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2005.11.11

『グラマ島の誘惑』(1959年)

この作品は川島雄三監督の風変わりなドラマです。皇族を扱うこんな設定をよく映画に出来たものです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1959年 東京映画 東宝 日本作品
プロット 南洋のグラマ島で色々ある話しのようです。
スカイパーフェクTV310衛星劇場にて。画質はまあよいです。
音楽 黛敏郎

キャスト
森繁久彌→皇族の香椎宮為久
フランキー堺→弟の香椎宮為永
桂小金治→軍人の兵藤惣五郎
浪花千栄子→吉原の女将、佐々木しげ
轟夕起子→まだ現役な吉原の北川たつ
桜京美→吉原の太田みよ、18歳
左京路子→吉原の矢田もよの
春川ますみ→吉原の内田まさ
宮城まり子→吉原の名護あい/名護かな(あいの妹)
淡路恵子→軍属で詩人の香坂よし子
岸田今日子→軍属で画家の坪井すみ子
八千草薫→戦争未亡人の上山とみ子
三橋達也→原住民のウルメル
加藤武→米軍通訳の赤井八郎左衛門
左卜全→運転手の光村

川島雄三監督の演出はよいと思います。
シーンによって画調を変えていたりします。日本映画でもやっていたのかと感心します。現像が失敗したのをそのまま使ったのではないでしょうね。
アクション?シーンになるとコマ落としになっています。これは何だ?
軍艦が撃沈された時に呆然とする描写で、皆が凝固するとこを俳優さん達がそのまま止まっている状態でやっていました。これはギャグなのか。
軍人は何か欲しくなるとすぐに何でも徴発(略奪の言い換え)だと簡単に言ってます。ブラックなギャグです。

1959年当時の現代の都会の本屋にベストセラー『グラマ島の悲劇』が売られているとこから始まります。
そして回想に至ります。グラマ島に皇族2人と軍人1人が置き去りにされます。軍艦は黙って出ていってしまいます。
他に残されたのは女性ばかり9人。

南の島の風景は同じ東宝特撮物でおなじみでした。同じとこでロケしていたのでしょう。
ナレーションは岸田今日子が担当しています。本の著書なのでそうなっているようです。
時々グラマ島内の勢力を表す人物配置図が表示される説明が入ります。

出ていった日本の軍艦はアメリカ空軍に撃沈されてしまいます。
このシーンは結構本格的に特撮を使っていました。本編にからませてのミニチュアのアメリカ軍機の見せ方等、上手い見せ方をしていました。
川島雄三監督で特撮物を撮っても面白かったのでは。あの異色特撮ドラマ『マタンゴ』(63年)でも撮ったらどうなったか興味深いとこです。収拾がつかずに放り投げてしまったかも。

吉原の名護あいが妊娠して一騒動となります。父親は誰だとなります。これが原因でいい仲になっていた桂小金治と轟夕起子が誤解して痴話げんかをしたりします。実は父親は皇族だったりします。
皇族に尽くしていた女性達が反乱をおこして男3人を追い出してしまいま。その男3人は墜落してたアメリカ軍爆撃機B-29を発見して物資や唯一の武器リボルバーを徴発します。リボルバーは力は正義なりということのようです。

その後リボルバーは原住民の手に渡り、原住民は戦争未亡人と駆け落ちしてしまいます。このへんまで来ると、どんな話しなんだとついていけなくなります。
リボルバーがなくなり軍人の桂小金治が心臓マヒで死亡してからは原始共産制のような民主主義社会となって生活をするようになります。
アメリカ空軍の備品のトイレットペーパーに字を書いていたりします。ディテール描写にやたらと凝っていました。

戦争が終わって6年たっていることをアメリカ軍機からまかれる宣伝ビラから知ったとこで、サイパンからアメリカ軍がやって来て帰国することになります。森繁久彌が演じる皇族は一足先にカヌーで島を出ています。
帰国してから5年のシーンとなります。となると1956年位となります。

グラマ島で水爆実験が行われることになって、それを世間に訴えて何とかするというとこで何となく終わりとなります。
水爆実験があるからそれでビキニ島ならぬグラマ島ということがやっとわかりました。ところでこれは洒落なの?

森繁久彌が演じる皇族の香椎宮為久のキャラクター。食事と寝ることしか興味がないようです。タバコにも興味があるようです。
食事しない、結構です。と皇族と画家の会話。
森繁久彌の皇族ですがこんなものかなといった感じ。私の偏見では女性に対するとこが妙に生々しいと思えます。ミスキャストなのではとなります。

フランキー堺が演じる弟の皇族香椎宮為永は趣味が写真や工作なオタクタイプです。皇族なのに珍しく常識人で島での生活の後半は委員長を務めていました。
岸田今日子演じる画家の坪井すみ子は進歩派の人。色々と演説をぶちます。天皇に対する意見とか。民主主義についてとか。
戦争未亡人の上山とみ子を演じる八千草薫は父親探しのとこで原住民を調べるのにこの言葉を通訳してと言われてそんなことは言えませんとのカマトトぶりがよかったりします。
カヌーを作るのが嫌いな原住民は三橋達也が演じています。ホントの原住民ではなく実は?となっています。この三橋達也が原住民?のキャスティングも凝りすぎです。
加藤武が珍妙な日本語をあやつる米軍の日系アメリカ人通訳を演じていたようです。キャストを調べるまで加藤武とは全然気がつきませんでした。他の作品でも見られるこの手の外人もどきキャラクターは川島監督の好みなのかな。

民主主義のプロパガンダ映画?皇族と民主主義を対比している?意欲作でしたがディテール描写に凝るあまり全体的な印象になるととりとめがないような感じの出来となってしまったようです。作ってるうちに収拾がつかなくなって唐突にキノコ雲が出て終わりとなるようです。

意欲は買うけど出来はそれほどよくない川島監督にしてはまあまあな作品でした。

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