『ダウンヒル/下り坂』(1927年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、イヴォー・ノヴェロ主演の転落ドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1927年 ゲインズボロー・ピクチャーズ 英国作品
ランニング・タイム◆82分
原題◆Downhill
プロット◆ふとしたことから転落する話しのようです。
音楽◆この作品はサイレント映画です。
エムスリイエンタテインメント株式会社発売のDVDにて。画質はそれなりによいです。スクイーズ収録のフル表示。画面サイズはスタンダード。左右黒味あり。
キャスト
イヴォー・ノヴェロ→主人公のロビー・バーウィック
アネット・ベンソン→ウェイトレスのマーベル
イザベラ・ジーンズ→性悪の女優ジュリア
ロビン・アービン→親友のティム・ウェイクリー
シビル・ローダ→シビル・ウェイクリー
ベン・ウェブスター→ドースン博士
ノーマン・マキネルマッキンネル→ロビーの父サー・トーマス・バーウィック
リリアン・ブレイスウェイト→ロビーの母レディ・バーウィック
バーバラ・ゴット→Madame Michet
イアン・ハンター→アーチー
不明→ラ・パトローネ婦人
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
本『映画術』で、自分自身ではこの作品のことをそんなによい出来ではないとしてるのは、英国の上流階級がこんなヘマをするわけがないと骨身に染みてわかっているからでしょう。
それに結末が「私が悪かった許してくれ」で済ましてしまう脚本の悪い例もあると思います。
主演のイヴォー・ノヴェロが脚本を書いて主演してて、要するにオレ様映画なのでしょう。
パッケージの解説からすると舞台はパブリックスクールとなっています。
大学ではなく高校なのか?→英国のイングランドおよびウェールズにおける私立の中等教育学校。一流大学進学を前提とする裕福な階層の子どもたちが、厳格な規律の下に集団生活を送っているとのことです。
キャストで・・・
イヴォー・ノヴェロはヒュー・グラントにソックリ。
ロビン・アービンはジェームズ・マカボイにソックリ。
なるほど英国の伝統的なルックスなわけのようです。
タイトル。
ゲインズボロー・ピクチャーズ
W & F フィルムサービスLTD
後付けの音楽がクラシックではなくジャズっぽい音楽になっています。
ステレオで鳴っています。
サイレント映画なので画面全体に字幕が出ます。
親友への誓いを誠実に守った学生の物語である。
若者の世界。
ラグビーをやっています。
イヴォー・ノヴェロ扮する主人公のロビー・バーウィックが登場。活躍しています。
奨学金のお知らせを見てるロビン・アービン扮するティム・ウェイクリー。
主人公のロビー・バーウィックの家は金持ちです。
奨学金が取れたらオックスフォード大学に入れると言われてるティム・ウェイクリー。
ウェイトレスのマーベルがお誘いのメモを渡しています。
さすがにクローズアップショットはちゃんと入れています。
食事会になっています。
いたずらをしている若い男がいます。吹き矢で何か飛ばしてる。
時間が出ます。時計塔が06:05となっています。
メモのクローズアップ。いつもの店で06:05にマーベルより。
オールド・バン・ショップにて。待ち合わせの店です。
マーベルが待っています。ロビー・バーウィックとティム・ウェイクリーがやって来ます。
レコードをかけてダンスをしています。
延々と交代でダンスをしてる描写が入ります。
下層階級のガキが買い物にきています。相手をするロビー・バーウィック。
何だか随分と高い物をやったみたい。ここは駄菓子屋なのか?
