『接吻泥棒』(1960年)
この作品は川島雄三監督、宝田明、団令子主演の日本映画にしては珍しいロマンティック・コメディです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1960年 東宝 日本作品
スカイパーフェクTV310衛星劇場にて。画質はよいです。
プロット わがままなお嬢様に振り回される話しのようです。
音楽 黛敏郎
キャスト
宝田明→ボクサーの高田明
団令子→わがままなお嬢様の由紀美恵子
新珠三千代→高田明に入れ込む雇われママの山岸エリ
草笛光子→高田明に入れ込むデザイナーのエレナ西条
北あけみ→ダンサーの沢井洋子
中谷一郎→トップ屋の日高
川津清三郎→由紀美恵子の父
東郷晴子→由紀美恵子の母
図師孝雄→由紀美恵子の弟
上田吉二郎→新珠三千代のオーナー
有島一郎→木村先生
石原慎太郎→この作品の原作者本人役
川島雄三監督の演出はよいと思います。
ロマンティック・コメディに付き物な多量のセリフを早口で喋るマシンガントークをキャスト全員でやっていました、もう少し歯切れよく喋っていたらもっとよかったようです。回転不良のマシンガンといった感じですが悪くはありません。
増村保造監督の緒作品ではマシンガントークが出来ているのですから日本語はマシンガントークに向いていなくはないと思えます。
1960年代、当時のハイソサエティな暮らしの描写から始まります。これがとても貧乏臭い。現在も貧乏臭いけど。
ロケで当時の東京が見られます。東京タワーが見えたりします。同じようなタワーが見えたけどあれは何だ?NHKの放送タワー?
当時の道路事情ではアメ車は場違いもいいとこです。走れる道路なんて限られていたのでしょう。
日本の俳優さんでもロマンティック・コメディがこなせるとわかります。
しんねりむっつりの耐える演技が売りの新珠三千代や、ふてくされた演技が売りの草笛光子がロマンティック・コメディのキャラクターを一応こなしているのが印象的です。なんだい2人ともやればちゃんと出来るじゃないと感心しました。ですが、これは川島雄三監督の演出のおかげです。
丸い顔の団令子は魅力的。
この作品でも新珠三千代や草笛光子にあんパンのへそみたいと言われていました。
わがままなお嬢様を嫌味なく演じていていいです。この嫌味なく演じるのが他の日本映画には出来ないとこなのです。大半の日本映画は嫌味なだけなのです。これも川島雄三監督の演出のおかげです。
宝田明扮するボクサーは女を3人かかえているお盛んな男です。
名前が宝田明の「ら」が抜けているだけのホトンド同じな高田明です。このへんからもう遊んでます。宝田明はケイリー・グラント的キャラクターをまあまあに演じていました。
中谷一郎扮するトップ屋の日高はピンク色のドカヘルにゴーグルに革ジャンでバイクで飛ばして尾行しスクープ写真を撮る。ステレオタイプのキャラとなっています。
で、草笛光子の相手を務める中谷一郎はロマンティック・コメディのキャラを結構達者にこなしていました。これは意外でした。終わってみれば何だか中谷一郎は儲け役だったようです。
新珠三千代の雇われママは自家用飛行機に乗る。宙返りのシーンは特撮です。
デザイナーの草笛光子はフランスの雑誌をコピーして新作と言ってる。今でもこうなのかい。
いつも何かと話題で現在は都知事で自分の都合の良い時だけマスコミに登場する石原慎太郎が最初と最期に出ています。
最期は楽屋オチがあってエンディングを自ら決めています。当時から出たがりだったようです。正直言って俺ってカッコいいだろうのナルシスト演技がうっとうしい弟の石原裕次郎よりいい男に見えたりします。
色紙を書いて終わりにしますが左手で書いていました。石原慎太郎は左利きだったのか。左利きのくせに考え方は右寄りなの?と、つまらないことを思わず書きたくなります。
週刊誌の広告にガスデンと出ていました。バイクのようです。
ボクシングの興業があるとこではペトリカメラの広告が出ていました。両方とも今は無くなっている会社です。
ダンサーと踊るのは『獣人雪男』(55年)の着ぐるみの使い回しだそうです。
そんなわけで日本映画でもロマンティックコメディが出来るとわかるよい作品でした。
湿っぽくならずにさっぱりと乾いた描写で映画が撮れる川島雄三と増村保造がいた1960年代はよかったなと改めて思います。
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