『牛泥棒』(1943年)
この作品はウィリアム・A・ウェルマン監督、ヘンリー・フォンダ主演の私刑物の異色ウエスタンのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1943年 20世紀フォックス アメリカ作品
ランニング・タイム◆76分
原題◆The Ox-Bow Incident
プロット◆偶然と群集心理で私刑に至る話しのようです。
音楽◆シリル・モックリッジ
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質はよいです。少し粒子が粗いけど。スクイーズ収録のフル表示。画面サイズはスタンダード。左右に黒味あり。
ノリはよかったが眠いのは相変わらずある。未見だとそんなに眠くならないのか?
音声はドルビーステレオ。元はモノラルです。
キャスト
ヘンリー・フォンダ→カウボーイのカーター
ハリー・モーガン→カーターの相棒アート
マーク・ローレンス→カーターと敵対するファーンリー
ハリー・ダベンポート→ハト派のデイビス
マット・ブリッグス→判事のダニエル・テイラー
ディック・リッチ→副保安官のメイプス
ジェーン・ダウエル→太った大女ジェニー・グリアー
フランク・コノリー→テトリー少佐
ウィリアム・アイス→テトリー少佐の息子ジェラルド
リー・ウィッパー→黒人のスパークス
メアリー・ベス・ヒューズ→カーターの知りあいローズ
ジョージ・ミーカー→S.F.のスワンソン
ダナ・アンドリュース→不運な3人組のドナルド・マーティン
フランシス・フォード→3人組の老人アルバ・ハードウィック
アンソニー・クイン→不運な3人組のメキシコ人 フランシスコ・モレス
ウィラード・ロバートソン→不在の保安官
この作品は有名なウエスタンなので見ました。クリント・イーストウッドのインタビューで印象に残るウエスタンとしてこの作品を出していたものあります。
ウィリアム・A・ウェルマン監督の演出はよいと思います。
全体的に普通に仕上げてあります。誇張した描写はない。
20世紀フォックス 当然モノクロのタイトル。それでもタイトル自体はホトンド変わっていないのは偉い。
タイトル。
1885年 ネバダ。と字幕が出ます。
カウボーイが2人やってくるとイヌが姿を現している。
ヘンリー・フォンダ扮するカウボーイのカーターとハリー・モーガン扮する相棒のアートが町にやってきます。
酒場に入り飾ってある絵の批評をしたり、牛泥棒の話しをします。
カーターはファーンリーとケンカ騒ぎを起こしたりもしています。バーテンに酒ビンで殴られてダウンするカーターで、ごく普通のカウボーイといった描写です。
早馬?で急の知らせが来て牛泥棒と殺しがあったと町は一騒ぎになります。殺されたのはキンケイドという男です。
盛り上がって追っ手を集めて吊るそうというのが多数意見となっています。
1人で行こうするファーンリーをハリー・ダベンポート扮するデイビスは止めています。
酒場で物ごいをしていた酔っ払いの太った男はさっそく吊るすロープを用意していたりします。
デイビスから頼まれて相棒と一緒にタイラー判事に話しをと行くカーター。
で、ブッチ・メイプスは呼ぶなと言われてる。
タイラー判事宅にて。
判事に会いに来たカーターとアート。
家政婦がいます。副保安官のメイプスもいます。これがうさん臭い男です。
リズリー保安官が不在なんです。判事はあまりやる気がありません。
吊るしたくてしょうがない追っ手志願者が集まっています。太った大女ジェニー・グリアーが登場。
デイビスに連れて来られて一応タイラー判事は捜索隊を止めるために説得をしています。
そんなこんなで結局説得されて追うのはやめることになります。
ですが、テトリー少佐なる人物が登場し牛泥棒に関する新しい情報を持ってきてまた盛り上がってしまい追っ手が出ることになってしまいます。
テトリー少佐は弱気な息子を男にしたいとなっている設定。
保安官は不在で副保安官のメイプスがこの場をし切っています。
でも皆の意見はバラバラでこれをまとめるまではなっていません。指揮系統が怪しい始末が悪い集団です。暴走するのは時間の問題といったところ。
