『六年目の疑惑』(1961年)
この作品はマイケル・アンダーソン監督、ゲーリー・クーパー、デボラ・カー主演の疑惑サスペンスです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1961年 MGM 英国/アメリカ作品
プロット 疑り深い夫人にイライラする夫の話しのようです。
スカイパーフェクTV315スター・チャンネルにて。画質はよいです。
キャスト
ゲーリー・クーパー→怪しいジョージ・ラドクリフ
デボラ・カー→疑り深いラドクリフ夫人のマーサ
レイ・マクアナリー→気の毒な被告ドナルド・ヒース
ダイアン・シレント→ヒース夫人
エリック・ポートマン→元弁護士のジェレミー・クレイ
マイケル・ワイルディング→仕事関係のモリス・ブルック
ピーター・カッシング→鬼検事
ハーミオン・ジンゴールド→マーサと知り合いの夫人リリー
マイケル・アンダーソン監督の演出はまあまあだと思います。
この監督は平凡なSFドラマ『2300年未来への旅』(76年)の監督なんですね。それなら期待しないほうがよかったのかも。
TVミニシリーズ『火星年代記』(79年)の監督もやっていますがこの作品は監督のせいもありますが予算不足なのかセットが貧弱でレイ・ブラッドベリの原作に比べると完全に負けていました。
『生きていた男』(58年)が結構よい出来だったのでの残念です。
英国映画を見ていつも感じるのは英国の建物と物持ちがよくて機能的に出来ている、それに比べれば日本の建物は新しいけど恐ろしく機能的には出来ていなくて街として建物や施設が連動して機能していないと思えます。一般市民を甘やかすとつけ上がるとなっているのか?
タイトル部分は凝っていました。こういうのを見るとタイトル倒れで本編の方は大丈夫なのかいと心配になったりします。
音楽は使い方がてんでダメ。スコアは大げさで入れ方は唐突でダメな見本みたいでした。
それにしてもロンドンの夜だから霧が出るというのも安易なような気がします。
主演スター2人のラブシーンのクローズアップ切り返しで盛り上がってくるとこでムダにカメラが引くショットを入れたりしてエモーションを削いでいました。もったいない。
回想に入るときにネガ反転をしてから入ります。凝っているのはここだけか。ところが偽りの回想を使っていました。こまったものです。
意外な結末はやめとけと思うんです。なにしろこれがよほど上手く出来ていないと再見が出来なくなってしまうのですから映画向きではないような。
アメリカから英国のロンドンに来た主人公という設定。
法廷のシーンから始まります。自分も疑われていたクーパーは証人として出廷して気の毒な被告を無事に有罪にします。
殺人事件が起き6万ポンドがなくなった事件でした。
ゲーリー・クーパーに元弁護士のジェレミー・クレイから別の事件で5年遅れた脅迫状が届き、それを読んだデボラ・カーが夫を怪しんで話しは進みます。これでタイトルの『六年目の疑惑』となります。
脚本はジョセフ・ステファノです。手を抜いていたのかと思えてしまいます。
ラストの落ちまではスター2人の魅力と演技力で引っ張っていました。この出来ではもったいないお化けが出てきそうでした。
断崖のシーンが出てきたとこで、なるほどこれは怪しいケイリー・グラントと疑うジョーン・フォンテーンの『断崖』(41年)のバリエーションなのかとようやく気が付きました。『断崖』もフランシス・アイルズの原作『レディに捧げる殺人物語』を改変してけっしてほめられた落ちではなかったけどアルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよかったものです。
『断崖』ではプロデューサーが主演のケイリー・グラントの怪しいシーンはけしからんとカットしていったら99分ある本編が半分位に減ってしまったなんてエピソードがあります。→結局元の99分に戻ったそうですが。
ラストの落ちにはあぜんとしました。
スターシステムの都合からそうなるのではと思いつつも、もしかしたら違うかもと予想していたとこに、散々引っ張っておいてベタな展開でありがちな落ちになってしまった。製作側もこれではリピーターはまずダメで口コミ展開も望めないと心配になったのか結末はばらさないで下さいとナレーションを入れていました。そんなことをする前に話しを何とかしてた方がよかったような。
ゲーリー・クーパーの遺作となった作品です。
本『ぼくの採点表60年代』での双葉十三郎の自作自演対談形式での批評の一文が傑作。「これが遺作では死んでも死にきれないでしょう」とあった。そういうことなら見たくなります。
ゲーリー・クーパーはスリラーに出ているじゃないと、まだ『海外特派員』(40年)の主演を断ったことにこだわってしまいます。
遺作の割りにはゲーリー・クーパーは見てる範囲ではそんなによれよれではありませんでしっかりとしていました。実際はどうだかわかりませんけど。
デボラ・カーは時々、声が裏返って突然高い声になったりしていて気になった。このへんが一部の人に不評なポイントなのかと思った。それでもちゃんといいとこの奥様に見えています。
キャストは英国勢が揃っていました。
ピーター・カッシングの名があって、どこに出ているのかと思ったら鬼検事の役で法廷で無実の人間を責め立てていました。役柄によく合ってるキャスティングでした。英国の法廷ではカツラを被って行いますが何か変な風習ですね。とても上品には見えませんけど。
ヒッチコック監督作品にも出ていたマイケル・ワイルディングも出ていたが何て事がない役でした。
口述筆記の機械が出ていましたがどういう仕組みなのかがよく分からず。テープではなかった。
大型TVにワイヤレスではないけどリモコンがある生活をしていました。ブルジョアです。
そんなわけで思わせぶりな展開に腰砕けな落ちな作品でした。
主演スター2人はよかったけど。残念です。「これが遺作では死んでも死にきれないでしょう」は正しい意見だと思います。
ゲーリー・クーパーを見ていると現在のスター、ハリソン・フォードもケビン・コスナーもクーパーになりたがっているのかなと思えてしまいます。
ハリソン・フォードは同じような設定で『推定無罪』(90年)がありましたが、悪いのを全部グレタ・スカッキに押し付けていたのでイマイチでした。
ケビン・コスナーなんて『アンタッチャブル』(87年)の頃はクーパーの再来なんて言われていたのに今では駄作連発の底抜けスターでラブシーンではここは儲け物だと卑しい根性丸出しで女優さんにはキスシーンを嫌がられるナンバー1だったりして。
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