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2009.03.01

『十二人の怒れる男』(1957年)

この作品はシドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ他主演の陪審員ドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1957年 ユナイト アメリカ作品
ランニング・タイム◆96分
原題◆12 Angry Men
プロット◆陪審員が議論をして成り行きで当人達の内面に深く入り込む話しのようです。
音楽◆ケニヨン・ホプキンス 音楽は時々入ります。どうせなら無くてもよかったような。
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質は非常によいです。

キャスト
マーティン・バルサム→陪審員01◆高校のアメフトのコーチ
ジョン・フィードラー→陪審員02◆メガネの気弱そうな小男
リー・J・コッブ→陪審員03◆コンプレックスの激情型
E・G・マーシャル→陪審員04◆メガネの理性派
ジャック・クラグマン→陪審員05◆ラテン系でスラム街出身?
エド・バインズ→陪審員06◆普通な感じ白人ブルーカラー
ジャック・ウォーデン→陪審員07◆セールスマンで口が悪い。ヤンキースファン。
ヘンリー・フォンダ→陪審員08◆建築家でカッコよすぎ
ジョゼフ・スウィーニー→陪審員09◆白人の老人
エド・べグリー→陪審員10◆差別主義者の工場主
ジョージ・ヴォスコヴェック→陪審員11◆ギリシャ系のヒゲの時計屋
ロバート・ウェバー→陪審員12◆広告関係の白人男。黒縁メガネ


シドニー・ルメット監督の演出はよいと思います。
舞台を強調した演出になっていて映画的とはいい難いような感じです。
原作者と主演が製作でTV出身の新人監督では舞台重視になるのはやむ得ない状況でまあしょうがないといったとこです。
この作品では事件そのものより、この事件にかかわった陪審員各個人の内面に深く入る話しでもあるようです。

陪審員の方々。
マーティン・バルサム扮する陪審員01は中年男で議長を務めます。高校のアメフトのコーチとのこと。
ジョン・フィードラー扮する陪審員02は髪は薄めでメガネの気弱そうな小男。
リー・J・コッブ扮する陪審員03は宅配便会社をやっている強面の男。命令口調にはうんざりします。
E・G・マーシャ扮するル陪審員04は株仲買人のメガネの男です。ロジカルの考えを通す強敵となっています。
ジャック・クラグマン扮する陪審員05はラテン系でスラム街から苦労して出世したという感じの男。
エド・バインズ扮する陪審員06は普通な感じの男で後からペンキ塗りをしているとのこと、ブルーカラーらしい。
ジャック・ウォーデン扮する陪審員07は帽子を被ったセールスマンで当然口が悪い。N.Y.ヤンキースきファンらしい。
ヘンリー・フォンダ扮する陪審員08は建築家。この作品の製作兼任もあってカッコよすぎ。
ジョゼフ・スウィーニー扮する陪審員09は老人です。
エド・べグリー扮する陪審員10は工場主の人種階級年齢等の差別主義の初老男。自分の工場は状態は火の車とのことです。
ジョージ・ヴォスコヴェック扮する陪審員11はヒゲの時計屋。いかにもギリシャ系移民といった感じの中年男。
ロバート・ウェバー扮する陪審員12は広告関係の男です。黒縁メガネをかけています。その場を読んでいるようなのか、その場に流されているかは不明です。単にポリシーがないようです。

not guilty=無罪
guilty=有罪
陪審員が議論して投票で決めるわけです。

裁判所にて。N.Y.が舞台です。
タイトルとなります。製作に主演のヘンリー・フォンダと原作者のレジナルド・ローズの名があります。
18才のラテン系の男が殺人容疑で被告となっています。

評決を決める部屋にて。
ウールワースビルの名が出てきます。N.Y.にあるビルです。
同じ時間にMLB N.Y.ヤンキース対ボルティモア・オリオールズの試合があります。これが気になる陪審員07です。