そんなわけでデイビスはカーターに同行してくれと頼んでいます。
夜に追跡中となります。ロケがあります。崖のシーンは作画合成のようです。
何故かカーターと相棒アートも同行しています。
黒人のスパークスも同行しています。からかう相手が必要なのかお遊びで呼ばれているようなものです。
夜の崖の道で突然に馬車が登場していきなり撃ってきます。
アートが撃たれてしまいますが軽傷ですんだようです。
馬車からカーターと以前つきあっていたローズが登場します。S.F.のスワンソンと結婚しているとのこと。
夜の山道でローズとご対面のカーター。
大勢で大騒ぎしてるので落ち着かない状況です。旦那もいるし。
旦那のスワンソンと義理の姉のスワンソンが同行してるローズ。
追っ手は牛の群れを発見します。場所はオックスボウです。
3人組が寝ているとこを急襲して拘束します。
3人組のリーダー格がダナ・アンドリューズ扮するドナルド・マーティン。
フランシス・フォード扮する老人のアルバ・ハードウィック。
怪しいメキシコ人のフランシスコ・モレス。これをアンソニー・クインが演じています。カウボーイの癖に妙にキレイな感じなメキシコ風な服装でいかにも怪しげです。場違いでまるでサイレント映画のキャラのようです。
リーダー格のマーティンはキンケイドが死んだことを知りません。
さっそく吊るそうしますがデイビスとカーターは止めようとしています。
午前3:05にて。吊るしにかかりますが夜明けまで待つことになります。
本気というか冷静に勘違いしている人がいて、その一方では酔っ払いが余計なことを言ったりして吊るす方は完全にお遊びモードになっています。こういうのが相手では始末が悪い。リアルです。
いじめや理不尽な吊るし上げにあったことがある人には、この吊るされる側の気持ちが理解出来ると思えます。
保安官は何故来ないとカーター。
頼まれて同行したけどあまり役にたっていないような。
吊るされるを待つ3人・・・
手紙を書くマーティン。
食うメキシコ人。
呆然とする老人。
マーティンの手紙を預かったデイビスが善意で読んでくれとカーターに言いますが、マーティンは人に見せるなんて信用していたのにともめます。
この隙にメキシコ人が逃げますが捕まります。見るからに怪しいアンソニー・クインなら逃げるのは無理はないと説得力充分です。
ホワン・マルティネスはフランシスコ・モレスというお尋ね者だったりします。で、キンケイドのリボルバーを持ってたりします。
これで心証が益々悪くなっています。
ここで文字通りの立場を表わす多数決を取るシーンとなります。
反対の場所に立ったのはデイビスやカーター等の7人です。反対が7人とは結構多いなといった感じ。
件の息子も反対の場所にいます。
結果は縛り首となります。
もう夜明けとなり私刑は執行されます。
さすがに吊るされてるとこは直接見せずにシルエットで描写しています。
吊るし終わってから皆は引き上げます。
そんなとこに保安官が到着してキンケイドは死んでいなかったとわかります。
保安官は何をやったんだと問いただしますが、やった人数が多過ぎるのでこの件は不問としています。これだけで済んでいます。
大佐の自宅にて。息子を締め出す父。
ドア越しに息子が父をなじります。父はリボルバーで自殺します。
酒場にて。暗い雰囲気になっています。
相棒アートにマーティンの手紙を読めと言うカーター。アートは字は苦手と言うのでカーターが手紙を読みます。
ここは皆に聞かせるというのではなくカーターがアートに読んでいるのを成り行きで全員が聞き入ってしまうようになっています。この辺のバランスが微妙なとこです。
読み終わって非常に後味が悪い暗い雰囲気になります。
町中にて。
カーターは手紙を持っている。当然これから手紙を届けに行くのでしょう。
何故かここでまたイヌが登場しています。最初に出て最後も出てる。偶然のわけはないから演出なのでしょう。意図不明。
カーターとアートが町を出ます。
エンドになります。
ウエスタンなのに撃ち合いが全くなかったりします。話しの内容や展開もアメリカ人向けではありません。
