『イノセンス』(2004年)
この作品は押井守監督の警察物不条理アクションです。ラブロマンスも少し入っています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
2004年 プロダクションI.G/徳間書店/日本テレビ/電通/ブエナ・ビスタ 日本作品
英題◆Innocence
通常版DVDにて。画質は非常によいです。
プロット 人形による謎の殺人を追う話しのようです。
音楽 川井憲次
キャスト=CV
公安9課のバトー→大塚明夫
公安9課のトグサ→山寺宏一
公安9課のイシカワ→仲野裕
公安9課の上司 荒巻→大木民夫
ハッカーのキム→竹中直人
検死官のハラウェイ→榊原良子
行方不明の草薙素子→田中敦子
押井守監督の演出はよいと思います。
何となく押井守監督はゴダール化しているような気がします。要するに誰にも止められません、やりたい放題です。映画批評家達は批判はしたいけどよくわからなくて見当違いな批評をして恥をかきヘタすると批評家生命が終わります。そんなわけで自分が可愛くて批判出来ないのかも。
ディテールに凝るのは別に悪いことではないと思います。作品の出来がお粗末になり結局残ったディテールだけが凝っていたとなるのが悪いのです。アニメはこのパターンがホトンドですが、この作品はそうではありません。
他の作品に使われていたセリフが多い。自作からなのでパクリではないけど単なる使い回しなのでは?まあいいけど。集大成なのか使い回し大会なのかはよくわかりません。
基本的に『ブレードランナー』(82年)のようです。ところでハリソン・フォードは演じる主人公が、やる気がなくレプリ相手でもいいとこがまるでなく自分が目立たないので『ブレードランナー』はお気に入りではないでしょうね。そんなことをいったら実は『スターウォーズ』シリーズだってハリソン・フォードのお気に入りではないとなりそうですけど。
フィルムノワールの雰囲気もあり、この作品はフィルムノワールに入れられます。
話し自体は意外とシンプルになっているのがいい。
情報量が多い。これは凄いことです。無駄になっていないのもいい。
従来のリミテッドアニメにCGやら色々と混ざっていてもそんなに違和感はありません。
リラダンの小説『未来のイヴ』の引用で始まります。
この小説は読んだことがあります。内容はわけわからん。クライマックスの正体がわかるとこは映画的だと思えましたけど。
プロローグ。
超小型のヘリコプターが飛びます。ビル街にて。
バトー登場。最初から『ブレードランナー』と同じ調子です。
人形=ガイノイドが暴れているとのことです。主観ショットの切り返す手法を使っています。
スラム街の中に潜伏している少女の人形=ガイノイドをショットガンで片づけるバトー。
タイトル。
公安9課にて。
打ち合わせです。バトーとトグサは捜査に出かけます。
まず地元警察に行きます。破壊されて検死?中の人形=ガイノイドを調べます。
「おいしいとこを持っていきやがって」とイヤミを言う地元の刑事です。
検死官のCVは榊原良子が担当しています。まるっきり『機動警察パトレイバー』シリーズの南雲隊長と同じ演技のようです。これは何か意図があるの?手抜き?
この検死官の長セリフがあります。
私は長セリフは苦になりませんが絶叫芝居は苦手です。絶叫芝居はやめてくれとなります。ですから最近の日本映画の実写はあまり見ていません。
事件を起こした人形=ガイノイドはメイドタイプでセクサロイドでもあったとのこと。オタク趣味が全開ではないですか。
地元警察を出ます。
出たとこでまた同じ殺しがあったと無線が入り現場に向かいます。
駐車してあるクルマがターンして発進するシーン。何となく私の見たことがある作品の引用が多いような気がするのは単なるし思い込みのせいか?
