『見知らぬ乗客』(1951年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督の交換殺人とストーカーが絡むサスペンスです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1951年 ワーナー アメリカ作品
原題◆Strangers on a Train
DVD『見知らぬ乗客 スペシャル・エディション』DISC1 101min.にて。画質は非常によいです。
プロット 交換殺人に巻き込まれる話しのようです。◆何故かとんでもない男に気に入られる話しのようです。
音楽 ディミトリ・ティオムキン
キャスト
ファーリー・グレンジャー→女房に悩まされ男に悩まされるテニス選手ガイ
ロバート・ウォーカー→ザ・ストーカー サイコな道楽放蕩息子ブルーノ
ルース・ロマン→上院議員令嬢アン・モートン
ケーシー・ロジャースasローラ・エリオット→問題のガイの女房ミリアム
レオ・G・キャロル→モートン上院議員
パトリシア・ヒッチコック→アン・モートンの妹バーバラ
ロバート・ジスト→好意的なヘネシー刑事
ジョン・ドーセット→疑り深いハモンド刑事
ジョン・ブラウン→証人のコリンズ教授
マリオン・ローン→ブルーノの母
ジョナサン・ホール→ブルーノの父
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
凄いプロットでそれに強烈なキャラクターです。出始めから話しは病的に進みます。交換殺人のことはSwapmurderと言ってました。
アルフレッド・ヒッチコック監督は当時にしてみれば品性下劣だったのでしょう。それくらいキャラクター達が強烈です。
バカバカしい偶然がヒッチコック監督のマイナスポイント?です。つじつまを考えていたらヒッチコック監督作品は見られないようです。
ディレクション、方向性がピタリと合っています。さすが巨匠は違います。パンフォーカスにスクリーンプロセスと相変わらず凝っています。
斜めの構図の使い方も上手い。
テニスのゲームのシークエンスはライヴフィルムも入っていて編集の腕の見せ所?やはり吹き替えなんでしょう。
で、ブルーノのライター取り上げの図とのカットバック。これが時間の圧縮、引き延ばしのテクニックで、合成の夕日(ブルーノ)とスクプロの夕日(ガイ)のカットバック。等々、カットバックが効果的に使われています。
尾行の刑事コンビもいい。好意的な刑事とやたらと疑り深くて逮捕したがる刑事でいいコンビになっています。尾行に気が付かれそうになったら刑事の男同士で抱きあってごまかせばいいのでは。面白いギャグになりそう。
プロローグ。
タイトルにはAlfred Hitchcock'sと入っています。
駅です。タクシーが着きます。それぞれ別に2人の客が降りる。
足だけのクローズアップ・ショット。靴や荷物で2人のキャラクターを描写しています。もちろん説明セリフはありません。
列車です。
主観ショットでのレールが映されるショット。
ラウンジにて。
靴が触れたとこで顔が初めて映されています。
ファンのふりをするロバート・ウォーカー扮するブルーノが登場。
迷惑な感じのファーリー・グレンジャー扮するテニス選手ガイも登場。
ブルーノが話しかけてきます。とりとめのない会話です。
カギとなるA to Gのライターも登場。
ガイの現在の恋人アンのことを知っているブルーノ。
ガイが離婚したがっていることも知っています。
N.Y.まで一緒とブルーノ。途中のメトカフで降りるとガイ。
ブルーノの個室の移ります。
ブルーノはサソリの絵が入ったネクタイをしています。
また雑談の続きとなります。
ブルーノの父の話しが出ます。父が憎いと言ってます。
ガイの夫人ミリアムのこと。
完全殺人のこと。
だんだんと話しは佳境に入ります。
いよいよ交換殺人の話が出ます。
ガイが冗談だと思っています。適当に話しを合わせて席を離れます。
A to Gのライターを忘れています。
メトカフ駅です。
列車から降りるガイ。列車に乗るヒッチコック監督が登場。
レコード店に入るガイ。
ローラ・エリオット扮する夫人のミリアムに会います。
メガネをかけています。
離婚の話しを切り出すガイです。
試聴室に入るガイとミリアム。
1年前にはテニスが有名になるとは思ってなかったとミリアム。
アンのいるワシントンに行くと言ってます。
そうなったら大変だとガイ。話しは佳境に入ります。