レジスターを打ってしまったようなロビー・バーウィック。弁償しています。
店を出るロビー・バーウィックとティム・ウェイクリー。
学校にて。
その年、ロビー・バーウィックは首席の表彰を受ける。
部屋にて。
ロビー・バーウィックとティム・ウェイクリー。
校長に呼ばれる2人。
校長室にて。
マーベルがいますが2人はまだ気がつかない。
歩いてる2人の主観ショットカットバックの手法を使っています。
校長の様子から何か悪い知らせのようです。
イスに座っていたマーベルがハンドバッグを落としたことで、初めてマーベルがいることに気がつく2人の描写があります。さすがに上手いじゃん。
画面が揺れています。これはフィルムの具合なのでしょうがない。
マーベルにどっちの男なのかと言わせる校長。
ここも視線が移動する主観ショットカットバックにしています。
どうやらロビー・バーウィックにされたようです。
ティム・ウェイクリーは帰されます。
マーベルが色々と言ってるようです。
オーバーラップで回想が入ります。レコード、ダンス、1ポンド、水曜日に貸し切り。
で、「私を誘惑したのよ」となる。
「退学してもらう」と校長。
「もうオールド・ボーイズの試合に出してもらえないのか?」とロビー・バーウィック。
そんなわけでロビー・バーウィックは退学となります。
部屋にて。
荷物をまとめて部屋を出ていくロビー・バーウィック。
階段を降りて学校を去ります。
自宅にて。
帰宅するロビー・バーウィック。
「お母さん、事情があって戻ってきました」と挨拶する。
で、怖そうなお父さんが客人と帰宅する。
客人が帰り、お父さんと対峙するロビー・バーウィック。
さっそく口論となって売り言葉に買い言葉で「この家を出ていく」と言うロビー・バーウィック。
父が玄関の安全チェーンをかけるクローズアップが入ります。
実際はこんなことはないでしょう。
少しのカネで全部解決する。ヒッチコック監督がこの作品を駄作としてるが何となくわかります。
地下鉄の木製エスカレーターで下るロビー・バーウィック。
ダウンヒルのわかりやすいモンタージュだそうです。本『映画術』でヒッチコック監督はこの描写を何てナイーブなんだと後悔しています。
厳しい現実が待っていたとなる。
ウェイターをやっているロビー・バーウィック。テーブルに忘れたタバコ入れをポケットにいれてます。ネコババするつもりなのか?
と思ったらここはカフェではなく劇場の舞台でした。ロビー・バーウィックはウェイターの役を演じていたのです。上手いじゃん。
楽屋にて。
それぞれの楽屋の描写となります。
ロビー・バーウィック、主演女優、主演男優。
主演女優のジュリアに忘れたタバコ入れを届けるロビー・バーウィック。
女優のジュリアから見た、逆さに見えるロビー・バーウィックの主観ショット。これは『汚名』(1946年)にも使われています。
「今夜もタバコ入れをお忘れになりましたよ」とロビー・バーウィック。
女優のジュリアに接近するロビー・バーウィック。
女優と男優が口論となっています。
表は雨が降っています。
タクシーに3人で乗ります。
途中で降りるロビー・バーウィック。混雑してるバスに乗り換えます。もう英国名物の2階建てのバスになっています。
ですが、この2階建てのバスは屋根のない部分もあるようで濡れています。
アパートに帰宅するロビー・バーウィック。
黒猫がいます。
手紙が届いてます。お祖母様が亡くなって3万ポンドの遺産が相続出来ます。
3万ポンド、の字幕が入る。
楽屋にて。
いきなり羽振りがよくなってるロビー・バーウィック。
タキシードで決めています。女優に接近となります。旦那の男優をいます。
側にいる旦那の俳優に聞こえないように鏡に食事でもと書いています。
ハマキを旦那にやるロビー・バーウィック。
女優をものにしたのはいいけど、旦那に女優が浪費したのでやまほどある請求書を押し付けられるロビー・バーウィック。
この旦那はケチで楽屋を出る時にチップもやらない。
チップではなくハマキの灰をメイドの手に落としています。
タクシーの3人。
当然きまずい雰囲気になっています。
有名女優ジュリアが昨夜ロビー・バーウィックと結婚と新聞に載ります。
演じるイザベラ・ジーンズはいかにも舞台の高慢な女優といった感じです。
ここからヒッチコック監督の俳優は家畜発言になっていたのではと思わせます。
高級アパートにて。
いよいよキスをしてそれからどうなる。と思ったらここまで。
そんな感じでやらずぶったくりのようです。
