていました。これは未見ではない?

1999年 シルバーピクチャーズ/ビレッジロードショーピクチャーズ/ワーナー アメリカ作品
ランニング・タイム◆136分
原題◆The Matrix
プロット◆コンピュータと人間が戦う話しのようです。
音楽◆ドン・デイビス あまり印象に残らず。
ワーナーのDVD特別版にて。画質はよいです。

キャスト
キアヌー・リーブス→トーマス・アンダーソン=救世主ネオ
キャリー=アン・モス→ヒロインのトリニティ
ローレンス・フィッシュバーン→リーダーのモーフィアス
ヒューゴー・ウィービング→エージェント・スミス
ジョー・パントリアーノ→内通者のサイファー
マーカス・チョン→オペレーターのタンク
ベリンダ・マクローリー→女性工作員のスウィッチ
ジュリアン・アラハンガ→工作員のエイポック
アンソニー・レイ・パーカー→タンクの兄ドーザー
マット・ドーラン→赤いドレスの女を作ったマウス
フィオナ・ジョンソン→赤いドレスの女

アンディとラリーのウォシャウスキー監督の演出はよいと思います。

アクションシーンは予告編等で見てるので会話シーンの方はどうかなと見てましたがそれほどでもない。
ホントに新しいジャンルのフォーマットを作ったエポックメイキングな作品ならアクションだけではなく他の会話シーン等でもテンションが上がりっぱなしになると思えますが残念ながらそうではありませんでした。


前タイトルがありません。
始まってすぐに『めまい』(1958年)みたいなビルの屋上での追跡シーンがありました。追っかける方向が『めまい』とは逆になっているのがいい感じ。
引用とはいえこの位は変えてほしものです。
大部分のアニメ屋さんがパロディとかオマージュとか称してコピーを乱用してオリジナルをスポイルしていることにうんざりしたので少し変わっているだけでいいと思えてしまいます。そんなわけで大部分のアニメ屋さんの頭の中には脳みそではなくてコピー機のゼロックスが入ってるではと思ってます。

とりとめのない話しの方は押井守監督作品で慣れてるのでなんてことはない。
私はこういう場合は本『映画術』でのアルフレッド・ヒッチコック監督が言うところの説明セリフなんて誰も聞いていない、セリフなんてサウンド=効果音と同じということに従って、これはいい声だなと聞き流しています。
同じような話しではないかとケチをつけたりはしません。話しにケチをつけていたら見る作品がなくなってしまうからです。

このシーンが撮りたいから始まってつじつま合わせは後から考えて作られているのがいい。これはアルフレッド・ヒッチコック監督的な作り方なのです。この作品のよいとこはここでしょう。


公衆電話を介して行き来する設定はサスペンスのためでしょう。結構効いてます。
携帯は通話のみで有線の電話は移動も出来る。この使い分けはわかりやすい。どうしてそうなるの?は別の話しですが。
『めまい』はビルの屋上での追っかけアクションの量はわずかで撮影技術も粗末なものですが演出や編集が非常によく出来ているのであまり古びません。追うほうがハンドガンを撃つタイミングやビルからビルへ飛ぶ距離?の設定等が絶妙。ここが重要。撮影技術は古びるが演出や編集は古びないと私は思います。


始まったとこでトリニティは電話中。
盗聴されていて警官隊に踏み込まれることになります。303号室。トリニティは警官隊をあっさりと片づけます。この303号室の内装が『紅い眼鏡』(1987年)でのもぐりの立ち食いそばやみたい。最初はトリニティが立ち食いそばを食べているかと思った。
強敵のエージェントが近くに来たのでトリニティは逃走します。出だしは好調といったとこです。

シーンは変わってコンピュータの前で寝ているネオ。
MOディスクを取りに人が来ます。2000ドルの仕事です。
白うさぎを追えのメッセージの元ネタの『ふしぎの国のアリス』(1951年)はディズニーで唯一結構いいと思える作品です。私は『ファンタジア』(1940年)も悪かないけど傑作というほど?という感想です。音楽にシンクロするカット割りなら他にもいいのがあります。

誘われてディスコに行くネオ。トリニティが接触して警告をします。
ディスコではSMをやっている人もいました。これは監督の1人がその方面な伏線なのか?。

遅刻出勤して説教を食らうネオではなくアンダーソン。
キアヌー・リーブスは左利きのようです。ハリウッドにはやたらと左利きが多いような。
あっさりとエージェントに捕まるアンダーソンです。見ているトリニティはバイクにまたがっていました。続編にあるバイクアクションの伏線なの?
尋問を受けて口をふさがれて、腹に虫を入れられます。ここで夢から覚める図。