この作品がアメリカではヒットしなかったというのはよくわかります。
ヘンリー・フォンダは主役というよりは傍観者といった感じでした。でも『怒りの葡萄』(1939年)よりよい作品なのでは。
ダナ・アンドリュースは大熱演でした。
ハリー・ダベンポートはどこかで見たおじいさんだなと思ったら『海外特派員』(1940年)に出ていました。
そんなわけでこれはまた珍しいウエスタンでした。
何でこんな作品を作ったのでしょう。確かに凄い作品でクリント・イーストウッドの好みだとは思えます。
時間は短いけど長く感じる作品です。つまらないわけではありません。
邦題の『牛泥棒』は間違いではないのですが直接的で何となくデリカシーに欠けるような感じがします。ならば原題のThe Ox-Bow Incidentを直訳して『オックスボウ事件』としてもウエスタンという感じしなくてピンとこない。いい邦題がないものか。
『オックスボウの牛泥棒事件』では、これも上手くないな。
« 『ゴースト・オブ・マーズ』(2001年) | トップページ | 『十二人の怒れる男』(1957年) »
「映画」カテゴリの記事
- 『彼らは忘れない』(1937年)(2022.02.27)
- 『ギャングを狙う男』(1953年)(2022.02.26)
- 『ブラック・リッジ』(2020年)(2022.02.20)
- 『フローズン・ストーム』(2020年)(2022.02.19)
- 『私は逃亡者』(1947年)(2022.02.13)
「1940年代」カテゴリの記事
- 『私は逃亡者』(1947年)(2022.02.13)
- 『生きてる死骸』(1941年)(2022.01.30)
- 『いのち短かし』(1947年)(2022.01.29)
- 『Gメン対間諜』(1945年)(2022.01.16)
- 『密輸空路』(1946年)(2022.01.15)
こんにちは。『牛泥棒』を観ながら情報を探していていきあたりました。『天国の門』と並んで、この映画を観ることができて良かったなと思ってます。
(邦題は、例えば『私刑 ~誰が彼らを吊るしたのか~』……ではNHK特集か何かみたいでしょうか(^^;))
そしてふと、親指シフトユーザーのかたであることに気づきました。
私はいま、FMV-830MG/Sという親指シフトノートでこれを書いています。家にはあと2台の親指シフトノートと、最近使っていないデスクトップにはRboard Proが繋がっています。
またときどき寄せていただきますね(っていうかRSSリーダー登録させていただきました)。
投稿: 幻灯機 | 2009.07.09 22:44
幻灯機さん、コメントありがとうございます。
幻灯機さんはちゃんと専用の親指シフトキーボードにしているのは偉いですね。
私はapple iMac 20inch 2.16GHz Intel Core 2 Duo(Late 2006)/MacOS10.5.7/tesla+PFU Happy Hacking Keyboard Lite2 for Mac 日本語配列かな無刻印 PD-KB220MA(teslaによるソフトエミュレーションの親指シフト配列)+ことえりの組み合わせでやっています。
親指シフトは入力の速さもありますが、日本語入力にキー配置が最適化されているコンセプトが気に入って使っています。
親指シフトに関してよくあるのが、親指シフトと昔はありましたとか、親指シフトを昔やっていたとか、親指シフト専用キーボードの値段が高過ぎるとか、そんなパターンが多いようです。
ですがウィンドウズやマックでも普通のキーボード(あまりスペースキーが長過ぎたりするとダメですが・・)とエミュレーションソフトで親指シフトが出来るのです。やる気があればお金をかけずにすぐに出来ます。
貧乏自慢的な文句を言う前に実践してほしいと思えます。
『牛泥棒』の邦題ですがやはり『オックスボウ事件』が無難ですかね。
これだとウエスタンな感じが出ないけど・・
投稿: ロイ・フェイス | 2009.07.10 20:21