『アヴァロン』(2000年)
この作品は押井守監督の仮想空間物不条理アクションです。ラブロマンスも少し入っています。
前評は結構悪いのでそんなものかなと見ました。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
2000年 デイズ・プロ/バンダイ/日本ヘラルド 日本=ポーランド作品
英題◆Avalon
DVDにて。画質はよいです。本編のみの通常版のDVDの方です。
プロット 恋人に逢いに行く話しのようです。ホントか?
音楽 川井憲次
キャスト
マウゴジャータ・フォレムニャック→ヒロインのアッシュ
イエジ・グデイコ→ロストした男マーフィー
ダリュシュ・ビスクプスキ→謎のビショップ
バルテック・シヴィデルスキ→知り合いのスタンナ
アリシィア・サブリック→九姉妹のジル
ヴァディスワフ・コヴァルスキ→案内担当のゲームマスター
カタジナ・バルギエヲフスカ→受付の女性
スザンナ・カシュ→白い少女
押井守監督の演出はよいと思います。
プロローグでメイキングで見たアクションシーンのホトンドを使い果たしてしまいした。これで後の方が持つのかいなと心配になりました。
モブシーンはエキストラ等のコントロールが効かないから後は編集で何とかするのが普通だそうです。
タイトルの出し方は相変わらずカッコいい。このセンスはいつもながら感心します。1番いいのは『機動警察パトレイバー』(89年)です。
音楽とシンクロしてカット割りする手法を使っています。これもおなじみの手法です。
要するにこの作品は今迄と同じ演出手法で撮っているということです。
ショットのサイズは計算して撮っているはずですからそんなに計算違いと思えるとこはなかった。クローズアップショットも適度に入っていました。とはいえ同じショットの使い回しは多かった。使い回しは別に構わないと思っています。
長回しを多用していました。特にヒロインの表情を捉えた長回しが多かった。意図は不明。
私の好きな『紅い眼鏡』(87年)みたいなのか?と思えば色々とあります。そっくりそのままではありませんが大筋は同じような感じがします。
主人公が男から女と変わり。
夢の世界からゲームの世界へと変わり。
紅い少女は白い少女へと変わり。
モノクロからカラーとなるパートカラーの使い方も変わり。
流用の童謡『いぬのおまわりさん』はオリジナルのオペラへと変わる。
同じような話しを延々と何回も作り直しする。映画作家です。
押井監督のヒロインの好みは『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』(84年)のサクラ先生からたいていの作品では一貫しているようです。知的でエキセントリックな人がタイプのようです。
ヒロインのアッシュはアパートから電車に乗って通勤してゲームをやっているようです。
カラーになると分かりますが髪はブラウンです。ゲームの中ではこれにブロンドのメッシュが入ります。アッシュという名前の由来はこのメッシュからくるとのこと。アッシュブロンドという言い方があります。普通のブロンドより色が褪せた感じの髪だと記憶しています。
ハンドガンは最初はワルサーPPK使用。ストックの付いたモーゼル・ミリタリーと貸してもらって1回使用しただけです。カラーになってからモーゼルHSCを使用。
ゲームの中の対戦車戦では対戦車兵器RPGを使用していました。サブマンガンPPsh41も登場していた。
前説があります。
結構長い。
プロローグ。
ゲームとなります。
野原にて。戦車が登場。
機関砲を連射して空薬莢が飛び散ります。
市街地にて。戦車が走ります。市街地を蹂躙する戦車。
アッシュ登場。
野原です。
ヘリコプターが登場。これは凝ったデザインのヘリコプターでした。
このゲームをコンプリートするアッシュ。カッコよくキャラ紹介です。
タイトルとなります。
個室にて。
ゲームから戻るアッシュ。
タバコを吸って、メガネをかけるアッシュ。
受付ロビーにて。
帰宅するアッシュ。
市電に乗ります。
アパートです。犬がいます。
エサをやります。垂れてエサの入れ物に入る犬の耳が気になります。
受付ロビーです。
ビショップとは?コンピューターで検索するアッシュ。
フラッシュバックとモンタージュとなります。
ゲームして帰宅して他等々。
普通の日々が過ぎていくモンタージュのようです。
これに合わせて歌が流れます。
道端で男に話しかけられるアッシュ。
スタンナという男。食堂に入ります。
ビショップの情報?
マーフィとは?
白い少女とは?
色々と伏線のようなものがばらまかれます。
病院です。
フラッシュバックで白い少女のこと。
誰を見舞う?→マーフィです。廃人同様。
フラッシュバックで昔の嫌なことを思いだすアッシュです。
アパートにて。
コンピューターで調べるアッシュ。
九姉妹?
