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2005.08.15

『機動警察パトレイバー』(1989年)

この作品は押井守監督の近未来警察物アクションです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1989年 バンダイ/東北新社/松竹 日本作品
ランニング・タイム◆99分
プロット◆あるプログラマが地上げされたことを逆恨みしてレイバーを使って東京近辺の破壊活動を実行する話しのようです。
音楽◆川井憲次

バンダイ発売のDVDにて。画質はよいです。
DVDの音声で、ドルビーデジタル5.1版について。
これはかなり違っています。タイトル部分だけでわかります。
説明するヘリコプターのパイロットのVCが違っています。
解説書によるとVCはオリジナルの声優で録り直ししているようです。これだけで全然別の作品になってしまいます。同じ声優がやっても同じにはなりません。これが正直な感想です。
それにしてもセリフのみのサウンドトラックが残されていないとは驚いた。実写ではあるまいしアニメなら残してあると思っていました。
5.1ch化でセリフはあっちに行ったりこっちに入ったりと忙しい。
サブコントロールのカラスの大げさな鳴き声は抑え目になっていました。これは順当な変更だと思えます。
絶叫ゼリフはどれも抑え目になっています。これはよい変更です。
これはまた全体的に全然違う作品です。ちょっと変わり過ぎといった感じでかなり面食らいます。面白い実験ですが、商品にはならないようです。
そう考えると5.1chではないけどリニューアルのよい例は『ダーティハリー』(1971年)ではないでしょうか。オリジナルのモノラルを後から音楽とセリフと効果音をステレオ化しているようなのです。あまり不自然ではなかった。

DVDの音声で、オリジナルのドルビーステレオ版について。
音質はLDよりよくなっています。
やはりVCはオリジナルのままがいい。VCはオリジナルで音楽と効果音はドルビーデジタル5.1chに変更がいいわけです。

キャスト→VC
第2小隊 巡査 篠原遊馬→古川登志夫
第2小隊 巡査 泉野明→冨永みーな
第2小隊 隊長 後藤喜1→大林隆介
第1小隊 隊長 南雲しのぶ→榊原良子
N.Y.の香貫花クランシー→井上瑤
第2小隊 巡査 太田功→池永通洋
第2小隊 巡査 進士幹泰→二又一成
第2小隊 巡査 山崎ひろみ→郷里大輔
第2小隊整備班 シバシゲオ→千葉繁
第2小隊整備班 班長 榊清太郎→阪脩
篠原重工専務の実山→辻村真人
小太りな松井刑事→西村知道
若い片岡刑事→辻谷耕史

政治屋の海法部長→小島敏彦
腰ぎんちゃくの福島課長→小川真司
レイバー部隊指揮官→平井隆博
レイバー?のオッちゃん→立木文彦
パトカーの警官→西村智博
お天気おねえさん→林原めぐみ
技師→佐藤政道
技師→子安武人
警視庁幹部→菅原正志
状況説明するパイロット→梁田清之
アナウンサー→中嶋聡彦


押井守監督の演出はよいと思います。
マシンガントークと音楽とシンクロする映像が、この作品の特徴というか押井守監督作品全般の特徴です。
押井監督は動画で表現するのを嫌っているようです。これだと旧態依然のテイクの繰り返しになるからでしょう。止め絵を引き、この手法が多いこと。同じ効果ならこっちのほうがいいに決まっています。動画を使わない替わりに引きでの合成が多いのが押井の特徴のようです。


プロローグ。
高層建築物と屋上から謎の男がカラスの足にIDプレートを付けて空に放し自分は海に身投げします、それに続いてシーンは変わり樹海を謎の暴走をして樹海を行く軍用レイバーHAL-X0を自衛隊が追撃捕獲しようとします。
アクションシーンとクレジットがカットバックして音楽にシンクロしてメインタイトルが出ます。これは絶品です。『カムイの剣』(1985年)と並ぶ私のお気に入りタイトルになっています。

ヘリコプターに乗っている第2小隊の篠原遊馬と泉野明。
ここで状況説明をしてくれるヘリコプターのパイロット。このシリーズの設定がわからん人でも大丈夫?かもしれません。
方舟と呼ばれる東京湾上にある高層建築の巨大施設内では南雲隊長がパトレイバーXOをテスト中です。
レイバーはオートバランスに超電導モーター、それにOSのHOSで作動しているわけです。いい設定です。

