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2005.11.01

『山羊座のもとに』(1949年)

この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督でイングリッド・バーグマン主演のコスチューム・プレイ物メロドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1949年 トランスアトランティック・ピクチャーズ・プロ/ワーナー 英国作品
ランニング・タイム◆117分
原題◆Under Capricorn
プロット◆過去につらいことがあった婦人がリハビリに励む話しのようです。
音楽◆リチャード・アディンセル あまりよろしくないような。
◆スカイパーフェクTV283 SheTVにて。画質は悪いです。テクニカラーですが色は一応付いてるだけといった感じです。
◆株式会社トーン発売のDVDにて。画質はそれなりに悪い。テクニカラーの発色もそれなり。スクイーズ収録のフル表示。画面サイズはスタンダード。
テクニカラーの赤はよく発色しています。
それでも安売りのパブリックドメインのDVDでこの程度の画質なら合格です。

キャスト
イングリッド・バーグマン→フラスキー夫人のヘンリエッタ
マイケル・ワイルディング→総督の従兄弟アデア
ジョゼフ・コットン→成り上がりのフラスキー
マーガレット・レイトン→メイドのミリー
セシル・パーカー→リチャード総督
デニス・オディア→コリガン司法長官
ジャック・ワトリング→フラスキーの秘書ウィンター
ビル・シャイン→総督の秘書バンクス

アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はまあよいと思います。
この頃はカメラの長回しに凝っていたヒッチコック監督です。
クレーンも多用してしてます。
会話シーンを切り返す手法は全く使っていなくて長回し状態となっています。

主人公の親戚の総督はいいキャラしています。
主人公の心配をしてるけど口は悪い。演じる俳優さんもいかにも英国の舞台俳優といった感じで悪口を言っても嫌味になっていないのがいい。

イングリッド・バーグマンだけはでく、他のシーンでもカメラ移動の長回しをやっています。マイケル・ワイルディングとジョセフ・コットンは長回しでも文句を言わずに演技していたと思われます。


タイトルはオーストラリアの地図。どこが舞台なのかはわかりやすい。
ジャック・カーディフの名前はちゃんと出ています。
タイトルには監督本人が待望と思われる正真正銘の自分のプロダクションでのAlfred Hitchcock'sとなっています。

撮影がジャック・カーディフです。ヒッチコック監督とジャック・カーディフの組み合わせも興味深い。個性的な2人は上手くいったのかと思えてしまいます。
本『映画術』では全く触れてなかったのでもしかして上手くはいってなかったのかも。

19世紀のオーストラリアのシドニーが舞台です。コスチューム・プレイ物です。

プロローグ。
1831年。新総督就任のセレモニーがあります。
マイケル・ワイルディング扮する総督の従兄弟アデアが見学しています。
アイルランド出身とのことです。
この主人公はアイルランドにはいられなくなってオーストラリアに流れてきたのか?

最初の導入部だけを見てても演出は悪くはない。普通に見れます。
会話シーンを見ているだけでも大丈夫です。演出というのはよくわかりません。

銀行にて。
ジョセフ・コットン扮する前科者で成り上がりのフラスキーとコンタクトします。
王領の土地を買う話しが出ます。
フラスキーは秘書候補のウィンターと話しをします。雇うことになります。
フラスキーの屋敷に招待されるアデア。

総督邸にて。
総督と従兄弟アデアの会話。フラスキーには近づくなと言われます。
総督との会話で評判の悪いフラスキーの食事には行ってはならん、と言われて、その次のシーンではフラスキー邸を訪ねてる主人公となっています。このようなルーティンな演出がいいんです。

ここでも長回しに凝っています。人物が移動するとそれに付いていくカメラの動きが凝り過ぎ。本『映画術』でも触れていた例のカメラが通るためにドアのセットがバラバラになって飛んでいく手法らしい。
当時はステディカムがまだ存在しないので巨大なカメラが通るためにセットがバラバラになってすっ飛んでいくのです。正直言って映画本編より面白そうです。

