『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)
この作品はブライアン・デ・パルマ監督、ポール・ウィリアムス音楽のミュージカルのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1974年 ハーボー・プロ/プレスマン・ウィリアムス・プロ/20世紀フォックス アメリカ作品
ランニング・タイム◆92分
原題◆Phantom of the Paradise
プロット◆自分の歌を盗まれる話しのようです。
音楽◆ポール・ウィリアムス 歌詞も担当しています。素晴らしいナンバーの数々でこの作品に生命を与えています。
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質はよいです。
キャスト
ウィリアム・フィンレイ→作曲家のリーチ/ファントム
ポール・ウィリアムス→音楽界の大物スワン
ジェシカ・ハーパー→歌手志望のフェニックス
ジョージ・メモリ→太ったマネージャーのフィルビン
ジェリット・グラハム→ゲイのロックシンガーのビーフ
ブライアン・デ・パルマ監督の演出はよいと思います。
歌のシーンのカット割りは音楽とシンクロしているとはいえないのですが、これがよかったりします。カメラは不必要に動かず、カットはムダに細かく割らず。それでいてカット割りのタイミングが絶妙によいのです。これは上手いです。
歌はどれもいいです。オープニングの『Goodbye, Eddie, Goodbye』とビーフ登場をリードする『Somebody Super Like You (Beef Construction Song)』がカット割りと合わせて私のお気に入りです。
前説です。スワンについて・・・
IMDbによるとタイトル前のナレーションはロッド・サーリングとのことです知らなかった。なるほどそれならトワイライトゾーンな話になるわけです。ロッド・サーリングというとTVシリーズより映画『猿の惑星』(1968年)の脚本を担当してあの有名なラストのオチを付け加えた人という印象の方が強かったりします。
タイトルとなります。
ジューシーフルーツの歌が入ります。
『Goodbye, Eddie, Goodbye』
途中でウィリアム・フィンレイ扮する作曲家のウィンズロー・リーチが登場。
オープニングの歌の評価はスワン様の拍手3回でよい評価ということらしい。
スワンにマネージャーが相談となります。
逃げたアネットを潰してくれとスワンに言ってます。
太ったマネージャーのセリフで裁判で「終身契約がばれた」というのはブラックでいいです、笑わせます。7年契約でも不利なのに終身契約では裁判に勝てるわけがありません。
ウィンズロー・リーチの歌が入ります。
『Faust』
この曲を盗めとマネージャーに指示するスワン。
マネージャーがウィンズロー・リーチと交渉します。
結局作曲家のリーチはマネージャーに楽譜を巻き上げられます。
で、楽譜を奪われて1ヶ月後となります。
デス・レコードにて。
追っ払われるウィンズロー・リーチ。
タクシーでスワンを尾行します。
スワンの屋敷にて。
屋敷内に入るウィンズロー・リーチ。ここで1曲入ります。『悪魔に会えるなんて』という曲らしい。いい歌です。
中に入るとオーディションを受ける女性だらけ。
ジェシカ・ハーパー扮するフェニックスが登場。ウィンズロー・リーチと知り合います。
ウィンズロー・リーチがようやくスワンに会いますが、じゃまだということで麻薬所持ということにされてあっという間に逮捕されて裁判のシーンが傑作。
ウィンズロー・リーチが弁護の余地もなくあっという間に終身刑を宣告されてしまいます。これがギャグになってて最高です。『ダイヤルMを廻せ!』(1954年)のパロディのようです。
シンシン刑務所にて。
無理やり志願者にされるウィンズロー・リーチ。自分が無罪という人は?→全員無罪だと申し出てブラックなギャグになっています。
6ヶ月後に衝動的に脱獄するウィンズロー・リーチ。
デスレコード社に乱入してレコードプレス機で事故となり河に落ちてしまいます。
レコード会社の風景で・・・今見ると、このでかい箱は何だ?となりますが。LPレコードが入っているんです。
主観ショットでパラダイス劇場に忍び込むウィンズロー・リーチ。
衣装に仮面をつけてファントムとなります。30分でこれだけ進んでしまいます。話しが早い。
リハーサルにて。
サーフソングが1曲入ります。
『Upholstery』
スプリットスクリーンで爆破のシーンがあります。お見事です。
スワンとコンタクトするファントムのウィンズロー・リーチ。
この時のスワンのセリフがいい。現われたファントムに対して「お前を探していたんだ」とぬけぬけと言ってます。そんなわけで復讐に燃えているはずのファントムはあっさりと丸め込まれてしまいます。
スワンの決めセリフといえば「Trust Me」です。信用できるわけがないのでアイロニーがあります。
スワンの決めセリフですが他には「ジューシーフルーツはもう古い」とか。「ビーフ、忘れよう」とか笑っちゃうぼど言いたい放題です。
オーディションです。
フェニックスが1曲歌います。
『Special To Me (Phoenix Audition Song)』
スワンに声が出るようにしてもらうファントム。
ファントムに分厚い契約書のサインをさせるスワン。
これが後でビックリの伏線になっています。普通の話しかと思ったらSFだったの?となります。
突然にお前は自殺の権利を譲渡したんだときます。SFというかファンタジーになっています。ぶっ飛んでいるともいう。
作曲するファントムのモンタージュが入ります。
ロウソクが燃え尽きるシーンでファントムが作曲する時間経過を表わしています。これはクラシックな手法です。
時計、カレンダー等がオーバーラップで入ります。
バックには歌が流れます。『Phantom's Theme (Beauty and the Beast)』
その一方ではファントムとの約束など関係なく主役シンガーのオーディションをするスワンです。
