『ガス人間第1号』(1960年)
この作品は本多猪四郎監督/円谷英二特技監督、土屋嘉男、八千草薫、三橋達也、佐多契子主演の特撮メロドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1960年 東宝 日本作品
ランニング・タイム◆91分
プロット◆ガス人間になって踊りの師匠に入れ込む話しのようです。
音楽◆宮内国郎 『ウルトラQ』(1965年)、『ウルトラマン』(1966年)とホトンド同じスコアでした。。
東宝発売の秘蔵のLDにて。画質はまあまあ。LD『電送人間』では問題があったLDプレーヤー ソニー MDP-A7ですがこのLDはちゃんと再生していました。AB切り替えをも問題ない。LD自体の偏芯や反りも原因なのか?よくわからん。
キャスト
土屋嘉男→ガス人間第一号/図書館司書の水野
八千草薫→踊りの師匠 春日藤千代
三橋達也→岡本賢治警部補
佐多契子→その恋人の甲野京子婦人記者
村上冬樹→ガス人間を作った佐野博士
伊藤久哉→ガス人間対策の田宮博士
左卜全→猫背の老人鼓師
田島義文→田端警部
三島耕→藤田刑事
小杉義男→稲尾刑事
坪野鎌之→大崎刑事
権藤幸彦→堀田刑事
佐々木孝丸→警視庁幹部1
山田圭介→警視庁幹部2
草間璋夫→警視庁幹部3
緒方燐作→中谷巡査
堤康久→相見巡査
松本光男→鎌田
野村浩三→川崎記者
松村達雄→社会部の池田編集長
中村哲→お偉方の戸部
山田巳之助→葉山
熊谷二良→梶本
山本廉→西山
榊田敬二as榊田敬治→留置の看守1
広瀬正一→留置の看守2
岡豊→観客の男1
佐藤功一→観客の男2
黒田忠彦→観客の男3
松本染升→紋太夫
塩沢とき→里代
宮田羊容→銀行の支配人
キャスティングはいつもの通りでよい感じ。
本多猪四郎監督/円谷英二特技監督の演出はよいと思います。
やはり福田純監督より本多猪四郎監督の方が上手い。本多猪四郎監督は基本的なことしかやらないので時々冗長になるけど上手いです。
この作品は昔TVで一回だけ見たことがありました。まあ初見のようなものです。
音楽の宮内国郎のスコアは『ウルトラQ』(1965年)、『ウルトラマン』(1966年)に流用されたのはホントでした。そんな感じで何だか『ウルトラQ』、『ウルトラマン』を見ているみたいでした。
編集は上手いものです。これだけでも見ている価値がある。コンテがいいのか、編集マンが上手いのか、まあ大したものです。
怪しい感じを出す斜めのアングルが、ちゃんとありました。
ガス人間の描写ですが『電送人間』(1960年)に比べると光線作画がないので少し地味な感じとなっています。
ラストはかなりなものです。
爆発のタイミング、炎上のカット割り、倒れる花輪、なかなかのものです。
キャストで・・・
土屋嘉男はガス人間を大まじめに演じています。よくやっています。
特撮作品に出ていて、日本映画界での名誉はありません。ですが名が残ります。唯一にして最大のメリット?です。俳優の方々、自分の名前が残ってよかったでしょう。
八千草薫は特撮にはうんざりといった感じの女優さんです。
他に代表作はあった?
