『令嬢ジュリー』(1951年)
この作品はアルフ・シェーベルイ監督、アニタ・ビョルク主演の回想階級ドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
主演のアニタ・ビョルクが素晴らしいということで見ました。前から見たかった作品です。
1951年 スウェーデン作品
ランニング・タイム◆93分
原題◆Fröken Julie
プロット◆令嬢ジュリーの私は告白するといった話しのようです。
音楽◆Dag Wirén
スカイパーフェクTV311パワームービーにて。画質はまあまあ。
キャスト
アニタ・ビョルク→25歳の令嬢ジュリー
ウルフ・パルメ→下男のジャン
マルタ・ドーフ→召使いのクリスティン
リッシ・アランダ→令嬢ジュリーの母ベルタ
アンドレス・ヘンリクソン→令嬢ジュリーの父
アルフ・シェーベルイ監督の演出はよいと思います。
階級を皮肉に描写しています。結構アイロニーたっぷりで複雑に描写していました。
凄い省略で紹介ではそうなったとなっている令嬢と下男がセックスの関係を結んだとはわかりませんでした。そう思って見なければわからないほどです。
タイトルで窓辺のカゴの鳥とヒロイン令嬢ジュリーのショット。
私はカゴの鳥というモンタージュかと思ったらそうではなく、このヒロインは深窓の令嬢というわけではなくじゃじゃ馬な令嬢となっていました。
途中までは少女マンガみたいで、そんな感じの話しかと思えばそうでもなくなるのが面白かった。
夜を徹しての2人の告白合戦では下男のジャンは子供の頃に令嬢ジュリーに会っていたとなっていました。令嬢ジュリーの方は覚えていなかった。でもこれは後で嘘だと言ってました。
令嬢ジュリーと下男のジャン、2人の話したことは片方は嘘で片方がホントだったということのようです。だからといって対等になったというわけではない?互いに切り札を出して勝負しているといった感じでした。
ジャンはここを出て2人でホテルをやろうといいます。
本気で2人で出奔する気で令嬢ジュリーが持ち出した小鳥をじゃまだからと殺す位ですから出奔するのは嘘ではないように思えました。
ところが朝になってご主人様から用事があると呼び鈴が2回鳴るとジャンは元の下男に戻ってしまうのです。そのように仕込まれてきたからどうしようもないんだと。
この作品の白眉は回想から現実の戻る手法が面白いことです。
回想のシーンでカメラが水平に首を振ってパンすると現実に戻ってしまいます。カットを割らず、フェイドも使わずに戻ってしまうのが素敵です。この他にも面白い回想の入り方や戻り方がありました。
回想と現実が一緒に映ってるシーンもありました。これらの手法が満載で回想と現実を行ったり来たりして、言ってることが嘘だったりで全編悪い夢のような感じになっていました。それで悪い夢は悪いラストとなります。
この作品の回想と現実が一緒に映ってる手法はイングマル・ベルイマン監督の『野いちご』(1957年)でも使われています。
アニタ・ビョルクは一晩で燃え尽きてしまったという感じのヒロインを熱演していました。
乗馬シーンではきれいな移動撮影がありました。
令嬢ジュリーは高いところに上がって降りられなくな夢を見る。なんの象徴?
25歳という設定。普通のお嬢様育ちではなくて、エキセントリックな母の意向で色々と余計なことをやらされたりして屈折した性格となってしまったようで、結局母の影響から逃れられなかったということと思えました。ラストもその母の肖像で終わっていたし。
普通のメロドラマかと思って見たら、ぶっ飛びの悪い夢みたいな話しでビックリしました。これは凄い作品でした。
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