『音楽』
この作品は増村保造監督、黒沢のりこ主演の精神分析物メロドラマです。
かなり前にTV放映で見て私が映画を見るようになるきっかけになった作品です。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1972年 行動社/ATG 日本作品
ランニング・タイム◆103分
プロット◆不感症を直そうと悪戦苦闘する話しのようです。
音楽◆林光
スカイパーフェクTV261チャンネルNECOにて。画質はまあまあです。
キャスト
黒沢のりこ→OLの麗子
細川俊之→精神分析医 汐見
森次浩司→麗子の恋人 江上
高橋長英→麗子の兄
森秋子→麗子の美しい伯母
藤田みどり→看護婦の明美
三谷昇→麗子の元婚約者 俊二
松川勉→不能だった男 花井
増村保造監督の演出はよいと思います。
原作は三島由紀夫。1970年代になって今更、精神分析物なのとは思えますがこれが結構面白い。近親相姦物でもあります。
増村保造監督独特の特徴で登場人物の妙な喋り方が全開となっています。
絶叫芝居ではないけど何というか面白い喋り方なのです。これがいい。
増村保造監督は日本映画独特の湿っぽさやもたもたしたとこがないのが非常にいいのです。話しは湿っぽいが語り口や登場キャラがカラッとしているのがいい。
ですがこの監督独特の世界は結構危うくて、何かがちょっと足りないとタダのお笑いドラマになってしまいそうなとこもあります。
話しは早くて最初から黒沢のりこ扮するOLの麗子が細川俊之扮する精神分析医を訪れて「音楽が聞こえないんです」となっています。
不感症を音楽が聞こえないと言い換えています。感じると音楽が聞こえるとなるわけです。音楽は麗子の良心とのことだそうです。
瀕死の病人か不能の男でないと音楽が聞こえないとなっています。他に兄とソックリだからだと黒い服の男が好みの麗子です。結構普通ではないか。
細川俊之扮する精神分析医に治療を受けているシーン等で・・・
ここの自由連想のシーンがよくて『白い恐怖』(1945年)の自由連想のシーンより面白いような感じです。この話しでイングリッド・バーグマンが主演したのを見たいと思ってしまいます。
で、アン・トッド主演の『第七のヴェール』(1945年)の自由連想のシーンよりは全然面白かったりします。
麗子の自由連想のシーンでは広角レンズのショットが多く使用されていました。
ハサミのタイトルバックかは始まってハサミがよく登場しています。自由連想の世界ではヒロインはハサミを大事にしてて「ハサミちゃん」とくる。何故か左手でハサミを扱っていました。この作品、製作費はかかっていませんが、ぶっ飛びの自由連想のシーンがとてもいいです。
田舎に置いてきた嫌いな元婚約者がガンになっていたので看病する麗子。
ですがその元婚約者はあっさりと御臨終となってしまいます。このシーンも簡潔なこと。医者は夏木章(元大映のサポート専門の俳優)が演じてました。この辺も麗子の対応も普通じゃない。これもよかったりします。
麗子を演じる黒沢のりこは大熱演でした。
何でキャスティングされたのかはヌードがOKだけと思われますが結構合っていました。誇張された演技や描写が見てて気持ちいい。
麗子の服装はわざわざ原色系にしているようです。この当時流行っていた手法みたいです。赤いスーツで登場。他に黄色等。1970年代に限らず日本映画独特のシックという言葉とは縁がない凄いセンスの服装となっています。これもこれでいい。
高橋長英扮する禁断の兄も負けずに大熱演でした。重要な役となっています。
細川俊之扮する精神分析医は自身満々で通していました。いつも嬉しそうにしています。多幸症か?この人も病気なのではと思えてきます。これもいい。
森次浩司扮する麗子の恋人江上は貿易関係の会社員で遊び人とのことです。
見ててその両方とも会社員にも遊び人にも見えませんがまあよろしい。森次浩司は正直言ってあまり上手くありませんがTVシリーズ『ウルトラセブン』(1967年)がよかったのでとても大根とは評せません。
勢いよく医者のところに談判にいってあっさりと丸め込まれたりするとこが妙に合っているような感じです。ウルトラセブン『ウルトラ警備隊西へ』でペダン星人にあっさりと丸め込まれたりしていたことがあるものでそう思いました。
TV俳優の限界なのか細川俊之と並んでいると森次浩司はさすがに見劣りがしてます。
この作品でヒロインの治療の一環での自由連想でビルの窓から落ちる森次浩司のシーンがあって、このシーンをウルトラセブン『蒸発都市』での空っぽのビル街を歩くシーンと混同していました。少し考えれば特撮物TVシリーズで主人公が自殺するシーンがあるわけがない。
看護婦を演じる藤田みどりはどこかで見た顔と思えましたが藤田敏八監督の『八月の濡れた砂』(1971年)に出ていた人でした。『八月の濡れた砂』はテレサ野田の方が有名ですが藤田みどりが実質のヒロインだったような感じ。
この作品は私が映画にのめり込むきっかけとなった作品です。最初に見たのは地上波TV東京で土曜の夜に放映していた日本映画名作劇場でした。
久しぶりに見ても色あせずにいました。凄い映画でこのようなのを見れば映画好きになります。そんな作品です。
今回はスカイパーフェクTV261チャンネルNECOで見ました。
日活系作品の在庫を抱えているチャンネルNECOなんですけど私は昔の日活の作品についてはバカみたいにカッコつけてる連中がしょうもない演出で画面内をうろうろしている作品ばかりという印象があるもので正直言って日活の作品はあまり見たいのがないんです。強いて言えば川島雄三監督と中平康監督の作品なら見たいくらいです。そんなわけでチャンネルNECOは1960年代の大映作品を放映してくれるので契約しているようなものです。
で、高額料金なスカイパーフェクTV310衛星劇場なんて松竹作品のとこですが私は松竹作品って映画以前の物ばかりで全く見たくないのですが同じ1960年代の大映作品で契約しています。
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