『華氏451』(1966年)
この作品はフランソワ・トリュフォー監督、オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ主演のSFドラマのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1966年 Vineyard Film Ltd/ユニバーサル・ピクチャーズ 英国作品
ランニング・タイム◆112分
原題◆Fahrenheit 451
プロット◆本をめぐって色々ある話のようです。
音楽◆バーナード・ハーマン
◆1966年、この頃のバーナード・ハーマンにはアルフレッド・ヒッチコック監督との不幸な別れがあったのです。これを思うと何か複雑な気分になります。
ユニバーサル・ピクチャーズ発売のDVDにて。
画質は普通です。これで十分。
スクイーズ収録の
画面サイズはワイド。上下左右黒味なし。フルスクリーン。
音声はドルビーデジタル 2.0ch
キャスト
オスカー・ウェルナー→消防士のモンターグ
ジュリー・クリスティ→教員志望のクラリス/モンターグ夫人リンダ
シリル・キューサック→隊長
アントン・ディフリング→消防士のフェビアン
老婦人→ビー・ダッフェル
マーク・レスター→少年 どこに出てた?
この作品はレイ・ブラッドベリ原作とフランソワ・トリュフォー監督で見ました。
フランソワ・トリュフォー監督の演出はよいと思います。
撮影はニコラス・ローグ。
何故か全編ITC風です。英国のパインウッドスタジオで撮ったからこうなった?
溶暗使用。使われ方は意味不明だったりします。
どこでロケしたのかいかにもモダンな感じがします。モノレール、住宅等。
ITCのTVシリーズ『プリズナーNo.6』(1967年)みたいな感じがしないでもないけど。パトリック・マクグーハンが出てくるかと思った。
タイトルはナレーションで処理してます。
これは本がない世界を表す描写だそうですが英語のヒアリングが出来ないので私には字幕のお世話になるため本来の効果がなくて意味がない状態でした。これはしょうがない。
演出は結構ヒッチコックの手法を使ってるようです。『定本 映画術―ヒッチコック・トリュフォー』のインタビューをしていた頃だから無理はないか。
会話のシーンは長回しを使ったり切り返したりとよくわからん。でも引っ張ります。
TVを見ているとこからベッドへとシーン転換は上手です。
半分黒味は何でしょう?
移動するカメラは付かず離れずの手法を守っています。偉い。
まあ、本『映画術』を出版した頃だし。
フランソワ・トリュフォーは主演のオスカー・ウェルナーと上手くいってなかったこと、ラストの雪は偶然降ったことを、まだこの映画が見れない頃にのメイキングの本『ある映画の物語』で読んだ覚えがあります。
ところでオスカー・ウェルナーってSF作家の星新一に似ているような。
この作品でファイヤマンの黒い服の男が星新一の短編では白い服の男になっているような気がします。ホントか?設定が似てません?
