『野獣死すべし』(1959年)
この作品は須川栄三監督、仲代達矢主演の犯罪アクションのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1959年 東宝 日本作品
ランニング・タイム◆96分
プロット◆犯罪に成功する話しのようです。
音楽◆黛敏郎
スカイパーフェクTV310衛星劇場にて。画質は非常によいです。
キャスト
仲代達矢→伊達邦彦
小泉博→新米の真杉刑事
東野英治郎→ベテランの桑島刑事
瀬良明→殺された岡田刑事
中村伸郎→伊達邦彦の恩師 杉村教授
団令子→伊達邦彦と特別な関係の楠見妙子
白川由美→真杉刑事の恋人 峯洋子
武内亨→伊達の相棒となった手塚
白坂依志夫→辻
桐野洋雄→演説の学生
滝田裕介→記者遠藤
清水一郎→捜査一課長
中村哲→チャーリー陳
佐藤允→用心棒三田
西村潔→はじきの安
田武謙三→もぐりの医者薄田
谷晃→アパートの管理人
三好栄子→花売りの老婆
加藤春哉→背広の学生
横山道代→給仕女
須川栄三監督の演出はよいと思います。
東宝でも藤本真澄製作の作品はあまり見たことがなかったりします。田中友幸製作作品はよく見ているんですが・・・
この作品の批評はあまり見かけない。なるほど出来がよ過ぎて無視されているようです。
原作は大藪春彦、脚本は白坂依志夫。
モノローグやナレーションは使わずに全て会話にする脚本になっています。ですから原作ではいないキャラが出ています。
世間一般に関する普遍的な考え方がセリフで出てきます。
よくあるセリフですがなかなか興味深い。
『疑惑の影』(1943年)の「世間は豚小屋だ」
『ザ・シークレット・サービス』(1993年)の「正直者にはつらい世の中さ」
こんな感じのセリフです。
夜のシーンでの照明がいい。
見事にフィルム・ノワールになっています。
主演は東宝のスターでは他に誰がいい?
宝田明では明る過ぎ。
三船敏郎では三船敏郎にしか見えない。
平田昭彦では繊細過ぎ。
中丸忠雄では怪し過ぎ。
他に候補はないかな?
そんな感じで主演は仲代達矢でいいようです。
目玉がぎょろぎょろとし過ぎていますが好演していました。原作のイメージとは少し違うけどこれでいいのでしょう。
原作のイメージは背が高くて一見好青年風で特徴がない。こんな感じ。
東野英治郎は珍しく抑えた演技でした。
いつもはアクの強いやり過ぎ演技で目立つのですがこの作品ではそうではなかった。珍しい。
小泉博は他の作品とあまり変わらん。一応主人公の伊達邦彦と対比になるキャラのようです。
東宝のタイトルです。
飲み屋にて。
ブリキのオモチャロボットの話題で話し込む刑事3人.
小泉博扮する新米の真杉刑事
東野英治郎扮するベテランの桑島刑事
瀬良明扮するオモチャを買った岡田刑事
このロボットのデザインは『禁断の惑星』(1956年)からのようです。
夜の街路にて。
クルマの中から岡田刑事を呼び止めて射殺する男。
これが仲代達矢扮する伊達邦彦です。
東宝はどの作品で相変わらず同じ銃声の使い回しなのが難です。この作品でも同じでした。
クルマはアメ車です。シボレーとわかる。
タイトルとなります。
クルマの盗んで乗り換えて逃走する伊達邦彦です。
関東大学にて。
アジ演説をしている男は桐野洋雄が演じています。桐野洋雄の出番はこれだけです。
◆桐野洋雄の一世一代の当たり役はTVシリーズ『ウルトラマン』(1966年)での『来たのは誰だ』でのケロニアの後藤隊員でしょう。
アジ演説を聞いてるが冷めている大学職員2人の会話となります。
そこに授業料を滞納している武内亨扮する手塚がやってきます。大学職員にカネを払わないとクビにするぞと説教されています。
中村伸郎扮する杉村教授のゼミです。
学生が6人ほど。
遅れて伊達邦彦がやって来ます。
新しい人間とは?、殺人云々・・・
アメリカに5年いたという有名教授を中村伸郎が完璧に演じています。
見てて本物かと思いました。自分のことを「ボク」と言ってるのが本物っぽい。
杉村教授に週刊世界の記者山本が取材に来ます。
射撃の練習です。
抜群の腕前の伊達邦彦です。
現場にて。
岡田刑事の死体が発見されます。
新米の真杉刑事とベテランの桑島刑事。
ホテルにて。
一戦していた伊達邦彦と団令子扮する楠見妙子。
ラジオのニュースを聞いている伊達邦彦。
で、別れ話となっています。
警察の記者会見です。
清水一郎扮する捜査一課長のモットーは科学捜査です。これも建前ばかりの無能っぷりが本物っぽい。
22口径の拳銃。国防大学から盗まれたのか?
