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2005.10.16

『戦争のはらわた』(1977年)

この作品はサム・ペキンパー監督、ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル主演の戦争映画です。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1977年 ラピッド・フィルムズ/EMI・フィルムズ 英国=西ドイツ=ユーゴスラビア作品
原題◆Cross of Iron
バンダイ発売のDVDにて。画質はよいです。
プロット 味方に悪戦苦闘する話のようです。よくある敵は内部にありという話しです。
音楽 アーネスト・ゴールド

キャスト
ジェームズ・コバーン→ロルフ・シュタイナー伍長から軍曹
マクシミリアン・シェル→シュトランスキー大尉
ジェームズ・メイソン→ブラント大佐
デビッド・ワーナー→キーゼル大尉
センタ・バーガー→従軍看護婦エバ
ロジャー・フリッツ→大尉側のトリービヒ少尉
イゴール・ガロ→シュタイナーの上官マイヤー少尉
フレッド・シュタルクラウス→ヒゲのシュヌルバルト兵
クラウス・ロウィッチ→毛糸帽子のクリューガー兵
ディーター・シードア→通信のアンガルム兵
ミハイル・ノブカ→ディーツ新兵
バディム・グロウナ→メガネのケアン兵 屁をこきます。
バークハート・ドリースト→マーク兵
アーサー・ブラウス→途中から加わった退場したツォル兵
Mikael Slavco Stimac→少年ロシア兵、名はない。

インターネットは非常に有効です。マイヤー少尉を演じた俳優さんの名前がわかりました。
ATFの戦争映画観戦記さんのおかげです。ここに感謝の言葉を入力します。
どうしてもわからないことをがわかりました。知りたいと思うことがわかる、情報がこんなにありがたいと思うことはありません。ありがとうございました。

プロットとしては敵は内部にありというやつで別に目新しくはありません。ですから監督の腕の見せ所になるのです。ロバート・アルドリッチ監督の『攻撃』(56年)、スタンリー・キューブリック監督の『突撃』(57年)、増村保造監督の『兵隊やくざ』(65年)、TVシリーズ『ウルトラセブン』(67年)の第30話『栄光は誰のために』等のバリエーションがあります。

それにしてもこの設定の似たような話しを20数分にまとめてドラマ性があり娯楽作にして今見ても面白いのがTVシリーズ『ウルトラセブン』(67年)の第30話『栄光は誰のために』です。このTVシリーズは凄いと思います。

サム・ペキンパー監督の演出はよいと思います。
最初から見事な編集を見せてくれます。この調子で全編通しているのですから凄いものです。この編集がペキンパー監督の1番のいいとこです。
英語版なのものでドイツ軍を舞台なのですが英語の響きのよかったりします。

ペキンパー監督はここではカットを実によく割って見せてくれます。
正確なカット割りには縁のないペキンパー監督ですがカットバックこそが命の人のようです。せっかくのスローモーションもカットバックがなければ効果不充分なんです。

子役が意外と好きなペキンパー監督、ここでも出しています。ホントに変わっています。普通の監督は子役なんて使いたがらないのに。

ペキンパー監督は撮影のロスが多そうなんです。撮影が長引くのは当たり前みたいですし。それでもこの編集を見れば納得したりします。何気ない1ショットをインサートするセンスが抜群なのです。

ペキンパー監督ってなんて描写バランスが取れているのでしょうと思ってしまいます。これもセンスがいいとしかいいようがない。

ペキンパー監督の特徴で主要キャラ2人の対比でキャラ紹介をしてしまいます。上手いものです。ジェームズ・コバーン扮するシュタイナー伍長とマクシミリアン・シェル扮するシュトランスキー大尉の対比する設定となっています。
サム・ペキンパー監督のホトンドの作品はこの主役の男2人を対比する設定になっています。映画作家です。監督2作目の『昼下りの決斗』(62年)から遺作の『バイオレント・サタデー』(83年)まで大部分はそんな感じになっています。


タイトルからして違う音楽がカットバックになっています。タイトルだけでよい作品とわかります。

プロローグ ロシア タマン半島 1943年 退却
ジェームズ・コバーン扮するシュタイナー伍長は最初の戦闘でロシア軍のPPsh41サブマシンガンを調達しています。
このシーンで何故か擲弾筒の発射音が印象に残ります。
ロシア軍の子供兵を連れ帰ることになります。

