『泥棒成金』(1955年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、グレース・ケリー主演のロマンティック・コメディのようなサスペンスのような作品です。実は究極のアイドル映画だったりします。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1955年 パラマウント アメリカ作品
ランニング・タイム◆106分
原題◆To Catch a Thief
プロット◆元泥棒が謎の泥棒を捕まえる話しのようです。
音楽◆リン・マレイ
ユニバーサル・ピクチャーズ発売のDVDにて。画質は非常によいです。これがテクニカラーです。
LDでは気になっていたケイリー・グラントが着ている縞のセーターのちらつきはDVDではマシになっています。
LDはテレシネ時に紛れ込んでいたと思われる綿埃が映り込んでいるとんだ欠陥商品でした。その映り込んでいるのがホテルにてグレース・ケリーがケイリー・グラントにキスをするシーンなのです。シャルル・ヴァネルやジョン・ウィリアムスならいくらか諦めもつくのですがそうもいかずでこまったものでした。
DVDでは当然画面に綿埃等は映り込んでいません。ようやくまともに見られるようになりました。
キャスト
ケイリー・グラント→元泥棒のジョン・ロビー
グレース・ケリー→アメリカ人のフランシー
ブリジット・オーベール→フランス人のダニエル
ジェシー・ロイス・ランディス→アメリカ人のスティーブンス夫人
ジョン・ウィリアムス→保険会社のヒューソン
ルネ・ブランカール→ルピック警部
シャルル・ヴァネル→レストラン経営のベルタニ
ジャン・マルティネリ→ダニエルの父フッサール
ロラン・ルザッフル→浜辺の懸垂男
ジョルジェット・アニス→家政婦のジェルメイン
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
本『映画術』によると、この作品のコンセプトは「グレース・ケリーを撮ることで話しは何でもいい」とのことです。さすがに巨匠は言うことが違う。脚本家の人が聞いたら激怒しそうなことをあっさりと言ってます。ホントかよとなります。面白いものです。
そうなるとこの作品は女優をきれいに撮ることにかけては抜群の腕前の巨匠が演出しているグレース・ケリーのスター映画というか究極のアイドル映画ともいえそうです。とはいえ無駄なショットが全然ないのがヒッチコック監督の偉いとこでお見事の一言です。
ヒッチコック監督が得意のスクリーンプロセス大会でもあります。リアルな描写とはあまり縁のない監督です。
溶暗を使っています。要所要所を締めます。
元泥棒の男と石油成金の娘の話しだから『泥棒成金』という邦題なのかとようやく気がつきました。あまりにもストレートなので盲点でした。脳髄の盲点というやつです。泥棒と成金の泥臭い言葉が2つ並ぶとこの作品の洗練ぶりとは合ってなくてあまりいい邦題ではないようです。
この作品はホントのお遊び映画なのでマジに見ると損をします。
マジに見てるとそれこそまじめにやれと怒りたくなりますから。→それは私のことです。あくまでも気楽に流して見るのが1番です。
始まったとこで黒猫が屋根を歩くと宝石が盗まれるモンタージュがあります。このへんからもうマジになって見てはいけません。
犯人は奴だと決めつけて警察はロビーの家に向かいます。
ロビーは警察をかく乱するためにショットガンを発砲させますが、この撃つタイミングが絶妙。上手いです。
警察をごまかしたロビーはバスに乗って去ります。ここでヒッチコック監督が登場しますが半分しか見えないのは当時最新の客寄せアイテム シネマスコープと自分が使ってるビスタビジョンの画面サイズを比べたギャグだそうです。
昔の仲間がやっているレストランに向かうロビー。
ロビーは泥棒ですが戦争中はレジスタンスの一員として貢献したとのことです。そのレジスタンス仲間は現在はレストランをやっているということです。自由の身というわけではなく仮釈放中とのこと。
リビエラからモーターボートでカンヌのビーチクラブへと移動するロビー。
ブリジット・オーベール扮するウェイターの娘ダニエルがモーターボートを運転しています。
ロビーは水着姿となり人込みに中に紛れ込みます。ここのシーンではもうグレース・ケリーは出ていました。サングラスに黄色い水着で後ろの方に出ていました。
花市場に来るロビー。
保険会社のヒューソンとコンタクトするためです。ロビーは私が宝石泥棒を捕まえるから次に狙われそうな宝石所持者リストを見せなさいと交渉中。ですがすでに警察の手が回っていてロビーはあっさりと捕まります。
この花市場を2人並んで歩いて移動するシーンは何となく『攻殻機動隊』(1995年)の市場銃撃戦前の追跡のシーンに似ています。
次のシーンでは捕まったはずのロビーが自宅で保険会社のヒューソンと食事をして交渉の続きをします。話し中に保険会社は食事代も経費で落とせるのだろうと出てきます。
この家のシーンでもスクリーンプロセスを使っています。ホントにこの手法が好きなようです。現在ならデジタル合成でもっと上手く合成出来るので、もしヒッチコック監督がデジタル合成が使えたらもっと上手く使いこなしていたでしょう。
交渉は成立し次に狙われそうなスティーブンス夫人と娘に会うことになります。