桑島刑事は捜査は勘だと言ってます。
真杉刑事の彼女はバーに勤めている。
バー ロリータにて。
白川由美扮する真杉刑事の恋人 峯洋子が登場。
真杉刑事から電話が入っています。
違法カジノにて。
ルーレットをやっています。
中村哲扮するボスのチャーリー陳は謎の中国人といった感じ。
佐藤允扮する用心棒三田
西村潔扮するはじきの安
の3人が登場。何とも東宝なキャストのギャング達です。ヤクザというよりギャングみたいに見えるので東宝なのです。
カネを運ぶチャーリー陳と用心棒三田。
待ち伏せの伊達邦彦。
偽刑事と称してことを始める伊達邦彦です。
用心棒三田を片づけて、カネの入ったバッグを奪い、チャーリー陳に説教しています。
表沙汰にしない方が身のためだカマしています。
アパートに引き上げる伊達邦彦。
バッグを切り裂いて中味を確認します。いくら?よくわからん。
アメリカ留学の書類。伏線となる描写も入ります。
違法カジノにて。
田武謙三扮するもぐりの医者薄田が用心棒三田を治療中。
チャーリー陳は用心棒を安とテツと言ってます。
イライラしているチャーリー陳です。何となくユーモラスです。
アパートの管理人にあいさつの伊達邦彦。
引っ越しをすると言ってます。
レンタカーを返す伊達邦彦。当時はドライブクラブと称していたようです。
貸しロッカーにバッグを入れる伊達邦彦。
警察にて。
捜査会議です。捜査は進んでいない。
2台目のクルマはヒルマンとわかります。わかったのはこれだけかい。
バー ロリータにて。
真杉刑事と峯洋子。刑事という身分は内緒にしてくれと言われています。
とうもみても尻に敷かれてる真杉刑事です。
で、花売りおばあさんをいじめる伊達邦彦となります。
歌って踊れと言ってやらせます。ここはかなりのシーンです。
それはいいけど目立ち過ぎるのではと思えます。このシーンは原作にはなかったような。脚本の白坂依志夫が追加したのかも。
後で伊達邦彦は花売りおばあさんのことを同情を売り物にしてるのが気に入らないと言っています。
関東大学にて。
キャンパスにて『おおブレネリ』を歌う学生達。何となく凄い描写です。この頃はこういうことをマジでやっていたのか?→体育会系よりはマシなのかも?
杉村教授にアメリカ留学のことを伝えてはいる伊達邦彦。
滝田裕介扮する何とかタイムズの記者 遠藤がやって来ます。
岡田刑事殺人の事件についてのコメントを杉村教授に代わってやっている伊達邦彦です。喋りまくる伊達邦彦。意外とよく喋るキャラになっています。→ナレーションがない脚本と演出になっているのもありますけど。
殺人の質が変わる。警察は考え方を変えないので役に立たない。等等・・・
競輪場にて。どこだ?後楽園?
