『ジキル博士とハイド氏』(1932年)
この作品はルーベン・マムーリアン監督、フレドリック・マーチ主演のジキル博士とハイド氏物のクラシックです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1932年 ルーベン・マムーリアン・プロ/パラマウント アメリカ作品
原題◆Dr.Jekyll and Mr.Hyde
ワーナーの1941年版とのカップリングDVDにて。画質はよいです。
プロット 変身のコントロールが効かなくなる話のようです。
キャスト
フレドリック・マーチ→ジキル博士/ハイド氏
ミリアム・ホプキンス→街娼アイビー・ピアソン、シャンペン・アイビー
ローズ・ホバート→ジキル博士の婚約者ミュリエル
エドガー・ノートン→執事プール
ホームズ・ハーバート→知人のラニヨン博士
ハリエル・ホッブス→ミリュエルの父 カルー将軍
ルーベン・マムーリアン監督の演出はよいと思います。
顔の正面のクローズアップショットを多用しています。
オーバーラップを多用しています。
舞台出身の監督ということで長回しが多い。会話シーンの切り返しはやっていません。
斜めにワイプがかかり途中で止まる手法がありました。同時に2つのシーンを描く舞台のままの手法かもしれません。
舞台の演出とはドラマの集約化でしたっけ?
確か原作では手配した材料に不純物が混じっていてこの不純物が変身する原因になっていて再び同じ材料を手配するのは事実上不可能という設定でしたが、この作品ではあっさりとカットされていました。原作を読んだときこの設定にはこれは凄いなと感心したものです。この不確定要素には戦慄を覚えます。ゾッとします。
主観ショットで始まります。オルガンを弾いています。ここから外出して講演するまで主観ショットで通しています。講演するとこで主観ショットは終わります。その他にもやたらと主観ショットが多い。結構効果的でした。
まずジキル博士のよい人格と悪いとまではいかなくても結構話せる性格も描写しています。
フレドリック・マーチ扮するジキル博士はどこから見ても立派な英国紳士です。
で、実験シーンを経てハイド氏になったときの落差が凄い。極限までカリカチュアされた下卑た男のメイクが凄くて、これはかなりなものでホントにメイクの下はフレドリック・マーチなのかと疑ってしまうほどの落差です。これだけでも一見の価値はあります。
変身シーンはオーバーラップに編集で処理。現在の撮影や特殊メイクの技術ならこの変身シーンだけはいくらでもよい出来になるでしょう。
「ガーターの締めすぎは血行に悪い」のセリフの繰り返しがありました。
ミリアム・ホプキンス扮する娼婦アイビーにジキル博士が言い、ハイド氏も言います。別人格でも記憶がオーバーラップしているようです。
ハイド氏になり雨を顔に受けるシーンがありました。自分は生きている証の描写なんでしょう。
ラストはハイド氏を追って大捕物アクションになってしまった。原作とは違っているのでは?ハリウッドは昔からこうなんですか。
ローズ・ホバートは白のイブニングドレス。ハリウッドヒロインのステレオタイプを演じています。
ミリアム・ホプキンスは当時として大胆なキャラだったのでしょう。
ハイド氏との絡みの描写はかなり強烈な描写でいい感じです。このハイド氏はホトンド、ヤクザです。
この作品のミリアム・ホプキンスが素晴らしかったので、これを見たイングリッド・バーグマンが無理言って1941年版でミリアム・ホプキンスと同じ役をやったのだと思います。
タイトル。
パイプオルガンを弾く主観ショットから始まります。
画面の4隅に少し黒味が入っています。丸く見えます。アイリスなの?
執事プールが登場。
鏡を見る主人。ここでフレドリック・マーチ扮するジキル博士が登場。
馬車で出かけます。御者のジャスパーが登場。
大学に着くジキル博士。
講演となります。変わり者で有名らしいジキル博士。
善と悪、2つの人格の話しです。
病連のジキル博士。
松葉杖のメアリーを歩けるように励ましています。
老女の患者ルーカスを手術することにするジキル博士。人格者として描写されています。
ホームズ・ハーバート扮するジキル博士の知人ラニヨン博士が登場。
ミュリエル家にて。
ローズ・ホバート扮するジキル博士の婚約者ミュリエルが登場。
ダンスとなっています。ワルツです。
遅れて到着のジキル博士。ミリュエルとダンスとなります。
庭に出て話し込みます。ミリュエルにプロポーズするジキル博士。
ラニヨン博士と歩いて帰宅のジキル博士。
結婚を許さないミリュエルの父 カルー将軍に対して愚痴が出ます。
街中で女を助けるジキル博士。
ミリアム・ホプキンス扮する街娼アイビー・ピアソンが登場。
ヒモ亭主に殴られていたらしい。
アイビー・ピアソンのアパートにて。
診察するジキル博士。ガーターのことを言ってます。
ここで、ドレスをまくり上げて、靴を脱ぎ、ガーターを外し、ストッキングを脱ぐアイビー・ピアソン。
当時としてはかなりな描写となっています。
ラニヨン博士と歩いて帰宅のジキル博士。
オーバーラップが入りまた来てねと描写が入ります。
歩きながらラニヨン博士とまた議論のジキル博士。人格を切り離すと称しています。
自宅研究室のジキル博士。
また主観ショットが入ります。
出来たばかりの薬を鏡の前で飲むジキル博士。
回るカメラ。オーバーラップ。
で、ハイドとなります。「自由だ・・」と言っています。ホントに自由なの?
