『名探偵再登場』(1978年)
この作品はニール・サイモン原作、ロバート・ムーア監督の映画『マルタの鷹』+『カサブランカ』のパロディ物です。以前見たTV放映の日本語吹き替え版がお気に入りなのでDVDで買って見ました。残念ながらDVDは日本語字幕版しかないですけど。
原作『マルタの鷹』は読んでます。創元推理文庫板がお勧めです。
映画『マルタの鷹』(41年)と『カサブランカ』(42年)は両方とも複数回見ています。どちらの作品も監督の腕前には疑問があり、おそらく偶然に撮れた佳作だと思っています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1978年 レイ・スターク・プロ/コロンビア・ピクチャーズ アメリカ作品
原題◆Cheap Detective
プロット 殺人事件に巻き込まれるのと女出入りの激しい2本立ての話しのようです。それと『マルタの鷹』(41年)で『カサブランカ』(42年)する話しでもあるようです。
コロンビア・ピクチャーズ発売のDVDにて。画質は非常によいです。
キャスト
ピーター・フォーク→私立探偵ルー・ペキンポー
マーシャ・メイスン→相棒マークルの奥さんジョージア
マデリーン・カーン→名前が多い依頼人
アイリーン・ブレナン→歌姫ベティ・ド・プープ
ストッカード・チャニング→ペキンポーの秘書ベス
ルイーズ・フレッチャー→デュシャール夫人マルレーヌ
アン=マーグレット→デザイアの若い奥さんジゼベル
ドム・デルイーズ→自分が嫌になる男ペペ・ダマスカス
ジェームズ・ココ→レジスタンスのマルセル
スキャットマン・クローザース→ピアノ弾きのティンカー
フェルナンド・ラマス→フランスのポール・デュシャール
ニコール・ウィリアムソン→ナチスのシュリセル大佐
ジョン・ハウスマン→太っちょな男ジャスパー・ブラバー
ポール・ウィリアムス→ブラバーの子分ボーイ
シド・シーザー→金門橋の持ち主エズラ・デザイア
ウォリー・K・バーンズ→死んだペキンポーの相棒マークル
ヴィック・テイバック→ディマジオ警部補、部下が2人付いてる。
ロバート・ムーア監督の演出はよいと思います。と言うよりこの作品は脚本のニール・サイモンの物でしょう。
原作『マルタの鷹』と映画『カサブランカ』でこの作品は出来た?。映画『マルタの鷹』のラストが原作とは違って単純化されていてヒロインが悪いことをしたからダメだとなってしまったことに物足りないと感じたニール・サイモンが映画『カサブランカ』のラストが原作『マルタの鷹』のようなのでこれを合体させたと思います。
けっしてハンフリー・ボガートだけが共通しているだけではないと思います。原作『マルタの鷹』と映画『カサブランカ』は結局別れてしまうのも符号してます。ようするに映画『マルタの鷹』で別れのシーンをもう少していねいに描写して欲しかった。これに尽きると思われます。
ニール・サイモンの作品は2本だけ、この作品と姉妹編の『名探偵登場』(76年)を見てます。他のはあまり見る気がしません。『名探偵登場』の方はあまり好きではありません。推理小説をそんなに読んでいないのとピーター・セラーズのアジア人演技がイマイチだからです。ギャグもそれほどではないし。
前説があります。
タイトルが案外凝っています。でも抜群というほどではない。演出の方はこのタイトルほどは凝っていません。会話シーンの切り返しもなかった。脚本の通りに撮りましたといった感じです。
別の平行世界、1939年のサンフランシスコが舞台となっています。
波止場のニックス・レストラン。ここで情報聞きにくる探偵ルー・ペキンポー。ところでウエイターは誰?
ここを舞台にパスポートならぬレストランの権利書と酒類販売許可証が必要となっています。
別れのシーンは飛行場ではなくてサンフランシスコの対岸のオークランド行きフェリー乗り場になっています。
話は変わりMLBの普段は対戦しないチームが対戦するインターリーグでナショナル・リーグのサンフランシスコ・ジャイアンツよりアメリカン・リーグのオークランド・アスレチックスの方を私は応援します。
色々と引用があります。ボガートのパロディだけではなく、アルフレッド・ヒッチコック監督の『レベッカ』(40年)もありました。マンダレーとかダンバースとか出てきます。
ペペ・ダマスカスは『マルタの鷹』のヨエル・カイロのようなキャラです。香水と笑い方で自分が嫌になる男という設定。まあまななギャグでした。
用があったら電話してのセリフもあった。ハワード・ホークス監督の『脱出』(46年)のバリエーションです。
パリが陥落したとの知らせを聞いてどこのパリだなんてセリフがありましたが、テキサスのパリなのではと思ってしまった。
ギャグの方はまあまあ。面白いのもあります。
セリフで「ラジオを聞いてればいいのに」のセリフは最高です。これだけがやけに印象に残っています。他にもふざけたセリフが多くてよいです。
握手のしすぎで血圧が上がるギャグはお気に入りです。
以前に見たお気に入りのTV放映の日本語吹き替え版ではアン=マーグレットの正体がばれるとこで「安ピカリ物」と口をすべらしてルーマニア人(何でルーマニア人?)だろうと言われてましたが、字幕版では小物のことで「まぶく」と「あぶく」でばれていました。よくわからん。
ピーター・フォークの声は初めて聞いたようです。小池朝雄はあんまり同じではなかったようです。まあいいか。何だか小池の声のほうがホントみたい。
TV放映の日本語吹き替え版で秘書に「君は雨用にとっておく」のセリフがよかった。ですがDVD字幕版にはこの表示がなかった。残念。
女優さんがたくさん出ているオールスターキャストと思ってたら女優陣だけではなく男優陣も豪華です。
ニコール・ウィリアムソンがナチスのシュリセル大佐とは知りませんでした。
ジェームズ・ココとドム・デルイーズは私には見分けがつかない。自分が嫌になる男はどっちだっけ?→資料によるとドム・デルイーズでした。とするとジェームズ・ココが酒場のマスターで撃たれて10年の男となります。
ジェームズ・クロムウェルの名をタイトルで見つけてどこに出ているのかと注目してたらシンシナティ駐在のゲシュタポ、シュリセル大佐の部下の1人で出ていました。セリフはあまりなかった。
ロック・ミュージカル『ファントム・オブ・パラダイス』(74年)の曲を全部書いて作品に命を与えたポール・ウィリアムスがここに出ていたんです。全然気がつかずホント出ています。情けないキャラでした。
『シャイニング』(80年)に出ていた黒人俳優がここでも出ています。スキャットマン・クローザース、アクの強いルックスなので演じるキャラが限定されるような感じです。この時期あちこちの作品に出ていたように記憶していますが、なんかどこでも浮いていたように思えます。クリント・イーストウッド監督主演の『ブロンコ・ビリー』(80年)にも出てました。
ルイーズ・フレッチャーがきれいに撮れてる作品でもあります。もしかしたら1番きれいに撮れてるのでは。
メル・ブルックス監督の『サイレント・ムービー』(76年)で踊っていたのはアイリーン・ブレナンかストッカード・チャニングのどっちだっけと資料を見れば、これがバーナデット・ピータースでした。記憶はホントあてになりません。でもこの女優さん達は似てない?
ところでリース・ウィザースプーンってマデリーン・カーンに似ています。
そんなわけでパロディとしては水準のよい作品でした。
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