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2005.03.06

『深夜の告白』(1944年)

この作品はビリー・ワイルダー監督でフレッド・マクマレー、バーバラ・スタンウィック主演のフィルム・ノワールです。

1944年 パラマウント アメリカ作品
原題◆Double Indemnity
プロット どうせ殺すなら倍額にしようという話しのようです。
株式会社トーン DVD名作映画(クラシック映画)のDVDにて。画質はまあまあ。
ところがパラマウントのタイトルが抜けていました。始まりも終わりも抜けています。タイトルが抜けていると特にエンドが決まらず、しまらないことにおびただしい。こまったものです。まさか海賊版ではないだろうな。
音楽 ミクロス・ローザ

キャスト
フレッド・マクマレー→保険の営業担当のネフ
バーバラ・スタンウィック→後妻のフィリス
エドワード・G・ロビンソン→保険の調査担当のキーズ
トム・パワーズ→倍額の被保険者ディートリクソン
ジーン・ヘザー→ディートリクソンの先妻の娘ローラ
バイロン・バー→ローラの恋人ニーノ
ベティ・ファーリントン→家政婦のネティ
フォーチュニノ・ボナノバ→トラックのゴロピス
リチャード・ゲインズ→保険会社の社長ノートン
ポーター・ホール→列車での目撃者ジャクソン

ビリー・ワイルダー監督の演出はよいと思います。
何故ビリー・ワイルダーがフィルム・ノワールなのか?何かワイルダーとは合っていないような。監督して売りだすジャンルとしてと1940年代のお手軽路線はフィルム・ノワールということか。今ならまずSFホラーアクションで売りだして次は自分の撮りたいジャンルにするパターンなのかも。

ワイルダーは普通のロマンティックコメディは撮っていないようで何かしら風刺というかテーマらしきことを入れているように思えます。そこが私は普通ロマンティックコメディで十分なので余計なことに思えてしまうこともあります。脚本家兼監督ですからそうなるのも無理はないですか。脚本家出身なので抜群の演出力まではいってないせいもあります。

原作がジェームズ・M・ケインで脚本がレイモンド・チャンドラーとビリー・ワイルダーとなっていて、さすが先逹の方々が頭を絞っているだけあって話しが上手いし面白い。それに気の利いたセリフが多い。
列車からの事故死に見せかける完全犯罪のスリルとサスペンス。
保険会社社長がカネを払いたがらないスリルとサスペンス。
現場で鉢合わせになるかものスリルとサスペンス。
当人を前にした目撃者の証言をするアイロニー。
等々、話しを面白くする設定は盛りだくさんです。頭を絞っています。

レイモンド・チャンドラーはこの作品ではビリー・ワイルダーと上手くいってなかったそうですが、確か『見知らぬ乗客』(51年)でもアルフレッド・ヒッチコック監督とも上手くいってなかったはずです。映像重視のヒッチコックはともかく脚本出身のワイルダーもダメで合う人がいるのかチャンドラー?と文句も出ます。上手くいった監督がいたんかい?。
本『映画術』にてヒッチコック監督は名前は出さないけど快適なカリフォルニアの冬の時期だけ契約する作家だか劇作家がいると悪口を言ってます。誰なんだろ?

会話シーンでは切り返しはやったりやらなかったりでした。このへんがワイルダー監督の演出手法がよく分からないとこなんです。何しろ脚本出身の監督ですからそうなったと思います。

フレッド・マクマレー扮するネフからエドワード・G・ロビンソン扮するキーズへの告白で回想形式となっています。

回想から度々ディクタホンのシーンに戻っています。
告白を録音している録音機=ディクタホンはディスク式ではなくて蝋管式のようです。
1938年のことになっています。5月下旬に話しは始まり6月15日となります。


プロローグ。
夜です。クルマが走る。
男がオフィスビルに入ります。
フレッド・マクマレー扮する保険の営業担当のネフです。12階の自分のオフィスに入ります。
蝋管を入れて告白の録音にかかります。ディクタホン?
キーズへの告白としています。
犯人は俺だとネフ。

回想になります。ナレーションはネフ自身がやっています。
保険の営業担当のネフはお得意先を訪問します。
日光浴をしていたとバーバラ・スタンウィック扮するフィリスが登場。
アンクレットを褒めるネフ。
ブロンドの髪が異常に似合わないバーバラ・スタンウィックです。どういう役作りなのかと興味深い。

オフィスです。
トラック運転手のガーロペズの請求を軽く却下するエドワード・G・ロビンソン扮する保険の調査担当のキーズが登場。
私には小さな男がいると称しています。→DVDの日本語字幕です。スカイパーフェクTVスターチャンネルの放映では自分の中にいるもう1人の私がいる称してました。ささいなことですが結構気になります。ちゃんと訳してくれとなります。
インチキな保険請求の例の話しをするキーズです。
ウマが合うネフとキーズ。この2人は気の合う仲です。長身のフレッド・マクマレーに背が高くないエドワード・G・ロビンソンと背の高さは違いすぎる2人です。

