『ソラリス』(2002年)
この作品はスティーブン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー、ナターシャ・マケルホーン主演のSFドラマです。
オリジナルのアンドレイ・タルコフスキー監督のカルトなSFドラマ『惑星ソラリス』(1972年)は見ています。寝てはいません。オリジナルにはそんなに思い入れはありません
どんな話しなんだと理解しているとはいえませんけどスタニスラフ・レムの原作『ソラリスの陽のもとに』も読んでます。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
2002年 ライトストーム・エンタテインメント/20世紀フォックス アメリカ作品
ランニング・タイム◆99分
原題◆Solaris
プロット◆意外な状況で自殺した奥さんと再会する話しのようです。
音楽◆クリフ・マルチネス
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質は非常によいです。
キャスト
ジョージ・クルーニー→心理学者のクリス・ケルビン博士
ナターシャ・マケルホーン→クリス夫人のレイア
ジェレミー・デイビス→ステーションのスノー
ビオラ・デイビス→ステーションのゴードン博士
ウルリッヒ・トゥクール→ステーションのジバリアン博士
スティーブン・ソダーバーグ監督の演出はよいと思います。
製作がジェームズ・キャメロンとのことですが私はキャメロンはあまり買っていないので何もしなくていいからカネだけ調達してくれとなります。
ワイドスクリーンの使い方ですが人物1人の場合は真ん中に配置するだけどちらかに寄せて空間を空けるフレームの使い方はやっていません。私は寄せた方が好きなんですけど。
溶暗を効果的に使っています。
ソダーバーグ監督が得意の現在と過去、現実と夢等をカットバックさせる手法が全開となっています。ソラリスと地球のシーンもカットバックになっています。
その場のシーンとセリフが合っていない手法も使っています。
セリフがそのシーンより先にオーバーラップして入る手法もあります。そんな感じでさすがの凝りまくりな演出となっています。こういうのは大好きなので非常にいいです。
特殊効果は少なめになっています。
肝心の決めのシーンでは特殊効果を抑え目にしてソダーバーグ監督の演出になっています。これは当然といえば当然でしょう。
やるわけないと思われますがスティーブン・ソダーバーグ監督はアクションを撮ればサム・ペキンパー監督並みになれます。話しは違うけど演出手法は同じような感じです。
これと似たような話しでケーブルTVムービーで作られているような気がします。セットにカネをかけずキャストも安上がりにして脚本頼みで何とか作れそうです。
プロローグ
セラピーを受けるのかよくわからんジョージ・クルーニー扮する心理学者のクリス・ケルビン博士のシーンから話しは始まります。
自宅にて、料理中に指を切るクリス・ケルビン博士。傷がつきます。
男2人が訪ねてきます。ソラリスのジバリアン博士からビデオメッセージを受け取ります。ソラリスに来てくれとのことです。
当局の男2人からソラリス行きの要請を受けるクリス・ケルビン博士。話しは早い。
で、オーバーラップですぐにソラリスの宇宙ステーションに到着となります。ドッキングシーンは何となく『2001年宇宙の旅』(1968年)風になっています。
ソラリスの海の描写は意外とあっさりとしたものです。
宇宙ステーション内のセットはオリジナルの1972年版より2002年版の方がいい。カネのかけかたが違います。
宇宙ステーションに入るクリス・ケルビン博士。誰も出迎えません。
冷蔵室ではジバリアン博士は既に死体となっています。他にもう1体あります。誰だ?
スノーに会うクリス・ケルビン博士。要領をえません。
若いヒゲの男です。手の動きが忙しくてジェスチャーまじりに話します。
もう1人の生き残りのゴードン博士は部屋に閉じこもりとなっているとのこと。
ゴードン博士の部屋に行くクリス・ケルビン博士。こちらも要領をえない。
ゴードン博士は理路整然とした態度の黒人女性です。
正体不明の子供が走り回っています。
後でジバリアン博士の息子のマイケルだとわかります。
ところで心理学者が自分のことを通称のシュリンクと称するのか?この言葉はよい意味で使われていないと思っていましたが・・・
ゴードン、スノーと別々に話しを聞くクリス・ケルビン博士。
ソラリスでは最初の夜を迎え眠りに入るクリス・ケルビン博士。
夢を見ます。ナターシャ・マケルホーン扮するクリス夫人となるレイアと初めて会った時のこと等。カットバックが全開となっています。
夢というか回想で友人のジバリアン博士と会話をしながら目はレイアを追っているクリス・ケルビン博士となっています。この手法はいいです。
さっそくレイアが登場します。
クリス・ケルビン博士と離れると動揺するレイアです。
違う意味で動揺しているクリス・ケルビン博士は観測ロケットでレイアを宇宙ステーションから放り出します。動揺している割には放り出す操作はちゃんとやっています。溶暗となります。
スノーが来て話し込みます。
スノーの客は弟だと言っています。双子なのかい。
眠るクリス・ケルビン博士。
フラッシュバックでレイアの詩のこと。結婚のこと等が描写されます。
で、一晩たったらまた出てくるレイア2号。
今度は放り出さずに話しをするクリス・ケルビン博士。
フラッシュバックで不仲の描写が入ります。
食事での議論のシーン。ここに出ているのがメキシコ出身の女優さんのエリピディア・カリーロさんなのか?