佐多契子はこの作品以外ではあまり知りません。
あんまり上手くない、喋り方が少し嫌みっぽいのが難です。口調がキツくても水野久美ほど美しくないのでこまります。
三橋達也は特撮物に対してはどうなんでしょう。
そんなに偏見があったり嫌そうには見えないけど。川島雄三監督作品で妙なキャラには慣れているから偏見はないのかもしれません。
この作品を見てて、何故か三橋達也は川島雄三監督の分身なのでは?と思いついた。これは多分、ホントだろうと思う、自分だけで確信する。
タイトル。
第1号の「だい」ですがどうやってもこの作品のタイトル名オリジナルの「だい」が漢字変換で出ないのです。こまったものです。
脚本は木村武。
音楽は宮内国郎なものでどこかで聞いたようなスコアとなっています。
夜です。カーチェイスとなっています。
追うパトカー。お巡り2人と三橋達也扮する岡本賢治警部補。
西濃運輸のトラックと正面衝突しそうになるパトカー。
追われているクルマは道路から転落します。ミニチュアっぽい。
パトカーの3人が転落したクルマを見に行きます。本編ですが何となくミニチュアのように見える転落したクルマ。
近くの家に行く警察3人。
画面内に白い点が飛んでいますけど、もしかして蛍?懐中電灯がレンズに映りこんでいるのかと思った。
家の中では踊りの稽古中となっています。
八千草薫→踊りの師匠 春日藤千代
左卜全→猫背の老人鼓師
の2人が登場。
呼び鈴のブザーを慣らします。古い家でもちゃんとブザーがあるようです。
2人から話しを聞く岡本賢治警部補。
何もなくそのまま引き上げます。
喫茶店にて。
岡本賢治警部補と佐多契子扮するその恋人の甲野京子婦人記者です。
デート中のようです。
一応新聞記者らしいヒロイン。
女性記者は「取材対象を怒らせて話し引き出す」と岡本賢治警部補が言ってますが、これは普遍的なことで現実でもそのようです。
銀行にて。
非常ベルがなります。警官がやられます。
警察にて。捜査1課。
電話が入ります。現場の銀行に駆けつけます。
銀行にて。
パトカーが到着しています。
金庫室にて。金庫室の内部から鍵がかかっています。これは密室だとなっています。
新聞社にて。
甲野京子記者と池田編集長。
白塗りのオカマっぽい記者は誰だ?→野村浩三のようです。結構目立ちます。
外で会う甲野京子記者と岡本賢治警部補。
警察にて。
鑑識の結果を聞いています。
絞殺ではない窒息死とのことです。ガス人間の伏線となっているようです。
田島義文が上役の田端警部。
五日市街道と名前が出ています。これは実在する地名です。
藤千代の自宅に徒歩で向かう岡本賢治警部補。
クルマで通りがかる甲野京子記者。自分のクルマなのかな?、岡本賢治警部補を乗せてあげるのかと思ったら置き去りして行ってしまいます。これは凄いな。
藤千代の自宅にて。
でかいアメ車が止まっています。藤千代の自家用車のようです。運転手付き。
甲野京子記者の取材となります。徒歩で移動の岡本賢治警部補はまだ到着せず。
自家用車で出かける藤千代。
まだ途中を歩いてる岡本賢治警部補は入れ違いとなってしまいます。
クルマで帰りの甲野京子記者は岡本賢治警部補を乗せる。
佐多契子は笑い方が下手です。同じ東宝の上原美佐ぐらいかも?これではロマンティック・コメディになりません。嫌みなだけです。
こう聞いていると三橋達也のセリフ回しは結構早口で上手いじゃん。もっと下手かと思っていました。
藤千代の自家用車を尾行します。
ロケで当時の風景が見られます。街中をちっこいオート3輪が走っています。当時のロケがいい。
図書館に入る藤千代。
ここに土屋嘉男扮する図書館司書の水野が勤めています。
司書の水野に話しを聞く岡本賢治警部補。
閲覧室で藤千代を見張る岡本賢治警部補。昔の図書館は閲覧室が広かったのです。現在の図書館は貸し借りのカウンターのみか?
別派の師匠宅に入る藤千代。
大枚はたいて出演交渉のようです。発表会の準備らしい。
お金はあるらしい藤千代。でもこのお札から足がつくのです。
警察にて。
田端警部と打ち合わせの岡本賢治警部補。
藤千代の金回りのよさの話しをしています。
新聞社にて。
甲野京子記者に謎の電話がかかってきます。
銀行強盗の犯人からでした。予告電話です。
電話を録音する描写か入っています。
銀行にて。
予告の時間が迫ります。ですが違う銀行が襲われたと連絡が入ります。
空振りでした。
で、その違う銀行を襲った犯人が捕まったらしい。
警察にて。
違う銀行を襲った犯人の西山の取り調べとなります。
結局のこの西山は関係なかったようです。
どこかで飲んでいる岡本賢治警部補と甲野京子記者。
見込み違いとなってのヤケ酒らしい。
甲野京子記者の父親は金持ちらしい。コネもあるのでしょう。それらしい設定となっています。
岡本賢治警部補に連絡が入り急用となります。
警察にて。
藤千代の使ったお札から足がついたらしい。
藤千代の自宅にて。
大勢集めて稽古中の藤千代。
そんなとこに警察が大勢押し寄せてきます。
家捜しとなります。証拠の札束が発見されます。
この設定は何だか『パラダイン夫人の恋』(1947年)のようです。
自宅に警察が来てそのまま警察に連行されてしまうとこです。なかなかいい感じ。
警察にて。
取り調べの藤千代。
妙に目立つ刑事がいます。誰?→小杉義男か?
