『悦楽共犯者』(1996年)
この作品はヤン・シュワンクマイエル監督の風変わりな群像ドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1996年 チェコ=英国=スイス作品
原題◆Spiklenci slasti
英題◆Conspirators of Pleasure
スカイパーフェクTV260シネフィルイマジカにて。画質はよいです。
プロット 人それぞれに自分なりに奮闘する話しのようです。
音楽 オペラが使われていましたが私には全然わからない。他に流れるワルツは何となくウルトラシリーズの音楽のような感じがしました。
キャスト
Petr Meissel→アパートの髪の薄い男ピヴォイネ
Jirí Lábus→書店主クラ
Gabriela Wilhelmová→アパートの中年女性ロウバロヴァ
Barbora Hrzánová→女性郵便配達人マールコヴァ
Anna Wetlinská→女性ニュースキャスター アンナ・ウェトリンスカ/ヒゲ男夫人
Pavel Nový→ヒゲ男ヴェトリンスキー
ヤン・シュワンクマイエル監督の演出はよいと思います。
これコメディなのでしょう。と見てました。セリフ無しだと途中でようやく気がつきました。これで最後まで引っ張っていった。これはたいしたものです。
本屋にて外の道路からの音を大きく入れています。もちろん意図的にやっているのでしょう。その他にもノイズを入れていました。
ディテール凝りすぎの撮り方。しかしまあていねいにクローズアップショットを入れています。感心しました。
カットバック全開となっています。コマ撮りアニメも。
途中でそのコマ撮りが多用されていました。
妙に後ろ暗い人達がそれぞれに奮闘していました。なにやってんだいと感心してしまいます。TVを見ているよりはいい。
この国の現実の地上波TVを見て喜怒哀楽をコントロールされて、わかったつもりになっていても、実は何もわかっていない。そんな地上波TVを見てる状態よりはマシです。少なくともクリエイティブです。
とんでもないことをしていますが何か生産しているのがいい。
女性ニュースキャスターに入れ込む本屋の男。
鳥になる男。等々。
この女性ニュースキャスターの名はTV画面でAnna Wetlinskáと出てました。本人が本人役で出ているようです。
機械の類いが古いこと。
エレベーターのボタンがタッチ式になっていないとか。タッチ式になったからといってメリットは感じないけど。
装備は古いけど一応そろっているのが正直言ってうらやましい。
多数の手でなでなでされる機械ですが実際には本物の手で処理されているようです。まだそこまで技術が追いついていないようです。
白いワゴンが猛烈なスピードでバックで入るとこはスタントドライバーがやっていました。編集で切り替わっていました。
タイトルです。英題となっています。
タイトルバックは春画のようです。
頭のはげ上がった中年男ピヴォイネが書店に来ます。
ポルノ雑誌を買います。
書店店主はハンダごてで何やら作っています。
表のクルマの音がよく聞こえます。
ピヴォイネのアパートです。
ジェームズ・ディーンのポスター。他にジャン・クロード・バンダムのポスターもあります。ゲイなのか?
ポルノ雑誌を妙に真面目に見ています。ホントに真面目に見ているのです。
戸棚には何がある?意味あり気に映ります。
その戸棚に入ります。
来客です。郵便でした。女性配達人が届けます。
手紙には「日曜日に」とだけ。手紙を燃やします。
今日は木曜日のようです。
郵便の女性配達人はアパートの階段の影に陣取ります。
パンを丸めて小玉にしています。
ピヴォイネは傘を買いに出かけます。雑貨屋にて。
店内には怪しげなヒゲ男がいます。鍋?のフタを見ています。
書店店主は自室でTVを見る。ソニーのTVです。
女性ニュースキャスターがお目当てのようです。Anna Wetlinskáと名前が出ています。もしかして本人なのか?→そのようです。
色々な電気仕掛けを作っています。何を作っていると話は進みます。
アパートにて。
ピヴォイネは別室の中年女性にニワトリを処理してもらいます。
ニワトリの血を取って保存しています。
自室でニワトリの羽を抜いてるピヴォイネ。
ニワトリの血は風船に入れて保存します。
粘土でニワトリのヘッドを造形しています。実に熱心にやっています。
ヒゲ男は工事現場で刷毛を物色中。
次は雑貨屋でゴム製の指キャップを物色中。
その次はエレベーター内で他の中年女性から毛皮を1部切り取り手に入れます。
パン製の小玉を飯盒に入れる郵便の女性配達人。