トリニティ他2名がいるクルマに乗るアンダーソン。
ここで腹から虫を取り出されます。夢ではなかったことになります。
モーフィアスのいるアパートに行くアンダーソン。
鼻に引っかけるだけの妙なサングラスをしているモーフィアスです。
マトリックスの正体とは?と思わせぶりに話しは進みます。
青いカプセルを飲めば元に戻り、赤いカプセルを飲めば違う世界に進むとなります。
『めまい』の引用としては後は階段の俯瞰シーンがあって、ここで逆ズームショットでもやるのかと思ったらそういう設定ではないのでやらなかった。そりゃそうだ。

アンダーソンのホントの肉体はどこにあるのか調べる作業にかかります。
無事に肉体を回収して、船内に運び蘇生作業に取りかかります。延髄の位置にプラグがあります。
本部にしている船はホバークラフトと称しています。2069年製のプレートが見えます。

プログラムでネオに現実の状態を説明します。
これはプログラムなのだとなれば何でもありになります。カンフーの特訓でもセットのおかしな考証はプログラムのデータ不足なのですかとなります。つじつまがあうからこれは便利です。

実践プログラムでカンフーの特訓をします。
特訓ですが柱を蹴って飛んだりしてて何となく懐かしのTVシリーズ『柔道一直線』(1969-1971年)を連想させます。今になって思えばあれをマジに見てたのは恥ずかしいと思えます。

ジャンプのプログラムでビルとビルの間を飛ぶ練習するネオ。
最初は誰でも失敗をするとのことです。
ジャンプの特訓ですがこれが出来ればジェームズ・スチュアートは高所恐怖症にはならずにすんだのでしょう。同じ日に『めまい』(1958年)のDVDも買ったのでそう思いました。

ネオに食事を運ぶトリニティ。妙に印象に残るショットです。焼きもちをやくサイファー。

マトリックスの説明を受けるネオ。
赤いドレスの女が見れます。
幻がマトリックスで本物がザイオンとのことらしい。話しの方はよくわからん。

ホバークラフトに敵が迫ります。
下水道に隠れて全パワーをオフにしてやりすごします。
ここは潜水艦アクションみたいです。潜水艦アクションのハイライトは息を殺して敵が去るのを待つがあります。この作品では定番描写の爆雷は落とされません。

サイファーと酒?を飲むネオ。
シーンは変わってマトリックスにて。エージェントと裏切る交渉するサイファー。何回か見るとジョー・パントリアーノは最初から怪しいです。

食事のシーンがあります。
このシーンはいらないような。この作品はいらないとこをカットして136分を100分位にすればもっと面白くなりそうです。整理すればそんなに話しは難しくはなくて結構わかりやすいと思えます。

予言者に合うネオ。
総出でマトリックスに潜入しています。ホバークラフトに残っているのは兄弟の2名だけのようです。
預言者が普通のキッチンで人相を見る図はどういう意図?

マトリックス内で手入れを受けるモーフィアス御一行です。
猫を2回見たことから手入れに気がついて戻るために有線電話を捜して逃げ回ることになります。
最初にホバークラフトに戻ったの裏切り者なので船内は散々なことになりますが1人生き残ったタンクが貴重な人材でホバークラフト内の全滅は免れました。
それでもモーフィアスは捕まり、裏切り者にプラグを抜かれてエイポックとスウィッチの2人が死に至ります。

マトリックスにて。捕まってエージェントに説教されているモーフィアス。
モーフィアスがザイオンへのパスワードを吐く前にプラグを抜くか助けに行くか、どちからをしなければなりません。話しの方はよくわからん。
よくわからんけどそんなわけでネオとトリニティがマトリックスに潜入します。
ホバークラフトにはタンクが残っています。合計3人しか残っていません。

マトリックスにて。モーフィアスが捕まっているビルに乗り込むネオとトリニティ。
受付で派手に撃ち合います。エレベーターを上がって屋上でハイライトシーンでおなじみの弾丸をよけるネオのショットがあります。実は必死こいてよけてるだけの結構ヘナチョコなシチュエーションだったりします。
ヘリコプターからミニガン=バルカン砲を発射して空薬莢の雨が降ります。このショットは押井守監督作品からのコピーです。
バルカン砲をぶちかまして救出というのは随分とアバウトな戦術に思えました。
ところでヘリコプターに吊るされるシーンは『ダークマン』(1990年)がいい。吊るされたダークマンがビルの窓に突っ込んで「失礼」と一言のユーモア1発が素敵なのです。

地下鉄のホームにて。
エージェントの襲撃で残ることになったネオは反撃して戦います。
ホバークラフトには攻撃が迫ります。この2つのシーンがカットバックとなってクライマックスとなっています。
地下鉄のホームでは地下鉄が来るのをネクタイが風になびくショットを使うとかしてたらもっといいのにと思えます。何となくもっといい描写をと隔靴掻痒となります。惜しいな。

