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2006.07.20

『鳥』(1963年)

この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、ティッピ・ヘドレン、ロッド・テイラー主演の動物パニック・サスペンスです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1963年 ユニバーサル・ピクチャーズ アメリカ作品
ランニング・タイム◆119分
原題◆The Birds
プロット◆わけもなく鳥に襲われる話しのようです。
音楽◆レミ・ガスマン/オスカー・サラ◆基本的に音楽はなくて鳥の鳴き声のような効果音が入ります。◆バーナード・ハーマンが監修とのこと。
ユニバーサル・ピクチャーズ発売のDVDにて。画質は非常によいです。画調が何となく特別な感じがしたりします。単なる合成のためなのか?

キャスト
ティッピ・ヘドレン→お嬢様のメラニー
ロッド・テイラー→弁護士のミッチ
ジェシカ・タンディ→ミッチの母 リディア
ベロニカ・カートライト→ミッチの妹 キャシー
スザンヌ・プレシェット→小学校の教師 アニー
ジョン・マクゴーバーン→郵便局兼雑貨店の主人
マルコム・アテーバリー→保安官
エセル・グリフィーズ→鳥類学者の老婦人
ドッドレス・ウィーバー→漁師
カール・スウェンソン→世界は終末だの酔っ払い
ジョー・マンテル→セールスマン
ドリーン・ラング→逆上する主婦


アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
主観ショットとリアクションショットを切り返す手法が多用されています。これがヒッチコック監督の特徴だと思われます。
音楽が使われていません。音楽が無くても演出で引っ張れるのがヒッチコック監督の腕前のよさがわかります。
スクリーン・プロセス多用は相変わらず。ボートに乗るメラニー等。いかにもセットでバックがスクリーンとわかってしまうのが難点です。現在の技術デジタル合成ならもっとわからないように撮れると思われます。
効果音の付け方は上手い。5.1ドルビーデジタルでなくても付け方しだいでなんとかなるとわかります。
ロケとセットの違いはよくわかります。
セットでは遠景がマット画だったりします。
金曜から週末の話しのようです。
溶暗を使っています。要所要所を締めます。

鳥を襲撃は合成が主で接触するとこは作り物と本物でやっているようです。
この合成の対比がイマイチなのが惜しいとこです。現在ならデジタル合成やCGでどうにでもなるとこですが。
鳥の鳴き声は電子音で作られています。音楽替わりとなっているようです。

全体的に鳥の襲撃をいまかいまかと待っている観客には待ち時間が長いと思えます。待ち時間を編集でカットした東宝チャンピオン祭りバージョンが必要だと思われます。
カモメが3回。メラニーの額を突き、アニーの家のドアに衝突して、風船を割ってパーティを襲撃します。

ミッチの母リディアが死体を発見する前振りで電話で鶏のエサがどうのこうのとあります。それでダンに会い行くと電話で言ってます。そんな感じでこの脚本はよく出来ています。

ティッピ・ヘドレンはヒッチコックの2作以降も映画には出ています。さすがにメジャー作品はないようですけど。
ティッピ・ヘドレン扮するお嬢様のメラニーは左で字を書いています。これは演出でしょう。
アップではソフトフォーカスのサービス付きとなっています。。

ミッチの母 リディアを演じるジェシカ・タンディは舞台版の『欲望という名の電車』のブランチ役で有名なようです。
妹キャシー役は子役のベロニカ・カートライトが演じています。後に『エイリアン』(1979年)に出ていました。

世の終わりだと騒ぐ酔っ払いを演じるカール・スウェンソンは『バニシング・ポイント』(1971年)に陸送屋仲間のサンディ役で出ています。IMDbは役に立ちます。

タイトル。
電子音の鳥の鳴き声。
青いタイトル文字。
タイトルデザインは誰でしょう?普通はソール・バスだと思うけどクレジットがありません。
脚本はイバン・ハンターと出ているエド・マクベインです。
S.F.から話しは始まります。ここから60マイルほど北にあるボデガ・ベイが舞台となります。

S.F.にて。
ティッピ・ヘドレン扮するお嬢様のメラニーが登場。黒のスーツ姿です。
ペットショップに入ります。
ここで犬を連れたヒッチコック監督が登場。
左手で字を書いています。
メラニーのキャラを現在で言えばパリス・ヒルトン?そこまではひどくないか。

ロッド・テイラー扮する弁護士のミッチが登場。
ラブ・バード=ぼたんインコのことを聞きます。
間違えられたついでに店員の振りをするメラニー。
カナリアが飛び立ってしまいます。一騒ぎとなります。
メラニーを知っているミッチです。

ミッチのクルマのナンバーWJH003から住所氏名を調べるメラニー。

つがいのラブ・バードを持ってミッチの事務所ヘ行くメラニー。
エレベーターで一緒の男からミッチは週末は不在だと知らされます。
100キロ北のボデガ・ベイにいるとのこと。

