『地平線がぎらぎらっ』(1961年)
この作品はキワモノで有名な新東宝作品でタイトル名が面白いので見ましたが、タイトル名とは裏腹の真面目な犯罪アクションとなっています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1961年 新東宝作品
ランニング・タイム◆89分
プロット◆ダイヤの話しを信じて脱走逃亡ダイヤの捜索をする話しのようです。
音楽◆森田守 モリタマモル
スカイパーフェクTV261チャンネルNECOにて。画質はまあまあ。
キャスト
ジェリー藤尾→殺しをやった新波(通称マイト)
天知茂→ゆすりをやった松田(通称教授)
多々良純→殺しをやった太田(通称カポネ)
晴海勇三→密輸をやった入道
大辻三郎→婦女暴行をやった吃りの大平(通称色キチ)
沖竜次→傷害をやった土屋(通称バーテン)
犯罪者を合計6人そろえてます。
万里昌代→バーテンの女房 睦子
星輝美→工場勤めの八重ちゃん
大辻三郎と大辻司郎は別人のようです。大辻司郎は親子で同名なのもあって混同しやすい。
土居通芳監督の演出はよい思います。
始まって大胆な省略で同房の5人がどうしてムショ入りしたかを描写してました。このキャラ紹介はぶつ切りで大胆すぎて何だか分からないとこもありますが。悪くはない。ジェリー藤尾がムショに入ってくる理由の描写がないのも余韻のあるラストになるポイントになっています。
音楽の使い方も上手い。
何せ神奈川の山奥の話しになるから太陽がぎらぎらっと輝くとこは地平線というよりも山の稜線といった感じですが、日本の地平線にはこれが相応しいと思えます。
丘の上に柿の木が1本立っています。そこに行くと遠くに、この地平線が望めます。このシーンはいい。昔見たような風景です。
ムショの5人部屋のとこにジェリー藤尾が入ってきて騒動が起きます。
脱獄の描写もかなり凝ってて、いくつもの鍵を開け死刑台の吊るした死体収容の穴から外に出ようとします。ここで最期の難関で外側からかけられた鍵を開けようと悪戦苦闘します。その鍵が開くとこをクローズアップでとらえるショットがいい。
脱走してクルマを手に入れます。これが疲労回復のグロンサンの宣伝カーでボンネットバスでした。多分タイアップなのでしょう。
2台目のクルマのトラックはどうやって調達したかは省かれていました。
あれがお前の言う柿の木だとマムシに噛まれて瀕死のジェリー藤尾を天知茂と多々良純の2人が引きずっていくのも凄い。
オチが凝っていました。ホントにダイヤがあるのかハッキリとせずダイヤは地平線がぎらぎらっのことなのか?と曖昧にしているのもプラスになっていました。
ヒロインの星輝美がラストで医者を連れてくるとこで終わるのが泣かせます。このヒロインはニッサンの座間工場に勤めているらしい。
ジェリー藤尾がまともに演技している作品を初めて見ました。
黒澤明監督の『用心棒』(1961年)の斬られ役しか印象に残っていなかったもので感心しました。
いきなり歌うジェリー藤尾。殺しとダイヤを隠しているということでムショ内で暴れても持ち上げられていました。とっぽいチンピラぶりが似合い過ぎでハマっていました。これは演技ではなくて地でやっているのでしょう。
祭りの太鼓を叩いてそのリズムがカメラが回る。そんなシーンもありました。
多々良純はいかにも書きましたという顔の傷はご愛嬌ですが、悪役を大熱演してました。特に宣伝カーに乗った関係でチャップリンのコスプレでサンドイッチマンのふりをして女を追っかけたり散弾銃で仲間を射殺したりと大活躍でよかったです。
チャップリンは実生活では女を追っかけたそうですからこの作品での追っかけるとこは違和感はないような気がする。
天知茂は黒縁の眼鏡をかけたインテリ風の男。新東宝以降とは違うキャラでした。
万里昌代は『斬る』(1962年)の全裸になって殺されるシーンで有名です。
TVシリーズ『戦え!マイティジャック』(1968年)の第12.13話『マイティ号を取り返せ!』前後編にもゲストで出てました。マイティ号を乗っ取るためのエンジニアで結構いい役で目立つので誰かと思っていたら後で元映画スターとわかってビックリしたものです。
これはガキの頃に見たら丘に登れば何が見えるとトラウマになって夢に出そうな作品で、タイトル名からするとアクション・コメディかと思ったら、これが大マジな犯罪アクション物のよい作品でした。
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