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2006.01.06

『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)

この作品は坂野義光監督のゴジラシリーズでは異色となるカルトな怪獣映画のようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1971年 東宝 日本作品
ランニング・タイム◆85分
プロット◆ヘドラが田子ノ浦市に現れるハナシのようです。
音楽◆真鍋理一郎 結構いいスコアでした。

キャスト
山内明→矢野徹←学者です。
木村俊恵→矢野敏江←学校の先生です。
川瀬裕之→矢野研←子役です。
柴本俊夫→毛内行夫←いなくなります。
麻里圭子→富士宮ミキ←歌います。
吉田義夫→伍平爺さん←漁師です。
鈴木治夫→自衛隊幹部将校
勝部義夫→自衛隊技術将校
岡部達→アナウンサーA
渡辺謙太郎→本物のTBSのアナウンサー
大前亘→巡査
岡部正→学者
加藤茂雄→トビ職←ビルから落ちる人?
由紀卓也→通信員
小松英三郎→下士官
権藤幸彦→ヘリのパイロット
中沢治夫→若者
中島春雄→ゴジラ
中山剣吾→ヘドラ
小川安三→不明
宇留木康二→不明

坂野義光監督の演出はよいと思います。
特技監督ではなく特殊効果の中野昭慶。

この作品がTVで放送出来ないのはアバンギャルドな演出や内容よりヘドロの産地は田子ノ浦と汚染されているとこをハッキリ実名で出した方がまずかったんではと思えます。
でもスカイパーフェクTVでは放映してたりする。地上波放送では放映しないと補足した方がいいようです。

当時の公害をまき散らす工場街のシーンが映し出されます。
煙突は煙を吹きまくり光化学スモッグの描写もあります。
東宝特撮作品は当時の風俗を取り入れる手法がありますからそれにそっているようです。『キングコング対ゴジラ』(1962年)のチェレンコフ光や蓮の実ネタもそうでした。

子役が嫌みではなかった。これは珍しい。
子役にダイバーウォッチもナイフも必要という描写はよいです。これも珍しい。その子役のナイフの扱いは下手だったけど。
坂野監督はスキューバをやっていて海中のシーンは監督本人が演じているそうです。

ワイドスクリーンの使い方は上手くないです。
ゴジラやヘドラはただ真ん中にいるだけ。2体そろう時は左右に分けて配置するだけで芸が無いつまらない撮り方でここだけはイマイチ。

爆発のシーンではいつもの中野特技監督の感じになっています。
得意の火薬は多量に爆発は連発となっていました。全体的には自分の思う通りに出来ずに中野特技監督はさぞストレスがたまったでしょう。

アニメでヘドラを紹介するのがところどころで入ります。
わかりやすくてとてもいいじゃないですかと今は思えます。当時の評価はどうだったのでしょう。→無視だったようです。

この作品は結構延々と特撮シーンが続いてます。そう考えると新しいパターンの作品だったとわかります。

ゴジラの白熱光は電流に近いと解釈されてるようです。
そうなると実体のあるものではないのか?

キャストの1970年代ファッションはやっぱりダサい。
見てて気持ちよくなるくらいです。
ヒロインの麻里圭子は何かのグループでボーカルを担当していたのでは?

クルマは赤いミツビシ・ギャランでした。
最初に登場するシーンでは隣りには青いトヨタ・セリカ・クーペがありました。
トヨタ・セリカ・クーペのデザインは全く古びていない。こんなのが当時にあったとは驚く。基本的にアメ車の縮小コピーですがよくデザインされています。
科学者夫婦を乗せて来るのはギャランのライトバンです。布団をそのまま積んで寝たまま来るのが何となく凄い。当時はキャンプ用品等はなかったのか。単に低予算なだけかも。
→ 1970 Mitsubishi Colt Galant [A50]
→ 1971 Toyota Celica [RA20]
→ 1970 Mitsubishi Colt Galant Estate [A50]

→ Toyopet Dyna [RK170B]
→ 1964 Datsun Bluebird Wagon deLuxe [W410]
→ 1961 Nissan Cedric 1900 Custom [G30]

→ 1967 Bridgestone BS 50 Sport ヘドラの被害を受けたバイク
→ GMC CCKW 353 ケーブル運搬トラック

東宝発売のBlu-rayにて。
画質は普通です。
スクイーズ収録のフル表示。
画面サイズはワイド。上下に黒味あり。
音声は DTS-HD MSTR multi

DTS-HD MSTR multiの2004remixの音声ですが、セリフや効果音はあまりステレオ化せずにクリアに聞こえるようにしてます。
音楽はstereoになってます。それに高音がよく聞こえます。
そんな感じで全体的にいい仕事をしてます。

