『からっ風野郎』(1960年)
この作品は増村保造監督、作家として有名な三島由紀夫主演のヤクザ映画のようです。珍品ということで見ました。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1960年 大映 日本作品
スカイパーフェクTV310衛星劇場にて。画質はよいです。この放送では「キチガイ」「唖」がカットされてなかった。当然といえば当然のことです。
プロット ヤクザから足を洗えない話のようです。
音楽 塚原哲夫
キャスト
三島由紀夫→ヤクザの二代目朝日奈武夫
若尾文子→ヒロインの小泉芳枝
船越英二→朝日奈の兄弟分 愛川進
志村喬→朝日奈の叔父貴 平山吾平
根上淳→敵側の親分 相良雄作
神山茂→喘息持ちの殺し屋 政
川崎敬三→ヒロインの兄で共産党員 小泉正一
小山内淳→殺す相手の顔も知らない殺し屋 半田三郎
浜村純→ヤク中の医者 淀川
豪華なキャスティングです。
増村保造監監督の演出はよいと思います。
タイトルでは三島由紀夫は主題歌まで歌っていることになっていますが本編では流れていなかったような。なるほど『風の谷のナウシカ』(84年)の安田成美の歌のようなものですか。下手な歌は聞きたくないからその方がいいです。
素人が主演のお遊び映画なのかと見ましたが案外まじめに作ってありました。
でも出だしは刑務所に来た面会人がハンドガンを持った殺し屋なのはいくらなんでもおかしいのではとなります。所持品検査もしない刑務所に殺す相手の顔も知らない殺し屋とは両方とも間が抜けています。
ロケのシーンが楽しみなんです。当時の街のビンボ臭さが凄くて見てて感心します。舗装されていない道路が当時の雰囲気が出してていいです。
ぜんまい仕掛けでシンバルを叩く猿の人形が印象的で何かの伏線になっているのかは思ったがそうでもなかった。
「勝てば監獄、負ければ地獄」のセリフがここでもありました。オリジナルはどこなんでしょう。いいセリフです。
ヤクザ礼賛ではないとこがまともです。遊んで暮らすカネ欲しさに何でもするのがヤクザとなっています。
無理に指を詰めるのに匕首をトンカチで叩いて詰めてました。妙にリアルです。
三島由紀夫は素肌に革ジャンを着ていました。正直言ってヤクザにも作家にも見えません。チンピラぐらいか。
増村保造監督にしごかれたとのことですが、演技を見るかぎりそんな感じはしませんでした。素人の熱演が痛々しいとこまではいってない。これはいいです。
映画館を隠れ家にしてました。これは洒落ているじゃないですか。いいもんだ。
兄弟分の船越英二と一緒なとこでは精一杯120%好意的で見てブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演の『スカーフェイス』(83年)のトニーのように見えないこともない。ラストもそんな感じでしたし。白のジャケットに黒のシャツ姿なのもそんな感じ。
ラストでは殺し屋 神山茂に撃たれてデパートの上りのエスカレーターを下ろうと足が空回りとなり、俺の人生は空回りとモンタージュして死体となりエスカレーターを上りつめラストとなります。あまり悲惨な感じはせず。
若尾文子演じる映画館のもぎりは月5000円とのこと。
共産党のストライキでバリケードに立てこもっている兄のとこに弁当を持っていったりしてます。
で、現場ではヤクザのダンプトラックがそのバリケードにバックで突っ込みます。ここは現代でもあまり変わっていないような。
船越英二はケイリー・グラントで、根上淳はフレドリック・マーチに見えます。そんな感じでいいもんだ。
船越英二はいつ見てもいい。コメディからシリアスまで何でもこなせます。
根上淳はカッコいい。さすがTVシリーズ『帰ったきたウルトラマン』(71年)でのMATの隊長なのでスーツ姿の組長役がピタリとあっています。素人の三島由紀夫の100倍はカッコいい。
私がガキの頃で何も知らないでTVのウルトラ番組を見てて何か特別な感じがする人に見えたのは岸田森と根上淳で、こんなとこにに出てていいのかなと思ってました。
そんなわけで全体としてやっぱり珍品になってしまう作品でした。悪くはなかった。
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» 人でなしでも人の子さ [折り返し地点を過ぎれば人生下り坂]
今回は、文豪・三島由紀夫の多彩な活動の中から、音楽作品のご紹介です。
からっ風野郎 − 三島由紀夫 1960年(Audio Only)
唄・作詞:三島由紀夫
作曲:深沢七郎
▼参考リンク
『映画フェイス』より、“からっ風野郎”
『映画の感想文日記』より、“から...... [続きを読む]
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