『暗殺者の家』(1934年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督の暗殺サスペンスです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1934年 ゴーモン・ブリティッシュ 英国作品
DVDにて。画質はそれなりに悪い。
プロット 暗殺騒動に巻き込まれる話しのようです。
音楽 アーサー・ベンジャミン
キャスト
レスリー・バンクス→主人公のローレンス
エドナ・ベスト→ローレンスの奥さんジル
ノーヴァ・ピルビーム→娘のベティ
ピーター・ローレ→暗殺団のリーダー アボット
ピエール・フレネー→ジャンプの選手ルイ
フランク・ボスパー→クレー射撃のライバル、レイモン
ヒュー・ウエイクフィールド→ジルの弟で協力者のクライブ
ジョージ・カーゾン→外務省のギブソン
ヘンリー・オスカー→歯医者のバーバー
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
『暗殺者の家』という邦題が何となくいいのだ。どこがいいのかというとよくわからないがとにかくいいのです。不思議な雰囲気の語感な邦題だ。
少女連続殺人鬼を演じた『M』(31年)で有名なピーター・ローレが暗殺団の首領です。他にはゲイな怪しい男を演じてる『マルタの鷹』(41年)もあります。
この作品では中々不気味でユーモアもあるキャラでいい感じ。髪にメッシュを入れています。お洒落じゃないですか。
オルゴールの鳴る時計のような物を持っててその音とともに登場します。で、オルゴールの音で退場となっています。
ここではホトンド子役な主人公夫婦娘役のノーヴァ・ピルビームは『第三逃亡者』(37年)のヒロインで出てます。
タイトル。
旅行のパンフレットをめくる図。
スイスのサンモリッツにて。
ジャンプ競技のシーンから始まります。犬が飛び出して転倒のジャンプの選手。
このジャンプの選手ルイがスパイで殺され役。
レスリー・バンクス扮する主人公のローレンス。
ノーヴァ・ピルビーム扮する娘のベティ。等が登場
ピーター・ローレ扮する怪しい男アボットはもう出ています。連れの女性もいます。
次にクレー射撃競技のシーンに移ります。
ここで出てくるエドナ・ベスト扮するローレンスの夫人のジルがクレー射撃の選手。そのライバルはポマードで髪を固めてる男。このライバルが暗殺時に狙撃手になる。忙しく設定作りに努めています。
怪しい男アボットもいます。射撃の邪魔をしている。
クレー射撃の選手を狙撃手に雇うとはなんというかシンプルとういうか合理的というか面白いものです。
スイスのホテルにて。英国人は自国のことをブリティッシュと言ってた。イギリスなんてどこから出てきた用語なんだ?
夜、パーティです。
毛糸のほぐれるお笑いの一席。
怪しい男アボットもいます。
ここで窓に弾痕が、それで撃たれる男。ジャンプの選手ルイが撃たれます。
ジルに伝言をするルイ。
ローレンスがその伝言の84号室に入ります。
ブラシからメモを回収する。
部屋からでたとこで拘束されるローレンス。
事情聴取となります。
先に聴取されているジル。待ってるローレンス。ドアが開く時だけジルの声が聞こえる手法はもう使われてました。アルフレッド・ヒッチコック監督得意の手法です。ルーティンな手法でもあります。
ローレンスにメモが届きます。
子共は誘拐したと早速届く脅迫状。話しは早い。ランニングタイムが75分しかないから話しはどんどん進みます。30分で、もう暗殺は今夜決行となってます。
ジル夫人にメモを見せて聴取を中断させるローレンス。
ジル夫人が失神するイメージ。→ぐるぐると回ります。めまいのイメージでしょう。
英国、ロンドンです。ローレンスの自宅にて。
事情聴取を受けるローレンス。
別室で待機のジル夫人とヒュー・ウエイクフィールド扮するジル夫人の弟クライブ。叔父になるようです。
鉄道模型のおもちゃがあります。
警察関係は帰ったが外務省の男が残っていました。
ジョージ・カーゾン扮する外務省のギブソンが殺されたルイはスパイだと話します。暗殺の標的は某国大使のロパ氏とのことです。
電話です。
脅迫の電話でした。「・・・娘の命はない」とルーティンな展開。
外務省の逆探知で公衆電話の位置がわかります。
ローレンスとクライブは出かけます。
メモに従って歯医者に入ります。
クライブが患者になります。次にローレンスが患者になり中に入ります。
時計のオルゴールの音がして怪しい男アボットが登場。
歯科医に眠らされそうになるローレンスですが逆に歯医者を眠らせます。
