『めまい』(1958年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、ジェームズ・スチュアート、キム・ノバック主演の高所恐怖症物の風変わりなサスペンスのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1958年 パラマウント アメリカ作品
ランニング・タイム◆128分
原題◆Vertigo
プロット◆愛する人を2度失う話しのようです。◆えせオカルト物から死人に恋煩いの変態物になる話しでもあるようです。
音楽◆バーナード・ハーマン 音楽が素晴らしい。鳴りまくりとなっています。◆タイトルの出だしがTVシリーズ『帰ってきたウルトラマン』(1971年)の番組最初のタイトルに似ている?私は見る順番が逆になったのでそう思ってしまいます。
ユニバーサル・ピクチャーズ発売のDVDにて。画質は非常によいとこもあるし何だかなという部分もあります。ごくまれに動きのぎこちないとこがありました。少し気になりました。
◆ビスタビジョンサイズをTVで見るのは初めてです。
◆ドルビーデジタル5.1で見ました。というよりこれしか選べないようになっています。正直言ってオリジナルの音声が選べるならそのDVDを買ってもいいと思えます。
◆改めて見ると音楽も効果音もリニューアルされていることがわかります。音楽はステレオなのでジョエル・マックニーリー指揮を使っているのか?と思います。
◆効果音もリストアされています。モノラルのオリジナルと全然違っていて少しいじりすぎている感じがしないでもない。足音が強調されている。ワーゲン・カルマン・ギアのエンジン音がよく分かるようになっていました。
◆エンジンの音や音楽の低音がやけに響きます。結構気になります。
◆ユニバーサルのタイトルが最初にあります。ヒッチコックのプロダクションというかエージェントのMCAが作品の権利をパラマウントからユニバーサルに作品を持っていったということのようです。
◆リニューアルについてですが、画質をよくして、音はヒスノイズを消す。これだけでもいいと思えますが。あまりやりすぎはよくないと思えます。
キャスト
ジェームズ・スチュアート→高所恐怖症の元刑事スコッティ
キム・ノバック→ブロンドのマデリン=ブルネットのジュディ
バーバラ・ベル・ゲデス→スコッティの元婚約者ミッジ
トム・ヘルモア→依頼人のエルスター
エレン・コービー→ホテルのフロント
ポール・ブレア→ハンセン主任警部
コンスタンティン・シェイン→本屋のポップ・リーベル
リー・パトリック→グリーンのクルマの中年女性
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
この作品はユーモアが全くありません。珍しいことです。
構成としては第1部のマデリン編と第2部のジュディ編となっているそうです。
主役2人をカットバックで見せてくれます。完璧にデザインされ、カットバックされたショットのタイミングが上手い。
サンフランシスコ湾に落ちたマデリンを助け自分のアパートに運んだあたりからジェームズ・スチュアート扮するスコッティが常軌を逸してきます。常軌を逸するのがこの作品の最高によいとこです。
クライマックスでマデリンと化したジュディとキスしてカメラが1回転した後でセックスで一戦交えた?それでジュディがイブニングドレスに着替えたのかな?それなら尚いいのです。
カルロッタとかバルデスとかここに出てくる名前が他に引用されるケースが多い。さすがに有名な作品です。この作品は他の映画作家に影響を与えています。
このセリフはよい。マデリンが死んだ原因について。「誰にも分からんよ・・・」ての。ホントはとんでもないキャラがこのセリフを吐いてるんだけどいいセリフはいいのだ。
キム・ノバックについて。
貫録があり過ぎてブロンドのヘビー級チャンプといった感じです。
どうゆう訳か今回はキム・ノバックがきれいに見えました。ノバックがきれいに見えたのは初めてです。もうブロンドヘビー級チャンプとは言えません。
