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2006.04.01

『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年)

この作品はF・W・ムルナウ監督の名高い吸血鬼物ドラマです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1922年 ドイツ作品
ランニング・タイム◆64分
原題◆Nosferatu
プロット◆吸血鬼がペストと共にやってくる話しのようです。
IVC発売のDVDにて。画質は意外とよい。◆英語字幕版◆弁士ではなく音楽のみでした。この音楽がただ鳴っているだけではなく映像とよく合っています。

キャスト
マックス・シュレック→オルロック伯爵=ノスフェラトゥ
グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム→トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカー
グレタ・シュレイダー→その妻エレン/ミーナ
アレキサンダー・グラナッハ→不動産屋のノック/レンフィールド
G・H・シュネル→エレンの知り合いで市当局のハーディング/ニーナの友人ウェステラル
ルース・ランズホフ→その妹ルート/その妻ルーシー
Gustav Botz→医者のシーファース先生
John Gottowt→ブルヴァー博士/ヴァン・ヘルシング教授
左の名前はBS放送版/右がDVD版


F・W・ムルナウ監督の演出はよいと思います。
話しの方は『魔人ドラキュラ』(1931年)と大体同じでした。トランシルヴァニアの名はちゃんと出ていました。そもそもブラーム・ストーカーの許可が取れずに主人公の名前だけを変えたりしてたのですから、それは当たり前のことのようです。
不動産屋の使いトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカー
はカルパチアの山々を馬車で伯爵の元へ向かいます。これも同じです。

タイトルはキャスト表まで出ています。
前説があります。1838年のブレーメン。
ドラキュラ伯爵の名は出ています。

不動産屋のトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーはトランシルヴァニアに向かいます。
宿屋では日が暮れると危険と警告を受けます。
次の日に馬車で伯爵の城に向かいますが橋のたもとで馬車は引き返してしまいます。

黒ずくめの馬車が迎えに来ます。
異様な効果で有名なネガ反転のショットはトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが黒ずくめの不気味な馬車で伯爵の城に向う時にワンショットありました。
このネガ反転のショットは伯爵が徘徊する船のシーンでも使われていると思ったら見逃したのかネガ反転のショットはありませんでした。他でも見なかったようで、これだけだとしたら意外です。ワンショットだけでそんなに有名になってしまうのかと感心する。

伯爵の城に着きます。
食事にて伯爵の前でトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが指を切ってしまうとこをしっかりとクローズアップショットで強調されて描写されていました。
翌日、手紙を書くトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカー。

夜になります。
不動産契約書を見る伯爵。
この後で伯爵の決めゼリフがいい。トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーの奥さんの写真を見て「君の奥さんの咽は美しい」なんて言ってます。→サイレント映画なので字幕ですけど。

深夜トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーを襲う伯爵。
ここで遠く離れていても思いが通じる描写がありました。奥さんのエレン/ニーナがトランシルバニアの城にいる夫トーマス・ハッターのことを虫の知らせを感じて思い、それが通じてオルロック伯爵=ノスフェラトゥから護ったことになったからです。こういう描写は好きです。
まわりの人から見れば奥さんのエレン/ニーナは紙一重の危ない人ですけど。

城にてトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが昼間の伯爵=ノスフェラトゥはどこにいるか発見するとこもなかなかの描写。棺桶で眠っているのですが閉まったフタの割れ目から顔が覗いているとこが強烈。

城から出発する伯爵=ノスフェラトゥ。
伯爵=ノスフェラトゥは棺桶の発送等は全部自分でやっていました。意外とまめな伯爵です。余計なキャラを出さないドラマの集約化ということにしましょう。
城から脱出するトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカー。

棺桶は船に積み込まれます。
その船はヴィスボルク/ブレーメンの街へと向かいます。

ブルヴァー博士/ヴァン・ヘルシング教授の食虫植物の講義。
ライバル・キャラの紹介といったとこです。

不動産屋のノック/レンフィールドは直接コンタクトしたわけではないのにいつのまにか伯爵=ノスフェラトゥのしもべとなっていました。よくわからん。トーマス・ハッターをしもべにするわけにはいかないので、これは単に御都合主義かもしれません。
伯爵=ノスフェラトゥのケースは遠く離れても思いが通じるコインの裏ということかもしれません。奥さんが表で伯爵=ノスフェラトゥが裏ということ。奥が深い。

海岸で夫トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーを待つ奥さんのエレン/ニーナ。手紙が届きます。

棺桶を積んでバルト海を航海中のデーナーテール号。
乗客と船員は次々と死亡して船長と1等航海士の2人だけとなります。
船にて1等航海士の前で棺桶から姿を現すシーンも1922年の製作と思えばなかなか強烈でした。直立したままの不自然な動きでゆらりと立って動きがあるのは長いかぎ爪のある手だけというものいい。ムルナウ監督は人間の目は動きのあるとこに引きつけられるということがもわかっているようです。
船長がただ1人残り船の操舵輪に身体を縛りつけます。
伯爵=ノスフェラトゥは船上を歩き横切ります。このショットだけでも異様な感じがします。

デーナーテール号がブレーメンに入港します。
船倉から出る伯爵=ノスフェラトゥ。これがハッチが自動で開いてそれから出てきます。異様な感じがします。
トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーも陸路で戻ってきます。
伯爵=ノスフェラトゥは街についてからも自分で棺桶を持って行動していました。ドアを開けないでオーパーラップで家に入ります。シンプル手法で異様な感じを描写しています。このセンスは上手いです。さすが巨匠は違う。
そういえば自分の家はすでもこの街に買ってあったのか。筋が通っています。
棺桶には呪われた土が入っていて吸血鬼の力の源だそうです。

ペストだと街に告示がなされます。
ネズミの使い方はペストを表しているそうです。

エレン/ニーナは黒い服が多い。
具合の悪いエレン/ニーナを心配してトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが教授を呼びに行った隙に伯爵=ノスフェラトゥがエレン/ニーナの部屋にやって来ます。ここがクライマックスのシーンです。
ドイツ表現主義の光と影を使った手法となっています。

で、ラストの伯爵=ノスフェラトゥの消え方はあっさりとしたもの。これは特殊効果の技術的な問題のようです。しょうがない。
字幕で一応ハッピーエンドになっているようです。

伯爵=ノスフェラトゥの吸血鬼ぶりの描写は1922年当時の人が見たら震え上がったでしょう。船のシーンで画面を横切るだけで怖そうです。
私はガキの頃に『エクソシスト』(1973年)公開当時のTVの宣伝番組や雑誌のグラビアで見ただけで怖くて眠れなくなったのでわかるような気がします。
『エクソシスト』はいまだに未見です。さすがに今見て怖くて眠れなくはならないと思いますが、そんなに無理して見るほどの作品ではないとなります。


そんなわけで吸血鬼物で名高いだけはあるよい作品でした。


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