『三十九夜』(1935年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、ロバート・ドーナット、マデリン・キャロル主演の巻き込まれサスペンスのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1935年 ゴーモン・ブリティッシュ 英国作品
ランニング・タイム◆83分
原題◆The 39 Steps
プロット◆殺人犯と間違われて追われる話しのようです。
音楽◆ヒューバート・バス
IVC発売のDVDにて。画質はそれなりに悪い。スクイーズ収録のフル表示。画面サイズはスタンダード。左右に黒味あり。
キャスト
ロバート・ドーナット→間違えられた男リチャード・ハネイ
マデリン・キャロル→巻き込まれたパメラ
ルーシー・マンハイム→殺されたアナベラ・スミス
ゴッドフリー・ティアール→スパイ組織のボス 教授
ペギー・アシュクロフト→農家の若い夫人マーガレット
ジョン・ローリー→マーガレットの嫉妬深い夫
ウィリー・ワトソン→ミスター・メモリー
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
全体的な印象としては慌ただしい感じです。なんでだろ?
要所で溶暗を使っていました。
セットにカネがかかっていません。滝の裏側に隠れるシーン等。
これを見ているとヒッチコック監督はホントにアメリカに行ってよかったねとなります。ハリウッドはカネだけはかけられるから。これにヒッチコック監督の腕前が加わって抜群の出来になる訳です。で、ハリウッドはカネだけはかかってて出来の悪い作品がホトンドだったりします。これは昔も今も同じです。
ミニチュアが例によってあります。
スクリーンプロセスのクルマが発進してカットを割ってセットに実物のクルマがやってきます。ヒッチコック監督のミニチュア好きはハリウッドに来ても変わらんかった。スクリーンプロセスも同じく。
一応脚本で伏線を張っているようです。
ヒッチコック監督は映像有線で視覚オンリーだと思っているから意外な感じもしたりする。
キャストで・・・
おそらくロバート・ドーナットはヒッチコック監督の最初のお気に入りのスターでしょう。結局出演はこの作品のみになってしまいましたが。。ヒッチコック監督は『定本 映画術―ヒッチコック・トリュフォー』でこのことをロバート・ドーナットと契約してたプロデューサーのせいにしていました。
マデリン・キャロルもヒッチコック監督のお気に入りでしょう。
ヒロインのマデリン・キャロルは素敵です。眼鏡を掛けて登場するのはヒッチコック監督のルーティンな手法です。
ストッキングはガーターで止めています。これを見せてくれる、ヒッチコック監督得意の英国の変態式ディテールです。
いきなりキャストが表示されます。
これだけで本編となります。
英国、ロンドンにて。ミュージック・ホールです。
ロバート・ドーナット扮するリチャード・ハネイが登場しています。意味あり気に足下を撮っています。
ミスター・メモリーが登場。次々と質問に答えて行きます。
「メエ・ウエストの歳は?」
「ウィニペグは何処?」
ウィニペグはモントリオールから何キロ?で、答えは日本語字幕ではキロと出ていますが、発音はマイルと言ってます。英国はキロなのでは?
