『バルカン超特急』(1938年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレーブ主演の巻き込まれスパイ・サスペンスです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
この作品は『疑惑の影』(43年)を見て同じブルネットのヒロインが出ているのが見たくなり見ました。
1938年 ゲインズボロー・ピクチャーズ/ゴーモン・ブリティッシュ・ピクチャーズ 英国作品
原題◆The Lady Vanishes
IVC発売のDVDにて。画質は悪い。
プロット スパイ戦に巻き込まれる話しのようです。
音楽 ルイス・レヴィ
キャスト
マーガレット・ロックウッド→ヒロインでお嬢様のアイリス
マイケル・レッドグレーブ→英国青年ギルバート
ポール・ルーカス→スパイの親玉ハーツ医師
メイ・ウィッティ→消えた婦人フロイ
ベジル・ラドフォード→大柄でヒゲのチャーターズ
ノーントン・ウェイン→小柄で射撃の名手らしいカルディコット
エミール・ボレオ→ホテルのフロントのボリス
フィリップ・リーヴァー→マジシャンのイタリア人ドッポ
メアリー・クレア→黒幕の男爵夫人
キャサリン・レイシー→尼僧
セシル・パーカー→不倫中のエリック弁護士
リンデン・トラバース→不倫中のマーガレット
キャサリン・トレメイン→メイドのアンナ
この作品を配給したIPには偏見が山ほどあります。
邦題『バルカン超特急』は原題のThe Lady Vanishesとは全然関係ないではないか。だからIPは嫌いです。
大体この邦題だと私はTVシリーズの『ウルトラQ』(65年)の『地底超特急西へ』を連想してしまいます。
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
プロローグで雪崩の被害を受けた駅の全景はマット画にミニチュアで処理されています。
汽車が動きだしてからの車輪のアップや汽車全体のミニチュア全開の多用ぶりがいいです。本『映画術』によると本編セットは車両1台だけで撮ったとなっています。ホントなの?。
スクリーンプロセスが多い。モノクロでも合成がよくわかります。
で、私が結構好きなスティーブン・セガール主演のハチャメチャなアクション『暴走特急』(95年)は列車内のシーンが多くその内部からの外の景色はホトンドがブルーバック合成だと後で知ってビックリしました。
知らずに見てて合成とは全然わかりませんでした。この技術の進歩には驚きました。それに『暴走特急』は列車内セットシーンとロケシーンの画調が完璧に統一されています。この点もたいしたものでした。
ブライアン・デ・パルマ監督のスパイアクション『ミッション:インポッシブル』(96年)に引用されたシーンがあります。マイケル・レッドグレーブが列車の窓から外に出たところで対向列車が来て冷や汗をかくとこです。
ここはオリジナルの『バルカン超特急』は割とあっさりとした描写で、手がかりとなる場所を掴むクロースアップショットで入れていた『ミッション:インポッシブル』の方がスリルがあります。
ストーリー、設定がよいです。それからどうなるで楽しめる。
キャラがゾロゾロと出ていて一応グランドホテル形式のようです。
会話シーンの切り返しは全くやっていませんでした。これは意外でした何で?英国時代のヒッチコック監督は撮影のためのカネと時間と設備がなかったのでしょうか。
こういうとこを見るとヒッチコック監督は英国からハリウッドに行ってホントによかったと思いました。
ネタばれは早めなのはヒッチコック監督のセオリーです。ポール・ルーカス扮するハーツ医師の正体を早めにばらしてしまいます。
主演2人が知りあうのはホテルで騒音のことでもめたのがきっかけとなっています。何でもいいんですけどね。
英国というかヨーロッパのアメリカコンプレックスが出ています。
ヒロインが少し眠り込んで目をさますと婦人は消えているというわけです。
ユーモアたっぷりな格闘シーン。マーガレット・ロックウッドは加勢しようとしていますが全然役にたっていなかったりします。
クリケットが命の大柄でヒゲのチャーターズに小柄で射撃の名手らしいカルディコットの英国人2人はクリケットを見に行くために汽車が止められて英国に戻る予定が遅れてはかなわんと婦人は見ていませんと言って陰険な英国人ぶりを見せてくれます。でも意外と頼りになったりします。英国製作だから?