見事なタイトルから切れ目なくプロローグとなります。
警官が発砲するタイミングがよく考えられています。絶妙なタイミングとなっています。
ジェームズ・スチュアート扮するスコッティ刑事はビルの屋上からぶら下がり高所恐怖症となります。
ミッジの仕事場にて。
バーバラ・ベル・ゲデス扮するミッジはスコッティの元婚約者となっています。いきさつはよくわからん。ヒロインではないけど何故かブロンドのミッジ。
何気ない2人の会話のシーンです。エルスターの話しも出ています。
このシーンの締めは治らない高所恐怖症となっています。
エルスターと会うスコッティ。造船所経営らしいエルスター。
ヒッチコック監督登場のシーンから始まっているシーンです。
何てことはない会話から尾行の依頼となります。オカルト風に話しは進みます。
レストラン アーニーでマデリンを見るスコッティ。
このレストランで初めて会うシーンが絶品です。音楽にシンクロしてキム・ノバック扮するマデリンとスコッティをカットバックしています。
で、尾行を引き受けることになります。
マデリンを尾行するスコッティ。
スコッティは白いクーペに乗っています。
マデリンはグリーンの小型の4ドアサルーンです。
花を買うマデリン。覗くスコッティ。
墓地に行くマデリン。尾行するスコッティ。カルロッタ・バルデスの墓があります。ここでスコッティから見た主観ショットと本人を切り返すカットバックの手法があります。ヒッチコック監督の得意な手法です。
美術館に行くマデリン。尾行するスコッティ。
カルロッタの肖像画は正直言ってあまり上手くないと思えます。もちろんこれはそのようにしているでしょう。早い話、主演の女優さんよりきれいに見える絵ではまずいということです。
ホテルに行くマデリン。尾行するスコッティ。
マッキトリック・ホテル。
いつのまにかマデリンは消えます。オカルト風に話しは進む。
ミッジと会うスコッティ。
S.F.の歴史のことを聞きます。本屋さんのポップ・リーブルを紹介されて会いに行きます。アーゴシー・ブックショップ。
ここでポップ・リーブルからカルロッタ・バルデスの話しを聞きます。
クルマの中でミッジに説明するスコッティ。
感想を述べるミッジ。全く信じていません。
エルスターに報告をするスコッティ。
まだオカルト風に話しは進む。
マデリンを尾行するスコッティ。
美術館→金門橋となります。
この金門橋のショットは素晴らしい構図です。絵ハガキのような構図です。
で、いきなりロケとセットの組み合わせになるとこが、ヒッチコック監督らしい。普通はロケオンリーにしたくなると思えますが自分の撮りたいショットが決まっているのでロケもセットも同じとしてシーンを組み立てているようです。
マデリンは海に飛び込みます。助けに行くスコッティ。
助けたら自分のアパートに連れていきます。よく考えればこの辺から変態物になりつつあります。
スコッティのアパートにて。
窓の外にはS.F.の名所らしいコイット・タワーが見えます。
カメラの動きでどんなことがあったのかを説明セリフなしで描写しています。ヒッチコック監督の得意の手法です。
マデリンを運びこんで何してあれしてとなっています。そんなわけで裸でベッドで寝ているマデリンとなっています。
エルスターからの電話で起きたマデリンと話しをするスコッティ。
マデリンにしつこく質問します。
ブラブラとはワンダリング・アバウトと称するようです。
スコッティと呼んでくれと言ったりします。
ここではまたていねいにカットを割っています。
またエルスターからの電話が入り、その隙にマデリンは帰ってしまいます。ここでマデリンを26歳とわかります。
マデリンを帰るとこを目撃するミッジ。率直な感想を述べます。
ところでミッジのクルマはやはりワーゲン・カルマン・ギアでした。
エンジン音もリニューアル版ではリストアされて水平対向エンジン独特の音になっていました。わかりやすい。
働く女性のクルマはアメリカでは輸入車の小型の2ドアクーペ。共通しているのが『タイム・アフター・タイム』(1979年)のホンダ・アコード3ドアハッチバックです。
