『シャイニング』(1980年)
この作品はスタンリー・キューブリック監督、ジャック・ニコルソン主演のホラー・ドラマです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
スタンリー・キューブリック監督作品で見ました。以前にDVDで買っていたのをようやく見ました。これもキューブリック監督作品が1500円ならと思わず買ってしまいました。
この作品のことを原作者スティーブン・キングが「エンジンのないキャデラック」と酷評していますが、これは何をさしているのかと意気込んで見ました。
1980年 ワーナー 英国作品
ランニング・タイム◆119分
原題◆The Shining
プロット◆全力を尽くし晴れて冥界に行ける話しのようです。
音楽◆ウェンディ・カーロス+クラシック等。
ワーナー発売のDVDにて。119分版。画質は非常によいです。フレームはTVフルサイズ。音はドルビーデジタル5.1CH。TV放映やLD等で以前は入っていた忌々しいボカシは無くなっていました。これでようやく普通に見られるようになりました。
キャスト
ジャック・ニコルソン→最初から怪しげなジャック
シェリー・デュバル→ジャックの奥さんウェンディー
ダニー・ロイド→息子のダニー
スキャットマン・クロザース→ホテルのコックのハロラン
バリー・ネルソン→面接のアルマン
アリソン・コラーリッジ→アルマンの秘書スージー
バリー・デネン→ホテルのビル
ジョー・ターケル→バーテンのロイド
フィリップ・ストーン→ウェイターのグレーディ
リサ・バーンズ→グレーディの双子の娘#1
ルイーズ・バーンズ→グレーディの双子の娘#2
リア・ベルダム→237号浴室の女性#1
ビリー・ギブソン→237号浴室の女性#2
スタンリー・キューブリック監督の演出はよいと思います。
空撮で始まります。このシーンは美しいものです。この空撮シーンの一部は『ブレードランナー』(1982年)に流用されたのことです。
手持ちでも移動撮影が出来るステディカムを有名にした作品です。アルフレッド・ヒッチコック監督もステディカムを使えたらと思いますがヒッチコック監督は1980年に死去しました。
ホラーということでサスペンスではなくサブライズのビックリ系の演出となっています。
対象=シンメトリーな構図に凝るキューブリック監督。でも人間の顔は対象=シンメトリーではないのでは?と思えます。
『バリー・リンドン』(1975年)とは違ってスターのジャック・ニコルソンを使っているキューブリック監督。興業優先のためにスターに頼るということなのか。→『バリー・リンドン』のライアン・オニールはスターではなく大根役者でしょう。
コロラド山中のホテルが舞台となります。このホテルはインディアンの墓地があった土地に1907年に着工して2年後に開業したとのことです。
プロローグで1人で見えない友人としているすダニー。トニーと呼んでいます。
父親のジャックは仕事の面接があって、採用されて一家でクルマで仕事先のホテルに向かい、最初1日だけ説明を受けて、そして次の日から一家以外には誰もいないホテルとなります。話しはどんどん進みます。
ホテルに向かうクルマの中でシェラ山脈で遭難した幌馬車のドナー隊の話しをしていました。トンデモ・ホラー・ウエスタン『ラビナス』(1999年)のモデルにもなっている人肉を喰った事件です。音楽と空撮で怪しさ全開で一家はホテルに向かっていました。
息子ダニーはホテルに来た日に早速双子の女の子を見ます。
同じ超能力を持つホテルのコックのハロランと話しをします。ダニーの超能力シャイニングは予知と幻視とテレパシーが一緒になっているようで要するに何かを感じるとことが出来ることのようです。
女性の亡霊が住んでいる237号室のことは最初から触れていました。
初日から1ヶ月飛んでジャック・ニコルソンはどんどん怪しくなっていきます。
始まって30分でもうおかしくなっています。話しは早くていいです。ジャック・ニコルソンなので最初からおかしく見えるのもありますけど。
ダニーがホテル内を三輪車で走るシーンで床とカーペットで音が変わるのか印象に残ります。三輪車を追うステディカムのカメラが印象的です。
まだ雪がない時のホテルの庭にある迷路を俯瞰で撮るシーンは最初は絵かと思うとカメラが引くと実写となります。面白い撮り方です。
森林警備隊と無線で連絡をとる奥さんのウェンディー。これは後は出通信機が壊される前振りのようです。
予知から父親ジャック・ニコルソンにいじめないでとお願いする息子ダニー。親子には見えないような感じが凄い。