レイア2号は自分の記憶をたどります。記憶がポイントとなっているようです。死んだレイアとソラリスのレイアを微妙に違うようにしているのは1972年版と同じです。
自分は違うと自覚があるようです。
レイアが自殺に至る描写。
自分が自殺したことを思い出すレイア2号。
対策を話しあうスノー、ゴードン、クリス。
レイア2号も同席しています。話しの成り行きで観測ロケットで放り出した前のレイアのことが出てしまいます。レイア2号に説明するクリス。
レイア2号を地球に連れて行く行かないでゴードンと口論になります。
夢でジバリアン博士が出てきます。
逃げろと警告します。
レイア2号は液体酸素を飲んで自殺を計ります。
ここはレイア2号が蘇生するシーンが見せ所なので期待して見てたら意外はあっさりしていました。汗もかいていません。物足りなくて不満が残る。
このシーンに関しては1972年版の方がいい。2002年版は全然水気が足りません、1972年版よりドロドログチャグチャでもよかったような。
水気に関しては、水気たっぷりのアンドレイ・タルコフスキー監督と乾いた感じのスティーブン・ソダーバーグ監督の個性の違いというしかないようです。
クリス・ケルビン博士の客を消滅させることが出来るとゴードン博士。
自分の客を消滅させたとのことです。
レイア2号もそれを望んでいるらしい。
ここも見せ所のレイア2号が頑丈なドアをブチ破るとこがありましたが、ブチ破るシーン自体はなくて破る理由も違っていました。これは少し物足りない。
このへんはカットバックが全開になっています。
1972年版でのドアをブチ破る理由がいいのです。あなたがいなくなって寂しいから破ったと言うのです。素敵な理由です。
そんなこんなでクリス・ケルビン博士は眠ってしまいその隙にレイア2号はヒッグス装置なるデバイスで自ら消滅することを選びます。
レイア2号のビデオメッセージが残ります。
スノーの死体が発見されます。
言い訳する客のスノー。スノーがスノーを殺したようで入れ替わっていたようです。わからなかったのか?
ソラリスの海が肥大してステーションは引力圏に入ってるとスノー。
地球に戻ろうとステーションを脱出するゴードン博士とクリス・ケルビン博士。
ですがここもカットバック全開の凝りまくり演出となっていて何だかわからん状態からどうやらクリス・ケルビン博士は宇宙ステーションに残ったようです。
帰宅するクリス・ケルビン博士、料理中に指を切ります。傷はない。
宇宙ステーションはソラリスの海へと降下していきます。
自宅のクリス・ケルビン博士。レイアがいます。
で、あっさりとラストとなります。
全体的に1972年版より話しは早くわかりやすくなっています。ランニングタイムがオリジナルの165分から映画標準時間の100分位になっているのもいいです。
スタニスラフ・レムの原作はわかりにくい。
アンドレイ・タルコフスキー監督の1972年版は原作よりわかりやすいオチがついていました。
この作品も1972年版にそったオチのようです。合成があまり上手に出来てない1972年版より現在の技術ならいくらでも出来るのに特殊効果を抑え目にしています。ソダーバーグ監督らしい。
主演2人はキャスティングはオリジナルの1972年版の方が合っているような感じです。2002年版も悪くはないけど。
ヒロインの名が何で原作や1972年版のハリーから2002年版ではレイアになったのか理解に苦しみます。スターウォーズではあるまいしレイアという名はこの作品には合っていません。まさかのレイアの方が親しみがあるつもりなのか?変なセンスです。ここだけが2002年版の不満なとこです。
ジョージ・クルーニーは老けメイクで熱演しています。悪くはない。
ナターシャ・マケルホーンはヒロインのキャラクターに結構合っていると思えます。
サポートでメキシコ出身の女優さんのエリピディア・カリーロが出ていたとは全然気がつきませんでした。
地上のシーンは『ブレードランナー』(1982年)調で、宇宙ステーション内は『エイリアン』(1979年)調となっています。
予備知識なしでこの作品を見たら何で地上のシーンではレプリカントが暴れないのかとなり、宇宙ステーション内のシーンでは何でエイリアンが暴れないのかとなり、退屈に思える場合もあるでしょう。アメリカではヒットしなかったというのが何となくわかります。
そんなわけでソダーバーグ監督らしい出来で原作や有名な1972年版に負けてはいない、よい作品でした。悪くはない。
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