ゲームに入るアッシュ。
その前にゲームマスターと話しをしています。
仮想空間の廃虚C66Aへ。
サブキャラのジル登場。男も登場。誰だかわからん。雑魚キャラか?
ヘリコプターからロケット弾攻撃でゲームオーバーとなるアッシュ。
アパートです。
料理をするアッシュ。
肝心の犬が消えています。
犬が出てきますが、この犬の耳は餌を食べる時に特徴的な垂れた耳が餌の入れ物に入っていた。この耳はとても機能的ではないようです。やはり品種改良という改造された犬といった感じに思えます。
この犬か途中から消えてしまう。ヒロインも捜していたが結局消えたままでした。カラーのシーンでまた通り掛かりのクルマの中に居たりします。
図書館にて。
アーサー王関連の本を借りるアッシュ。
本を借りるとこがありましたが何故か日本語のタイトルの本でした。アーサー王関連ですが中味が白紙の本です。意図不明。
図書館を出たとこでまたスタンナに話しかけられるアッシュ。
食堂です。卵とソーセージ。
クローズアップショットを入念に入れています。
モノトーンのとこで赤い肉の色が出ているのは目立ちました。
知り合いのスタンナにまともな食事をおごってやるシーンでは何故かこの男が食うシーンの口元のクローズアップが多過ぎるくらい使われていました。何故かそうなのか分からん。
雨が降ります。
アパートです。犬はいない。
訪問者があります。ビショップです。
ゲームパーティ ウィザードのことで。
フラッシュバック。ゲーム ヘリコプターからの攻撃。
またパーティを組むことになります。
受付ロビーです。
待つアッシュ。
受付の女性と話しをするアッシュ。
ゲームに入ります。
仮想空間の高射砲塔22にて。
ビショップの説明が入ります。
この辺でマーフィとビショップはもしかしたら別人なのかとようやくわかる。
仮想空間の廃虚D99にて。
ツイダデルという大きな戦車のような物が出ています。
対戦車兵器RPGを使用するアッシュ。
ツイダデルを破壊してこれでゲームみコンプリートです。で、白い少女が出現します。
白い少女=ゴーストを倒せばクラスSAに行けるらしい。
参加していたスタンナはゲームオーバーとなり消えます。
ビショップからモーゼルミリタリーを渡されて白い少女を追うアッシュ。
何とか仕留たようです。
仮想空間のクラス リアルの世界に入るアッシュ。
カラーとなります。装備はモーゼルHSCと黒いドレス。
ビショップの説明が入ります。
はだしで部屋を出るアッシュ。
ゲームでクラス・リアルの世界に入ると途中からいきなりカラーとなります。ヒロインのアッシュと黒のワンピースにはだしでしたが部屋を出て市街地になるとちゃんと靴を履いていた。はだしはどうしたと文句が出そうですが、まあいいです。
ここではワルシャワの街の風景が見られます。
受付ロビーを通り外に出るアッシュ。
外は昼間の市街地でカラーとなっています。
オペラハウスへ向かうアッシュ。
地下鉄を利用するアッシュ。
犬のポスターのオペラ『アヴァロン』
オペラハウスに入るアッシュ。
ロビーにマーフィがいます。
オペラ『アヴァロン』が始まります。
アッシュとマーフィの会話となります。
クライマックスではオリジナルのオペラとカットバックで2人のシーンが描写されていました。
マーフィはアッシュに撃たれて死に至ります。消滅する。
マーフィのハンドガンには実包は入っていなかった。コルト・ガバメント70モデルのようです。
コルト・ガバメントのマガジンに実包を装填して舞台へ向かうアッシュ。
舞台上には白い少女がいます。ハンドガンの狙いをつけるアッシュ。
エンドとなります。
後タイトルが6分はあります。
107分で終わります。DVD表示の111分ではない。最初のバンダイとかドルビーデジタルのタイトルを入れればそのくらいにはなるかもしれません。
メイキングDVD『gate to Avalon2000』◆70min.から。
ヒロインは押井監督の知的な美人でエキセントリックないつものタイプです。モーゼル・ミリタリーを使わせるとこがまたいつものこと。撃つときには一瞬まばたきをしていました。ほんのわずかなので普通は気がつかないほど。たいした女優さんです。
この女優さんは自前のブロンドなんですがわざわざブルネットのカツラを付けさせていました。押井監督の好みなのだそうです。カツラをつけるとこのヘアスタイルから何となく60年代のアンナ・カリーナのような感じに見えました。
マーフィ役の俳優さんは確かに演技がくどかった。