第2小隊、通称特車2課に戻ったとこですぐに出動となります。
暴走する土木用レイバーを何とか鎮圧します。音楽とシンクロした映像のよいシーンです。
『モスラ』(1961年)から引用している避難する住民のモブシーンですが少し変えてあります。避難する住民の流れが逆になっていた。そのままでは芸がないのでこのくらいはやってほしいものです。

松井刑事は自殺した男を捜査中です。
東京のあちこちを歩き回ります。鳥が水面をかすめるショットがあります。

篠原巡査は調べた結果を隊長2人と榊班長に報告します。
原因は篠原重工のオペレーションシステムのHOSで、それを開発した帆場という男のこと。で、帆場はもう死んでいるとわかる。自殺した男のことです。

榊班長と篠原巡査は八王子の篠原重工に向かいます。
コンピュータの描写ではちゃんとキーを入力してからEnterキーを押してます。芸コマですな。この手のディテールはホント冴えてる。
ここで篠原巡査はHOSをいじろうとして工場内は大騒ぎとなり急いで逃げます。帰りの車中でこれは大変だ早くなんとかしなければとなります。
篠原重工にて、ソフトの素人ではないようですがそれほど詳しくない実山がHOSの保証をしてもあまり当てにはならないような。

松井刑事は自殺した男、帆場の捜査を続行中です。
帆場は2年間に26回も転居しているとのこと。
無秩序に伸びた高層ビル群。もはや現実の風景です。

TVにて政府公報のCMが入ります。面白いお遊びのショットです。
特車2課にて。篠原巡査は泉野明巡査を無理に誘ってデートに出かけます。
デートが終ってから篠原巡査は篠原重工専務の実山の家に向かいます。実山を説得するが・・・

夜が明けて特車2課に戻った篠原巡査は2週間の謹慎処分となります。
警察の階級章をフィーチャーした面白い口論の描写があります。
アメリカに出張していた整備班のシバシゲオが帰国する。特車2課の使うレイバーのOSは旧版のままだったというオチとなります。

松井刑事は自殺した男、帆場の捜査を続行して、帆場の実家にたどり着きます。廃屋には鳥カゴが転がっています。何の象徴?
設定は1999年なんです。現実で1999年になっても全然このような近未来になっていません。ホントにいつまで経っても現実は近未来にならないような気がします。
帆場の動機が明らかになります。実家のある街を地上げで壊滅状態にされ、その恨みをはらすべく自分の能力を生かしレイバーを使い関東一円を同じ壊滅状態にしようとする破壊活動に走ったようです。それは逆恨みなのではと思えますが・・

特車2課にて。松井刑事の帆場に関する捜査の報告。
松井の報告で帆場の実家付近は地上げで壊滅した街だと出てきます。地上げは自然現象ではないのですがそんな感じの描写になっています。アイロニーが効いています。

後藤隊長と南雲隊長との帆場に関する会話。
帆場にシンパシーを感じているらしい後藤隊長のオチとなります。

整備班のシバシゲオの下宿の久保商店で篠原巡査はシバと2人で謎のOS HOSを調べています。この下宿のシーンは『怪獣大戦争』(1965年)からの引用のようです。オフで入るおばさんの呼び方なんかがそう。
ここのコンピュータだけでは処理出来ないとネットワークで特車2課のコンピュータをアクセスする描写があります。これはいいショットです。
方舟は風速40mでレイバーを暴走させる風音を発生させるように設定しているようです。アタマいいじゃんとなっています。
ちょうど風速40mの台風がやってきて、これは大変だとなります。
この当時はまだ天気予報ではミリバールと言ってます。ヘクトパスカルになったのはつい最近なんだはわかります。

会議があり後藤隊長が押し切ってレイバー暴走対策として方舟を処分することになります。そのように動き始めます。
エレベーターのシーンは引きの絵の動きだけでここはエレベーターですと描写しています。これはアタマいいじゃん。安上がりだし。停止した時のエレベーターの動きが芸コマです。