クリケットといえばCNNのスポーツニュースでよくやっていますがどこが面白いんだ?となります。
キャストがいい。
マーガレット・ロックウッドにマイケル・レッドグレーブ。やはりスターは違います。
ヒロインのマーガレット・ロックウッドはシャープなルックスがよいです。
ヒッチコック監督好みヒロインのタイプです。髪はブルネットですけで。声がカワイクてまた素敵です。横顔が素敵です。きれいな脚を見せてくれます。
マークの付いたよだれかけみたいなのが気になります。これは何かのファッションなのか寝てるからつけているのかよくわからん。
シルクのガウン姿が素敵です。声がカワイクてまた素敵です。
横顔が素敵です。ヒッチコック監督は横顔が素敵なのが好みのようです。
マイケル・レッドグレーブはヒッチコック監督好みのヒーロータイプの1つ。調子のいい、いい男です。
ヒッチコック監督の英国作品は何となく軽く、それにラフな感じです。
アメリカで撮った『レベッカ』(40年)、『断崖』(41年)のほうが英国っぽいような気がします。
『バルカン超特急』(38年)のリメイクのシビル・シェパード主演の『レディ・バニッシュ 暗号を歌う女』(79年)は、あまり出来はよろしくない。シビル・シェパードはいいんだけど。
タイトル
雪崩の被害を受けた駅です。
ここはミニチュアを使っています。俯瞰からホテルに移動して近づくカメラ。クルマを動くとこを入れるのが芸コマです。
カメラはオーバーラップでホテルの中に入ります。
列車は明日にならないと動かないとホテルのマネージャー。
争って受付に殺到する客人達。
マーガレット・ロックウッド扮するヒロインのアイリスが知人2人とホテルに戻ります。扱いがいい。
これをねたむ英国人の男2人。扱いが悪いのです。アメリカ人でドルを持っているからだと言ってます。メイドの部屋にされます。
クリケットの試合をやたらと気にしています。
キャラが大勢出ているグランド・ホテル形式にもなっているようです。
アイリスの部屋では3人でお喋りとなっています。
結婚間近らしいアイリスです。
英国人2人は食事へと向かいます。
その前にフロントの待たしている英国からの電話に勝手に出てクリケットの結果を聞いているヒゲの英国人。マンチェスターでやってるらしい。
無理に席を取る英国人2人。
相席しているのがメイ・ウィッティ扮する老婦人フロイです。
音楽教師をしている称しています。
騒音で眠れないアイリス。
フロントに電話して苦情を言います。
マネージャーが騒音の部屋に行きます。
マイケル・レッドグレーブ扮する英国青年ギルバートが登場。
メイドの部屋の英国人2人。
新聞を読んでアメリカ人が好きな野球のことをこき下ろしています。
アイリスの部屋に押し掛けているギルバート。
どうやら部屋を追い出されたようです。これで知り合うアイリスとギルバート。最初の印象は悪いようです。
ミニチュアでホテルのロングショットが入ります。
英国時代のヒッチコック監督は全景ではミニチュアをよく使っています。
外で歌っている男がやられます。
影を強調している。これはあまり伏線にはなっていなかったような。
翌朝の駅です。
列車が出ます。
ここで老婦人フロイを狙ったらしい落とされた植木鉢がアイリスに当たってしまいます。
発車します。
主観ショットで意識を失うアイリス。
客室で目を覚ますアイリス。
男爵夫人。
イタリア一家、イタリア人手品師のドッポ、夫人に子供。
老婦人フロイ。
そんな感じでキャラ紹介になっています。
食堂車です。
アイリスと老婦人フロイ。
私の名前はFROYと窓に書いてる。
ミニチュアの橋を渡る汽車のショットが入ります。
客室に戻るアイリス。
眠り込みます。
目を覚ますアイリス。老婦人フロイがいません。
他の客は「あなたは最初から1人だ」と言う。
捜しに食堂車に行くアイリス。
ここでも「あなたは最初から1人だ」と言われます。
列車の走るとこはライブフィルムも使用しています。
3等席らしいとこにいるギルバートと会います。
具合が悪そうなアイリスに助けようとギルバート。
ここでポール・ルーカス扮するハーツ医師が登場。アイリスの妄想とします。
男爵婦人に質問のギルバート。
不倫中の弁護士と亭主持ちのカップルに聞きますが知らないと言われます。
これは弁護士が面倒に巻き込まれるのが嫌でそうなったらしい。
英国人2人に聞きます。
クリケットの試合が心配でとぼけています。
で、ハーツ医師は適当なことを言っています。
老婦人フロイはいないということです。
駅で停車します。
列車の両側を見張るアイリスとギルバート。
ミイラ状態の患者と尼僧が乗ってきます。
発車となります。老婦人フロイはいない。
不倫中の女性が老婦人フロイを見たと言ってきます。
これで勢いがついて捜しに行くアイリスとギルバート。
客室に戻るアイリス。
あなたの知人はいましたと実際にいます。ですが服装だけは似ているけど老婦人フロイとは全くの別人です。
不倫中の女性は情勢が変わったのか証言を翻します。
こまる
客室に戻るアイリス。
同室の人達が老婦人フロイとオーバーラップする手法があります。
老婦人フロイのことは忘れようと食堂車へとアイリスとギルバート。
窓にはFROYの文字が残っていました。