で、話しがこじれてつかみ合いとなるガイとミリアム。止められて夫婦げんかはよそでやってくれと言われてます。
ガイに「ワシントンで子供を産んでやる」と捨てゼリフのミリアムです。当時にしてはなかなか強烈なキャラとなっています。→ガイとミリアムは1年は会っていないので当然ガイの子供ではありません。
メトカフ駅前にて。
アンに電話するガイ。
離婚の話しは上手くいかなかったと話すガイです。そのうち興奮してきてミリアムの首を折ってやるとか絞め殺してやると言ってます。
ここからブルーノの手のクローズアップへつなぎます。
ブルーノの自宅にて。
母は雑談のブルーノ。話はかなりぶっ飛びの内容となっています。
で、母の描いた絵を見るブルーノ。大笑いの図。これは父だと言ってます。
抽象画なので誰と特定出来ない筈なんですが。
ブルーノの父が帰宅します。
電話を受けるブルーノ。ここは手前が電話のブルーノで奥が口論の両親と遠近合成となっています。ブライアン・デ・パルマ監督得意の手法の元ネタとなっています。
ブルーノはメトカフへと。
バス停でミリアムの自宅を見張っています。男2人と出かけるミリアムを尾行するブルーノ。
遊園地に入るミリアム+男2人。尾行するブルーノ。
アイスクリームのミリアム。
子供の風船をタバコで割るブルーノ。なかなか強烈な描写です。
ハンマー叩きのブルーノ。力持ちです。
この辺でブルーノはミリアムにモーションをかけています。
メリー・ゴー・ラウンドへと。まだ普通に回っています。
ボートへと。愛のトンネルとは何だ?。
ボートは小さな島に着きます。
ミリアムがやって来たとこでライターを点けるブルーノ。
で、ミリアムの首を絞めるブルーノ。落ちたメガネに映る殺人。この手法をはよくあるのですがオリジナルがこの作品ならたいしたものです。
仕事を終えてブルーノはずらかります。
ポップコーン売りのオヤジがブルーノを目撃しています。
遊園地を出たとこで盲目の老人をヘルプするブルーノ。
これはどういう描写なんでしょう。興味深いとこです。
列車のガイ。殺人の同時刻です。
ガイはFortuneを読んでました。何の雑誌だ?
デラウェア大のコリンズ教授がいます。酔っぱらって歌が入ります。
アパートに帰宅のガイ。
物陰のブルーノに呼ばれます。ここはガイを斜めの構図で撮っています。
ミリアムのかけていた割れたメガネを見せられます。
警察に行けば2人とも捕まるとブルーノ。これはホントにそうなるようです。
父の件を持ち出すブルーノ。次は君だというわけです。
アパート内では電話が鳴っています。アンから?ここはガイはブルーノを振り切って帰宅はとなります。
呼ばれてアンの自宅を訪ねるガイ。
まずはガイとアンのラブシーンです。これがないとハリウッド映画は始まらない。
議員の父がいます。妹もいます。
ミリアムが殺されたことを聞かされるガイ。一応驚くガイです。
絞殺のことでアンのショット。電話でのガイの言ったことで気になっている。
犯行当時09:30のアリバイが必要となります。
警察です。出頭するガイ。
ターリー警部に会うガイ。キャンベル警部補もいます。
アリバイの証人となるはずのコリンズ教授も来ていますがガイのことを全く忘れています。酔っ払いはあてになりません。状況は悪くなります。
アンの自宅です。ガイの報告となります。
アリバイの証明は上手くいかなかった。
尾行がついた。ヘネシー刑事です。
ここで電話が入ります。ブルーノです。間違い電話だとガイ。溶暗となります。
議事堂辺りにて。
尾行のヘネシー刑事と一緒に歩いてるガイ。
何故かヘネシー刑事はガイに好意的で政界進出を目論んでいることはオフレコにするよと物分かりがいいヘネシー刑事です。
クルマから外を見るガイ、遠くにポツンとブルーノがいます。これはいいショットです。
アンとデートのガイ。
物陰からブルーノがガイを呼びます。
アンは2人を見ています。ブルーノのネクタイピンが目立つ。
ここのシーンは何故かスクリーン・プロセスとなっています。
ブルーノからガイに手紙が届きます。
ブルーノ家内部の見取り図です。鍵も一緒です。
テニスの練習のガイ。
見物する人達の中で1人だけボールを追わず顔を動かさない男がいます。ブルーノです。これは素晴らしいショットです。ブラックな感じでよいです。
練習を終えたガイが戻るとブルーノはアンの知人は雑談となっています。
バーバラを見るブルーノ。メガネにライターが合成されます。メガネの中に浮かぶライターの幻影、普通の巨匠はまずやらない手法です。
ハンドガンが届きます。