傲慢にマクシミリアン・シェル扮するシュトランスキー大尉が登場します。
戦闘から戻ったシュタイナー伍長と早速捕虜のロシア子供兵を巡って衝突します。

いきなりシーン転換してシュタイナーがシュトランスキー大尉に報告するシーンとなります。また揉めます。
ミーティング後にマイヤー少尉がシュタイナーに忠告をします。マイヤー少尉はまだ若い優男でシュタイナーのよき理解者といった感じです。

普段の軍隊生活が描写されます。
上の階級と下の階級をカットバックして描写してます。サム・ペキンパー監督らしい演出です。

夜明けに戦闘となります。
始まる直前にロシア子供兵を逃がすシュタイナー。ですが戦闘が始まりロシア子供兵は友軍に射殺されてしまいます。
現場と机組とをカットバックしていました。現場は白兵戦となる戦闘中、机組のシュトランスキー大尉は本部と電話中です。ここはマクシミリアン・シェルの傲慢演技の見せ所となっています。
マイヤー少尉は戦死します。シュタイナーは負傷します。この負傷して病院送りになるとこは変則なショットのカットバックの組み合わせとなっていました。サム・ペキンパー監督らしくていいです。

病院で世話をするのはセンタ・バーガー扮する従軍看護婦エバです。
病院にてお偉方を迎えるとこでもコバーンの主観の人がいないシーンと実際の人がいるシーンのカットバックとなっていました。風変わりな演出となっています。
無能な上官達が描写されています。いつでもどこでもいるキャラです。

センタ・バーガーさんの出番は短くてあっという間に終わってしまいます。シュタイナーは現場に復帰となります。

現場に復帰した早々にシュトランスキー大尉から、シュトランスキー大尉自身に鉄十字勲章授与を申請する書類にサインを強要されるシュタイナー。事実とは違うとサインを拒否するシュタイナー。逆恨みをするシュトランスキー大尉となります。
この件で上官のブラント大佐と話し中に成り行きで口論となって「何を感謝しろ」と言うシュタイナー。

退却命令が来ます。
上官がシュタイナー小隊も退却させるんだとシュトランスキー大尉に念を押したのが逆効果となってシュトランスキー大尉の陰謀でシュタイナーの小隊はロシア軍のまっただ中に置き去りにされます。
そんなわけでシュタイナー小隊は静かな前線かと思ったらロシア軍のまっただ中というわけです。
鬼戦車T-34の群れが押し寄せてきます。

シュタイナー小隊は工場に逃げ込みます。
鬼戦車T-34が追ってきます。ところで小隊は普通何人位なの?
工場から脱出して残りの小隊で敗走となります。

ソ連のプロパガンダ映画の『鬼戦車T-34』(64年)は見たことがありますが、あれは邦題とは違い自由を求めて情けで死んだ『自由と情けの戦車T-34』でした。それも悪くはなかったけど。
で、鬼戦車T-34とはこの作品に出ているT-34のことです。情け容赦なく進攻してくる戦車。無限軌道(商品名キャタピラ)の威力を見せつける塹壕の溝を軽々と越えて進攻する戦車と見せてくれます。この鬼戦車T-34がトンネル内に発砲する衝撃で土煙があがるシーンが印象的でした。これが一連のシークエンスでの決めのシーンになっていました。

シュタイナー小隊は22kmか23kmを移動して味方の陣地に戻らなくてはとなります。
ロシア軍の移動をやり過ごします。
橋を渡ります。音を立てずに相手を処理しています。
渡ったとこでロシア女性兵がいる小屋を占拠します。ここで一騒動あってまた犠牲者が出ます。少年兵が死に至り、中年兵はロシア女性兵にフェラチオさせたら噛みつかれて置き去りとなります。早々に退去します。

キーゼル大尉はブラント大佐の計らいで前線から離れることになります。

捕虜の移送を装ってロシア側前線を突破しようとしますが上手くいかず戦闘となって突破します。
で、いよいよ自軍まで残り200mとなります。暗号無線を送ります。受けたのがシュトランスキー大尉で、また策略を働かせ味方にシュタイナー小隊を撃つように命令します。この期に及んで何を考えてると思わせます。

シュトランスキー大尉の思惑通り展開となり、味方に撃たれたシュタイナー小隊は全滅状態となります。激怒したシュタイナーは戻ったとこで現場を指揮したトリービヒ少尉を射殺します。ここは見どころのシーンです。
PPSh41サブマシンガン連射のシーンは凄いです。撃ち始めるまでの間の取り方というかタイミングがいいのです。連射の量ではないことは確かです。
原題のCross of Ironからの十字のイメージですが、このPPSh41サブマシンガンの銃口から出るマズルフラッシュが十字になっています。これがそうなのかもしれません。