話し込みます。アイリスが結婚間近だと知ってガックリしているギルバート。
トンネルを通過したら文字は消えていました。これはわけわからん。
ヒステリーなのか列車を止めるとアイリス。
ホントに止めてしまいます。失神するアイリス。
10分遅れたと文句のクリケットのことしか頭にない英国人2人です。
会話から老婦人フロイのことは知っています。もちろん黙っています。
窓から捨てられたゴミにハーブティーの包み紙を見るギルバート。
これでマジに捜す気になるギルバートです。
貨物車に入るアイリスとギルバート。
仔牛がいたりします。
手品師グレート・ドッポの立て看板を見つけます。
この件とどうなっていると話し込むアイリスとギルバート。
老婦人フロイの眼鏡を発見します。ここでイタリア人手品師のドッポが乱入してきます。証拠の眼鏡を盗られます。
乱闘となるギルバートとドッポ。アイリスは見てるだけ。加勢してるけどあまり役にたっていない。
何とか制圧して箱に入れたが手品師らしい手法でズラかるドッポです。
このイタリア人手品師のドッポですが吉本興行のタイゾーにそっくり。しょうもないダジャレは言ってない。
運び込まれて患者の部屋を覗くアイリスとギルバート。
尼僧なのにハイヒールは不自然だとアイリス。
味方だと思っているハーツ医師に相談するアイリスとギルバート。
食堂車にて。
ひたすら遅れることを心配している英国人2人です。
薬の入ってるグラスを強調するショットがあります。
で、結局飲んでしまうアイリスとギルバートです。
客室に戻ったとこで正体を表すハーツ医師。
眠ってしまうアイリスとギルバート。
実は眠っているふりをしていたギルバート。窓から隣りの患者のいる客室に移動します。
ここでスクリーンプロセスで汽車とすれ違うショットがあります。ここがブライアン・デ・パルマ監督のスパイアクション『ミッション:インポッシブル』(96年)に引用されたシーンです。
患者と尼僧の客室に入るギルバート。
尼僧は味方なのか?
患者は老婦人フロイでした。
で、どうする。
→偶然にやって来た老婦人フロイ替え玉を務めていた女性を患者にして、ギルバートは戻ってアイリスと寝たふりをします。
停車します。
軍関係者や兵隊で一杯です。
すり替えた患者が降ろされます。これはすぐにバレます。
対策を指示するハーツ医師です。
列車の1番前の車両と食堂車だけを残して後は切り離しています。
老婦人フロイに事情を聞こうとします。
ここで列車が支線に入ったことに気がつきます。
食堂車に行って事情説明をするギルバート。
列車が止まります。待ち伏せしている軍関係者。
交渉人が来ます。というより偽の事情説明に来たようです。椅子で殴打するギルバート。
この状況を信じない英国人2人ですが。ヒゲの男が撃たれて納得したようです。
撃ち合いとなります。結構戦力になる小柄な方の英国人です。
老婦人フロイは事情説明をして暗号を言付けてこの場を脱出します。
弾丸も尽きてきたので列車を逆進されて戻ろうとします。
投降した弁護士は撃たれてしまいます。
使われているハンドガンは・・・
リボルバーは中折れ式のエンフィールドかウェブリーだと思う。
オートマティックはブローニング1900。
ギルバートと小柄な英国人が機関車をハイジャックして逆進させます。
ポイントでは尼僧が切り替えます。
戻ったとこを脚を撃たれてしまう尼僧。怪我だけで済んだようです。
そんなこんなでどうやら逃げ切れたようです。
船→汽車→ロンドンとなります。
ようやく戻った英国人2人ですがクリケットの試合は中止でしたというオチ。
アイリスの結婚相手が来ますが隠れてしまうアイリスです。
外務省に入るアイリスとギルバート。
老婦人フロイが待っていました。
エンドとなります。
そんなわけでマーガレット・ロックウッドが可愛いのが印象に残るよい作品でした。
傑作というよりこぢんまりとまとまった佳作といった感じです。
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昔、この映画を観ました。15年位前かな。まさかあの、消えたおばあさんが・・・意外性が非常に面白い。
僕はヒッチコックの作品はたくさん観てますが、忘れているのも多い。でも一番すきなヒッチコック作品は北北西に進路を取れかな?見知らぬ乗客も面白かった。本当に迷惑な奴が居るねと思ったね。この映画を観てから電車の中で知らない人から話しかけられると無視しています(笑)特にテニスコートのシーンが印象的でした。
ヒッチコックの作品は意外性があったり、また手抜きが明らかなシーンがあったりと、そこら辺も気に入っています。
投稿: ディープインパクト | 2007.12.10 21:23
ディープインパクトさん、コメントありがとうございます。
平日は暇がないのでコメントが遅れました。
アルフレッド・ヒッチコック監督作品はどれも出来がいいですね。
セリフに頼らずに映画ならではな手法で見せてくれるがいいのです。
出来はともかくな作品でも見どころは1つぐらいはあるようです。
私はヒッチコック監督作品でどれが1番というのは決められなくて、どれもいいんじゃないとなっています。
投稿: ロイ・フェイス | 2007.12.16 16:00