東宝のタイトル
タイトル
『ゴジラ対ヘドラ』
歌が入ります。素晴らしい。
スタッフの紹介

出演者
山内明 矢野徹←学者です。
川瀬裕之 矢野研←子役です。
木村俊恵 矢野敏江←学校の先生です。

麻里圭子 富士宮ミキ←歌います。
柴本俊夫 毛内行夫←いなくなります。
吉田義夫 伍平爺さん←漁師です。
中山剣吾 ヘドラ
中島春雄 ゴジラ

鈴木治夫 自衛隊幹部将校
勝部義夫 自衛隊技術将校
岡部正 学者
小川安三
大前亘 巡査

小松英三郎 下士官
宇留木康二
由紀卓也 通信員
権藤幸彦 ヘリのパイロット
中沢治夫 若者

渡辺謙太郎 本物のTBSのアナウンサー
岡部達 アナウンサーA

監督 坂野義光
中野昭慶はスタッフの紹介で特殊効果になっていて特技監督ではありません。

タイトルでは有名な公害?の歌が流れます。
今見ると結構いい歌だと思います。
この歌は立派なメッセージソングとなっています。メッセージソングというのは強力なアイテムなのです。ですからこの歌は放送禁止でしょう。
タイトルの終わりに針のない柱時計が映されます。

学者の自宅にて。
大きい水槽に熱帯魚を飼っています。
吉田義夫扮する漁師の伍平爺さんが駿河湾で獲れた奇妙な魚を持ってきます。
大きなおたまじゃくしのような魚です。

スキューバダインビングです。
息子は海岸で待機中にヘドラと遭遇します。
父親は海中でヘドラと遭遇します。

学者の自宅にて。
父親は海中で顔に重症を負い臥せっています。
TBSのインタビューとなります。渡辺謙太郎が登場。
報道で使うカメラや茶の間のテレビの古臭さには改めてビックリする。これが当時は最新だったのかと妙な気分になります。
TBSのアナウンサー渡辺謙太郎。昔のTBSにはよいアナウンサーがいたんだなと感慨深い。今のアナウンサーの連中がひど過ぎるからそう思えるのかもしれません。

アニメです。
夕陽のゴジラ。
公害のモンタージュから息子の詩がナレーションされます。

夜中に実験中の父親。
合体して大きくなるおたまじゃくし。
陸に上がったら大変だのセリフでリードして次は陸に上がるヘドラになります。

ある夜にヘドラは海から陸に上がってきます。
ゴーゴー喫茶の歌にシンクロしています。
煙突の煙を吸ってハイになっているのかやる気十分でゴジラを迎え撃ちます。煙突の煙はマリファナなのかい?。
このシーンはかなりなものです。要するに素晴らしい。
ここでは煙を吸う時にヘドラの呼吸音がついてます。上手いじゃん。
ゴジラも登場。対決となります。

ゴジラがヘドラをジャイアント・スイングする図。
これでマージャン中の男達やゴーゴー喫茶が被害を受けます。
中年男の被害者達はマージャンをしているとこでした。何でマージャンなの?不思議だ。中年はマージャンで若者はゴーゴー喫茶となっているようです。わかりやすい。

そのゴーゴー喫茶では飲み過ぎで悪酔いしたのか柴本俊夫は客達がサカナの顔になって見えます。よくある前衛的な手法ですがいいものです。
ヘドラの襲撃から引き上げた後にヘドロまみれの猫が残されます。これが凄く印象的です。

ゴーゴー喫茶を抜け出した2人はクルマ ギャランの中からゴジラ対ヘドラを見物となります。

アニメです。
工場が緑を食べてしまいます。その工場をヘドラがまた食べる。
それか空を飛ぶヘドラとなります。

現場を調べに来ます。
学者の弟が柴本俊夫のようです。麻里圭子もいます。それに科学者親子3人そろって計5人で赤いクルマ、ミツビシ・ギャランで移動しています。

帰宅して実験となります。
鉱物で出来ている生物。それがヘドラらしい。

遊園地です。
ジェットコースターからゴジラの影を見る息子。
ヘドラ出現。飛行して光化学スモッグをバラまくヘドラです。
ですが合成の比率は結構いい加減だったりします。特撮の師匠にあたる亡き円谷英二が見たら嘆くことでしょう。激怒したりして。

空を飛ぶヘドラが通り抜けた後にビル上部の鉄骨が崩れ落ちるシーンでは何故か崩れる効果音が付いてなくてサイレント映画のようにになっています。これは不思議なシーンになってしまい、かえってよかったみたい。

アニメです。
スモッグをばらまいた次のアニメです。
ヘドラのスモッグ用マスクのアニメです。顔の形が合わさって街の区分部になってます。シュールです。素晴らしい。

原爆の話しになるとそのアニメにもなってます。凄い。

100万人ゴーゴーを企画する柴本俊夫。
富士のすそ野が会場とのことです。

ゴーゴー発言のあとに、ヘドラ対策の対談番組になります。
1の水中期、2の上陸期、3の飛行期、4は?となってます。
それからマルチスクリーンのシーンになります。正直言って上手い。

実験中の学者の父親。
電極板の実験からマルチスクリーンとなります。
マルチスクリーンで人々の声を描写する手法です。これは当時の万博等の何とかパビリオンで流行ったバリエーションだと思えます。悪くない。
人々の意見がコラージュされています。凄い、1人1人意見を持っています。こんな時代もあったのか。