クルマといえばセレクトがマニアック過ぎて車種がわかりません。まあいいけど。私の好みでもないし。1970年代のアメ車にしてください。
その殺しの現場にて。
被害者は例のロクス・ソルス社の社員とのことです。
3Dホログラフの少女の写真があります。
イシカワに送られて帰宅するバトー。
ドッグフードを買います。深夜にペットの餌を買いに行く作品があります。犬ではなく猫の餌でロバート・アルトマン監督で主演エリオット・グールドがフィリップ・マーローを演じた『ロング・グッドバイ』(73年)がそうです。
バトーの自宅にて。犬のオルゴールが鳴っています。
バセットハウンド犬に餌をやります。耳が餌の器に入らないように直してやるのが芸コマです。
公安9課にて。ヴァーチャル会議になっています。
冷蔵庫に死体の臓器が入っていたとか。
政治がからまないと9課の出番はないとか。
色々とネタが入りますが本筋とはあまり関係ないような。
バトーとトグサはヤクザの事務所に向かいます。
現場でいきなり撃ちまくるバトーです。ここは撃ち始める描写がサム・ペキンパー監督の『ゲッタウェイ』(72年)のようです。銃を隠している布がはらりと落ちたとこで発砲となります。正直言ってよく似ています。丸っきりコピーではないからマシですけど。
事務所奥に入り込みます。下手人のハサミ装備のサイボーグ?を片づけるバトー。少し余計な口上が多いバトーです。
公安9課にて。
上司の荒巻にヤクザの出入りではないんだと説教されるバトーとトグサ。
帰宅途中にコンビニに寄るバトー。
警告?虫のしらせ?郵便配達は二度ベルを鳴らす?草薙少佐の警告を聞くバトー。で、銃撃アクションになりますが実はバトー自身の頭脳がハッキングされて自作自演となっていたとのことです。危うく自滅するとこだったとのこと。
これはバトーが収容されて調整中(治療中とも言える)にわかったことです。
ところで日本のコンビニのレジにショットガンは無理でしょうが金属バットが標準装備になるのは時間の問題なのかもしれません。
荒木の指令で北に向かうバトーとトグサ。択捉島です。
択捉は新宿化して無法地帯になっている設定です。新宿って当局に反抗しなければ野放しとなっている?。実際でも事件を起きれば真犯人でもなくても下手人を当局に差し出せばそれで済んでいるようです。
2重反転プロペラの双発可変翼型飛行機です。このデザインは機能的で素晴らしい。可変翼で垂直に降下して着陸します。
私が2重反転プロペラなんて何で知っている?→ガキの頃に読んだジュール・ヴェルヌの『空飛ぶ戦闘艦』に登場するアルバトロス号でそのような描写があったような記憶があります。これしかない。
街の風景の描写が長く続きます。これは押井守監督の作品にも必ずある描写のようです。
ところで何の祭りをしている?ハロウィンなの?人形を燃やしている描写もあります。
ケチな情報屋とコンタクトするバトー。
このケチな情報屋のCVは堀勝之祐?ハッカーのキムの居場所を聞きます。
キムの屋敷に入るバトーとトグサ。
屋敷内はオルゴールが鳴り響いています。
キムの長セリフがあります。聞き流していると何故か同じシーンの繰り返しになっています。これは面白い。少しずつ違っているのがまた面白い。
最初はキムが死体で2度目はトグサが死体になっています。3度目はバトーになっている。
わけがわからん状態で何度目かの屋敷内突入となります。
海上からの艦砲射撃で破壊される屋敷のショットもあります。
これが本多猪四郎監督-円谷英二特技監督の『怪獣大戦争』(65年)のそのままだったりで音楽が違うのでは?川井憲次ではなく伊福部昭なのでは思えてしまいます。押井監督は才能が尽きたのかボケが始まったのかと心配になります。
引用なら少しは変えて下さい。目や耳から脳というフィルターを通して違う形になって出てくるのが引用なのでは?変わらないということは頭の中には脳ではなくコピー機が入っているのでしょう。
で、アキレスのオブジェのある屋敷前のシーンに戻ります。どうやらまたハッキングされたようでした。
また草薙少佐の警告に助けられたバトーです。クロスワードパズル。
もしかしてこの一連のシーンがこの作品のハイライトなのかもしれません。
海上にあるロクス・ソルス社の工場船に潜入するバトー。
トグサは離れた別の船でバックアップです。
船内のメインコンピュータは多数の人形=ガイノイドを繰り出してきますが何故か味方の筈の人間のガードマンとも戦っていたりします。面倒なのか時間がないのかメモリが少ないのか敵味方の識別はしてないのかもしれません。わけわからん。
バトーは人形=ガイノイド達相手に苦戦しているとこに人形=ガイノイドをハッキングした草薙少佐が助けに来ます。合流して戦います。
船内のメインコンピューターをハッキングしようとする草薙少佐。バトーは必死で援護となります。自動小銃で点射も出来なくで単発射撃で応戦しているので残弾が少ないとわかります。
この工場船を公海から某国内海域に移動させて証拠として抑える手はずです。
正体とは?→人間の少女だったようです。人形=ガイノイドの電脳は本物の人間の子供からコピーしたというか移植したとなっているようです。臓器移植のバリエーションか?。そうなると人間の少女の意識ごと少女人形に封じ込められてしまうのか?これは怖いですね。
ここで殺されたロクス・ソルス社の社員は少女達を助けようと手引きしているのがバレて始末されたとわかります。
少女の行動に怒るバトー。人間より人形が大事?
エピローグ。
トグサの自宅前にて。
プレゼントの人形を見るバトー。エンドとなります。
後タイトルで歌が流れますが、私が日本人女性ジャズボーカリストと聞くとうさん臭く思えるのは何故か?→それは阿川泰子のせいです。特撮映画に出たり雑誌でセミヌードをやってた人がいきなりジャズボーカルですと出てきてアルバムが売れるわけでもない、それでもTVCFにはしっかりと出ていました。この人のうさん臭さは本物でした。よほどいい個人スポンサーがついてたのでしょう。
この作品を毎回見てて思うのはけっしてつまらなくはないということです。
何が足らないのかは、プロダクションデザインというかディテールに関して近未来を予感させるのがあまりないので物足りないのでは思うようになりました。『機動警察パトレイバー』(89年)、特に『機動警察パトレイバー2』(93年)は近未来していたような気がします。この作品はレトロに偏り過ぎてしまったということか。
そんなわけで押井守監督としてはまあ水準な作品でした。
もしかして私は最近の日本映画はアニメしか見ていないので?実はその通りで意識的にそうしているのです。実写映画のハイライトや予告でのセリフ回しを聞いただけで見る気が失せたりするもので・・・
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