翌日になってマデリンを尾行するスコッティ。
マデリンの行き先はスコッティのアパートでした。コイット・タワーを目印で来たとのことです。
白いコート、黒い手袋、黒のニット(だと思う。)のマデリン。
マデリンのクルマでドライブの2人。
運転しているのはマデリンです。
公園内に入ります。樹齢2000年のセコイアメスギを前の2人。
またオカルト風のマデリン。しつこく質問するスコッティ。
海岸の2人。
引き続きしつこく質問するスコッティ。
塔の話しをするマデリン。成り行きでキスをする2人です。
ここはロケとスクリーンプロセスの切換えが忙しいシーンとなっています。普通はこういうことをしませんがヒッチコック監督は自分の思っているシーンを撮るためにはこんなことは気にしないようです。でも見ていると案外と気になったりします。ですからヒッチコック監督が現在の撮影技術で撮れたらと思えてしまいます。デジタル合成を使いこなすヒッチコック監督だったら凄いショットが撮れるでしょう。
夜、ミッジの仕事場に来るスコッティ。
ミッジの絵を見てnot funnyと言い帰ります。自分の失敗を悔やむミッジです。
アパートに戻るスコッティ。
マデリンがやって来ます。まだオカルトなマデリンです。グレーのスーツ姿です。
メキシコにあるスペイン村に向かう2人。グリーンのクルマ。
スペイン村に着きます。
作り物の馬があります。
キスをする2人。。マデリンのtoo lateのセリフが印象的です。
塔を登るマデリン。追うスコッティ。階段を登る時のめまいの映像効果。音楽もシンクロしています。いわゆる逆ズームの見事なシーンです。
マデリンを塔から転落して瓦屋根に激突して死に至ります。効果音がリニューアルされているので落ちたとこで瓦が割れる音も入っています。リアルです。
呆然としてこの場を去るスコッティ。作画合成の教会を見下ろす俯瞰のシーンが素晴らしい。
シーンは飛んでスコッティの裁判のシーンとなります。
最初に1ショット教会が入るので教会で裁判をやっているかと勘違いしていました。ちゃんと裁判所のようなとこでやってたようです。
評決で不起訴となるスコッティ。
ここまでで82分を使っています。第1部が長い。
元上司のハンセン主任警部が少し登場。
エルスターがいいセリフを喋っています。「誰にもわからんよ・・・」云々と。でも実はとんでもないキャラなのです。
このシーンは俯瞰で締めとなっています。俯瞰の使い方の見本のようなシーンとなっています。
アパートにて悪夢を見るスコッティ。
アニメを使ったりしてて面白いシーンです。
落下するとこで悪夢は終了します。
病院で治療中のスコッティ。
モーツァルトを聞いています。鬱病になったジェームズ・スチュアートは全く違う表情をするのは凄いです。
面会に来ているミッジは時間が来たとこで医者の先生に文句を言いに行きます。ここで「モーツァルトでは治りません」のセリフとなっています。
このシーンでミッジは作品から退場となっています。
ドラマの集約化に描写バランスとはこの作品のことをさします。
真犯人のエルスターもかいがいしく尽くすミッジも途中で切り捨ててしまいます。これは犯人探しの謎解きではないし三角関係でもない。つじつま合わせをしていたらも主役のスコッティとマデリン=ジュディがかすんでしまうからです。それにランニングタイムがいたずらに長くなるだけですから。よい作品とはこのくらいにやって欲しいものです。数回見てようやく気がつきました。
一応退院して奇行するスコッティ。
マデリンのアパートにて人違いをする。
アーニーで人違いをする。
美術館で人違いをする?。
花屋でのスコッティ。ここでジュディを発見します。
すぐに尾行するスコッティ。エンパイヤ・ホテル。
ジュディの部屋に突撃します。ナンパします。話しは早い。
カンザス出身のジュディ。
グリーンのニットのジュディ。本『映画術』によるとキム・ノバックはノーブラだったそうです。ゆれています。素敵です。
ジュディを食事に誘うスコッティ。受けるジュディ。