富士のすそ野にて。100万人ゴーゴー大会となります。
予定通りにはいかず100人ほどそろったようです。
主人公のはずの柴本俊夫はヘドラのヘドロ弾の直撃を受けてあっさりと退場というか何となくいなくなってしまいます。これが1970年代のテイストなのか凄いものです。さすが1970年代。

ヘドラが出現します。ゴジラも。
自衛隊のヘリコプターによる酸素弾攻撃があります。

ヘドラ対策に巨大放電版を使おうとする自衛隊。
関東一円を停電にしてその電力を集約させるんだとセリフのみで盛り上げます。セリフだけなので安上がりでいい手法です。
肝心の電力が集約出来ずに役にたたない巨大放電版に白熱光を吹きかけて放電させるゴジラは見事に道具を使いこなしています。まあいいのでは。
それより放電描写が見てて気持ちよかったりします。光線作画と効果音の組み合わせは東宝特撮のよき伝統です。

戦うシーンは延々と続いてます。
ロングでゴジラとヘドラは見えず光線だけが交差して戦いを描写するシーンがあります。これはいいです。
ヘドラは状況に合わせて直立形態と飛行形態にタイプチェンジが出来て、このタイプチェンジは効果音と合わせてカッコいいじゃないとなります。
ヘドラは怒ると頭のてっぺんが赤くなります。わかりやすい。
ゴジラをヘドロ責めにしてましたがこれはヘドロを大量放出してヘドラにも相当ダメージがあったような感じもします。

ヘドラは電極板付近に来ます。
ヘドラを焼いて目玉を取り出すゴジラ。あまりグロな感じはしない。

唐突に中味のみが脱出して飛行して逃走するヘドラ。
それを追うゴジラ。後ろ向きで飛行して追います。これはビックリとなります。
追いついてヘドラを回収して飛行して戻るゴジラ。

電極板に戻りヘドラを焼くゴジラです。
放電のシーンはネガ反転の手法を使っています。面白いシーンです。
ヘドラをきれいに焼き払うゴジラです。

自衛隊は結局役に立たなかったようです。
現在では自衛隊が活躍するとこがないと映画に協力しなくなったそうです。これはまた思いきり右というか計算高くなったものです。

死体の転がる中をゴジラ対ヘドラの戦いを見ている子役とヒロイン。
ラストに一緒にいるけど柴本俊夫が死んだら子役とヒロインは赤の他人になってしまう。不思議な描写バランスです。

エピローグ。
富士山。夕陽のゴジラ。
ヘドロのモンタージュ。去るゴジラ。
最後には葛飾北斎の絵まで出ています。やっぱり富士山です。


それにしても1970年代的な凄い作品です。ぶっ飛びの話しや描写ですが意外とよく出来ています。
そんなわけでいかにも1970年代的なよい作品でした。


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コメント

おはようございます。
「ゴジラ対ヘドラ」は昭和ゴジラシリーズの中でも、その描写の陰湿さ、グロテスクさは類を見ませんね(というか、見返してみると昭和ゴジラシリーズのどれもが独特の個性を持っていて、イメージが統一されていない気がしてきました)。
本作の上映当時は環境汚染がピークだったようで、大きな問題になっていたようですね。高度成長期、日本の産業革命時代の頃は空を真っ黒にする煙突の煙が繁栄の証として称賛されていたようですが、後々それが害悪になっていく事は想像がつかなかったのでしょうか。

核の落とし子であるゴジラは、同じように人間の作り出した「毒」から生み出されたヘドラに自分と同じ影を見て悲しいものを感じたかもしれません。でも、地球に生きる者として地球を汚染し破滅に導く者とは戦わなければならない。
この頃のゴジラは人間に距離は近付いてきていても、決して人間の為に戦っていた訳では無いのですよね(でも、次作では少なくとも日本には好意的になってくれるみたいです)。
今にして思えば、この重苦しい雰囲気を吹き飛ばす為に例の悪評高き「ゴジラの飛行」が必要だったのかもしれません。大きな問題に悲観的にならず、前向きに(後ろ向きだけど)進んで行こう。そういうメッセージが込められているのかもしれません。その結果、ゴジラは強敵ヘドラに辛くも勝利しました。

田子の浦や四日市の汚染が凄かったようですが、大阪でも淀川の汚染が酷くて一時は魚が住めなかった時期もありました。今では環境の改善が進んでフナやタナゴが戻ってきて、空もいくらか澄んできたように思えますが、今はダイオキシンの影響による異常気象という別の環境問題が出てきているのですよね。
昔に比べれば汚れが見えなくなっただけで、根っこの所は何も変わっていないのかと思うと考えてしまいます。このダイオキシンこそが、映画の最後に出てきた「もう1匹のヘドラ」なのでしょうか。でも、私は悲観的にならず人間の英知を信じて前向きに生きていきたいです。

A-chanさん、コメントありがとうございます。

ヘドラ、煙突の煙をマリファナのように吸う。
アバンギャルドの極みでいいですす。もしか大麻解禁を先取りしていたのか?と思えます。

そんな感じでこんなにぶっ飛んでる怪獣映画は空前にして絶後だと思います。1971年はハリウッド映画もこれまでにない傑作が多かったのとシンクロしています。

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