特車2課にて。方舟にパトレイバー搬送の作業が進行中。
N.Y.の香貫花クランシーが入国のシーンに続く意味不明なクルマ発進のシーンがあります。わけわからん。

パトレイバーを積んだトレーラーと指令車は船に曳かれて方舟に向かい出発します。見送る隊長2人の会話で「俺達には選択の余地はないのさ」というセリフがありました。ここが元ネタなのかな。多分引用でしょう。
後になってHOSにウィルスが仕込まれていることが判明した時にワクチンを作成中としていますが、ワクチンとは現在では言わないようです。現在はウィンドウズアップデートと称しているようです。凄い言い換えです。何だかありがたいことに思えてきます。

方舟が姿を現すシーンはいい。風の効果音がまたいい。引かれたトレーラーから乗り込むとこは省略されています。
方舟に上がり号令のもとに方舟内のコントロールルームに突撃します。方舟内の警備用ロボットが大量に出現してこれらをけちらして進みます。
ショットガンから排出された空薬莢が床に落ちる効果音がちゃんとあります。
指令車の主観ショットがあります。このシーンはスピード感があっていいです。

方舟内のコントロールルームに着いて作業を始めようとしたとこで普段は使われていないサブコントロールルームにID反応があって人がいるのではとなります。
コントロールルームから方舟を徐々に解体していきます。
風速が40m近くとなり方舟内の無人レイバーが低周波で次々と起動し始めます。
方舟内にあったパトレイバーX0を香貫花クランシーが起動して発進して多数の暴走レイバーを迎撃します。X0のOSは問題のHOSなので不安があります。
この新型パトレイバーX0発進での超伝導モーター始動のシーンは私のお気に入りです。

謎のサブコントロールルームに泉野明巡査が到着します。
そこは窓ガラスが1カ所割られていてそこから多数の鳥が侵入し台風から避難しているだけでした。その中の1羽が帆場のIDプレートが付いてるカラスでこのIDプレートが反応していたということです。
大げさなカラスの鳴き声だけは余計でした。このカラスはIDプレートを付けているだけのごく普通のカラスでしょう。これではオカルト?かサイボーグ?の特別なカラスだと思えてしまいます。
コントロールルームに報告をしたとこで方舟を解体するのに使っていた方舟のメインコンピュータが暴走して役に立たなくなります。

新型パトレイバーX0は快調に暴走レイバー群を掃討中。
地獄突きに文字通りのワンハンドバックブリーカーの図はよいです。プロレス技となっています。それで弱点が延髄に当たるのもプロレス絡みになっています。

泉野明巡査はサブコントロールルーム下にあった緊急用の方舟解体用爆破点火栓に着火させます。

新型パトレイバーX0は快調ではなくなり、他のレイバーは同じく低周波からの暴走をします。コントロールルーム内に入るとこでの効果音は大げさ過ぎです。またオカルト?かとなってしまいます。ホラーではないんだって。

方舟は一気に解体していきます。
全ての階層が落ちて大きく傾きます。ここでサブコントロールルームから鳥たちが飛び去るシーンがあります。鳥たちが無事とわかります。万全のアフターケアな描写といった感じです。
方舟は主軸のみとなって浮上していきます。
レイバーはゼロ戦ではないから乗員保護は充分なのでしょう。方舟崩壊時には女性隊員は共にレイバーの中で男達は生身のまま放り出されるというもの面白い。こういう差別はいい。

夜が明けかけたとこで方舟の残骸の中で残ったレイバー2体の決闘となります。
2体が対峙したとこで朝日が登ります。火器が使えず格闘ではかなわずと不利な条件なとこでワイヤーを使い動きを止めて、ショットガンでRAMユニットを撃ち抜いてようやく新型パトレイバーX0は動きが止まります。
ようやく仕事を終了させた泉野明巡査の涙一筋の短いショットがあります。

後タイトルとなります。音楽が心地よい。


それにしても、この作品はよく出来ています。演出は基本的な手法なんですけど。なにしろよく出来ています。よい映画は描写、キャラクターなどなどのバランスが上手く取れているのです。要するに後味がよいのだ。最初から最後までで、完璧にバランスが取れている。これはリアルとは違います。だから映画なのかな。
そんなわけでこれはアクションの傑作です。


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