負け続けている手塚。コンタクトする伊達邦彦。
ラーメン屋にて。
伊達邦彦と手塚。
身の上話しとなっています。悲惨な過去はお互いさまらしい。
警察にて。
真杉刑事と桑島刑事。
科学捜査の捜査一課長の話しが出ています。
まじめでは損をするだけだと真杉刑事と愚痴が出ています。
何とかタイムズの記者 遠藤がやって来ます。
杉村教授の代理コメントと同じ意見の真杉刑事。
関東大学にて。
真杉刑事が聞き込みにやって来ます。伊達邦彦は不在。
次に楠見妙子に会います。伊達邦彦について少しわかります。
ボクシングジムにて。
伊達邦彦に会う真杉刑事。
バーの男だと一目でわかった真杉刑事。
よく喋る伊達邦彦です。真杉刑事も喋ること。
で、最後は握手で笑い合うとこから溶暗で締めています。
夜の街中にて。
共同募金をこき下ろしている若い男2人から、伊達邦彦はオカマに声をかけられています。
ここで尾行に気が付きます。用心棒2人が尾行しています。
オカマを連れて他人のクルマで発進の伊達邦彦。タクシーで尾行の用心棒2人。
倉庫街で撃ち合いとなって用心棒2人を片づけます。
用心棒の大雑把な仕事ぶりでした。これではやられます。
クルマが派手に燃え上がります。これは映画ならではの描写です。
警察にて。捜査会議です。
使われたのは岡田刑事のS&Wのリボルバーと判明している。
違法カジノのチャーリー陳は国外逃亡した。
そんなわけでこの件はヤクザの出入りとなっています。
後楽園にて。
待っている手塚と会う伊達邦彦。
大仕事の相棒にするつもりのようです。
飲み屋にて。
真杉刑事と桑島刑事。
伊達邦彦のこと。こいつが犯人と力説する真杉刑事です。
物的証拠がないとダメと桑島刑事。
バー ロリータ前にて。
真杉刑事と峯洋子。
痴話げんかのようになりますが、結局どこかにしけこんだらしい。
何だか尻に敷かれそう真杉刑事です。
クルマにて。
伊達邦彦と手塚。
関東大学入学金強奪の話しとなります。
やる気満々の手塚です。
関東大学入学金強奪、当日の関東大学にて。
当時は入学金を現金で扱っています。そんなわけで金庫には札束がうなっています。
別室での杉村教授他2人の世間話が入ります。どうやら入学金のごまかしのないように見張る当直のようなことらしい。
入学金強盗が始まります。
遅れてきた入学者を装って事務所に入る手塚。
で、教授3人のいる部屋をダイナマイトで爆破する伊達邦彦。
事務所のシーンは斜めのアングルを多用しています。
教授3人を爆殺して事務所の職員と警官を皆殺しにしている2人です。やり過ぎなような。
クルマで逃走の伊達邦彦と手塚。
検問を簡単に突破します。
関東大学にて。
現場の真杉刑事と桑島刑事。
伊達邦彦の犯行と確信しています。で、どうする?
港でクルマを止める伊達邦彦。
酒を飲んで眠っている相棒の手塚を射殺します。
死体とともにクルマは海に落とします。
警察にて。
真杉刑事が伊達邦彦逮捕を進言するが捜査一課長はまだ勘だけではダメと言ってます。
捜査一課長はヘマをして自分のキャリアにキズが付くのを恐れているでしょう。
アパートに帰る伊達邦彦。
郵便受けに手紙が入っています。これが後でわかるけどアメリカ留学の合格の知らせでした。合格すればお金は免除になるんです。ムダな仕事をしてしまったようです。
刑事4人が押し掛けてきます。逃走する伊達邦彦。
楠見妙子のアパートに入る伊達邦彦。
昨日アンタの子供をおろしてきたと楠見妙子。痴話げんかになるのかと思ったがそうはならず。
そんなとこに刑事4人が押し掛けてきます。
何故か伊達邦彦のアリバイを証言する楠見妙子。
刑事達が引き上げた後で、いらなくなった2千万のバッグを楠見妙子に進呈する伊達邦彦です。
羽田空港にて。
パンナムのプロペラ旅客機でホノルル経由サンフランシスコへと向かう伊達邦彦。
逮捕するのか?そうはならずに結果的には見送りとなっている真杉刑事と桑島刑事。
空港から出た楠見妙子を尾行する真杉刑事と桑島刑事。
どこにいようが電話1本で奴を逮捕出来ると淡々と語る桑島刑事。
伊達邦彦を野獣ではない人造人間だと言っている真杉刑事です。とってつけたようなセリフで少し唐突な感じ。
旅客機内で食事の伊達邦彦。
飛び去るパンナムのプロペラ旅客機。
エンドとなります。これで終わりなのかい。余韻があり過ぎます。
捕まっていない主人公。よくこれで検閲が通ったものです。
そんなわけでよく出来た犯罪アクション作品でした。
松田優作主演の『野獣死すべし』(1980年)は大藪春彦原作はどこかに行って松田優作版の『野獣死すべし』となっていて比較は出来ません。
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