『レベッカ』(1940年)
この作品ははアルフレッド・ヒッチコック監督、ローレンス・オリビエ、ジョーン・フォンテーン主演のメロドラマのようです。
アルフレッドヒッチコック監督が英国からの渡米第1作でゴシック・ロマンというジャンルのメロドラマです。サスペンスではないようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1940年 セルズニック・インターナショナル・ピクチャーズ アメリカ作品
ランニング・タイム◆130分
原題◆Rebecca
プロット◆亡妻レベッカとその召使いに悩まされる話しのようです。
音楽◆フランツ・ワックスマン よく鳴っていました。
日本ビクター発売のDVDにて。
画質は非常によいです。
キャスト
ローレンス・オリビエ→マキシム・ド・ウィンター
ジョーン・フォンテーン→2番目のド・ウィンター夫人
ジュディス・アンダーソン→怖い召使いのダンバーズ夫人
レジナルド・デニー→財産管理人のクローリー
グラディス・クーパー→マキシムの姉ベアトリス
ナイジェル・ブルース→その夫
ジョージ・サンダース→小悪党のジャック・ファヴェル
フローレンス・ベイツ→雇い主のE・ヴァン・ホッパー女史
レオナード・キャリー→ボート小屋のベンじいさん
レオ・G・キャロル→主治医のベーカー博士
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
タイトルの最後でちゃんとヒッチコックの名が出ていました。ヒッチコック渡米第1作なので製作デビッド・O・セルズニックの陰謀で表示されないのかと思った。そんなわけないか。
プロローグで有名な門の格子をカメラがすり抜けて行くショットがあります。
マンダレー邸の全景になりますがこのマンダレー邸はミニチュアです。こういうの好きです。
さすがにハリウッドで、マンダレー邸内のセットにはカネがかかっていて安っぽく見えません。ここが英国時代とは大きく違うとこです。
スクリーンプロセスはこの作品でも使っています。
省略がありました。かったるくなるとこは飛ばしてしまいます。よい監督はムダがない。
亡妻レベッカ様は全く姿を表しません。回想でも出ていません。話しのみです。
前の奥様が連れてきた召使いが残っていたのでは後から来た奥様はつらい。少女マンガの世界という評があったような。
レベッカ様のR de Wのイニシャルがあるナプキンを始めとして至るとこにこのイニシャルRの文字がありヒロインを責め立てます。
ローレンス・オリビエのマキシム・ド・ウィンターの演技は絶品です。
最初に登場のワンショットで貴族と分かります。すぐにカッとなってしまうけど品格のある貴族でホトンド完璧で名演です。すぐにカッとなるだけの人はそこらへんにいくらでもいますけど品があるローレンス・オリビエのマキシム・ド・ウィンターは違います。
さぞヒッチコック監督はローレンス・オリビエ本人にコンプレックスを感じていたことでしょう。本『映画術』では全くオリビエのことはふれていませんでした。
ジョーン・フォンテーンは小鹿のようです。今の人が見るとイライラするくらい小鹿ちゃんぶりです。
モンテカルロでN.Y.へ行かなくてはならなくなったとこでマキシム・ド・ウィンターになかなか連絡がつかないサスペンスがありました。ところで雇われていたE・ヴァン・ホッパー女史はコメディリリーフなのか?。
マンダレーに到着すれば電話の内線を受けて自分が奥様なのに「奥様は1年前に亡くなりました」と言ってしまうし。置物を割ってしまい隠したりと危ない状態が続きます。
この置物を割ってしまったのがばれるとこ、仮装舞踏会でしてはいけない仮装をしてしまうとこ。ここを乗りきれば後は気楽に見られます。
このヒロインのハイライトともいえる、してはいけない亡きレベッカ様の仮装をしてしまうことですがさすがにお客が揃っている前ではなく内輪の人だけの時でした。
普通はそこまではやらんでしょう。見るに堪えなくなっています。その後の帽子の落ちるとこはもちろん演出なのでしょう。
ただの小鹿ちゃんだったヒロインはボート小屋でマキシム・ド・ウィンターの告白を聞いてから子鹿ちゃんぶりはどこかにいって立派な奥様に変わってます。少なくともそう見える。旦那に審問の時はカッとしないでと奥様ぶりを発揮したりします。
ここでマキシム・ド・ウィンターから「君は・・変わった、歳をとった」等と言うシーンがあります。これは男から見た自分勝手な意見といえばそうですがアイロニーが効いてる。君は普通がよかったのに、そうではなくなったということらしい。
話しによるとレベッカ様は背が高くて黒髪で性格はキツイけど後は完璧な女性だったらしい・・と、こっちのヒロインの方が私の好みではないかいとなりますが、これとは別に作品としてはやはり姿を表さないのが正解だそうです。
ゴミを調べられて仮装のことを悟られてレベッカ様の仮装にさせられてしまう図があります。ゴミも見られるのも嫌だけど便所まで見られる作品があったような。→市川崑監督、市川雷蔵主演の『ぼんち』(1960年)でこれで嫁がいびり出されてしまいます。
ヒッチコック登場シーンですが小悪党のジャック・ファヴェルがレベッカの主治医の診断結果を電話で聞いているシーンでいるはずなのでずが見えません。本『映画術』の写真でなら見られます。このせいなのか次の作品『海外特派員』(1940年)になると監督自身登場シーンが主役のジョエル・マクリーとからめて珍しく2ショットになっていました。
ラストが火事のシーンになっていますが火事のシーンといえば製作デビッド・O・セルズニック作品『風と共に去りぬ』(1939年)でもあったような。
『風と共に去りぬ』は脚本13人、監督8人で作られたそうです。出来がよかったのはデビッド・O・セルズニックのおかげではなく偶然だと思います。
グラディス・クーパー扮するマキシムの姉ベアトリスはなかなかいいキャラ。さっぱりとして英国人らしくないとこがいい。
ジョージ・サンダースの小悪党のジャック・ファヴェルは脅迫が上手くいかなくなるとクルマのセールスマンに戻ってしまいます。まるでビル・マーレーのようなノリでした。
何回か見てますが今ジョーン・フォンテーンよりローレンス・オリビエの名演ぶりの方が印象に残ります。
そんなわけでサスペンスというよりメロドラマの出来のよい作品でした。
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