クルマを運転するメラニー。
山坂道のカーブを抜ける時に鳥カゴの中のラブ・バードが傾きます。
メラニーの乗るクルマが何だかわからない?銀色のコンバーティブルです。このクルマの車種がわからん。モノコックではないボディ。シートは2+2のようです。ソフトトップ。後の窓は硝子製。クルマのサイズやエンジン音から直列4気筒エンジンだと思われます。このエンジンがいい音をさせてます。
ラフなアクセルワークで発進の際に軽くホイールスピンするのがいい。
アメ車ではないことは確かです。英国車なのかな?それにしても見たことがないクルマです。

毛皮のコート。グリーンのスーツ姿のメラニー。
グリーンのスーツ姿で通していました。

もうボデガ・ベイです。
郵便局へ。ミッチの家の場所を聞くメラニー。
道は1本しかないとのこと。ボートで行けば?と主人。
ボートで行くことにするメラニー。
お嬢様なので人を使うのが上手というか何かされるのに慣れているようです。

その前にミッチの妹の名前の確認で教師をやってるアニーの家に行きます。
スザンヌ・プレシェット扮する小学校の教師アニーが登場。
妹の名はキャシーとわかります。
タバコを吸っているメラニーとアニー。
教師のアニーにミッチを家はどこかと聞くメラニー。2人ともタバコを吸っています。ブロンドのメラニーにブルネットのアニーとわかりやすくなっています。

ボートに乗るメラニー。船外機付きボートが扱えるとなっています。
船外機で進みます。ここはスクリーンプロセスで処理。
ミッチの家の近くに来てエンジンを切ります。手漕ぎのオールで進みます。
家に入り込みラブ・バードとキャシー宛のメモを置きます。これって犯罪なのでは?

ボートを出して伺うメラニー。上手くいったようです。
ミッチに見つかります。
クルマで先回りするミッチです。
戻ったとこでカモメに額を突かれるメラニー。

レストランへ。
治療してもらうメラニー。
雑談からミッチを弁護士と知ります。
アニーとは知り合いらしいメラニー。
スモールワールドとミッチのセリフ。スモールワールド=世間は狭いものだ。意味は違うけどパーフェクトワールドという言い方もあります。

ジェシカ・タンディ扮するミッチの母リディアが登場。
怖そうな母です。
メラニーを家に招待するミッチ。

アニーの家へ向かうメラニー。
泊めてもらうことにします。
鳥がうるさいとアニー。

ミッチの家にて。
ベロニカ・カートライト扮するミッチの妹キャシーが登場。
ニワトリの餌の話で電話しているリディア。これは前振りです。
雑談となります。夫人に6発撃ち込んだ依頼人とか。
メラニーをパーティに誘うキャシー。

ミッチの家を出るとこのメラニー。クルマにて。
ミッチと会話となります。ローマで泉に飛び込んだとか。
メラニーが走り去ったとこで鳥が電線にいっぱい止まってるのを見るミッチ。

アニーの家にて。
アニーはミッチと付き合っていた。
ミッチから電話です。パーティに出ることになるメラニー。
物音がします。カモメが1羽ドアに衝突して死んでいます。

翌日、屋外パーティです。
少し歩くメラニーとミッチ。
ロケからセットになります。海岸沿いの少し高い場所です。何となく『レベッカ』(1940年)のようなシーンです。
2人が戻ったとこでカモメの群れが襲ってきます。
風船が割れるショット。

ミッチの家です。
食事のメラニー。
突然暖炉からスズメの大群が出てきます。大混乱となります。セリフが一言入る出方もいい。
時間が経過してお巡りが来ています。役に立たず。
割れた食器を集めているリディア。普通ではない様子です。

次の日です。ミッチの家にて。
グリーンのトラックで出かけるリディア。
ダンの家へ。ニワトリの餌の件です。

ダンの家です。
ダンの死体を発見するリディア
死体を見せるとこは3段階クローズアップとなっています。ここはかなり強烈なシーンとなっています。
ロングで土煙を上げて走るグリーンのトラック。

帰宅するリディア。
何も言わずに家に入ります。
寝てるリディア。紅茶を入れるメラニー。
キャシーが心配なリディア。

小学校にて。
メラニーが駆けつけます。外のベンチで待っています。
タバコを吸うメラニー。
いつのまにかにジャングルジムにカラスがだんだんと増えて一杯になって止まっている有名なシーンになります。当然説明セリフなしで描写されています。

小学校に戻るメラニー。
ここはヒッチコック監督得意の主観ショットカットバックになっています。この作品はこの主観ショットカットバックを多用しています。
アニーに知らせるメラニー。
避難となります。逃げる途中でカラスの群れが襲ってきます。
ワゴンに入り込むメラニーと2人の子供。キーがないのでエンジンがかからん。

レストランにて。
電話中のメラニー。父親の新聞社にかけているようです。
鳥類学者バンディが登場。コックのサムの名が出ている。
集団攻撃はしないとのことです。
世界の終わりの酔っ払いもいます。
カモメに襲われたという漁師。
鳥談義となっています。
鳥類学者は鳥は人間には絶滅できないと言ってますが、リョコウバトは人間というかアメリカ人に絶滅させられたのではないでしょうか。ふと思い出した。1914年に最後のリョコウバトが死んだはずです。
ミッチがやって来ます。お巡りのマローンも同行しています。死亡したダンの家から来たらしい。