記者クラブの部屋にて。
水野がやってきて銀行強盗は自分がやった。自首すると宣言します。これで記者達は大騒ぎとなります。
取材している記者達の描写が入ります。珍しい光景です。警察発表の文をそのまま転載しているとは違っています。
水野と岡本賢治警部補は1回顔を会わせています。
銀行にて。金庫室。
犯行を実演する水野。ここは見せ場です。
銀行員を殺害します。何もそこまで実演しなくてもとなります。
すぐに撃ちまくる刑事達。何ですぐに撃つ。
あの目立った刑事が殺害されます。
新聞にて。ガス人間の見出しのモンタージュが入ります。
警察にて。
捜査会議となっています。
藤千代は釈放しないとなります。
そんなにとこにいきなりガス人間が出現します。
ガス人間に対して結構鋭い質問をする岡本賢治警部補です。
で、ガス化して逃走するガス人間。
またすぐに撃ちまくる刑事達。
そんなことをするから記者クラブ室から新聞記者達が押し寄せてきます。
拘置所内にて。
ガス人間がやってきます。まずお巡り2人をかたづけます。
ここで見所のガス化して格子の隙間を服と共にすり抜けるガス人間の描写が入ります。
藤千代を逃がそうと説得にかかるガス人間。
他の拘置されてる男女が逃げたので記者達も突撃取材をやってて大騒ぎとなります。
LDですがA面は無事に再生完了です。そのままB面に移行再生となります。異常なし。
新聞社にて。
ガス人間に対して広告を出そうとなります。
広告のモンタージュが入ります。
ガス人間から電話が入ります。
やってきたガス人間と面会の新聞社の面々。
この3人です・・・
白塗りの野村浩三。
お偉い中村哲。
社会部編集長の松村達雄
警察のクルマが来る俯瞰のショットが入ります。
ガス人間の回想となります。
何故ガス人間となったのかと描写が入ります。
村上冬樹扮する佐野博士にスカウトされる水野。
訓練して鍛えるより、体自体を変えた方がいいと佐野博士。
研究所に入り実験台となる水野。カプセルに入れられます。
微妙に斜めの構図を多用しています。怪しい雰囲気が出て効果は十分です。
セットの方は安っぽいけどまあまあ。光電管というかネオン管か、それに効果音がいいのです。
240時間眠ったいたと水野。図書館勤めはどうなったと思ってしまいます。
カプセルを開けたら水野はガスになっていました。驚愕の佐野博士。これは失敗だなといった感じです。
ガス化から人間に戻る水野です。激怒しています。
佐野博士の話しから水野の前にも何人も失敗していたらしい。更に激怒する水野。
佐野博士をかたづけた後雨の中を歩く回る水野。
どうやら自分の体をコントロール出来ることに気がついたらしい。
回想は終わります。
警察が踏み込んできます。
ガス弾を発射しています。ガスにはガスということらしい。ロジックが通っているという関係ないというかわけわからん。
で、ガス化して悠々と逃走するガス人間です。
警察にて。
藤千代を説得しようとする面々。
伊藤久哉扮するガス人間対策の田宮博士が登場。
何故か三橋達也と似ている伊藤久哉。どういうキャスティング?