パワフルなのがいいとなり、これがそうなのかとパンクでグラムなビーフなる男になる。そのビーフですが今見ると結構地味な感じがしたりする。体形がおっさんなんですけど。で、笑っちゃうぼど典型的パンクなルックスとなっています。
スワンは適当なジャンルのシンガーを簡単にそろえることが出来ると描写されていますが。これとマジで音楽業界がそうなっているのでしょう。
殺される直前にビーフ歌っていたのと直後のフェニックスが歌ったのは同じ歌なのでしょう。同じ曲でもアレンジを変えるとまるで違う曲に聞こえます。私のような音楽の素人は簡単にごまかされてしまいます。
また作曲のモンタージュが入ります。
空港です。
記者会見するスワン。ジューシーフルーツはもう古いとかまし、新しいシンガーのビーフを紹介します。
ファントムの曲が完成に近づきます。
リハーサルです。
キーが会わないと不機嫌なビーフ。上手くいかないお笑いの一席となっています。
ここで音なんて誰も気にしないとマネージャーがかまします。
ファントムの曲が完成します。
楽譜を手に入れるスワン。
レンガの用意をさせています。
48分でファントムは塗りこめられます。
これに気が付いたファントムの悲鳴がパラダイス劇場に響き渡ります。
動揺するビーフ。かけつけたマネージャーが口論となっています。マネージャーのお腹に食い込む鹿の角がきになります。
鉄のドアと塗りこめたレンガをブチ破ったらしいファントム。
シャワー中のビーフを脅かします。これは『サイコ』(1960年)そのままです。
パラダイス劇場のオープニングとなります。
シンシナティにずらかろうとするビーフ。これを止めるマネージャー。
薬のことをスピードと称しています。
オープニングです。
1曲入ります。
『Somebody Super Like You (Beef Construction Song)』
ドイツ表現主義とフランケンシュタインが入ったセットと振り付けとなっています。これはいい歌です。この作品で私が1番好きな歌です。
洗練されたカット割りが素晴らしい。
フランケンシュタインの怪物ならぬビーフが登場。
1曲歌って死に至ります。
『Like At Last』
この場を収めるためにフェニックスに歌わせるスワン。
フェニックスの歌が1曲入ります。
『Old Souls』
シーンの締めは丸く囲うアイリスという手法となっています。サイレント映画風になっています。
楽屋にて。
フェニックスに面会のスワン。
「ビーフ、忘れよう」なんて言ってます。
フェニックスを屋上に連れていき警告するファントム。
聞いてないフェニックス。
スワンの屋敷にて。
フェニックスとスワンがいい仲になっているのを見て絶望して自殺するファントム。
これが死ねないのです。
ファントムに説教垂れるスワンです。
スワンとフェニックス、パラダイス劇場で結婚式と業界紙の見出しでモンタージュが入ります。
パラダイス劇場にて。
スワンの秘密のビデオテープを発見するファントム。
1953年11月19日土曜日。スワンを自殺を図る。
「ビデオテープとお前の命」と悪魔。これ伏線なの?
ファントムもフェニックスも契約していた。
今夜の暗殺のことも。
マルチモニタで暗殺の狙撃手が出ています。狙撃に使う組立式の銃が何なのか気になります。何だろう。
このへんはカットバックが全開となっています。
焦るファントムは火を放ちます。燃えるスワンのビデオテープ。
パラダイス劇場の舞台にて。
カラスをモチーフにしたダンサー達。
クライマックスでの黒いコスチュームのダンサー達はカラスがモチーフになっているんですね。何回も見てようやく気が付いた。
舞台には主要キャラが勢ぞろい。
フェニックス。
仮面をつけたスワン。
牧師というか法皇みたいなマネージャー。
ここで狙撃を阻止してスワンの仮面を取るファントム。
スワンを刺したが自分もスワン同じ運命となるファントム。
死に至るファントム。抱きしめるフェニックス。
エンドとなります。
1曲入ります。
『The Hell Of It』
フラッシュバックでキャスト紹介。
後タイトル。
後タイトルの中でセットドレッサー=シシー・スペイセクの名が出ているとやっぱりあるといつも思ってしまいます。
ディテールについて、あれこれ・・・・
太ったマネージャーも結構面白いセリフがあります。
ビーフのリハーサルのシーンで「音なんて誰も聞いていない」これはいいです。
お腹に食い込むシカの角のショットが何故か印象に残ります。
ジューシーフルーツ等で何回出てくる3人組は、
リーゼントのボーカルがアーチー・ハーン
細面でビーフ登場を歌うのがハロルド・オブロノ
もう1人がジェフリー・カマナー
その他大勢で女の子達で後に有名になる人はいるのか?→いませんでした。きびしいものです。1番有名になったのはスタッフだったシシー・スペイセクとは不思議なものです。
そんなわけでよく出来ています。本編がミュージカルシーンに負けていないのがいいとこです。ミュージカル映画の中で1番本編が面白い作品でもあります。
スカイパーフェクTVで放映されているの少し見た『オペラ座の怪人』(2004年)はそんなによい出来とは思えず。この作品の方が全然いい。
私のお気に入り1970年代ロック・ミュージカルですが無難なセレクトでこうなります。
『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)
『トミー』(1975年)
『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)
の3本です。どれも傑作という評価が定着しています。
これに『エビータ』(1996年)と『ムーラン・ルージュ!』(2001年)を足せば私のお気に入りロック・ミュージカルがそろいます。映画『エビータ』の主演をしているマドンナは嫌いで舞台版エビータは見たくもないけど映画『エビータ』は好きだったりします。全編セリフ無しで歌で通して、音楽にシンクロしたカット割りがいいのです。
日本の作品ではミュージカルではないのですが音楽とシンクロしたアクションシーンがほとんどミュージカルとなっている『カムイの剣』(1985年)が私のお気に入りです。
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