『嵐ケ丘』(1939年)
この作品はウィリアム・ワイラー監督、ローレンス・オリビエ、マール・オベロン主演のドラマです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
ウィリアム・ワイラー監督とキャストで見ました。ルイス・ブニュエル監督の1954年版とレイフ・ファインズとジュリエット・ビノシュ主演の1992年版を見ています。
1939年 サミュエル・ゴールドウィン・プロ アメリカ作品
ランニング・タイム◆105分
原題◆Wuthering Heights
プロット◆エキセントリックな性格同志が衝突する話しのようです。
音楽◆アルフレッド・E・ニューマン 音楽が甘ったるいとの評があるようですがその通りでした。今でもある、このパターンの音楽の付け方はイマイチです。
BS2衛星第2放送にて。画質はよいです。
キャスト
ローレンス・オリビエ→ヒースクリフ
マール・オベロン→キャシー
デビッド・ニーブン→キャシーの夫エドガー・リントン
ジェラルディン・フィッツジェラルド→エドガーの妹イザベラ
ヒュー・ウィリアムス→甲斐性なしのヒンドリー
フローラ・ロブソン→召使いのエレン
レオ・G・キャロル→召使いのジョゼフ
ドナルド・クリスプ→かかりつけのエドガー医師
マイルス・マンダー→道に迷ったロックウッド
ウィリアム・ワイラー監督の演出はよいと思います。
タイトルではウィリアム・ワイラー監督よりプロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンが最後に出ていました。監督よりプロデューサーの方が偉いんだということのようです。
脚本に有名な人が2人。チャールズ・マッカーサーとベン・ヘクト。
始まって道に迷ったロックウッドが嵐ケ丘の屋敷に来てキャシーの幽霊を見る。
その幽霊を追ってローレンス・オリビエのヒースクリフが外へ飛び出す。どうしてそうなったかを召使いのエレンがロックウッドに話し始めます。
40年前からの回想に入り回想が終わって最初のこのシーンにつながります。エミリー・ブロンテの原作は未読ですが相当はしょっているでしょう。ですがこのへんが脚本の腕の見せ所です。
エキセントリックなヒロインのキャシーと同じエキセントリックなヒースクリフの奇妙な関係に焦点を絞っているようでした。
このヒロインは上流社会の生活と野性的なヒースクリフの間を揺れ動いているようです。要するに勝手なヒロインなのですがそうは見えないようになっています。
やたらと溶暗になっている印象がありました。
19分で子役から交代していました。
ヒースクリフは1回出ていってすぐに戻りそれから嵐の夜にもう1回本格的にアメリカにまで出ていって戻ったことになっていました。出ていってるとこを省略してあるのでローレンス・オリビエは出ずっぱりでした。
ローレンス・オリビエは当時の御夫人方をしびれさせたものでしょう。無言のアップのショットだけでも絵になっていました。
マール・オベロンがミスキャストという評もありますが、これは残念ながらその通りのようでした。1992年版のジュリエット・ビノシュの方がまだ合ってるような。
当時で他の人なら誰がとなるとジェニファー・ジョーンズあたりでしょうか。
デビッド・ニーブンが出ていましたが、これがローレンス・オリビエの引き立て役というかそこまでもいってないようなキャラでした。デビッド・ニーブンは私が見る作品によく引き立て役で出ています。『青髭八人目の妻』(1938年)のゲーリー・クーパー、『気まぐれ天使』(1947年)ではケイリー・グラントのいい引き立て役でした。このぶんでいくとデビッド・ニーブンはクラーク・ゲーブルの引き立て役もやっていたに違いないと思えてきます。今でいえば少し前のふられ役専門のビル・プルマンのようです。
どこかで見たような顔と思ったらアルフレッド・ヒッチコック監督作品の常連(サポートで8作品も出ている)のレオ・G・キャロルが召使い役でした。レオ・G・キャロルなので怪しい召使いに見えてしまいます。
1992年版に比べるともっとシンプルな話しになっていました。
昔はこういうとこが優れています。上映時間も120分は越えていないし。何だかハッピーエンドのように見えてしまうのも昔ながらのハリウッドスタイルといった感じです。
そんなわけで結構期待して見ても満足出来たよい作品でした。
ベン・ヘクトといえば『風と共に去りぬ』(1939年)の脚本の1部を担当することになったエピソードが傑作でした。→ネタ元は植草甚一の映画の本です。どれかは忘れた。
夜中にいきなり叩き起こされたベン・ヘクトはプロデューサーのデビッド・O・セルズニック相手だと身体がもたないから1週間だけと契約し、いざ書く段階になってベン・ヘクトは「実は『風と共に去りぬ』の原作は読んでいないんだ」とかまします。激怒するデビッド・O・セルズニックですがもう契約してしまったものだから今更原作を読ませてもしょうがないとビクター・フレミング監督とプロデューサーのデビッド・O・セルズニックが各キャラを実演して見せて説明して、デビッド・O・セルズニックに「お前以外の字の読めるアメリカ人は全員読んでいるんだ」と罵倒されるのを聞き流しながらアシュレーなんてキャラはいらないのではボケをかましつつ第1稿を参考にして書いたとのことです。
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