そんなとこからガソリンスタンドでの襲撃シーンから有名な街を俯瞰する有名なシーンへとなります。効果音の使い方が上手い。
タバコを吸おうとした男は炎上します。
俯瞰のカモメの群れのショット。
このカモメの俯瞰シーンは『カムイの剣』(1985年)に引用されています。

鳥達が襲ってきます。
電話ボックスのメラニー。出るの出られない状態となってしまいます。
ミッチに救出されてようやくレストランに戻るメラニー。

レストランにて。
ようやく戻ってきたらヒステリーを起こした子連れの夫人から魔女扱いされるメラニー。実はここが1番怖いのでは?と思えます。

キャシーの行方はとアニーの家に向かうミッチとメラニー。
玄関先でアニーは死んでいました。
家の中で無事だったキャシーを回収してメラニーのクルマで引き上げます。

ミッチの家です。
完全防備の図となります。
成り行きでリディアが仕掛けて口論となります。
何を待っている?家にこもる図となります。

いよいよ鳥の鳴き声や羽の音がしてきます。
窓からカモメが入り込もうとします。悪戦苦闘するミッチ。
今度はドアが嘴で突かれて穴だらけになっています。塞ぐミッチ。
電気が切れます。暖炉の灯のみとなります。
そんなとこでひとまず鳥達の襲撃は収まったようです。

時間が経過したとこで。
羽の音を聞くメラニー。そこに向かいます。
屋根裏部屋をドアを開けるメラニー。屋根に穴が開いてて中は鳥だらけです。ここは『機動警察パトレイバー』(1989年)に引用されています。
襲われるメラニー。ここは見せ所と丁寧に描写しています。
ようやく助けに来るミッチ。悪戦苦闘して気を失っているメラニーを屋根裏部屋から引っ張り出すシーンはまた丁寧に撮っています。
メラニーに手当てをします。
メラニーを大怪我をしたとこで、これまでと判断するミッチ。これでかなり危険な状態でも家を離れる理由となります。ロジックが通っています。
治療のためにS.F.へ行こうとなります。

ガレージへ向かうミッチ。緊張感がたっぷりとなっています。
外は鳥の群れで一杯です。
ガレージに入るミッチ。カーラジオを聴きます。
ガレージの扉を開けます。
メラニーのクルマを玄関先へ移動します。
外に出るのを嫌がるメラニーをクルマに乗せます。
キャシーの願いでラブ・バードも乗せます。
そっとクルマを出します。走り去るクルマ。
世の終わりのような風景でエンドとなります。
これで終わりなの?終わってないし解決にもなっていない。こんなラストもありなのかと凄いものです。


そんなわけで評判通りの元祖動物パニック・サスペンスのよい作品でした。
私の住んでいるとこはカモメはいないけどカラスはたくさんいます。いつ襲撃されてもおかしくない状況です。



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コメント

こんばんは。また参りました。
「鳥」という映画は、ヒッチコック監督の代表作の1つですが、CGの無い時代によくこれだけのシーンが撮れたものと、作り手の苦労と熱意が伝わります(ヒロインを演じた女優さんの迫真の演技の裏話には脱帽:汗)。
この映画の中では、鳥が暴れ回るシーンでは鳴き声や羽音で賑やかですが、劇中でBGMが使われていないだけに、余計にこの映画の不気味さ、陰湿さが引き立ってますね。
鳥に蹂躙され命を落とす人々の描写は痛いですけど、逃げ込んだレストランでヒロインが地元の奥さんに事件を起こした元凶であるかのように罵倒される場面が一番悲痛ですね。罵倒されたヒロインは奥さんを平手打ちしますが、私だって彼女と同じ立場だったらそうするでしょう。自分だって被害者なんですから・・・。
責任転嫁、八つ当たり、部外者に排他的な村社会では特に多いと思いますが、そういう態度にこそ卑屈にならず毅然と対処する必要がありますね。

思えば私達人類は、生活を営むという上で自然環境を破壊し、多くの生き物の食糧や生活の場を奪っています。これからも地球上の生き物達と共存していく為にも、私達は自然環境を維持いていく事を心掛けないといけませんね。

A-chanさん、コメントありがとうございます。

撮影技術だけなら古びてしまいますが、映画的手法は古びないので、この作品は年月を経ても残ってると私は思ってます。

現在のCGは正直言って凄い。
グリーンバックにデジタル合成のCGは、まるで魔法です。撮影のアラが全くわかりません。
そんなCGも、CGだけでは映画にはならないので、やっぱり演出がポイントだと思ってます。

スクリーンプロセスばっかりだったアルフレッド・ヒッチコック監督が現在のCGを使って撮れたら、どんな作品を撮ってくれたのかと思えてします。
全編グリーンバックにCG合成の『シン・シティ』(2005年)から、こんなことを連想したりします。

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