『捜索者』(1956年)
この作品はジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の追跡物ウエスタンのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1956年 C.V.ウィットニー・ピクチャーズ/ワーナー アメリカ作品
ランニング・タイム◆120分
原題◆The Searchers
プロット◆さらわれた姪を捜す話しのようです。
音楽◆マックス・スタイナー 少し大げさな感じがするとこもあります。
ワーナー発売のDVDにて。
4:3の29TVにて。画質は非常によいです。このくらい画質がよいとDVDを買った気がします。ロケの効果がよく伝わります。
ワーナー発売のDVDにて。
16:9の37TVにて。画質はまあまあ。37TVで見ると随分と印象が違う。
スクイーズ収録のフル表示。
画面サイズはワイド。上下左右黒味なし。フルスクリーン。
音声はドルビーデジタル 1.0ch
キャスト
ジョン・ウェイン→偏見のあるイーサン・エドワーズ
ジェフリー・ハンター→1/8のマーティン・ポウリィ
ワード・ボンド→牧師兼大尉のサム・クレイトン
ハリー・ケリーJr.→ブラッド・ジョーゲンセン
ベラ・マイルズ→ローリィ・ジョーゲンセン
ハンク・ウォーデン→ネイティブ系のモーズ
ケン・カーティス→郵便のチャーリー
ナタリー・ウッド→成長後のデビー
ウォルター・コイ→兄のアーロン・エドワーズ
ドロシー・ジョーダン→アーロンの奥さん マーサ
ジョン・クォーレン→ブラッドの父 ラース・ジョーゲンセン
オリーブ・ケリー→ブラッドの母 ・ジョーゲンセン夫人
ヘンリー・ブランドン→コマンチの酋長スカー
ジョン・フォード監督の演出はよいと思います。
全体的にいつものジョン・フォード監督作品調とアメリカンネイティブに気を使った感じの描写の組み合わせになっています。
ワーナー・ホームビデオのタイトル
タイトル
Warner Bros. (presents)
C.V. Whitney Pictures (as the C. V. Whitney Picture)
テキサス 1868年と字幕が出ます。
家の中から外に出るシーンから始まります。それでラストにドアが閉じて黒味になって終わります。ラストはどういう意味があるのでしょう。家には入ることがない主人公ということなのかもしれません。
ロケとセットの画調が違うので一目で見分けがついてしまいます。
画質がよいのがマイナスになったのか。監督にしてみればそんなのわかってる映画のお約束として納得して見てくれとなるかもしれません。
ロケのモニュメントバレーのシーンは美しく撮れています。ここでのロケ多用がジョン・ウェインの癌の原因という説もありますけど。
ジョン・ウェイン扮する元南軍のイーサン・エドワーズは久しぶりに兄の家にやってきます。青地に黄色いラインが入っているパンツは北軍の制服ではなかったのか?何か意味があるのかな。
ジョン・ウェインだけが赤いシャツを着ているの目立ちます。もちろんこれは意図的に演出しているのでしょう。
コマンチが牛を盗んだので追跡隊を編制して追いますが牛はただ殺されているだけでこれはオトリで狙いは開拓家だと推測され急いで戻ることになります。
それで襲撃されるとこは当時のことなのでその前のシーンで溶暗となります。これはこれでいい手法だと思います。
今度は本格的に討伐隊を編制して追うことになります。
ここでイーサンのネイティブ系に対する偏見が描写されます。ネイティブ系の死体の目を撃ち抜くとこはかなり強烈な感じです。
ジェフリー・ハンター扮するマーティン・ポウリィはチェロキーの血が1/8入っていて最初はイーサンから嫌われています。
イーサンはバッファローの群れを撃ちまくります。理由がまたとんでもない偏見にもとづくものでした。
追ってて河での攻防となります。
激しい撃ち合いとなり負傷者も出て大人数の部隊より少人数で追う方がいいとなり、少人数のイーサンとマーティン・ポウリィとハリー・ケリーJr.扮するプラッドの3人で追うことになります。映画では少人数の方が具合がよかったりします。
その後ハリー・ケリーJr.扮するプラッドと恋人が殺されたことに逆上して無謀な突撃をして死に至ります。これで2人になって尚も追うことになります。
ハリー・ケリー Jr. はよく死ぬ。出演作で普通に死んでる。
これまた出演作でよく死ぬエリシャ・クック Jr. と同じくらい死んでます。
追跡する2人はたまには死んだプラッドの実家のジョーゲンセン家に寄ったりしています。
後にマーティン・ポウリィはヒロインのローリィに手紙を送ったりしています。この手紙を読むシーンが長い長い、手紙の中で読んでる描写も回想のようにあって延々と続きます。妙な手法だと思えました。
追って5年となってようやくさらわれたデビーと再会することになります。
成長してナタリー・ウッドになっています。
