『時計じかけのオレンジ』(1971年)
この作品はスタンリー・キューブリック監督、マルコム・マクダウエル主演の近未来暴力ドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1971年 スタンリー・キューブリック・プロ/ワーナー 英国作品
ランニング・タイム◆137分
原題◆A Clockwork Orange
プロット◆ヘマをした不良少年が復活する話しのようです。
音楽◆ウェンディ・カーロス他。
スタンリー・キューブリック監督作品なのに値段が安いので思わず買ってしまったDVDです。
ワーナー発売のDVDにて。画質は非常によいです。
以前あった例の黒丸のボカシがなくなっていました。ようやく普通に見られるようになりました。
フレームはビスタサイズ。サウンドはドルビーデジタル5.1ch仕様。以前のキューブリック作品はビデオだとTVサイズに限定していたのでは?宗旨替えしたのかな。オリジナルの音声もモノラルだったはずですけど。
キャスト
マルコム・マクダウエル→近未来不良少年アレックス
ジェームズ・マーカス→子分でボスを狙うジョージー
ウォーレン・クラーク→子分でデブのディム
マイケル・ターン→子分で影の薄いピート
シーラ・レイナー→若作りのママ
フィリップ・ストーン→普通の父
クライブ・フランシス→下宿人のジョー
パトリック・マギー→作家のフランク
アドリアンヌ・コリー→作家夫人
ミリアム・カーリン→金持ちの老女ミス・ウェザーズ
オーブリー・モリス→更生官のミスター・デルドイド
マイケル・ベイツ→バーンズ看守長
カール・デューリング→ルビドコ療法の首魁ブロドスキー博士
マッジ・ライアン→ルビドコ療法のブラノム博士・女性の助手
デビッド・プロウズ→ボディビルの男ジュリアン
ポーリーン・テイラー→精神科医のテイラー博士
アンソニー・シャープ→フレデリック内務大臣
ジョン・クライブ→暴力実演男優
バージニア・ウェザーウェル→誘惑実演女優
スタンリー・キューブリック監督の演出はよいと思います。
マルコム・マクダウエル扮するアレックスのモノローグで話しは進行します。
音楽はクラシックが多用されています。『アイズ ワイド シャット』(1999年)を見るとスタンリー・キューブリック監督は自分で作ったこの手法を越えることは出来なかったように思えました。
有名なシーンの連発です。しかも話しは早いし、だれるとこが全くありません。さすが名高い作品なだけはあります。
移動撮影が見事です。ステディカムはまだのはずですからドリーなのか?いずれにしても見事な撮影です。
スタンリー・キューブリック監督はこの作品でマルコム・マクダウエルを使って成功したのでスター俳優でなくても成功出来ると錯覚したのが運の尽き?だったのかも。
次作の『バリー・リンドン』(1975年)で主演をライアン・オニールを起用したのは完全にスタンリー・キューブリックの選択ミスと思えます。
現代の日本を思わせるホームレス?の酔っ払いの老人を痛めつけるアレックスがボスの4人組。殺したのかと思ったら違っていました。半殺しのようです。
同じ人種のビリーボーイの5人組と乱闘となります。
口上を言ってから乱闘へとなります。これが英国スタイル?さすが紳士の国の英国です。で、乱闘の方は圧勝していました。
背景がスクリーンプロセスでクルマを疾走させるアレックスがボスの4人組。
この近未来風クルマのベースになっているのは何でしょう?興味深い。
→調べたらこのクルマのようです。1970 Adams Probe 16
作家の家に侵入しようとする4人組。玄関のチャイムが『運命』なのがアイロニーが効いています。
入り込んだとこで有名なアレックスが『雨に唄えば』を歌いながらの作家夫人をレイプするシーンは強烈です。これは今見てもかなりなものです。
一仕事を終えて自宅に帰るアレックス。
クラシック好みの音楽のアレックス。近未来を表す描写でマイクロカセットらしき物で聞いてました。音楽とシンクロしたカット割りを見せてくれます。
アレックスの母は若作りしています。これが似合わないこと。若作りな母は今風ですね。予見していたのか。
アレックスの父の方はごく普通当たり前の外見です。これも何か意味があるのかな?
更生官のミスター・デルドイド。これがうさん臭い男です。未来を予見していたのか。こればっかり。
レコード店でナンパするアレックス。
有名な楽屋オチで店のレジには『2001年宇宙の旅』(1968年)のサントラLPレコードが見えたりします。
3Pでのセックスシーンはコマ落としなのですが音楽と画面がシンクロしています。
ここまでやっていたのかと感心します。凄いものです。
アレックスがボスの4人組ですが人間関係とイマイチのようです。
そこで俺がボスだというとこを見せつけるアレックス。
この後に金持ちの老女を狙う4人組。
強盗には失敗するは仲間(子分?)には裏切られはで捕まるアレックス。
取り調べでは、そこでも取り調べの最中にお茶ですよという英国調となっています。
何だかちょこちょこと入る英国調な描写がおかしい。
14年の刑となるアレックス。
刑務所に入所するシーンはこってりとていねいに描写しています。素っ裸で調べられるアレックス、ボカシなしです。これは見たくない。
猫をかぶって刑務所の牧師に取り入るアレックス。
この牧師はやはりゲイ?英国調です。
偉そうな方々が視察に来たとこでルビドコ心理療法に志願する(文字通りボランティア)アレックスです。
眼球にについて・・・
ルビドコ心理療法のシーンではマルコム・マクダウエルの眼球に傷が付いたとどこかで読んだような。カーク・ダグラスの自伝か?
ここでスタンリー・キューブリック監督はマルコム・マクダウエルに次の撮影に行こうで済ませたとのことです。
そうなると収まらないのがカーク・ダグラスで『突撃』(1957年)に出てやって、『スパルタカス』(1960年)では監督に雇ってやったのに、俳優に対してこの態度は何だとスタンリー・キューブリック監督のことを非難しています。
能力はあるけど偏屈なとこが共通しているこの2人、カーク・ダグラスとスタンリー・キューブリック監督は合いそうにもないです。
ルビドコ心理療法の結果発表会で実演させられるアレックス。
暴力とセックスを抑制する見事な結果となります。よくやるよマルコム・マクダウエルと感心する。演技より靴底をなめたりとやってることが凄い。
暴力の実演する相手の男の方はどうなんだいとなります。これは演技だから矯正はされないようです。
自由の身になったのものの家を追い出されホームレスの老人達に絡まれたりするアレックス。
あのホームレスの爺さんは死んでいなかったのか意外としぶとい。
かつての子分2人が警官になっていて、たっぷりとお礼参りをされるアレックス。洒落になっていません。
アレックスは水責めされますがホントに死んでしまうのでは思わせるほど長い時間水に漬かっています。
見てる方が水の中に何か仕掛けがしてあって呼吸が出来るようになっているのか?と思わせるほどです。でもそんな仕掛けはないでしょう。スタンリー・キューブリック監督ならそんなものはいらない次の撮影に行こうで済ませるでしょう。
どういう話しの展開だと見ている人を惑わせる、最初に戻る感じで例の作家の家に転がり込むアレックス。
この作家のフランクも尋常ではないキャラクターです。この作品のキャラクターはどれもカリカチュアされています。
で、『雨に唄えば』の歌から足がつくアレックス。作家の策略で病院送りにされます。このへんは近未来社会をさまようアレックスの物語といった感じです。
何だかんだで元に戻れたアレックス。
ところでこれはハッピーエンド?とアイロニーが効いています。
そんなわけで名高いだけはある傑作です。どうしようもないキャラが主人公なのに何故か後味がいいのが不思議なとこです。
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