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2006.04.30

『逢びき』(1945年)

この作品はノエル・カワード製作脚本、デビッド・リーン監督、シリア・ジョンソン、トレバー・ハワード主演のメロドラマです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1945年 G.C.F. 英国作品
原題◆Brief Encounter
コスミック出版発売のDVDにて。画質は意外とよい。500円はお買い得でした。でも次回発売予告が付いていたりします。
プロット やっぱり別れなければいけなかった話のようです。
音楽 ラフマニノフのピアノコンチェルト2番が使われていました。この作品が元ネタななのかな。この曲は『七年目の浮気』(55年)ではギャグになっていたけど。
ここではあまり印象に残りませんでした。というのも映画の方で夢中になっていて音楽まで気が回らなかったといったとこでした。3回位見れば音楽も聞こえてくると思います。


キャスト
シリア・ジョンソン→平凡な主婦のローラ
トレバー・ハワード→医者のアレックス・ハーベイ
スタンリー・ホロウェイ→駅員のアルバート・ゴドビー
シリル・レイモンド→ローラの夫フレッド
エベリー・グレッグ→お喋りなドリー夫人
マージョリー・マース→知り合いのメアリー
ジョイス・カーリー→食堂のおばさん

デビッド・リーン監督の演出はよいと思います。
タイトルに原作ノエル・カワードが大きく出ていました。で、監督のクレジットより後につまり最後に製作ノエル・カワードと出てました。これも珍しいケースだと思いますが、誰が1番偉いのかがわかりやすかったりします。

宗教色を上手く消してあります。
常套句の「神様云々・・」というセリフはありません。これは上手いです。才能がある人がいるもんだと感心します。

ヒロインのモノローグで話は進行して回想になっていて、映画のラストで最初のプロローグに戻る手法になっています。私のこの最初に戻る手法が何となく好きです。
単なる回想ではなくて回想中にまた回想があったり時間が前後したりと凝った構成になっています。凝った脚本によい演出と文句ない出来となっています。

このヒロインは、まず、自分のことは自分で考える。思いを巡らす。これがいい。

駅です。汽車が通過する。
タイトル。ラフマニノフのピアノコンチェルト2番が流れています。
スタンリー・ホロウェイ扮する駅員のアルバート・ゴドビーが登場。

プロローグ。
ミルフォード駅ホームの食堂にて。
男女2人が話し込んでいます。シリア・ジョンソン扮する主婦のローラとトレバー・ハワード扮する医者のアレックス・ハーベイが登場。
ゴドビー駅員が食堂のおばさんと雑談をしています。

ローラの知人ドリーが話しかけてきます。喋りまくります。
この人は医者のハーベイ先生です。南アフリカヘ行きます。とローラ。
食堂を出るハーベイ。ここでローラの肩を掴むショットが入ります。
気分の悪いローラです。
プロローグで喋るのに疲れる人もいるんですよといった感じのヒロインのローラ。ここがあのような状況だったとは分かるはずもない。アイロニーが効いている。

汽車に乗ります。モノローグが入ります。
降ります。ドリーはうるさい。

帰宅します。
子供が2人。兄と妹。
旦那のフレッドは優しい。

フレッドがめまいの原因と聞いてきます。
2人でクロスワードパズルとなります。
モノローグとなり回想となります。

ミルフォード駅食堂にて。
男が入ってきます。

ホームで目にゴミが入るローラ。
食堂に戻ったとこで「私は医者です」で、知り合います。
帰りは方向が逆なので向かいのホームの男がいます。
この2人が知り合うきっかけが駅のホームにて「あら目にゴミが」「私は医者です」というクラシックなものです。いいじゃないですか。この作品がオリジナルなのでしょう。でも、あんまりクラシック過ぎてギャグになりそうです。


次の木曜日です。
図書館に行って薬局に行って等色々なローラの行動が何だか『アメリ』(2001年)みたいです。ホトンド、オリジナルのようなシーンになっています。ここから引用したのかもしれません。面白いものです。


木曜日です。
街の食堂でハーベイと一緒になるローラ。話し込みます。
映画を見ることになります。
食堂を出る時に伝票1枚のことでも話しは弾む。

映画館です。
『霧の中の愛』を見ることになります。
ですが省略して予告編の『情熱の嵐』だけでした。

ミルフォード駅ホームの食堂にて。
ローラとハーベイ。
ハーベイの話し。医学的なことを言ってます。石炭のチリ云々。ローラにはよくわからないけど一緒にいるだけでいいようです。
また会える?とハーベイ。

帰りの汽車で思いを巡らすローラ。
ハーベイは夫人のマデリンにこのことは話さない。これはこまったなと思うローラ。

帰宅するローラ。
息子のボビーがクルマに撥ねられたとのことです。
これは私のせい?とローラ。これはよくある偶然の一致というやつです。
息子は軽傷でした。
ハーベイと会ってる時に偶然に子供が事故にあっただけなのに自分を責めるヒロインの図。ありがちなんですが見てて入れ込んでしまいました。