ルガーP-08です。何でこのハンドガンなのかがよくわからん。たまたま小道具にあったやつなのか?そんなことはないと思えますが。
もう1人の尾行のハモンド刑事が登場。
こっちはヘネシー刑事と違って最初から疑ってかかっています。
パーティです。
アンの父に話しかけるブルーノ。訳のわからん話しを力説しています。
ここで一騒ぎを起こすブルーノ。
余興でカニンガム夫人の首を絞めますが締め過ぎとなります。
ここは意外と悪趣味なシーンでした。さすが英国人の監督です。
気を失ってしまったブルーノは書斎に運び込まれます。
思わずブルーノを殴ってしまったガイですが、タイを直してやったりもします。
この作品はゲイが入ってる云々と批評もありますが、そのように思えばそんな風には見えます。ガイがブルーノのタイを直すシーンなんてゲイのノリで見れば素晴らしいショットです。
ガイに詳しい話しを聞くアン。
ガイがブルーノにミリアム殺しを頼んだと思ってるアン。
ここで交換殺人のことを話すガイです。
そんなわけで事情はわかったが、どうしていいのかわからん2人です。
こまった状態となります。
ガイの自室にて。
ブルーノに電話をかけるガイ。今夜、ブルーノの父親殺しを決行するとなります。
刑事をまくために裏口から出るガイ。
ブルーノの自宅へとガイ。
ここはまた斜めの構図はなっています。
ブルーノ家の内部に入ります。
階段には犬がいます。ここは何となく切り抜けます。犬に気を取られているとこで次のサプライズが生かされているそうです。
で、父のベッドにはブルーノがいました。強烈なサプライズとなっています。
それでもブルーノを説得にかかるガイ。
「君は病気だ」と言っています。事実ですが説得は無理のようです。
刑事2人。ガイが抜け出したことに気がつきます。
ブルーノの自宅にて。
アンがブルーノの母は話しをしています。全く話しになりません。
ブルーノが出てきて、勝手なことを言っています。でもライターを使うと言ってるを聞いただけでも成果はあったようです。
テニスの試合です。
試合前にアンと相談のガイ。
ブルーノがライターを使うことを話すアン。
試合が終わったら駆けつけるとガイ。試合の方は3セットで終わらすと言ってます。
ガイ対フレッド・レイノルズ戦が始まります。
グラスコートです。当時はグラスとクレーしかない?
どうやらガイのテニスはストロークプレーヤーらしい。
ブルーノは自宅を出ます。
証拠となるライターを置きにいくようです。
この辺からはカットバック大会となっています。
列車のブルーノ。
火を貸す時にわざわざライターではなくマッチを使っていたりします。
タクシーを待たせるバーバラ。
ところが3セットで終われないガイです。
負ければ早く行けていいじゃんと思わせないのが演出のいいとこです。それとも負けてランクが落ちるのがこまるのかも。
ブルーノはメトカフに着きます。
ここで排水溝にライターを落としてしまうブルーノ。
テニスのゲームとライターの取り出しのカットバックです。
ライターを掴むクローズアップショットをしつこく撮っています。
無事にライターは戻りテニスのゲームも終わります。
ガイはタクシーへと。
刑事2人も後を追います。通り掛かりの年配のご婦人のクルマを止めて乗り込む刑事です。尾行シーンのルーティンな描写です。いいもんです。
駅で列車の切符を買うガイ。
ヘネシー刑事はガイを泳がせる作戦です。相棒のハモンド刑事はすぐに逮捕したがってます。
遊園地です。
ブルーノが入ります。日が沈むまで時間潰しの図です。
列車のガイ。
太陽が徐々に沈んで行きます。
メトカフに着くガイ。
タクシーで遊園地に向かいます。
警察はもう張り込んでいます。
遊園地にて刑事が集まる図。私は平日の夕方の公園に普通のサラリーマン風の男女が10数人集まっているのを実際に見たことがあります。あれは絶対に刑事の方々だったと思われます。全然普通ではなく違和感があり過ぎで張り込みにはなっていませんでした。
遊園地にて。
証拠のライターを置きに行くためにボートに乗る行列に並ぶブルーノ。
ライトがあたり顔が照らされるブルーノ。これはいいショットです。
ここでポップコーン売りのオヤジがブルーノに気がつきます。
ガイがブルーノを見つけます。
そんなとこでいきなり発砲する警察です。これでメリー・ゴー・ラウンドが暴走することになります。
ヒッチコック監督がワーナーで撮った最初の2作ともにクライマックスで唐突に発砲となっています。これはワーナーからの要望なのか?