日を改めてフィリスの家にて。
ネフが訪ねます。油田の現場で仕事をしているフィリスの亭主です。
亭主に知らせずに傷害保険に入れないかとフィリス。
その手には乗らないとネフ。帰ります。

ネフのアパートにて。
フィリスが訪ねてきます。キスからバーボンとなってその先はどうなる。
先妻の看護師だったフィリス。
コートを脱ぐと白いニットのバーバラ・スタンウィック。
息をするたびにニットが膨らんだり縮んだりと色っぽい。
『ハーヴェイ・ガールズ』(46年)のシド・チャリシーもそうなのですがダンスをやっている人はこういう呼吸法なのか?バーバラ・スタンウィックはダンスが出来ます。

ディクタホンのシーン。
5万ドルの保険だとのことです。

回想になります。
ネフのアパートの続きです。どうやらネフとフィリスは一戦交えたらしい。1940年代の作品は検閲上こういう省略がかえってよかったりします。
盛り上がったのかネフをやる気になっています。もう計画は始まっています。

フィリスの自宅にて。
亭主に書類にサインをとネフ。知らずにサインの亭主。
パロアルトにクラス会の亭主。列車で行くとのことです。
これを狙うネフです。列車なら保険金は倍額になるらしい。
5万ドルの保険が条件によって、つまり列車事故なら倍額支払特約10万ドルの倍額保険となるわけです。どうせ殺すなら倍額にしようと欲をかいたから上手くいかなかったという問題ではないのですが。
この倍額保険=Double Indemnityが原題です。邦題の『深夜の告白』も合っていて、いい邦題です。

出かけるローラをクルマで送るネフ。
ボーイフレンドのニーノの話しがでます。ロクデナシらしい。
街にて、ローラのボーイフレンドのニーノ登場。見た通りのロクデナシのようです。

ロスフィラスのスーパーにて。
ネフとフィリスの打ち合わせです。
亭主が脚を折って計画は延期となります。
倍額殺人の打ち合わせはスーパー店内でやっていますがこのセットが安っぽいこと。もしかして低予算作品だったの。このスーパーの商品のラベルは真っ白です。何だか別の世界で多次元宇宙物のSFと思えてしまいます。

オフィスにて。
ネフとキーズ。ネフを助手に推薦したとキーズ。ネフは断ります。
キーズはこの仕事をクレームマンと称しています。
フィリスから電話です。今夜亭主が列車に乗るとのことです。事は急を要することになります。

ネフのアパートにて。
クルマを洗車させるとかアリバイ工作のネフ。
誰にも見られずにアパートを出て徒歩でフィリスの自宅へ向かいます。
ガレージのクルマの後部座席に入るネフ。
フィリスと亭主が乗ってクルマを出します。
ホーン3回でネフの出番となって亭主を絞殺します。ここはオフで見えません。冷静なフィリスだけを映しています。これはいいシーン手す。

クルマは駅に着き工作にかかります。
ネフは亭主になりすまして列車に乗ります。
フィリスはクルマを出して落ち合う地点に向かいます。
ネフは最後部車両の展望車に行きます。都合悪くここに人がいたりします。メッドフィールド行きのジャクソン。頼みごとをして追っ払います。
24キロの速度で飛び降りるネフ。
予定地点にフィリスはちゃんと来ていました。
動きが軽快なバーバラ・スタンウィックです。身のこなしが軽い。
工作を済ましてクルマを発進と思ったらエンジンがかからん。小ネタです。
打ち合わせのネフとフィリス。

アパートでクルマを降りるネフ。
フィリスとキスをして別れます。
誰にも見られずに戻ります。ずっといたことになっているアリバイ工作の仕上げをしています。

ディクタホンのシーン。

オフィスにて。
フィリスの亭主の件は事故死となります。
ネフとキーズは社長に呼び出されます。
カネを惜しんでいる社長です。やる気充分です。
ここで呼び出されていたフィリスが来ます。
自殺を力説する社長は保険金を値切りかかりますがフィリスが怒って帰ります。
キーズは自殺ではないと断言します。
引き上げるネフとキーズ。

ネフのアパートにて。
フィリスから電話で来るとのことです。
その前に訪問者が来ます。キーズです。
脚を折っても保険を使わないのはおかしいと言います。
フィリスが来ます。ドアの外で待機となります。
キーズが帰ります。
ドアの影に隠れているフィリス。ドアの動きでそれに感づくネフ。ここはすれ違いのスリルとサスペンスとなっています。
キーズはエレベーターに乗ったとこでフィリスは中に入ります。
ほとぼりがさめるまで会わないようしようとネフ。