夜、フレッドに映画を見たことを話すローラ。
全然気にしていない旦那です。人がいいのか、鈍いのか。

このへんは家庭にて夫婦に微妙に食い違いがある風景となっています。
ローラは会ってた医者のことで。夫は事故に遭った子供のことで。この辺も上手い。


木曜日です。
街の食堂にはハーベイはいない。
もう帰りのミルフォード駅ホームの食堂です。
ゴドビー駅員は食堂のおばさんを口説いています。
ホームでハーベイが遅れてやって来ます。見送ります。今週はこれだけ。


木曜日です。
映画を見るローラとハーベイ。
英国の映画館はコマーシャルも上映しているようです。
ディズニーのドナルドダック。ドナルド・ダックは画面には出てきませんでした。昔からディズニーはうるさいんでしょうね。
そして『情熱の嵐』はつまらないので途中で出ます。

植物園へ。
ボートに乗るローラとハーベイ。
ハーベイが水に落ちたので船頭小屋で乾かします。
ここで「君に恋をした」とハーベイ。

ミルフォード駅にて。
キスをして別れます。

自宅へジャンプのシーン転換。
ラジオの音がうるさいとフレッド。ローラは何も聞いてない状態。
帰りの汽車でのことを思い出すローラ。モノローグが入ります。
知人のメアリーに電話してアリバイを頼むローラです。


木曜日です。
ハーベイに会うローラ。
高級レストランへ行きます。
ここで知人のメアリーと会ってしまうローラ。こまった偶然です。

ハーベイの友人から借りたクルマでドライブします。
小川にかかる橋のローラとハーベイ。

友人宅へと誘うハーベイ。
ローラは帰ります。

ミルフォード駅ホームの食堂にて。
タバコを吸うローラ。
一度乗った汽車を降りてハーベイのいる友人宅へ向かうローラ。

アパート?レンタルルーム?のようなとこです。
ここに入るローラ。キスするローラとハーベイ。そんな時に友人が帰宅します。
ローラは裏階段から逃げる。
ハーベイは友人から皮肉たっぷりに小言を言われます。
さすがに鉢合わせのシーンはなかった。このへんの描写バランスはいいです。

たばこ屋から自宅へ電話するローラ。
その辺を歩き回り公園のベンチのローラ。お巡りに追い立てられます。

ミルフォード駅ホームの食堂にて。
10:00過ぎの最終の汽車の乗るローラ。
ハーベイが探し回っていたらしくやってきます。話し込みます。
来週の木曜日にもう1度を会おう。2週間後には南アフリカだとハーベイ。


最後の木曜日です。
ドライブをします。
小川にかかる橋のローラとハーベイ。
同じ行動を繰り返します。これしかやることがない。

ミルフォード駅ホームの食堂にて。
これでプロローグに戻ります。
最後の別れの時なのに知人のドリーが来るのです。
ハーベイは食堂を出ます。ローラの肩を掴むショットが入ります。

ローラとハーベイの最後の別れで邪魔が入ります。
プロローグで「来週にはアフリカに・・」と言っていたのかと思い出し、それでハーベイが待合所を出ていくときにローラの肩を掴むことがいかに重要なことだったのかとわかります。人生最大の瞬間にお喋りで邪魔とはアイロニーが効いている。少し効き過ぎているのでは思えてしまいます。これが英国スタイルなんですか。
この構成は上手いです。才能のある人がいるもんだ。

ミルフォード駅を通過する急行が来る音がします。
ここで斜めのアングルとなって発作的にホームへ飛び出すローラ。
でも飛び込み自殺するのはやめたようです。自分のためにやめたようです。
画面が斜めになったりする目まいのイメージになりサスペンスが出ていました。これがフランスならヒロインの自殺で終わってしまうんですかね。

回想から自宅に戻ります。
「遠くに行っていたのか」のフレッドのセリフ。
フレッドと抱きあってエンドとなります。この旦那はいい人過ぎる感じ。
このラストではヒロインの夫がヒロインを力づけるセリフで終わりますが当時の倫理コードで無理に1行付け加えてみましたといった感じに思えました。

シリア・ジョンソン演じるヒロインのローラは地味な帽子に普通なコートと平凡な服装でした。はれぼったい目にシャープなあごの線。横顔のラインが素敵です。

トレバー・ハワードは相手役を無難に演じていました。
駅員のアルバート・ゴドビーを演じるスタンリー・ホロウェイは『ふしぎの国のアリス』1951年版でのチェシャ猫のCVや『マイ・フェア・レディ』(64年)でのイライザの親父をやってた人だと思います。英国の舞台俳優だったのですか。なるほど。

英国の駅にはスロープの通路がありました。この国ではエスカレーターを付ければ文句はないだろうとなります。さらにエレベーターさえ付けています。
何故か外国の方法は居心地がよく見えるたりします。


そんなわけで、これは素晴らしい作品でした。メロドラマのマスターピースです。



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