歯医者の振りをして様子を窺うローレンス。
誰か来ます。ポマード男のレイモンでした。怪しい男アボットと打ち合わせとなります。これを聞いてるローレンス。
街中にて。
怪しい男アボットとレイモンを尾行するローレンスとクライブ。
礼拝堂に入ります。キリスト教ではなく新興宗教のようです。
賛美歌を歌いながら会話をするシーンがあったりします。
女教祖が話しをしています。
催眠術にかかるクライブ。
時計のオルゴールが鳴って怪しい男アボットが来ます。
ここで乱闘になるシーンがありますが、銃声はダメとの制約の設定をあって。乱闘の音を消すためにオルガンが演奏されその中で椅子の投げ合いが行われます。なんだいこりゃと面白い。
クライブは警察を呼びに出られたがローレンスは捕まります。
電話競争の図。
クライブの方が先にジル夫人に電話がつながりました。
ロイヤル・アルバート・ホールへ行ってくれと伝言となります。
女教祖の電話は一足遅くメイドから「夫人は外出されました」となります。
クライブはお巡りを連れて礼拝堂に戻ります。
ですが逆に訴えられて連行されてしまいます。
礼拝堂内にて。
ローレンスと娘のベティが再開の図。
レコードがかけられて暗殺のタイミングのリハーサルの図となります。狙撃をする前振りのシーンです。曲はクラシックです。よくわからん。私は音楽ネタは全くダメです。それでもミュージカルは好きだったりしますけど。
ロイヤル・アルバート・ホールにて。
演奏が始まります。
ジル夫人が回りを見回すショット。主観ショットと見ている本人を切り返すヒッチコック監督得意の主観ショットカットバックはまだありません。
礼拝堂内にて。
ラジオ中継を聞いてる暗殺団一味。
ロイヤル・アルバート・ホールにて。
シーン転換の妙がありま。ジル夫人の主観ショットのフォーカスがぼけていくとこに狙撃の銃身のクローズアップにつながります。ヒッチコック監督の若々しいショットと思えます。
狙撃に使われているハンドガンはモーゼル・ミリタリーでした。
暗殺失敗の描写はあっさりとしたものでした。
リメイクの『知りすぎていた男』(56年)とは大きく違います。
逃げる狙撃者レイモン。礼拝堂に戻ります。
ロイヤル・アルバート・ホールからのラジオ中継を聞きながら確認する暗殺団一味の図。未遂と報道されて暗殺は失敗とわかります。
回りは私服警官がうろついているようです。
当時としてはかなりショッキングな銃撃戦開始の描写。
お巡りがドアをノックします。ドアが開いたとこを踏み込む手はずでしたが、あっさりと撃たれます。
上官の命令で暗殺者の家の玄関ドアまで行った気の毒な警官はいきなり射殺されてしまいます。英国の警官は銃を携帯してないんです。
撃ちまくる一味。
『定本 映画術―ヒッチコック・トリュフォー』で言ってる近くの銃砲工場からのトラックから銃を渡すショットが見られます。これは英国の警察は銃を使わないという当局からの圧力でこうなったそうです。
このシーンで警察はやもえなく武器を使用することになってしまったとメンツが立つということのようです。そうするといきなり射殺の気の毒な警官のシーンは圧力に対する抵抗で入れたのかもしれません。
実に簡単に被弾する描写はキツイ。そんな感じでこの作品は簡潔な描写で統一されています。何でそうなったかは単に検閲のせいでしょう。
銃撃戦の準備のディテールが凝っています。
付近の民家を緊急のためにお巡りが使うシーンで意味もなく下着姿の女性のショットがあるのは、さすが英国の変態監督の面目躍如です。
この下着姿の女性を追いだしたら警官に「まだ暖かいマットレスだ」なんて言わせています。ヒッチコック監督は今はやたら持ち上げられているが当時としては興業だけはいいが品性下劣なゲテモノ監督という評価だったと思います。
女教祖が撃たれます。
ようやく弾薬箱を引っ張ってきたのにあっけないものです。
ローレンスがベティを連れて逃げようとするが見つかります。
屋上に逃げるベティ。追うレイモン。ローレンスは被弾して軽傷ですが倒れています。
で、クレー射撃の選手というヒロインの特徴を生かすラストとなっています。いきなり銃を借りて命中させている。これは唐突でした。
礼拝堂に踏み込む警官隊。
時計のオルゴールの音がしたあとで銃声がしてアボットが自殺となります。
親子3人が再会してエンドとなります。
これは佳作です。
そんなわけでランニングタイムも短く簡潔な描写のよい作品でした。
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