『博士の異常な愛情』(1964年)
この作品はスタンリー・キューブリック監督の水爆コメディです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
ブラック・コメディの傑作と名高い作品です。
1964年 ホーク・フィルムズ/コロンビア・ピクチャーズ 英国作品
ランニング・タイム◆94分
原題◆Dr.Strangelove:Or,How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
プロット◆水爆の行方を巡って右往左往する話しのようです。
音楽◆ローリー・ジョンソン
ソニー・ピクチャーズ発売のDVDにて。画質は非常によいです。
キャスト
ピーター・セラーズ→英軍のマンドレイク大佐
ピーター・セラーズ→アメリカ大統領のマフリー
ピーター・セラーズ→兵器担当のストレンジラブ博士
スターリング・ヘイドン→発狂したジャック・D・リッパー将軍
ジョージ・C・スコット→俗物のタージドソン将軍
トレーシー・リード→タージドソン将軍の秘書
ピーター・ブル→仕事熱心なソ連大使サデスキー
スリム・ピケンズ→B-52のコング機長
ポール・タマリン→B-52のゴールドバーグ航空士
ジェームズ・アール・ジョーンズ→B-52のゾグ爆撃手
キーナン・ウィン→疑り深いグアノ大佐
スタンリー・キューブリック監督の演出はよいと思います。
この作品はB-52機内、空軍基地、国防省の作戦室、大体3つのシーンで構成されています。
前説の字幕があります。現実ではこの映画のようにはならない云々と出ています。
コロンビア・ピクチャーズのタイトルがあり、また前説の字幕があります。ドゥームズデイ・デバイス=皆殺し装置云々と紹介されます。
タイトルとなります。
B-52が空中給油をしている美しいシーンです。こういう映像センスがスタンリー・キューブリック監督のよいとこで感心します。
マット画による空軍基地全景から本編が始まります。
これは一目でわかります。まだこの頃のキューブリック監督は完全主義ではないようです。
この当時のコンピュータの記憶装置は磁気テープです。
私はコンピュータというとこれを連想します。現在はハードディスクでカリカリと音をたててシークするわけです。あまり映像向きではない感じ。それともセンスのある監督が上手く描写してくれるかな。
アメリカ空軍基地では演習ではないホントの攻撃となるR作戦を始めるので私物のラジオを没収しろとなります。マジで実行しています。
ソ連周辺を50メガトンの水爆を搭載したB-52が始終飛んでいるとのことです。広島に投下された原爆は20キロトンと記憶しています。
B-52は乗務員6名のようです。この作品では主に機長と航空士と爆撃手の3人が目立ちます。
で、B-52にホントのR作戦が来て機長のコング少佐は何故かカウボーイハットを被ります。もしかしてこれギャグなの?
B-52の飛行シーンはホトンドが特撮で処理されています。
ミニチュアのB-52にスクリーンプロセスとなっています。ミニチュアのB-52を吊っているピアノ線が見えたりするとこもありますが気にしてはいけません。
偉いタージドソン将軍は秘書と書類整理?をしているとこに電話がかかってきて、電話に出た秘書が長々と伝言しています。これはギャグなの?結局、タージドソン将軍は国防省の作戦室へと向かいます。
空軍基地では英軍のマンドレイク大佐はR作戦を発動したアメリカ空軍のリッパー将軍に中止を進言します。当然リッパー将軍は聞き入れません。
空軍基地だけではなく全編にわたり“平和こそ我らの仕事”のアメリカ軍隊の広告看板が背景に配置されています。アイロニーを出そうとしているようです。
国防省の作戦室ではタージドソン将軍の状況説明が続きます。
軍人は政治家を嫌っていて、軍人同士でも所属が違うとウマがあわないようです。
説明しているうちに時間は過ぎてB-52はもう引き返せないフェイルセイフ・ポイントに近づいています。
B-52がフェイルセイフ・ポイントを通過してもう戻せない状況なので、ソ連大使サデスキーを呼んで作戦室に来てもらいます。
ソ連大使サデスキーが来たとこでベタな共産主義ギャグのセリフがあります。現在では何のことやらわからないかも。
作戦室内でソ連大使サデスキーとタージドソン将軍の小競り合いがあります。
隠しカメラを撮ったとか押し付けたとかバカなことをやっています。アイロニーがきつ過ぎるような。
ソ連首相のディミトリ・キソフは行方不明なのでソ連大使サデスキーに秘密の電話番号に電話をかけてもらいます。