ポーランドで撮影したことがよく生かされていました。日本人スタッフは10名程度とのこと。
軍隊の協力があって迫力が増していました。RPGを使用。
私はアニメ『機動警察パトレイバー』(89年)で登場していた軍用ヘリコプターのヘル・ハウンドは実在していると思い込んでいました。『機動警察パトレイバー2』(93年)で上野アメ横を低空で横切るショットかよかったもので、そしたら実在の軍用ヘリはあんなカッコよくなかった。ビックリしました。
で、ポーランドの軍用ヘリのMil24ハインドというのが出ていました。このヘリのデザインがコックピット回りのキャノピーのデザインが直線的なアメリカの軍用ヘリと比べると丸いデザインでいかにも押井監督好みのようです。軍用ヘリのMil24ハインドは1発撮りで、後はこのフィルムを加工して使い回すのでしょう。ヘリに見とれる押井監督はマニアの顔。
戦車はT-72が3台とのことです。
その他に機関砲搭載のシルカというモデル。弾丸は200発限定で撮影したとなっていました。これも使い回しのようです。
ポーランドの市街地ロケで押井監督はオタクのファンにサインを求められていました。どこもオタクはタイプが同じみたいです。
この市街地ロケでは戦車3台とエキストラ180名で街を行く戦車のシーンを撮っていました。日本では戦車は演習地でしか撮れないから意味はないとのこと。戦車は市街地を蹂躙するから絵になるそうです。
映画は絵コンテが命です。よい脚本だけではなくて、そのよい脚本というのを絵コンテ化したものが1番大切なのではと思っています。
押井監督が撮りたいショットというのがあるらしく、アニメでやったショットを撮り直しています。
銃撃を受けて物陰で頭をかばう男のショット。ここで演じるスタントの人は議論がありました。そんなことをしたら弱々しく見えてしまうとか。このショットは『機動警察パトレイバー』(89年)のタイトル部分であったショットで押井監督としては絶対に撮らなくてはいけないショットなのでなんとかかんとかと言って思う通りにしていました。
ポーランドのスタッフで撮影監督が有能で助けられていたそうです。押井監督はこの撮影監督のことを仕事とプライベートをハッキリと分けていて仕事意外では付き合わなかったということをまた評価していました。
日本で撮らない方がいい。キャスティングがデタラメになるし。主役のヒロインからして誰になるか分かるものではない。監督の作品に対する意見なんて無視されてとんでもないののがヒロインになったりしますから。よくあるのはプロデューサーの愛人か監督の愛人かプロダクションの力関係で決まるように思えるのでホントにとんでもないのです。他にはどれくらいの持参金でとかがあって、演ずるキャラクターに合っているという理由は最後まで出てこない。結局1番よかったのは専属スターがいた時代のローテーション制で偶然に演ずるキャラクターに合っていたとなるのかもしれません。
ポーランドの俳優はエリートなのだそうです。議論好きでそこがいいのだそうです。絡むための議論でなければ結構なんですけど。うらやましい限り。
日本とはエライ違いです。日本の映画関係は貰えるもの何でも貰う河原乞食の伝統を立派に引きずっているから。日本の演劇関係者は絡むための議論のための議論が大好きだと思えますし。
アメリカで撮らなくてよかったですね。カネの問題が大きいけど、たとえカネの問題が解決しても独立系だとやはりカネのことでカモにされ、メジャーでは誤解と勘違いで悩まされるだけでしょう。
ロケ等で日本では自由にならないからポーランドで撮ったとなっていました。たとえ日本で自由に撮れるようになっても、この撮影条件を使いこなせる人かいるのかいな。猫に小判というかキチガイに刃物といった感じで無駄でしょう。
このメイキングはポーランドのみでした。ポーランドでの撮影が終わると6ヶ月のポストプロダクションが待っているとのこと。これがまた大変そう。
私はゲームはあまりやらず、『MYST』を途中までやったのが最高のレベルです。
『紅い眼鏡』(87年)は好きな作品で20回位は見ています。話しの方は何回見てもよく分かりませんが川井憲次の音楽にシンクロしたカット割りがよくて何回でも見られます。パートカラーの使い方もセンスがいいし。
そんわわけで見始めてこれは『紅い眼鏡』みたいなのか?と予想しました。で、どうかな?と見れば『紅い眼鏡』のポーランド版みたいで、とても一般向けとは言い難いけど悪くない作品でした。
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