それで結末はかなり唐突な感じがしないでもなかった。後味が悪く無いのでこれでいいのかしれません。
ジョン・ウェインはいい声をしています。
タカ派の割には甘い声。低くて太い声だったらあんなに人気は出なかったと思われます。
TV放送でおなじみの日本語吹き替えはどらからというと小林昭二の方がウェイン本人の声と合っていると思います。納谷悟朗の方はウェイン本人の雰囲気が満点です。はやい話しが私にはどちらでもいいのです。
ワード・ボンドがいかにもなジョン・フォード的キャラを演じています。
マーティンと仲がいいヒロインのローリィ・ジョーゲンセンをベラ・マイルズが演じています。
ベラ・マイルズはジョン・フォードとアルフレッド・ヒッチコックの大監督2人に気に入られたのがかえって荷が重かったと思われる女優さんです。
アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(1958年)はもともとベラ・マイルズ主演で企画されていたそうです。そうなるとベラ・マイルズ似た感じのキム・ノバックが代役というのがよくわかります。『めまい』のヒロインは代役だったのですよ。たまげた。
ベラ・マイルズ降板の理由がまたアルフレッド・ヒッチコック監督には気に入らないとこ。何代目ターザンと記憶もされていない俳優と結婚してて妊娠したために『めまい』に出られなくなったとのことです。
クリント・イーストウッド監督の『ブロンコ・ビリー』(1980年)にサポートで出ていたハンク・ウォーデンはネイティブ系のモーズを演じていました。目立っていて結構出番も多かった。目立つといってもやたらとゆり椅子にこだわったりする頭の不自由な人でホトンド放送禁止状態のキャラでした。
フォード監督の常連俳優ハリー・ケリーの息子ハリー・ケリーJr.が出ています。
ハリー・ケリー夫人のオリーブ・ケリーも出ています。
本『映画術』で、アルフレッド・ヒッチコック監督が『逃走迷路』(1942年)の悪役でハリー・ケリーに出てくれと交渉に行ったら「私の夫に悪役なんて」と断られた上に怒られたそうです、その断った人がハリー・ケリー夫人のオリーブ・ケリーというわけです。初めて見ますが先入観からなるほどそんな感じの人ですなとなります。
アメリカン・ネイティブはタバコを吸っています。そういえばここからヨーロッパにタバコが広まった筈です。
アメリカン・ネイティブを居留地に入れる描写。ホトンド牛や馬並みに扱いでした。
全体的にかなり風変わりな出来になっています。
いつものフォードタッチとアメリカンネイティブ系に対しフォードなりに気を使った描写がカットバックになっているような感じでした。
そんなわけで評判とはかなり違う印象でしたがよい作品でした。
ジョン・フォード監督の『静かなる男』(1952年)とサム・ペキンパー監督の『わらの犬』(1971年)の2本立てを見ると地域社会における対人関係のありかたであまりにも方向が異なる極端なケースの対比でかなり妙な気分になると思われます。
ジョン・フォード監督といえば本『ザナック ハリウッド最後のタイクーン』による『虎鮫島脱獄』(1936年)のエピソードが傑作です。
撮影を始めたとこで主演俳優ワーナー・バクスターがデタラメな南部訛りをやり始めても、ジョン・フォード監督は酒が入っていたのと『どうせ南部人は妙な喋りかたをする』という偏見の持ち主なので、それでいいとほったらかしにしていたそうです。
で、撮影現場に監視に来てた脚本のナナリー・ジョンスンがこれはまずいと思ったけどジョン・フォード監督に直接に言うと殴られるので20世紀フォックスのボスのダリル・F・ザナックに御注進となります。
で、これを聞いたダリル・F・ザナックが撮影現場に乗り込みジョン・フォード監督と一悶着あったとのことです。
元々ジョン・フォード監督は撮影現場にプロデューサーが来るを非常に嫌っていたそうです、そこへ良心のないプロデューサーの代表格ダリル・F・ザナックが乗り込んでくるのです。大男のジョン・フォードと小男のダリル・F・ザナック、しかし権力があるのはザナックの方、この対決のやりとりが面白いのです。映画本編より面白そうだと思えます。
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はじめまして、私もジョン・ウェインを敬愛するひとりです。
「捜索者」もいい作品ですね~、感動しました!
私は、「駅馬車」から始まり、「騎兵隊」くらいまでの作品が特に好きですね~、頑固で無器用でもときおり見せる優しさが彼の魅力でした。
私も今回、ジョン・ウェインについて記事にしました~よかったら遊びにいらして下さいね、ではまた!
投稿: ルーシー | 2006.07.16 11:34
ルーシーさん、コメントありがとうございます。
私は『赤い河』(48年)のジョン・ウェインが好きですね。
どちらかというはハワード・ホークス監督の方が好みなのもので。
ジョン・ウェインは声がいいですね。柔らかいいい声です。
投稿: ロイ・フェイス | 2006.07.16 16:17