ケンカ騒ぎが起きます。大騒ぎとなります。
銃声がします。また大騒ぎ。
ミュージック・ホールを出るリチャード・ハネイ。
女性と知りあいバスに乗ります。
アパート ポートランド・プレースにて。
中に入ってとりとめのない会話となります。
電話がかかってくるが出ないでと女性。アナベラ・スミスと名乗ります。
2人の男に追われていると言ってます。
機密とか怪しい話となります。
外にはマジで怪しい男2人がいます。
スパイ組織39階段の話をするアナベラ・スミス。
ボスの男には右手小指の先がない。
スコットランドの地図。会う男がいる。
夜が更けてリチャード・ハネイが寝てるとこにアナベラ・スミスが来る。
背中にナイフが刺さっていて死に至ります。地図を握りしめています。
電話です。これには出ないリチャード・ハネイ。
アナベラ・スミスから伝言のフラッシュバックが入ります。
朝です。
アパートを出るリチャード・ハネイ。
牛乳配達に事情を話して制服を借ります。悪戦苦闘して事情を説明するが、結局殺人ではなく不倫ということになっていました。
駅です。スコットランド行きの列車。
乗り込んでいるリチャード・ハネイ。
尾行2人は乗り遅れます。
列車内にて。
途中停車したとこで新聞を買った他の客。
新聞にはアパートの殺人のニュースが載っています。
AM07:00に死体が発見されたとのこと。
借りた新聞を読むリチャード・ハネイの主観ショットがあります。
走行中の列車内にて。
車内をお巡りが調べています。
マデリン・キャロル扮する眼鏡の女性とキスしてここをごまかすリチャード・ハネイですが、すぐにこの女性がお巡りに通報して追われることになります。
逃げるリチャード・ハネイは貨物車へ。
急停止する列車。鉄橋上です。
降りたリチャード・ハネイは橋の柱にしがみついています。この鉄橋はフォース橋というらしい。特徴的なよい形をしています。橋の資料本があるので調べればわかるはず。
列車は走り出します。
リチャード・ハネイは手配中とニュースに流れています。
丘陵地帯です。
歩いてるリチャード・ハネイ。農家の男と話し込みます。
スクリーンプロセスがクルマが走りセット内にやってきます。
結局、ここに泊まることにするリチャード・ハネイ。
農家のオヤジには若い嫁さんがいます。何故かこの嫁さんが若くて美人。
食事前にこの夫人マーガレットと話し込むリチャード・ハネイ。
食事の前のお祈りとなります。宗教に支配されています。やだね。
キリスト教でガチガチに縛られています。
オヤジが誤解するシーンが面白い。
新聞を気になるリチャード・ハネイ。自分のことがしっかりと出ています。
ここの新聞にフォース橋と載っていました。
これに気がつく夫人のマーガレット。目配せするリチャード・ハネイ。
目配せを勘違いする夫。
と、説明セリフ抜きの面白いシーンになっています。
この誤解のシチュエーションはよい。見てて笑えます。ここを視覚的に上手く見せてくれます。
オヤジの方は納屋を見に行くと外に出てすぐに中を覗いてるのです。
何で嫁さんがあんなに美人なのかが不思議です。
夜中に起きる夫人のマーガレット。
寝てるリチャード・ハネイを起こします。
誤解した夫も起きてきます。
警察がやって来ます。応対する夫。
逃げるリチャード・ハネイ。夫のコートをもらいます。
ここで始めて夫人の名がマーガレットとわかる。
スコットランドの丘陵地帯を逃げるリチャード・ハネイ。
捜索隊が追います。ミニチュアのヘリコプターが1ショットあります。
どうやら、ここはすでにアル・ナ・シェラのようです。
屋敷に入るリチャード・ハネイ。
ここをアナベラ・スミスの知人ということで訪ねるリチャード・ハネイ。
最初に玄関に出たメイドさんが可愛い。
ここは組織の親玉 教授の自宅でした。娘さんは可愛い。
奥さんはルイーザ。次女のパトリシア。長女のヒラリー。
ここの主人と話します。
お客が大勢います。
眺めがいいと外を見ると警官が山狩りをやっています。
パーティで殺人の話しが出ています。
お客が帰り、主人と対峙するリチャード・ハネイ。
教授と対峙するリチャード・ハネイ。
小指の先がないのが黒幕だと言うリチャード・ハネイ。
で、それを見せる教授、右手小指がなかったりします。これはビックリとなります。
ゴッドフリー・ティアール扮するスパイ組織のボス 教授には余裕があります。喋り方は何故かレイ・ミランドのような感じ。いいじゃん。
さてどうしますといった感じになります。
で、唐突に撃たれるリチャード・ハネイ。倒れます。溶暗となります。
撃たれたとこで先ほどの農家のシーンになっています。
オーバーは盗られたと言えばいいのに嫁さんは。正直に言って殴られています。
貰ったコートには聖書が入っててそれで助かったと前振りがあります。
警察にて。
パーティにも出ていた町の有力者シェリフと話している撃たれても助かったリチャード・ハネイ。この件の事情を訴えています。
警察が来ます。相手は聞いてる振りして時間稼ぎをしているだけでした。
手錠をかけられるが逃げるリチャード・ハネイ。
右手に手錠のまま逃亡するリチャード・ハネイ。
集会所に逃げ込んていきなり演説をさせられます。結構受けていたりします。
リチャード・ハネイはカナダの外交官なのだから演説は苦手ではないようです。
何故か演説は大受けしています。
運悪く列車で乗り合わせていたマデリン・キャロル扮するパメラがいて、また通報しています。
演説が終わったとこで刑事2人に連行されるリチャード・ハネイ。
クルマに乗せられます。なぜかパメラも乗せられます。
2人がクルマで連れていかれるシーンで・・
クルマの中からパンニングしてクルマの外に出るとこを1シーンに見せて描写しています。多分オーバーラップでつないだだけだと思う。上手いじゃん。
羊の群れに遭遇して止まるクルマ。
手錠でつながれてしまうリチャード・ハネイとパメラ。
このままで逃げます。
追われて滝の裏側に隠れるリチャード・ハネイとパメラ。やりすごします。溶暗となる。
クルマから手錠につながれた2人が逃亡するとこのセットは貧乏臭い。
まるで日本映画みたいです。英国映画の予算は日本映画並みか?