いよいよアメリカとソ連のホットラインでの交渉が始まりますがソ連首相は酔っぱらっていて話しにならないとなっています。ベタなギャグです。
ここでソ連大使サデスキーから皆殺し装置のことを知らされます。これを信じないタージドソン将軍です。
そこで兵器担当のストレンジラブ博士が登場して皆殺し装置なるものが可能なのか?の説明となります。充分可能だとなります。
空軍基地では連絡を絶ったリッパー将軍探索のためにアメリカ軍同士での戦闘が始まります。
戦闘中、マシンガンの給弾を手伝いながらマンドレイク大佐はリッパー将軍を必死に説得しようとしています。フッ素云々の話しも出ています。
アメリカ軍同士の戦闘は空軍基地側が投降して終了します、絶望したリッパー将軍はトイレで拳銃自殺となります。
そこに空軍基地攻略に来たアメリカ軍のグアノ大佐がやってきます。
グアノ大佐の使っている銃はM1カービンのようです。こういうディテイルが気になったりします。
B-52呼び戻し暗号を推測したマンドレイク大佐は疑リ深いグアノ大佐を説得してようやく電話をかけます。ここのシーンでは何故か飛行機の飛行音が入り緊張感を出しています。
呼び戻し暗号OPEが発動して飛行中のB-52はホトンドが戻りますが1機だけが戻らなかったことに・・・それでもこの期におよんでまだ疑うタージドソン将軍です。アイロニーがあります。
B-52ではソ連のミサイル攻撃を受け回避しますが1マイルの至近距離で爆発してかなりの被害を受けます。このままでは燃料漏れが激しくて目的地には行けなく、どこの基地でもいいから落とすことになります。ですが肝心の爆弾投下口の扉が開かななってしまいコング少佐が修理に向かいます。
有名な水爆に乗って帽子を振るコング少佐のシーンは意外とあっさりとしています。期待過剰ですと見てて空振りします。→これは私のことだ。
全ては終わり後は放射能を避けて地下に潜るしかないとなります。
ですが、この期におよんでまだスパイ活動するソ連大使です。仕事熱心というか状況がわからんのかというかアイロニーがあります。
後タイトルではないラストを飾る歌のシーンが素晴らしい。
この映像と音楽を組み合わせるセンスのよさはさすがいい。映像と音楽の組み合わせ、これがスタンリー・キューブリック監督の1番いいとこだと思います。
キャストはどなたも好演しています。
特にタージドソン将軍を演じるジョージ・C・スコットはいい演技をしています。
ピーター・セラーズの3役ぶりはたいしたものです。私は最初に見た時は英軍大佐とストレンジラブ博士はわかりましたがアメリカ大統領までピーター・セラーズが演じていたとは気がつかなかったものです。
リッパー将軍を演じるスターリング・ヘイドンは他の作品とあまり変わらないような。大根と言ってはいけません。
ピーター・セラーズとチャールズ・チャップリンの実生活で共通するエピソードがあります。
トイレに辞書を置いて知らない言葉があると急いでトイレに駆け込んで調べて出てくると調べてばかりのことを知ったかぶりをするとのことです。これでも知らないということを恥と思っているだけでもまともです。知らないことが偉いと思っている人種だっているのですから。
『未知への飛行 フェイル・セイフ』(1964年)との比較。
話しは同じでオチは少し違い、ジャンルはブラック・コメディとハイテンション・サスペンスと全く違い。作品の出来は同じくらいです。要するに両作品とも傑作です。
後は好みの問題となります。私はどちからというとシドニー・ルメット監督の『フェイル・セイフ 未知への飛行』の方がよかったりします。
そんなわけで、さすが名高いだけはある作品でした。傑作です。
正直言ってこの映画より現在のこの国の現実の方がぶっ飛んでいます。
首相は詭弁、暴言のしほうだいで、地元にカネを運んでくるだけで当選する議員は党の拘束で国会での投票は政策のことはまるっきり考えていない。
役人は議員のセンセイ方は選挙対策だけやってればいい、国を動かしているのはオレ達だとなってて議員のことなど何とも思っていない。役人は議員のご機嫌取り位はやっているか。
選挙のことだけの議員は口を開けば暴言ばかりだし。
それで一部の議員は日本はアメリカの番犬というコンプレックスによる鬱憤を解消しプライド(何の?)を保つためだけに靖国神社参拝にだわっているのでは思えてきます。
核爆弾映画3本立て。
多数爆発します。◆『博士の異常な愛情』(1964年)
複数爆発します。◆『未知への飛行 フェイル・セイフ』(1964年)
1発のみ爆発します。多分してるでしょう。◆『太陽を盗んだ男』(1979年)
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