ここで息子ダニーとミッキーマウスのセーターを着ています。ディズニーがうるさいのではと見てる方は気になりますがスタンリー・キューブリック監督はそんなことは知ったこっちゃないでしょう。
このホテルの亡霊達は物を動かしたり首を絞めたり出来るようです。
これで息子ダニーにケガをさせた親父ジャックと誤解されることになるようです。ジャックは以前にも息子にケガをさせたことがあったとなっています。そう見えます。
唐突に登場するジョー・ターケル扮するバーテンのロイドはジャックをそそのかします。ジョー・ターケルといえば『ブレードランナー最終版』(1982年/1992年)のタイレル社長ではないですか。キューブリック監督作品では『突撃』(1957年)での見せしめで処刑される3人の歩兵の1人で出ていたはずです。
『現金に体を張れ』(1956年)にもチョイ役で出ています。
一方マイアミにいる超能力者派ハロランは予感を感じコロラドのホテルへと向かいます。コンチネンタル航空に乗っていました。映画でお馴染なパンナム航空ではないんだ。
ホテルの237号室の女性。この鏡に写っていたのを見たら亡霊の正体でしたというのは気持ち悪いシーンです。ここが1番気持ち悪かった。
有名なMUDERの逆文字のシーンがあります。これも印象的。
時々フラッシュバックで挿入されるエレベーターから血の海のシーンですが、これは液体の動きからわかりますがミニチュアではないようです。さすが完璧主義キューブリック監督は太っ腹です。
フィリップ・ストーン扮するウェイターのグレーディは実はこのホテルの前任の管理人です。真っ赤な内装のトイレ内で妻子にはしつけをしなくてはいけないと力説してジャック・ニコルソンを説得します。ところで何でトイレが赤い内装なの?
奥さんのウェンディは237号室で人を見たということで子供用木製バットを持ち歩くようになっています。このバットが役にたったりします。夫ジャックを叩きのめして乾燥食料倉庫に閉じこめてしまうのです。さすがに冷凍庫ではないようです。凍りづけはまだ少し早すぎる。
で、亡霊グレーディに倉庫のドアを開けてもらうジャック。もう少ししっかりしなさいと叱咤激励されていました。亡霊に自分の能力を疑われてしまったジャックはマジになってしつけをしようと斧をふるいます。ここが見せ所とジャック・ニコルソンが熱演していました。
夜の庭、雪の迷路にて。ジャックの追跡をまく息子ダニー。この足跡をループにして追手をごまかすのやり方は捕食動物に追われた被食動物ウサギと同じやり方です。
そんなわけで息子にまかれてしまうジャック。このシーンは見ててジャックの方が気の毒に見えたりします。それではいけないはずなのでは。私が特殊なだけなのかな。
全力を尽くしたのが評価されたのか無事に1921年の写真に入れたジャック。成果は1人で前任者より成績は悪いけど迫力を評価されたのかもしれません。
ジャック・ニコルソンは役名からしてジャックというのですか。作家には見えません。連続殺人鬼には見えますけど。
フルネームはジャック・トランスとなっています。なるほどトランスという名だからトランス状態となって斧を振り回すことになるわけですかと妙に筋が通っています。
ジャックの奥さんウェンディーを演じるシェリー・デュバルは何というかよくわからん感じでした。熱演は熱演ですが。危なっかしい走り方で見ててヒヤヒヤします。
スキャットマン・クロザース扮するホテルのコックのハロランは黒人というより先住民といった感じに思えました。
ジャック一家のクルマは黄色いワーゲン・ビートル。
雪上車って運転のやり方はどうなっているのでしょう。普通のクルマと同じなのかな。それとも戦車と同じなのか興味深いとこです。
よく考えてみれば私はスティーブン・キングの小説は読んだことがなかった。
ですから違いなんてわかるわけがありません。スティーブン・キング原作の映画ではキューブリック監督作品や『キャリー』(1975年)、『デッドゾーン』(1983年)等は見ていますけど。
「エンジンのないキャデラック」について・・・
こういう時は簡単にわかりやすくハートがないとかスピリットがないとすればいいのでは。これでわかったような気がします。そんな感じで「エンジンのないキャデラック」というのはハッキリとはわかりませんが要するに「ハートがない」でいいのかもしれません。
エンジンとはハートのことだ、これにすると「エンジンのないキャデラック」とハートがないことだとよくわかります。
そんなわけでスタンリー・キューブック監督は冷めていますとよくいわれますが、やっぱりそんな感じのよい作品でした。これほめてるの?
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