手錠につながれたまま徒歩で移動しつつリチャード・ハネイとパメラは口論になっています。
宿に入ります。手錠でつながれたままです。
部屋に入ります。駆け落ちということにしているリチャード・ハネイ。
手錠は外れないリチャード・ハネイ。
パメラがストッキングを脱ぐショットを丁寧に撮っています。
ストッキングはガーターで吊っています。
この頃はパンティストッキングはありませんから当たり前なのです。
このストッキングを脱ぐシーンをしつこく撮っています。さすが元祖英国の変態監督です。
ベッドでとりとめのない話をしているリチャード・ハネイとパメラ。
でたらめな身の上話をしているリチャード・ハネイです。
教授の屋敷にて。
ロンドンに出かける教授。家族は仕事のことは承知のようです。これもフォーマットになっています。
宿です。夜中にて。
手錠を外すことに成功するパメラ。無理に抜いただけです。
ハンドガンだと思っていたのはパイプでしたとなっています。
部屋を出て下を伺うパメラ。男2人が来ています。例の刑事2人です。
電話の話を聞いてるパメラ。ロンドン、パラディアム劇場。
これでリチャード・ハネイの話しが事実と知るヒロインです。
逃げずに部屋に戻って眠るパメラです。
朝です。
起きるリチャード・ハネイ。刑事2人が来ていたと話をするパメラ。
パラディアム劇場へと行くことになります。
ついでに何で早く言わないんだと口論になってるのもいい。
ロンドンスコットランドヤードにて。
スコットランド・ヤードにて。
パメラが事情説明中。紛失した書類はないの一点張りの当局。
ここを出るパメラ。当局の尾行が付きます。
パラディアム劇場にて。
パメラが入ります。
廻りは警察が大勢詰めかけています。
リチャード・ハネイを見つけるパメラ。話しを伝えます。
書類はなくなっていない。でも教授は来ている。それは何故?どういうことだと考えてるリチャード・ハネイ。
この頃はまだ小型カメラなんてないよな。
劇場の中も外も当局に固められています。
口笛はミスター・メモリーのテーマだったと気がつくリチャード・ハネイ。
そのミスター・メモリーが登場。
当局に拘束されたとこでミスター・メモリーに質問するリチャード・ハネイ。
「39階段とは?」
この質問に正解を答えるミスター・メモリー。何故適当に答えずに正解を答えるのかというとミスター・メモリーの名にかけて質問には正解を答えなければならないからです。何ものににも代えられない職業的メンツがあるのです。
で、全てを答える前に教授がミスター・メモリーを撃ったとこでドアの外には警官の影が見えるようになっててドアからは逃げられないと描写しています。
ドイツ表現主義の手法です。
捕まる教授。
撃って舞台に飛び降りるのはアメリカ大統領を撃った男のパロディか?
瀕死のミスター・メモリーは機密を喋ります。重荷を下ろし安心して死に至ります。
手を握りあうリチャード・ハネイとパメラ。
エンドになってもリチャード・ハネイの手錠は取れていない。
その手をとるヒロインでエンドとなっています。これも悪くない。
エンドとなります。
この作品は主演2人が自分の思う通りになった初の作品なのかも。
それは記念すべき作品なのかもしれません。
そんなわけで最初の巻き込まれサスペンスのヒッチコックスタイルとなったよい作品でした。
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