シュタイナーはシュトランスキー大尉を戦闘現場に連れ出します。シュマイザーP-38サブマシンガンの弾倉再装填が出来ないシュトランスキー大尉。
何を笑うのかシュタイナー。ここでエンドで、また音楽のカットバックの後タイトルとなりエンドてとなります。上手いです。

ジェームズ・コバーンが演じるシュタイナーの部下達は西ドイツの俳優が演じているんでしょう。ですからドイツ人俳優のハリウッドスターに対する態度がそのまま戦場での隊長に対する部下たちの尊敬?の態度になっている感じでした。これもこれでいいと思います。

ヘルメットを被らないシュタイナーのの小隊。これはもちろんそのような設定なのでしょう。
ロシア軍のPPsh41サブマシンガンを調達するのは最初の戦闘でした。前線に取り残されてからではなかった。シュタイナーのは終始このPPsh41サブマシンガンを使ってました。

シュタイナーを演じるジェームズ・コバーンの代表作といったらこの作品もあるけど、やっぱり『電撃フリント』シリーズなんでしょうね。これが1番有名な筈です。

マクシミリアン・シェルが演じるシュトランスキー大尉は勲章が欲しいと名誉欲が異常に強い傲慢なプロシア貴族で自軍の武器の扱いも知らないのが凄い。これは演じがいがあるキャラだとマクシミリアン・シェルが実に嬉しそうに演じています。あまり嬉しそうなので同じく勲章が欲しいのアニメのプラック魔王の忠犬?ケンケンのようにも見えたりします。
シュトランスキー大尉は戦闘中なのに無線にかじりついてるだけとか。ラストでは自分に対して脅威となりそうだとわかると、ようやく戻ってきた味方のシュタイナーの小隊を撃つように圧力をかけたりするとんでもないキャラです。
シュトランスキー大尉の1番大事なのがメンツということらしい。無意味なメンツもあるということですか。

老け込んだジェームズ・メイスンの変わりようが見どころの1つだと思います。颯爽としてた『五本の指』(52年)『北北西に進路を取れ』(59年)と同じ人とはとても思えません。
センタ・バーガーの従軍看護婦はいいです。この人は『ダンディー少佐』(65年)にも出ていてサム・ペキンパー監督作品に2回も出てる珍しい女優さんです。出演したのは特にサム・ペキンパー監督のお気に入りというわけではなく偶然だと思われます。


英語はシンプルです。
ボランティアは志願のことです。私はただ働きのことかと思ってました。この作品ではない『銃殺』(65年)で知りました。
リクエストが要請というのも『攻撃』(56年)で知りました。
戦争映画は嫌いなのであまり見ていないつもりですが結構見てたりします。

擲弾筒を間違えて真上に撃ったら弾丸が自分のとこに落ちてきます。間抜けで悲惨で実際ありそう。それとも真上に向かないような設計になっているのかな。


そんなわけでサム・ペキンパー独特のアクション描写が冴える傑作です。
ドイツの戦争映画といったら『戦争のはらわた』(77年)と『U・ボート』(81年)の2本で決まりでしょう。


この『戦争のはらわた』という邦題はイマイチです。
同時期に公開された『悪魔のはらわた』(73年)のもじりでしょう。『悪魔のはらわた』のほうは再公開されたら『アンディ・ウォーホルのフランケンシュタイン』と、割とまともな邦題になっていました。
ですから、こっちの邦題はどうしてくれるんだよと文句の1つも言いたくなります。だったら原題がCross of Ironなのカタカナで『クロス・オブ・アイアン』とか監督名が入る『サム・ペキンパーの鉄十字勲章』というのも困りますが。
それなら私が考えると浮かんだのが『栄光は誰のために』でウルトラセブンそのまんま。でも合ってると思う。話しも同じですし。



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コメント

ロイ・フェイスさん、はじめまして。
キャストの少年ロシア兵(ミハイル?)の俳優はスラヴコ・スティマッチといいます。
彼はエミール・クストリッツァ監督の映画によく出演しており、『アンダーグラウンド』や最近では『ライフ・イズ・ミラクル』の主演をつとめています。機会がありましたら、40代の彼を再確認してみてはいかがですか。

グスタフ飯沼さん、コメントありがとうございます。

あの少年ロシア兵の子役が成長してエミール・クストリッツァ監督の常連とはビックリしました。 見たいものです。消えていく子役も多いけど残る人もいるのですね。

エミール・クストリッツァ監督作品といえば『アリゾナ・ドリーム』を見ています。
エミール・クストリッツァ出演作なら『ギャンブル・プレイ』があります。ロック好きのコンピュータプログラマを演じていました。

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