結局釈放となる藤千代。
新聞記者達が群がっています。
ついでに爺やの左卜全も釈放されています。
新聞社てに。
社会部の池田編集長や他の上役2人と議論しています。
藤千代が借りるホールはこの新聞社系の建物のようです。
宣伝になるからいいじゃないと池田編集長。
責任問題回避の自己保身の上役2人となっています。
藤千代の自宅にて。
別派の師匠と話し中の藤千代。
交渉は決裂したようです。
突撃取材の記者が張り込んでいます。
ガス人間が来ています。ここは本格的なメロドラマ調になっています。
佐野博士の研究所にて。
田宮博士がガス人間対策を説明しています。
田端警部と岡本賢治警部補が聞いています。
使い込みをしてガス人間のせいだという連中がいると岡本賢治警部補。これは凄い。『暗黒街の弾痕』(1937年)でもそんな描写がありました。木村武の脚本がいい。
ガス人間を爆破するには1000人収容ホールの大きさが必要と田宮博士。一応伏線となっています。
藤千代の自宅にて。
藤千代と面会の甲野京子記者。
色々と話し込んでいます。発表会はやると言ってます。
この2人は仲が悪そうだな。撮影現場のことです。
発表会のホールにて。
もうクライマックスのシーンです。
ガス人間爆破の準備はOKのようです。
ホール内に突撃取材を敢行する甲野京子記者。追う岡本賢治警部補。
発表会は始まっています。
観客はガス人間だけです。
途中から入る連中は与太者3人ぐらいと思っていたら結構多い。色々と新聞記者たちを含めて大勢います。
そとの警察では入り込んだ連中をどうしましょうとなっています。
ヤジを飛ばす与太者達。このシーンとガキの頃に見た時はひどいと思っていたけど今見るとそんなにひどくはないような。洗練されているとしてもいいくらいです。
怒るガス人間。
騒ぎとなって逃げ出す張り込んだ連中。
爆発するガスの放出を開始します。換気装置を使っています。
そんなこんなで、ホール内はもう誰もいません。舞台を含めて3人だけです。
警察の方は爆発ガスは入れたけどガス人間以外の人間2人が残っていてどうしましょうとなっています。
発火スイッチを入れようと苦悩している田端警部。その割にはすぐにスイッチオンにします。しかし不発に終わります。
何故かというとホールの配電盤の配線が切断されていたからです。誰がやった?
発表会は終わります。
抱き合う藤千代とガス人間。
で、ガス人間に見えないようにライターを点火する藤千代。
大爆発となります。
燃える花輪。これは凄いねと思ったら・・・
ホールの外に這い出る瀕死のガス人間。
そのガス人間の上に花輪が倒れるショット、これがまた凄い。
エンドとなります。
そんなわけで大まじめなメロドラマになっているよい作品でした。
東宝の変身人間シリーズ全4本
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『電送人間』(1960年)
『ガス人間第一号』(1960年)
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大映にも、同じムードを持った作品がありますよね。
「虹男」なんかはオススメです。
投稿: lalaki | 2009.07.22 18:51
lalakiさん、他にも複数のコメントをありがとうございます。
まとめて返事に代えさせてもらいます。
昭和30年代の映画はロケがいいんですよね。
でも当時に戻りたいとは思えませんけど。
昭和30年代の東宝と大映が私の好みです。
新東宝はまあまあです。
松竹と東映は好みではありません。
トラウマで怖いといえば『マタンゴ』(1963年)があります。これは現在になって見ると別の意味で怖かったりします。
投稿: ロイ・フェイス | 2009.07.24 19:00
はじめまして。
先日、オールナイトで上のコメントにもある『マタンゴ』などとともにこの映画も上映されていまして、いろいろネットをあさってこちらにたどり着きました。
この映画はすでに何回か見ていますが、大きなスクリーンで見るとさすがにいいですね。ラストのホールの爆発も、ミニチュアには見えない出来栄えです。
あと八千草薫はほーんときれいですね。信じられないくらいの美しさに思えました。
見ていて、気体化してどうやって声を出すのかとか、留置所に入っているときに和服はないだろうとかつまらんことを考えましたが、でもこの映画は私は大好きです。
佐多契子は、映画館にはってあった当時のプレスシートのコピーによると、藤本真澄に直接スカウトされたとのことです。1941年生まれと書いてあったから、そうすると三橋との恋人という設定は無理かな…と。三橋達也は、この映画ではちょっと影が薄いですよね。佐多さんも、まもなく映画界を去ってしまったみたいですし。たしかにこの映画でもあまり演技がうまくはありませんでした。
それではまた。
投稿: Bill McCreary | 2009.08.03 21:51
Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
私はホトンドの東宝特撮作品は昼のTV放映で見ました。
映画館は大画面はいいけど、音は音量が大きいだけでそんなにメリットは感じないような・・・
映画館のメリットは、自分が映画館まで出向いた、このことで盛り上がるのが1番のメリットだと思います。そうなると映画の出来なんてあまり関係なくなっています。私の場合・・・
東宝の女優さんはどなたも洗練されているのがいいですね。
私は特に好みの女優さんはいなくて東宝なら誰でもいいといった感じです。
投稿: ロイ・フェイス | 2009.08.05 19:09