星新一は『華氏451』(1966年)を見ています。
自身のエッセイでこの作品について書いていました。当時は活字と映像はどちらが影響力があるか議論となっていて。この作品では本(活字)が大事なことが映画(映像)でわからせているのがアイロニーがあると書いていました。
ジュリー・クリスティは見事に2役してました。
ショートとロングのヘアスタイル。どちらも素敵でした。
ショートカットにとっくりのセーター、赤いジャケット、プリーツのスカート。近未来的1960年代ファッションが素敵です。
ジュリー・クリスティの2役は別人にしか見えません。
髪形だけではなく長髪の方はアイメイクを濃くしたりしているようです。これが効果的なのかもしれない。
押収した本を重さのキロで言うのが何となく凄い。
本のタイトルや中味には意味がないということですか。アイロニーが効いてる。
この作品の中で燃やされる本の中で私はレイ・ブラッドベリとエドガー・アラン・ポオくらいしか読んだことがないです。
レイ・ブラッドベリの原作は読んでいます。
2004年当時ではブラッドベリはまだ健在のようです。何でわかったかというと勝手にタイトルに使うなと『華氏911』(2004年)にクレームを付けたからです。
タイトル
Universal Pictures (1966) (USA) (theatrical) (as A Universal Release)
Vineyard Film Ltd. (as An Enterprise Vineyard Production)
TVアンテナのズームアップするショットと合わせてキャストやスタッフをナレーションで紹介してしいます。
この作品の設定に合わせてあるわけです。
タイトルが終わったらすぐに出動するシーンになっています。
クルマの移動はコマ落としのような感じ。
音楽はやっぱりバーナード・ハーマンそのものです。
最初の出動から手入れを受ける側で、
知らせの電話がかかってきたときはカットを割って対象に素早く寄るカメラの『鳥』(1963年)の段階クローズアップを使っています。
男が逃げます。
捜索して本を見つけます。TVの中に本が隠してあるのはアイロニーがあります。
本を焼却します。オスカー・ウェルナー扮する消防士=ファイヤマンのモンターグが登場。文字通りの火を付ける男というわけです。
モノレールで帰宅するモンターグ。
ジュリー・クリスティ扮するショートカットのヘアスタイルがいい女性が話しかけてきます。
窓の外の景色の合成がイマイチなのが惜しい。ジュリー・クリスティの美しさがスポイルされています。
会話で灯油をケロシンと言ってます。
ブラウンのコートに青いミニスカートのジュリー・クリスティ。見習い教師のクラリスを演じます。
帰宅するモンターグ。
奥さんは同じジュリー・クリスティが演じるリンダです。こちらはロングのヘアスタイルです。わかりやすい2役となっています。
私にはあらかじめ知らないと2役とは思えないくらよく2役しています。マジでどうやっているのかわかりませんが見事に2役しています。
リンダ夫人は巨大なワイドスクリーン薄型TVを見ています。
モンターグは新聞のマンガを読んでいます。
本が燃やされましたとニュースが流されています。本のことをキロで言ってるのが凄い。重さにしかすぎないということです。
視聴者参加番組に参加するリンダ夫人。これは日本では無理な設定です。
スクリーンTVですが現在の薄型TVとホトンド同じです。
このぐらいの薄型TVは普通に売っています。
現実の日本はプロパガンダニュースと白痴バラエティ番組を放映してます。この映画より凄い。
消防署にて。
モンターグは新米を指導する立場です。途中で呼ばれて昇進の話し等。
帰宅するとリンダ夫人が倒れています。
電話して男が2人来ます。血を入れ換えるらしい。見せないけど服が脱がされている描写が入っています。
目を覚ましたリンダ夫人は忘れています。やたらと元気になってセックスに至ります。
TVではプロパガンダを流しっぱなしとなっています。
日本の現実とそんなに変わらんような感じがします。
現実の日本の地上波TVでは・・・
お涙頂戴なナレーションに音楽。
画面外からの笑い声。
大げさなナレーションに音楽。
日本語放送なのに日本語字幕が入る。字幕で強調したいだけ?そんなわけがない。
配給されるニュース。ニュースとは起こるものではなく配給されるものになっています。
日本では地上波TVを見て喜怒哀楽をコントロールされて、地上波TVを見てわかったつもりになっていても、実は何もわかっていません。
そんなわけで現実の方がぶっ飛んでいます。
夜、隠した本を読むモンターグ。
ディケンズの『デビッド・コパーフィールド』です。
モンターグを尾行する女性2人。クラリスと老婦人。
クラリスがモンターグに相談を持ちかけます。教師見習いを首になったとのこと。
相談しながら通報者=密告者を見ている2人。
茶のコート、黄色いブラウスのクラリス。
モンターグは休みですと電話をかけるクラリス。
モンターグとは不仲の消防士フェビアンがこのずる休みを見てたりします。
通報者はインフォーマーと言ってます。インフォーマットになるとどういう意味になるんだ?、こんなタイトルの映画があったような。→『インフォーマント!』(2009年) The Informant!