それが嫌なのか3作目『ダイヤルMを廻せ!』(54年)は舞台劇をそのまま映画化となっています。
この暴走を止めるために高速で回転するメリー・ゴー・ラウンドの下に潜り込むじいさん。ここはスクリーン・プロセスも合成でもなくマジにやっています。
主役ではないからスクリーン・プロセスを使っていないのか?凄い差別です。
スクリーン・プロセス全開でこの作品のハイライトのアクションシーンとなります
メリー・ゴー・ラウンドは急に止まれないようで、急ブレーキをかけられたメリー・ゴー・ラウンドは倒壊します。
中々ダイナミックなスクリーンプロセスとなっています。
瀕死のブルーノと話すガイ。
最後までブルーノらしいセリフとなっています。
ラストのロバート・ウォーカーのセリフ「どうしていいのか分からない」
ラストに至り瀕死の状態でもまだとぼけてるのか本心でそう思ってるのかは分かりませんが、このセリフを吐く「君を助けてやりたいが、どうしていいのか分からない」と。このセリフはよい、そして凄い。誰が書いたんだ。途中で降板したレイモンド・チャンドラーが書きそうなセリフと思えるんですが。
死んだブルーノの手に証拠となるライターがあります。
エピローグ。
電話を待っているアン。
ガイから電話です。よい知らせでした。
エンドとなります。
『見知らぬ乗客 スペシャル・エディション』◆DISC1 101min.ではこれでエンドですが、今迄見たバージョンではこの後に列車での小ネタのエピソードがついてました。わけわからん。今迄見ていたのは何なんだととなります。
この作品のヒロインはファーリー・グレンジャーのようでルース・ロマンではないようです。
ガイはタバコを吸わないのにライターは持っている。何だか怪しいと思われそう。
本『映画術』にはインタビュアーのフランソワ・トリフォーの意見ではファーリー・グレンジャー演じるキャラは野心家の男となってましたがそう思って見るとそのように見えます。それならホントに野心家を演じているらしいルキノ・ヴィスコンティ監督の『夏の嵐』(54年)でも見ようかとなります。
ファーリー・グレンジャーはいい男です。別れない女房に頭にきて「絞め殺してやる」のセリフはよい。ところでなんであんな女に引っ掛かったんだろう。
テニスのゲームのシークエンスはライヴフィルムも入っていて編集の腕の見せ所?やはり吹き替えなんだと思う。
テニスのゲームで負ければ早く行けるのにと思わせないのは演出がいいからでしょう。そんなキャラクターに見ている人は思い入れが出来ないか。
ロバート・ウォーカーはこれ一本の一世一代の演技です。凄いです。偏執狂のノリで大したものです。
当時としては画期的なサイコなノリがたいしたものです。母子とも普通ではないのも凄い。
ウォーカーは誰かに似てる。ロバート・ミッチャム?、ジャック・レモン?、ビル・マーレー?。ビル・マーレーをいい男にした感じ。凶暴なジャック・レモンといった感じもします。
テニスなんか見ていませんのシーンは見るたびに感心します。
パーティにて首締めのシーンもなかなかクドイ感じでした。当時にしては強烈で品性下劣と批評されてたと思われます。
自宅では趣味の悪いガウンを着用していました。
ゲイ云々はそのように思えばそんな風にに見えます。そういえばガイがブルーノのネクタイを直すシーンなんてゲイのノリで見れば素晴らしいショットです。
この頃からマニアックと言っていたようです。後はルナティック、クレイジー、シック等となっています。これはガイがブルーノに言ってるセリフです。
一応ヒロインのルース・ロマンは何となく美空ひばりに似ている。そう見えてはこまるので出来るだけ気にしないように見ていました。
そんなわけでこれはお勧めのいい作品です。ヒッチコック監督作品にしてはヒロインが必要ないのが珍しい。
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