議長は陪審員01が務めます。
最初の投票ではnot guilty1対guilty11となります。

そんなこんなで議論が中断して議長が投げやりになるとこもあります。
それでも議論は続きます。

飛び出しナイフのことで。
陪審員08が持ち込んだ飛び出しナイフは凶器の全く同じ物で、凶器が他にも存在してる可能性があることがわかります。
この飛び出しナイフはジャンクショップで6ドル也とのこと。
刃の出方は直線的に飛出すのではなく折りたたんだナイフが出てくる方式です。
飛び出しナイフを英語ではスイッチナイフと言ってます。スイッチブレードナイフとも言ってます。スイッチナイフとはよく合っている名前です。
ここからヤンチャで衝動的な人種のことをキレるのではなくスイッチが入るとすればニュアンス的にちょうど合います。

2回目の投票は陪審員08を除いた11人で行われます。
not guilty1対guilty10となり議論は続行となります。
殺すぞは本気なのかという話題があります。
電車の音で叫びや人が倒れる音は聞こえないとわかります。

75歳の老人の証言は目立ちたいためだけでは?と意見が出ます。
証人となった75歳の老人のことに関して興味深いことを議論していました。誰にも省みられることがなく云々となっていました。
自分の言葉を人が引用していくれたらとなり、本人も嘘ではなく本気でそのように思い込んでいるとなります。これは凄い。

3回目の投票はnot guilty4対guilty8となります。
老人は15秒でベッドからドアまで行けたか?を実地検証してみます。
陪審員08は建築家なので間取りには詳しいようです。

殺してやるというのは本気なのか?
これを陪審員08が陪審員03を相手に実地検証のシーンがあります。よくやるなと感心する。

陪審員は郵便で告知を受けて招集されるとセリフであります。

4回目の投票はnot guilty6対guilty6となります。
これはもう評決不一致にしましょうとの意見も出ます。

陪審員04はどのくらい以前のことを覚えているかの実地検証があります。
見た映画は『深紅の輪』とのこと。映画ファンとしてはどんな映画なのかと興味深い。

ナイフはどのように刺すのか傷口の向きは?で議論があります。
陪審員03は検察の言う通りに上からだと陪審員08を相手に実演してます。
それは違うとラテン系の陪審員05が昔に実際に見ていたとレクチャーします。見ていたのではなく自分がやっていたのでは?と思わせます。

5回目の投票はnot guilty9対guilty3となります。
メガネの跡から中年女性の証言が怪しくなります。メガネがないのに目撃しているのです。
これで陪審員04がnot guiltyとなります。

人種差別の陪審員10は大部分の人に相手にされなくなります。
ここでnot guilty11対guilty1となります。

最後に陪審員03がnot guiltyとなり議論が終ります。
自分の内面に深く入り込まれる状況となった陪審員03です。

ラストは雨上がりの裁判所前のシーンです。
ホッとした雰囲気となります。他にも色々とあり余韻が残ります。


そんなわけで陪審制度というより陪審員それぞれの内面に深く入り込んでいる人間ドラマになっているよい作品でした。


この作品は日本の裁判員制度には全く参考になりません。
日本の場合の裁判員は決定権を持っているわけではない参考程度なのでしょう。義務だけ押し付けられて権利は無い裁判員、これでは呼ばれるだけで損をしているようなものです。こんなのはボイコットすればいい。
だんまりのマスコミはこういうことを突っ込まれると「そんなことは知ってるよ」とうそぶくのです。全くこまった連中なのです。


舞台の映画といえばこの2本立てが絶品です。
シドニー・キングズレー原作、ウィリアム・ワイラー監督の『探偵物語』(1951年)
フレデリック・ノット原作、アルフレッド・ヒッチコック監督の『ダイヤルMを廻せ!』(1954年)
となります。どちらも舞台劇を生かした映画的手法が全開で、とてもよい出来の作品となって私のお勧めの作品なのです。


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