英語はシンプルです。日本語のカタカナになると発音も意味も全く違うのがこまったものです。まあそう仕向けているんでしょう。
学校に行くモンターグとクラリス。
最初に出てくる生徒がロバート。逃げます。Kevin Elder →Robert - First Schoolboy (uncredited)
次に出てくる生徒が Mark Lester→Second Schoolboy (uncredited)となるようです。
クラリスはもう学校にはいられなくなってて、泣くクラリスです。
モンターグの自宅ではリンダ夫人が本を見つけて口論となります。
出動です。
何故か上り下り用ポールが使えないモンターグ。
古い家で多量の本があります。例の老婦人がいます。
モンターグに本について解説をする隊長。
で、自ら本に火を付ける老婦人です。このシーンを上手く撮ればもっとよくなったような感じがします。アクション描写は全然ダメで無理なフランソワ・トリュフォー監督です。
モンターグの自宅にて。
リンダ夫人の知人3人の前で演説をするモンターグ。続いて本の朗読もします。
知人は帰り、夫人はモンターグをなじります。これで夫人から愛想を尽かされるようです。
夢を見るモンターグ。
『めまい』(1958年)風でした。学校の廊下ではカメラを後退させながらズームアップする手法 逆ズームもあります。
おばあさんの家で火をつけるのがクラリスになっているのが夢ならでは。
音楽もそのまんまです。同じバーナード・ハーマンだし。
ある夜、クラリスと伯父の家に手入れがあります。
クラリスは天窓から逃亡します。この家は閉鎖となります。
で、モンターグは隊長室の書類を勝手に調べます。
ここを隊長に見つかってしまい昏倒するモンターグ。結局この空いた家が欲しいのかで済んでしまいます。
リンダ夫人はモンターグを密告します。
モノレールでクラリスに会うモンターグ。
閉鎖された家に向かいます。目的の住所録を見つけて燃やします。
ここで森の人々の話しが出て、別れます。
モンターグは隊長に辞職すると申し出るが最後の出動だと無理に付き合わされます。出動先はモンターグの自宅だったりします。
到着したところ入れ替わりでリンダ夫人が出て行きます。
で、隊長を火炎放射器で燃やすモンターグです。
このシーンもアクションシーンはてんでダメなフランソワ・トリュフォー監督です。
フランソワ・トリュフォー監督にアクション描写を要求するのは、八百屋に行って魚を求めるようなものだとわかっていますが物足りないものは物足りない。
ドン・シーゲル監督やサム・ペキンパー監督を見習った方がいいようです。それは無理ですか。
逃亡するモンターグ。
しかしオスカー・ウェルナーの走り方がイマイチ。女の子みたいな走り方なんです。トム・クルーズみたいに走らないとダメです。
話しに聞いていた通り線路沿いを歩いて移動します。
ボートに乗って森を歩くともう目的地に着いてるモンターグ。
目的地に着いたらリーダーのスタンダールの日記の男から説明をされます。
モンターグ逮捕射殺の実況中継を見るモンターグ。視聴者は待ちくたびれている。そんなわけで容疑者を仕立てる。アイロニーが効いています。
ところで私が暗記するならレイ・ブラッドベリの『火星年代記』がいいな。
一通り他の人達を紹介したとこでクラリスがやって来ますが気がつかなくて通り過ぎる。
ようやくクラリスの方が気がついてコンタクトしてきます。
エドガー・アラン・ポーの『怪奇と幻想の物語』を担当するモンターグ。
おじいさんから少年に本を引き継いでいるシーンがはいります。
シーン転換すると雪が降っています。これは撮影時のアクシデントでそのまま撮ったわけです。
雪が降る中を朗読しながらすれ違う人達。
エンドとなります。
現在、現実では買う価値のない本ばかりです。私はジャンク本と呼んでいます。この方が問題です。
フランソワ・トリュフォー監督自身がこの作品をよくないと言ってるのは主演のオスカー・ウェルナーと上手くいってなかったことがあるからでしょう。
そんなわけで傑作まではいかないけど悪くはない出来の作品でした。
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