フラスキー邸に行くアデア。
怪しい屋敷です。ミニチュアにマット画の屋敷です。
屋敷に入るとこでアデアの主観ショットに見ている本人を切り返す主観ショットカットバック手法があります。この手法がヒッチコック監督得意の手法です。
マーガレット・レイトン扮するメイドのミリーも登場。
肝心のフラスキー夫人は出てこない。

他の招待客が次々と訪れますが何故か夫人は全員欠席しています。
医者のマカリスター、コリガン司法長官と話しをするアデア。

食事の前の祈りから連想で。
皆さん、牧師の役割をやりたがるわけです。食事だけではなく、生きていられることに感謝しろ、とやっているんです。この日本では。バックは宗教ではなくて、天皇とアメリカの2本立て。どっちかにしろよと言いたくなります。

食事となったとこでイングリッド・バーグマン扮するフラスキー夫人のヘンリエッタが怪しく登場。まともな状態ではないことがわかります。

裸足で部屋着のまま登場のイングリッド・バーグマンです。
何だからケイト・ウィンスレットのような感じ。顔は抜きで体格だけです。
体格はいいイングリッド・バーグマンです。

妄想癖があり取り乱すヘンリエッタですが、そんなヘンリエッタに優しく対応するアデアです。
アデアとヘンリエッタは幼なじみらしい。ヘンリエッタの話しを聞くアデア。
ですが、ふっくらしてて丈夫そうであまり病人には見えないイングリッド・バーグマンです。役作りはどうしたと突っ込みたくなります。好意的に解釈すれば精神的なことなので肉体的には健康なのかとなります。それはないような。

総督邸にて。
総督と土地購入で口論となるアデア。

フラスキー邸にて。
フラスキーの勧めの土地の購入で総督ともめてフラスキー邸に居候する主人公。
ヘンリエッタと話しをするアデア。
リハビリでドレスを新調したりするヘンリエッタ。
上流階級の夫人の仕事である邸内の家事を取り仕切る段取り等を「歌にして覚えるんだ」のセリフがあります。これは何でも覚えるための必須の手法らしい。
この方法ですが、日本ではTVのCMソングしかなかったりします。商品名を刷り込み脳みそがとろけるCMソングが正直言って脅威です。

ヘンリエッタのことを話し合うアデアとフラスキー。
成り行きでヘンリエッタとキスをするアデア。仕事を越えて熱心になっています。

ヘンリエッタのことでフラスキーに談判するメイドのミリー。
途中からアデアも加わって口論となります。
そんなことからメイドのミリーはフラスキー邸を去ります。

邸内の手ごわい女中達を使うヘンリエッタです。これが大変だったりします。
上流階級の夫人も大変で女中達をコントロールしたり、邸内の鍵束を管理するのも夫人の役目のようです。

総督邸のパーティに出席するヘンリエッタとアデア。
フラスキーは出ません。

シドニーに買物に行くとか言ってるけど。ここはシドニーではないのか?
少し離れた町らしい。

フラスキー邸に戻ってきたメイドのミリー。
戻ってきたメイドのミリーが余計なことをフラスキーに吹き込んで、舞踏会に出かけたヘンリエッタを連れ戻してしまうわけです。こまったものです。
ここは英国舞台調、長々と余計なことを吹き込んでいるメイドのミリー。
典型的なメロドラマな進行になっています。

総督邸のパーティです。
あの夫人は誰?フラスキー夫人だと噂の広がる図。
舞踏会のシーンではイングリッド・バーグマンを思い切りきれいに撮っています。
総督はヘンリエッタは知り合いのようです。
これで上手くいくはずだったのがメイドのミリーのせいで台無しとなります。
ヘンリエッタを連れ戻しに来るフラスキー。これでバーティは台無しとなります。
やっばりメロドラマな進行になっています。