カンフーアクションをクライマックスに持ってきています。
私はカンフーはあまり見ていませんがモノホンの達人ジェット・リー主演の『ハイリスク』(1995年)は見たことがあります。ジェット・リーに比べてしまえば『マトリックス』に出演の方々は奮闘していますが少しヘナチョコに見えました。これはしょうがないでしょう。

戦いが一段落したネオは出口を捜して街を走り回ります。
市場で撃たれるシーンは押井守の『攻殻機動隊』(1995年)からのコピーです。
ネオが必死で逃げ込んだ303号室はプロローグでトリニティが一暴れした部屋なのですね。だから先回りされてしまったのか。なるほど。

ネオは撃たれるが復活する。
ホバークラフトはネオが帰還したとこで非常装置を作動させて何とか助かります。
で、続編ですとラストとなります。結構自然な感じな終り方です。これはビックリ。

『ダークシティ』(1998年)との主役比較。
ルーファス・シーウエルとキアヌー・リーブスを比較すれば『ハムレット』1996年版でラストを締めたスウェーデンの王子を演じていたルーファス・シーウエルの方がいいか?。甲乙つけがたいともいえそうです。

パナソニックの目覚まし時計
そうなると人間は電池と同じと見せる乾電池は多分パナソニック製だと思われます。
ノキアの携帯電話を使用。

データ受け渡しにはFDではなくてMOを使用。でも『機動警察パトレイバー』(1989年)ですでにそうなっていましたが。

培養されている人間の回収シーンはなかなかのものですが男ではなくて女性の回収シーンも見たいです。このへんがオタク監督の限界ですか。かといってポルノが見たいわけでもないのが微妙なとこなのです。

コンピュータがつながって意識を持ち始めるというアイデアは新しくはないのですが私に印象的なのは星新一のSF小説『声の網』です。電話を介してつながったコンピュータが意識を持って人間に干渉するという話でした。


ですがキアヌー・リーブスとキャリー=アン・モスが十分魅力的で補ってあまりあります。この作品は2人で持っているかも。ヒロインの方が年上な感じなのもいい。
「それは私が愛しているからよ」ということですか。そんなシーンがあります。いいじゃない。
アルフレッド・ヒッチコック監督作品で『白い恐怖』(1945年)でイングリッド・バーグマンが「私が愛しているから、この人は無実なのよ」なんてのがありました。バーグマンのキャラに非常に合っていていい設定でした。


よくも悪くもアニメ的な作品でした。
全体的に何だかつじつまの合わないとこが結構多いような。撮りたいショットが優先なのですからこれは構わないと思えます。
アクションシーンはただスローモーションしてるだけでカットバックやクローズアップを上手く使ってないような感じ。
アクションの方向性があまり整理されていなような感じとか。もう少し上手く出来なかったのかと思えました。隔靴掻痒アクションというべき?。要するにアニメだけでなく実写も見なくてはダメですよとなります。


悪くはないけど果たして年月を経て『サイコ』(1960年)『ダーティハリー』(1971年)『ブレードランナー最終版』(1982/1992年)のように新しいフォーマットを作ったエポックメイキングな作品になれるでしょうか。それともDVDを売るためだけの駒に過ぎないのか?→2007年になってみるとまぐれ当たり作品なのではと思えてきます。

そんなわけで続編2作の評判の悪さからするとどうやらこの作品は偶然に出来た佳作ということになるようです。
私的にはこのシリーズは最初の『マトリックス』(1999年)とアニメ・オムニバスの『アニマトリックス』(2003年)でお終いにしましょうとなります。



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コメント

「マトリックス」は、観終えて、まず面白かった。
バーチャル・リアリティが、大きなテーマになっているが----うーん、何だかなあ。
そもそも映画自体が、バーチャル・リアリティなので、その中でバーチャル・リアリティ論を展開されると、どっと空しさに襲われたりしてしまう。
テーマやストーリーには、あまり感心はしなかったが、アイディア豊かなアクション場面が面白かった。
この兄弟監督は、独特の硬質で無機質なタッチを持っていますね。
物質感というか、重量感を出すのが、実にうまい。
ただ、脇役に面白みがないのが、物足りませんでした。

陽炎さん、コメントありがとうございます。

この作品はエポックメイキングまでは行かないけど普通に面白いアクション映画だと思います。

アンディとラリーのウォシャウスキー監督のその後の作品は傑出したのは少なく普通の映画監督になったような感じです。
実生活で兄弟が姉妹になった方が目立ってます。

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