前の旦那が内緒で来ています。まだ切れていなかったようです。ロビー・バーウィックからカネを巻き上げるだけ巻き上げるつもりらしい。
タンスに隠れる前の旦那。
さすがに請求書を見せて文句を言ってるロビー・バーウィック。
また手紙が来ています。銀行の残高はマイナスですの告知です。
ここで自分のではないシルクハットに気がつくロビー・バーウィック。
旦那を見つけて乱闘になっています。ノックアウトにはします。
カネが切れたらもうお終いのようです。この高給アパートも私のものだと女優。
追い出されるロビー・バーウィック。で、下りのエレベーターに乗ります。
幻滅の世界。
パリにて。ミュージックホール。風車が回ってるでここはムーランルージュか。
ダンスホールでは押し合いへし合いの状態でダンスとなっています。
この中でダンスパートナーをしてるロビー・バーウィック。
ラ・パトローネ婦人は人生の機微に・・・
英国青年のパートナーはたったの50フラン。これで荒稼ぎしているようです。
ここはお金持ちの御夫人がうようよしています。どなたもかなり歳をとってます。
御夫人の旦那から50フランの受け取るロビー・バーウィック。ラ・パトローネ婦人に口利き料45フランを巻き上げられています。これは中抜きし過ぎです。洒落になっていない。
次の客を物色してるラ・パトローネ婦人。
ある御夫人から声をかけられるロビー・バーウィック。
「何てかわいそうに」と事情を聞かれます。
で、これまでのありのままを話しています。結婚が失敗したとか・・・
楽団ですがもういい加減に時間なのでとっとと楽器を片づけて引き上げています。この描写も『泥棒成金』(1955年)でもやっています。
「あなたは普通の婦人とは違う」とか、お世辞を言ってるロビー・バーウィック。
そんなとこで、気分の悪くなった老人がいて、空気を入れ替えようと窓を全開にします。
もう朝になっていたので日の光が差し込んできます。そうなるとここにいる方々が何とも醜く見えてしまうロビー・バーウィック。
「そしたら朝の日差しにさらされる無残な現実」の字幕が入る。
ラ・パトローネ婦人に捨てゼリフを吐いてこの場を去るロビー・バーウィック。
彼の転落の旅はマルセイユに行き着いた。
寂れた酒場の1室で寝込んでるロビー・バーウィック。
黒人女と船員2人があいつをロンドンに連れて行けはカネになると相談しています。
ティモシー・ウェイクリー宛ての手紙を見つける3人。
親愛なるティム、君がこの手紙を受け取った頃には、でも僕が約束を守ったことを忘れないでくれ、ロビー。
まだ出していない手紙でした。
この手紙を手がかりに船員2人はロビー・バーウィックを連れて行くようです。
波止場にて。
主観ショットで船に乗り込むとこがあります。
船室のベッドの上段に放り込まれるロビー・バーウィック。
どうやら貨物船のようです。
船室にいた爺さんが父とそっくり。これはうなされてるせいでした。
夢を見てるロビー・バーウィック。
ウェイトレス、女優、旦那の男優、ムーランルージュの御夫人2人。
船のエンジンが始動しました。
エンジンのクランクが回る。レコードが回る。演奏してる楽団。そんな感じでわかりやすいモンタージュとなっています。
ロビー・バーウィックはずっとうなされています。
精神錯乱状態のまま5日が過ぎた。
何だか英国に着いたようです。
波止場のお巡りが父に見えてるロビー・バーウィック。
ベッドから出るロビー・バーウィック。船を降ります。
そのまま街を放浪してるようです。主観ショットで移動しています。
オーバーラップしてどこへ行く?
無意識状態で自宅へと辿りつくロビー・バーウィック。
呼び鈴を押します。執事が出てビックリして向かい入れてくれる。
「旦那様と奥様が外出中です」と執事。
暖炉前のイスに座るロビー・バーウィック。
いよいよ両親が帰宅します。
父とご対面のロビー・バーウィック。
「お前を探したぞ、私が間違っていた」と父。これで解決のようです。
母ともご対面で、こっちは最初から大歓迎です。
これでエンドとなります。
エピローグ。
オールド・ボーイズの試合に出てるロビー・バーウィック。
エンドとなります。
このエンドではヒッチコック監督が自分自身でこの作品を駄作と言うのが何となくわかります。セリフだけで解決させている脚本の悪い例なのです。
そんなわけでヒッチコック監督作品にしてはまあまあな作品でした。
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