スコッティが帰ったとこでジュディは回想に入ります。ネタバレな回想となっています。もちろんそのように演出しているとのことです。この作品は犯人探しのみの謎解きではないそうです。
置き手紙を書くジュディ。手紙を左手で書いてます。
何回も見ていたらようやくジュディがマデリンに似てるように見えるようになりました。そりゃ本人なのですから似ているのは当然なんですが、いままではよく分かったなというのが正直な感想。ジュディは左頬にホクロがあったのかはようやく気がついた。
レストラン アーニーで食事をする2人。
ジュディはパープルのドレスです。
ジュディをホテルに送るスコッティ。明日も会おうと誘います。
公園でデートする2人。ロケの効果が素晴らしい。
ダンスをします。
花を買います。
服を買います。ランソホフという店。ここで「君に似合う服はわかっている」のセリフがあります。第2部の変態物に突入しているとわかります。
靴を買います。
スコッティのアパートにて。
泣いて文句を言うジュディですが帰りはしません。
スコッティはブロンドにしてくれとジュディに頼みます。
「お願いだジュディ」のセリフが凄い。第1部のオカルト物から第2部は充分な変態物となっています。よくこんな話しで作れたなと感心します。普通のサスペンスではないのは確かなようです。
エンパイヤ・ホテルでジュディを待つスコッティ。
ジュディはブロンドにしてきますがまだ髪形が違います。また「お願いだジュディ」のセリフのスコッティ。自分が何をしているかわからずに突っ走っているようです。
ジュディはブロンドはブロンドなのですが微妙に違うようです。芸コマです。
髪形を直して盛り上がってキスする2人。回るカメラ。スクリーンプロセス。面白いシーンとなっています。
溶暗にしていますが多分この後でセックスしているでしょう。
で、黒のイブニングドレスに着替えているジュディ。ここでカルロッタのペンダントが出てきます。
ドライブする2人。件の場所スペイン村にに向かいます。
件のスペイン村に着きます。塔に登ります。音楽が盛り上げています。
いくら外見を似せてもマデリンだけどマデリンでない、このシチュエーションとなっています。そんなわけで、これは紛れもなくマデリンだけどマデリンではないジュディに対して「愛していたマデリン」と言うとこが凄い。
too lateのセリフが印象的です。マデリンもスコッティもこのセリフを吐きます。
悲劇というか何というかわからん状態でエンドとなります。
S.F.ロケ絶品2本立て。
『めまい』(1958年)と『ダーティハリー』(1971年)です。
この2作品、素晴らしい音楽にシンクロしたカット割り、素晴らしいS.F.のロケが共通点の傑作同志です。市電のベルの効果音も共通点かな。
押井守監督の言い分の正しいことが実感出来る?
日本人がアメリカ映画を見ても何も理解出来ないだっけ?
ブロンドからブルネットにしてメイクを変え服装を変えたら私にはどうしてもジュディがマデリンには見えない。ジェームズ・スチュアートは半分気が狂ってるのでジュディがマデリンだとすぐ分かるのは見てて納得出来ます。アメリカ人が日本人の顔の区別がつかないのと同じことでしょう。
この作品の当時の評価は?謎解きなのに途中でネタばれしてしまうS.F.観光映画。これくらいでしょう。
『めまい』はよく見ている作品で『ダイヤルMを廻せ!』(1954年)の次によく見ています。ですが『めまい』のヒロインのキム・ノバックはブロンドのヘビー級チャンピオンといった感じであまり好みではなくて『めまい』の引用作品の『愛のメモリー』(1976年)のヒロインのジュヌビィエーブ・ビュジョルドの方がよかったりします。
私は本『映画術』を暗記するほど読んでから見た作品が多いのでヒッチコック作品にサスペンスを感じたことがありません。その代わりに何回見ても何て上手い作り方をするのだろうと感心します。
そんなわけでこれはまた風変わりなロマンティック・サスペンスのよい作品でした。
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