ピヴォイネのニワトリのヘッドは完成しつつあります。
グラビアで外を貼って仕上げています。どういうセンスなんだと興味深い。
プジョーの白いワゴンで帰宅するヒゲ男。
バックで勢いよく入れています。
これを2階から見てる女性。どうやら夫人で女性ニュースキャスターのようです。
作業所で何かを作っているヒゲ男。オペラが流れます。
書店主は自室で何か作っています。
作り物の手にマニキュアを塗っています。本格的です。
TVを見てて映ってる女性ニュースキャスターを手動でアップにしています。どういう仕掛けなんだ?と興味深い。
アパートにて。
中年女性が出かけます。これを見ているピヴォイネ。
で、中年女性の部屋に侵入するピヴォイネ。何が目的かと思ったらミシンが目的だったようです。傘を解体して何やら作っています。
で、室内を物色して何やら持ち出しています。結構大胆な人です。
街中にて。出かけた中年女性はワラを集めています。
ロウソクを買います。
魚を手に入れてる2Fの女性。
何本も手を取り付けている書店主。
19日の日曜日となります。
出かけるので弁当を作っているピヴォイネ。鍋等の道具が使い込まれいること。
色々な仕掛け物を作って運ぶようです。
中年女性も出かけます。
ヒゲ男は何かが足りないと大急ぎでワゴンを飛ばします。
毛皮の女性を見つけてクルマは駐車してカミソリを準備して歩いて追います。
荷物を抱えて出かけるピヴォイネ。
クルマを盗みます。これがヒゲ男のワゴンだったりします。
中年女性はどこかの建物内に入ります。
ロウソク3本に点火。戸棚に入ります。
郵便の女性配達人のアパートです。
帰宅して風呂に入るようです。
ピヴォイネのワゴンは荒れ地へと到着します。
何をするつもり?
椅子、人形、ロープ等々。ニワトリヘッドを付けてコスプレするピヴォイネ。
作り物の手にレースの手袋を着ける書店店主。
中年女性は人形相手にSMの女王様となります。
人形の回りを走り回るコスプレのピヴォイネ。
各人それぞれ熱心です。実に熱心なのです。
郵便の女性配達人のアパートです。
ベッドにて。鼻の穴にゴム製チューブを突っ込んでパン製小玉を吸い取ります。
耳の穴に漏斗を使ってパン製小玉を入れます。
仕上げに鼻の穴と耳の穴にパン製小玉でフタをして寝ます。
朝になって入れてあったパン製小玉を放出する郵便の女性配達人。そんなことが出来るのかいと突っ込みたくなります。もしかしてこの作品はSFなのか?
一段落したとこで昼にしているピヴォイネ。
人形の頭に血の入った風船を載せます。
2階の女性に小包が届きます。
配達しているのは件の女性配達人。
小包の中味は件のパン製小玉です。
ヒゲ男と2階の女性がベッドで同衾の図。どうやら夫婦らしい。
でも疎遠な関係のようです。
ヒゲ男は作業所へ急行する。
女性はバケツにいれてある魚2匹をなで回す。
ヒゲ男は作業所にて。
ブラシ、毛皮、羽、ゴム、釘、画鋲、等々のフェチらしいヒゲ男。
魚にパン製小玉を与える2Fの女性。
人形に石を落とすコスプレのピヴォイネ。
仕掛けてあって血がが流れます。これでフィニッシュのようです。
女性ニュースキャスターは出演の準備のメイクです。
カットバックして書店主はTVを見る準備です。
準備OKの書店店主。TVのニュースが始まります。
電気仕掛けの装置が作動開始となります。
多数の手がなで回してくれます。TVを抱きしめている書店主。幸せそうです。実に幸せそうなのです。
使用済みの荷物を燃やすピヴォイネ。
引き上げます。荷物がないので帰りはクルマは不要です。
書店主が製作した、多重なで回しの手ですが、メインの機能は手コキの仕掛けのようです。
TVスタジオでも乱れている女性ニュースキャスター。
足下には魚が2匹。足の指を魚にくわえられています。
エピローグ。
微妙にコンタクトしている人達。
何となくプロローグに戻っているようです。
順繰りにやっていることが交代しています。
ピヴォイネがアパートに戻ると中年女性が死亡しています。
死因は石が落下したらしい。
ヒゲ男の刑事がいます。この刑事の方が怪しいのが面白いとこです。
自室に戻るピヴォイネ。
戸棚の中は?と引っ張って余韻を残してエンドとなります。
次から次へとつながる展開は何となくマックス・オフィルス監督の『輪舞』(50年)の引用と思えたりします。
それとは別に何となくウルトラシリーズのアダルト版といった感じがしました。
そんなわけで登場キャラがそれぞれ傍から見れば怪しげなことに全身全霊を尽くしているのが素晴らしい。これは傑作です。
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