グレース・ケリー扮するアメリカ人フランシーは青いドレスを着てます。素敵です。
ロビーはカジノでアメリカ人親子と知り合います。保険会社のヒューソンとも一緒に4人で一杯飲んでアメリカ人親子をホテルの部屋まで送ります。
部屋まで送って入るとこでキスをもらいます。初めて気がつきました。ロビーの唇る口紅が付いてます。これは当時としてはかなりきわどい描写だと思えます。
カンヌのビーチクラブへと行くロビーとフランシー。
浜辺にはダニエルが来ててフロートの上で横になりロビーを待っています。ここでフランシーのことをアメリカンビューティといってます。アメリカンビューティとはヨーロッパのアメリカコンプレックスの一例のようです。
女性2人の会話が弾みます。「近くで見ると歳ね」「子供には大人はそう見えるのよ」とかやってます。
海から上がりロッカーが調べられていることに気がつくロビー。懸垂をしている男が目に付きます。
ホテルの入り口でロビーを待っているフランシーのロングショットがあります。これはいいシーンです。素晴らしい。
ピンクのツーピース姿のフランシーは貸し別荘を調べると言っていたロビーのドライバー役を買って出ます。断りきれないのでドライブへとなります。
フランシーの運転するクルマは超豪華な青い2シーターのオーブンカーです。しょぼい人には似合わないクルマです。
運転するシーンは全部スクリーンプロセスとなっています。
貸別荘にてクルマを止めて2人が歩き始めるシーンの構図が決まっています。ビスタサイズの使いこなし方です。
貸し別荘を見に行く2人。ここはクライマックスでの仮装パーティが行われ場所?そうだとすると無駄のない脚本です。
貸別荘を出たとこから尾行をまこうとしてカーチェイスとなります。
例によって運転するシーンはスクリーンプロセスなので緊張感に欠けますがクルマからの主観ショットは結構迫力があったりします。
尾行をまいたとこで偽名ではなく本当の名前ロビーと言うフランシー。
正体がばれたとこでドライブを終わり食事となります。クルマが止まるとこを俯瞰で撮ったシーンが美しい。
喋ったり食べたりするシーンも素敵なグレース・ケリーです。
ホテルで花火見物をするロビーとフランシー。
肩を出した白いドレスが素敵です。
花火とキスシーンがカットバックとなります。これはギャグなんだっけ?
この夜にスティーブンス夫人の宝石は盗まれてしまいます。ロビーがやったと思うフランシーは怒りをあらわにします。怒るシーンもいいグレース・ケリーです。
今度をシルバ家が狙われるからそこを押さえようとなります。
で、その夜に殺しのシーンとなります。死んだのはウェイターでダニエルの父フッサールです。
ロビーが死んだと載っている新聞を買うフランシー。
警察には死んだはずのロビーがやってきます。
死んだウェイターのフッサールの葬式に出るロビー。気まずい雰囲気となります。葬式のロビーに声をかけるフランシー。週末の仮装パーティの話しになります。ルイ15世のドレスで出るとフランシー。
それでクライマックスの仮装パーティのシーンとなります。
無駄な話しの進行ぶりです。段々と人が減っていく描写があり。楽団が引き上げたとこで静寂となりお開きとなります。
それから軽くアクションがあり、ラストとなります。
アメリカンビューティ、グレース・ケリーはホントきれいです。さすがにヒッチコック監督はグレース・ケリーをきれいに撮っています。
何でもない会話のシーンでも妙に面白くて見て聞き入ってしまいます。フランシーを演じるグレース・ケリーは冷たい感じは全くないです。かわいらしい声が素敵です。
白のイブニングドレスは素敵です。きれいな背中です。
ケイリー・グラントの素晴らしい喋り方の出来る人です。セリフを聞いてるだけでよい人です。グラントはホントに元軽業師です。
クルマ、ここに出てくるオーブンカーの名はなんての?さっぱりわかりません。映画オリジナルのクルマなのかね。
よく出来ています。この作品にはスリルとサスペンスはホトンドないのでその方面で期待をしている方はご注意を・・・
そんなわけでグレース・ケリーがきれいに撮れてるよい作品でした。
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はじめまして、グレース・ケリーで検索して来ました。
詳細で素敵な記事ですね~!
彼女の落ち着いた雰囲気とルックスは、まさにクール・ビューティーですね!
どの時代でも通用する上品な感じの女優でした。
私も今回、グレース・ケリーについて記事にしました、よかったらいらして下さいませ~ではまた!
投稿: ルーシー | 2006.10.21 06:24
ルーシーさん、コメントありがとうございます。
グレース・ケリーは声がいいですね。ルックスもいいけどとても可愛い声を聞いてるだけでいいものです。
ルーシーさんの記事を読んで、グレース・ケリーは交通事故死したのと思い出しました。運命というにはあまりにも気の毒な出来事でした。
で、あまり上品には見えないグレース・ケリーの子供達を見ているとグレース・ケリーは努力してあのような雰囲気を身に付けたのかと思えます。
映画の方ですが、ジョン・フォード監督の『モガンボ』はまだ見ていないのでそのうち見たいと思っています。
投稿: ロイ・フェイス | 2006.10.22 18:32