フラスキー邸にて。
舞踏会から逃げ帰ってきたとこでイングリッド・バーグマンの長回しの告白シーンとなるようです。
ヘンリエッタとアデアの会話。
昔の話をするヘンリエッタ。実の兄を撃ったのはフラスキーではなく自分だったと言います。
この作品の見どころの筈の長回しがあります。ヒッチコック監督とバーグマンが揉めたのはこのへんなのかも。本『映画術』ではヒッチコック監督が撮影現場を去ってもバーグマンは気がつかず30分は怒鳴り続けていたとなっています。これはヒッチコック監督からの見方で、イングリッド・バーグマンの自伝で違った見方となっています。
自伝というのは面白いなと思います。自分の都合のよいことしか書いてないのです。

フラスキーが帰宅してアデアを追い出しますが、アデアが馬の脚を折ってしまい、馬は射殺されます。それから成り行きでアデアも撃たれます。
大騒ぎとなります。

総督邸にて。
アデアは療養中。それでも証言を取る取らないと揉めています。
ヘンリエッタが見舞いに来ますがアデアとは会えず。
総督に実の兄を撃ったのは私だと証言するヘンリエッタ。これで事件は振り出しに戻ることになります。
見てて、そんな話しだったのか初めて気付いたりします。全体的によくわからん話しなのです。

フラスキー邸にて。
動揺するヘンリエッタ。フラスキーと口論になります。
また余計なことをフラスキーに吹き込むメイドのミリー。
嵐の夜です。ベッドの上に何かがいるとヘンリエッタ。気のせいだとフラスキー。
ですがホントにミイラの頭部があったのです。
ここはオカルト調になっています。

小細工をするメイドのミリー。それを薄目で見ているヘンリエッタ。
ヘンリエッタの訴えでようやく真相を知るフラスキー。メイドのミリーを追い出します。
そんなとこに証言を取りにコリガン司法長官がやって来ます。
翌日、逮捕拘束されるフラスキー。これはアデアを撃ったことなのか?それとも昔の事件のことなのか?よくわからん。

総督邸にて。
総督に談判をするために来たヘンリエッタ。
アデアも出てきて証言はどうするとなります。もう決まっているようです。
で、フラスキーは無事に釈放となります。

エピローグ。
港にて。アイルランドに帰るアデア。残るヘンリエッタとフラスキー。
エンドとなります。

イングリッド・バーグマンは1940年代のモノクロ作品の印象が強く、カラーのイングリッド・バーグマンはあまり見たことがないような気がしていましたが、ジャン・ルノワール監督の『恋多き女』(1956年)と、もうおばさんになっていてゴールディ・ホーンとの共演が見どころの『サボテンの花』(1969年)とか。イングマル・ベルイマン監督の『秋のソナタ』(1978年)も見てる。結構見てるじゃん。

マイケル・ワイルディングは実生活ではエリザベス・テーラーの何人目かの亭主です。エリザベス・テーラーがかなり若い時の亭主の筈です。

アルフレッド・ヒッチコック監督の自分のプロダクションでの最初の作品『ロープ』(1948年)は実験作で済みますが、この2作目はヒットさせなければなりません。で、このキャストにこの話しなら絶対に失敗はない安全な企画だと撮った作品だと思われます。
要するに『レベッカ』(1940年)+『汚名』(1946年)を狙ったようです。
ですが興行は失敗してプロダクションは解散となり作品の評価も悪く、年月を経ても作品の評価はよくはなっていないようです。あまりの失敗作なので擁護するための過大評価はあったようですが。

DVDで再見するとそんなに悪くはない出来だと思えます。
そんなわけで話しも悪くないし、キャストも悪くない、演出はもちろん悪くない、それでは何が悪かった?。それがわからん何ともいえない作品でした。

小ネタでかつては流刑地だったオーストラリアがネタのオーストラリア・ギャグがあります。
オーストラリア入国の際に・・・、
役人「犯罪歴は?」
観光客「えっ、必要なんですか?」
・・・と、いうのが有名らしい。



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