プール執事がやってきます。ジキル博士に戻って「ここにいるのはハイド氏だ」と言い訳しています。
ミュリエル家にて。
ジキル博士とミリュエル。
父とバースに旅行だとミリュエル。結婚は少し待ってと言ってます。
自宅研究室のジキル博士。雨の夜。
旅行は1ヶ月の延期との手紙で届きます。
薬を飲むジキル博士。
ハイド氏になります。変身のシーンは中々なものです。基本的にはオーバーラップのみです。
研究室の裏口から出かけるハイド氏。
アイビー・ピアソンのアパートに向かうハイド氏。
不在でした。おばさんから聞いてミュージックホールに向かいます。
ミュージックホールにて。
アイビー・ピアソンを探すハイド氏。
シャンパンを持ってきたチップはやらんとウエイターを手ひどく扱うハイド氏。
アイビー・ピアソンを見つけるハイド氏。
他の客に歌うアイビー・ピアソン。歌うことが売りのようです。
アイビー・ピアソンを呼びつけるハイド氏。
口説いてるらしいハイド氏。ガーターのことを言っています。
ジキル博士の自宅にて。
ラニヨン博士が訪ねてきます。不在なジキル博士。
アイビー・ピアソンのアパートにて。
隣りのおばさんとアイビー・ピアソン。ハイド氏に関する愚痴が出ています。
そんなとこにハイド氏がやってきます。おばさんを追っ払うハイド氏。
ハイド氏は新聞を読む。ミリュエル親子がロンドンに戻ると載っています。
アイビー・ピアソンを言葉責めにするサディストなハイド氏。
2.3日いなくなるとハイド氏。少し安心させる。
ここからまた責め立てます。アイビー・ピアソンに歌わせるハイド氏。当時としてはかなり強烈な描写と思えます。
そんなとこでもガーターのことを言うハイド氏。何で知ってる?となります。
自宅研究室のジキル博士。
プール執事にもう裏口のカギはいらないと言うジキル博士。
アイビー・ピアソンのアパートにて。
また、おぱさんと愚痴のアイビー・ピアソン。
プール執事が手紙を届けます。50ポンド入っています。
ミリュエル家にて。
ジキル博士とミリュエル。
言い訳のジキル博士。すぐに結婚しようと言っています。
父と口論のジキル博士。
結局ミリュエルの説得もあって来月結婚となります。
帰宅するジキル博士。
嬉しくてパイプオルガンを弾いて執事に聞かせています。
アイビー・ピアソンが来ていると執事。
会います。ハイド氏のことを本人に相談するアイロニー。
ハイドにやられたと背中のキズを見せるアイビー・ピアソン。
「口にだせないようなこと」と言っています。
「2度とハイドは現われない」とジキル博士。本人が言うのだから間違いはないでしょう。
全体的にセリフがよく書き込まれているような感じがします。
1シーンの終わりには溶暗が入っています。
画面を斜めにワイプをしてシーン転換となります。
ミリュエル家のディナーで正式発表となります。
その前に公園を散歩するジキル博士。
小鳥を襲うネコを見て勝手にハイド氏に変身してしまうジキル博士。
もう変身のコントロールが効かなくなってることがわかる象徴的なシーン。この作品を見事にシンボル化しています。
ミリュエル家にて。
ディナーになってもジキル博士は来ない。
アイビー・ピアソンのアパートにて。
来ないはずのハイド氏がやってきます。驚愕のアイビー・ピアソン。
ジキル博士のことを全部知っているハイド氏。当然とはいえアイロニーがあります。
「俺がジキル博士だと」ハイド氏。アイビー・ピアソンの首を絞めます。
見つかって逃走するハイド氏。気の毒なアイビー・ピアソンはこれで退場となります。
自宅研究室に戻るハイド氏。
カギがないので裏口から入れないハイド氏。
正面玄関から執事に締め出されて入れないハイド氏。
酒場からラニヨン博士にメッセージを出すハイド氏。
ラニヨン博士家に入るハイド氏。
成り行きでラニヨン博士にハイド氏からジキル博士に戻るとこを見せます。
前口上がいい。セリフが書き込まれています。
「真実を見よ」のセリフで友人の前で元に戻ります。→スカイパーフェクTV260シネフィルイマジカの放映ではあった「真実を見よ」のセリフですがDVDではこのセリフはなかった。残念。
オーバーラップでジキル博士に戻ります。
ジキル博士に対して助けられないと冷たいラニヨン博士。宗教的なのが大きい理由のようです。
自宅のジキル博士。
新聞にはアイビー・ピアソンが殺されたと載っています。
ミリュエル家にて。
ピアノを弾いてるミリュエル。
訪れたジキル博士はミリュエルに別れ話をします。
去るジキル博士。
ですが家の窓の外からミリュエルを伺うジキル博士。
ここでまた勝手にハイド氏に変身してしまいます。
中に入り込んでミリュエルに近づくハイド氏。当然大騒ぎになります。
アクションとなります。父を撲殺するハイド氏。これはかなりジキル博士の心情が入ってるようです。別の人格はどうした?と面白い。
ハイド氏は逃げます。
ジキル博士の自宅に逃げ込むハイド氏。
研究室に入りジキル博士に戻りハイド氏は逃げたと言ってごまかそうとします。
そんなとこにラニヨン博士が来て正体をバラします。冷たい友人です。
全員注目の中で勝手にハイド氏に変身してしまうジキル博士。これは凄いシチュエーションです。
アクションとなりますが撃たれます。死に至るハイド氏。
死体となったハイド氏、ジキル博士に戻ります。
エンドとなります。
そんなわけでフレドリック・マーチの熱演がよく、これはなかなかよく出来た作品でした。
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