オフィスです。ネフに会いに来るローラ。
6年前の話しが出ます。先妻を看護師だったフィリスの不審な行動。

ローラと食事やドライブのネフ。
このシーンは何で入れたのかよくわからん。

オフィスにて。
証人のオレゴン州のジャクソンが来ています。
キーズの説は真相に限りなく近い。憔悴のネフです。
亭主の写真を見て列車の男ではないとジャクソン。保険金は払わないとキーズ。
情勢は悪化となります。

フィリスを呼び出すネフ。ロスフィラスのスーパーにて。
ローラの言った話しをするネフ。
DVDでは市電に乗った2人は終点まで降りられないという話しが出ます。
スカイパーフェクTVスターチャンネルでは殺人の共犯者は特急と同じで途中下車は出来ないとなっています。この違いは何なんだ。

ディクタホンのシーン。

ローラと屋外で会うネフ。
ニーノがやったとローラ。
フィリスとニーノは会っているとのことです。色仕掛けで手なずけているらしい。

オフィスのロビーにて。
キーズに止められるネフ。事件は解決したとキーズ。助っ人の男がわかったとキーズ。

キーズのオフィスを家捜しするネフ。
キーズのディクタホンを聞きます。
ネフにはアリバイがある。その他の理由でネフはシロとのこと。
ニーノが怪しいとしています。
これでいいような感じですがネフは違う行動に出ます。

自分のオフィスからフィリスに電話のネフ。
フィリスの自宅で午後11:00に会うことになります。

フィリスの自宅にて。
リボルバーをソファに隠すフィリス。
ネフが来ます。俺は降りるとネフ。
撃たれるネフ。逆にフィリスを撃つネフ。

ネフが家を出たとこでニーノがやって来ます。
ニーノを説得するネフ。
若いカップルに希望を持たすようにする描写も効いていました。これは後味をよくするためのハリウッド映画の得意な手法です

回想から戻ります。
ディクタホンに録音のネフ。告白が終わりかけているとこですが、キーズが来ていました。
国境を越えるとネフ。ネフ自身も出来るとは思っていないようです。
一応止めるキーズ。無理とわかっているようです。

オフィスの出口で倒れるネフ。
タバコに火を点けてやるキーズ。それまではネフに火を点けてもらってました。
このラストも気が利いててよかったです。タバコに火をつける伏線が分かりやすいオチでした。
エンドとなります。

ヒロインのフィリスを演じるバーバラ・スタンウィックは何故いかにもカツラですと分かるブロンドになっています。これも何かの役作りなのかな。よくわからん。
バーバラ・スタンウィックは身のこなしが軽い。ダンスが出来る人の筈と記憶しています。
何となく目元の感じからアジア系のような感じもする人です。
批評でよく出てくるフィリスが足首に付けているアンクレットですが階段を降りる時に遠目に見えるだけなのでイマイチ印象に残りづらい。ここはクローズアップショットを1発入れてほしいものです。
ディートリクソンの亡くなった奥さんの看護婦をしていたというフィリス。これは凄いなと思わせて話しが進むと奥さんを死亡させる前にも似たようなことをやっていたのかと分かるフィリスととんでもなさが強調されています。
夫が殺される隣で無表情のフィリス。ここはいいシーンです。

フレッド・マクマレーは無難にこのキャラをこなしています。

エドワード・G・ロビンソンはなかなかの好演でした。「自分の中にいるもう1人の私がそう言っている」が口癖。これは小人さんのことを言っているのですが何故か字幕は「もう1人の私」になります。そこまで誰に気を使う。
ここでは保険金詐欺を調べる仕事をしています。疑われる男だったフリッツ・ラング監督の『飾り窓の女』(44年)は180度違い、この作品では調べる方で『飾り窓の女』のうっぷんをはらすがごとく調べることに熱中していました。


そんなわけでさすが名高いだけはあるフィルム・ノワールのよい作品でした。

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コメント

ロイ・フェイスさん、はじめまして。TBさせていただきました。
『深夜の告白』良い作品でしたね。エドワード・G・ロビンソンが良い。ビリー・ワイルダーではコメディチックなものよりも、これとか『サンセット大通り』とかサスペンス系の方が好みです。
面白そうな作品のレビューをたくさん書いておられてわくわくするブログですね。またよらせていただきます。

FROSTさん、コメントありがとうございます。
返事が送れて申し訳ない。コメントがついていたとは全く気がついていませんでした。

FROSTさんのブログを拝見すると、かなり好みのジャンルがかぶっていますね。楽しく読ませてもらっています。
やっぱりフィルム・ノワールっていいですね。なんといっても女優さんがいい。これが1番です。好きな女優さんはたくさんいるので特に名前が出ないのがいいとこ?なのです。

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