『舞台恐怖症』(1950年)
この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督でジェーン・ワイマンとマルレーネ・ディートリッヒ主演の謎解き物です。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1950年 セーフティ・カーテン/ワーナー 英国作品
原題◆Stage Fright
DVDにて。画質は非常によいです。
プロット 犯人捜しをする話しのようです。
音楽 レイトン・ルーカス◆まだバーナード・ハーマンではないけどハーマン調のスコアになっています。
キャスト
ジェーン・ワイマン→劇団員のイブ
マルレーネ・ディートリッヒ→女優のシャーロット
マイケル・トッド→容疑者のジョナサン
マイケル・ワイルディング→スミス刑事
アリステア・シム→イブの父
シビル・ソーンダイク→イブの母
アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
シーンの終わりには溶暗を使っています。
始まっていきなりクルマで走らせる男女2人。
マイケル・トッド扮するジョナサンがジェーン・ワイマン扮する劇団員のイブに何がおこったか話し回想に至ります。
回想です。
ジョナサンのアパートにマルレーネ・ディートリッヒ扮す女優のシャーロットがやって来ます。
ドレスに血がついている。
ところでここにカーテンを締めてのシーンがあります。メル・ブルックス監督の『新・サイコ』(77年)に引用されています。思い出して笑ってしまう。
着替えのドレスを取りにシャーロットの家に行くジョナサン。
ここでドアを開けるとカメラがそのまま通り抜ける長回しのシーンがあります。現在ならなんてことがないシーンですが、当時では大掛かりな撮影となります。
ドアを開けて入るそしてドアを閉めるそのドアは透明なドアでカメラを遮らない。実際はドアを閉めずいただけです。
その後カメラが中に入っています。実際はカメラが入る時にはドアと一緒に玄関のセットがバラバラになってカメラが通れるようになっていたんでしょう。さすがヒッチコック監督はやることが凝っている。凝り過ぎで空回りのような感じもしますが。
強盗が入ったように小細工するジョナサンですがメイドのネリーに見つかってしまいます。
アパートに戻るジョナサン。
手前のシャーロット、奥のジョナサンを合成して両者ともフォーカスが合わせる手法が使われています。巨匠の演出は凝っています。
電話がかかってきます。出ないジョナサン。
電話をかけてイブを呼び出すジョナサン。
警察が2人来ます。出るジョナサンですが隙を見て逃走を計ります。
クルマのエンジンがなかなかかからないのが面白い。安全ガラスの表示のクローズアップショットが入ります。
王立演劇学院にたどり着くジョナサン。
その描写として割れたウインドウのクルマが駐車しています。
舞台稽古中のイブに助けを求めるジョナサンです。
この舞台稽古の部分はフランソワ・トリュフォー監督の『日曜日が待ち遠しい!』(83年)にが引用されています。雰囲気がそっくりです。
回想から戻ります。
クルマで逃走中です。出だしは快調。この辺の演出も快調そのものです。
海辺の一軒家にたどり着く2人の乗ったクルマ。
ここはミニチュアを使っています。ミニチュアの家がミニチュアのクルマのヘッドライトで照らされます。面白いシーンです。
イブの父の家です。母とは別居中なんだと。
父と話しをするイブ。ドレスの血はわざわざ付けたようだと父。
ジョナサンを休ませて、外に出て相談のイブと父。あまり驚いていない父です。
次の日です。
父には内緒で出かけるイブです。父は知っているようですけど。
ロンドンです。
シャーロットの家に行くと警察が来てて周りはやじ馬で大勢となっています。
刑事らしいマイケル・ワイルディングを尾行するイブ。
パブに入ります。
具合の悪いふりをして刑事の気を引こうとしますが関係ない親爺が絡んできます。
で、具合がよくなったり悪くなったりしてようやくお目当てのマイケル・ワイルディングの刑事とコンタクトするイブ。
殺しのことを聞き出そうとするイブです。
メイドのネリーがやって来ます。バーテンと周りに聞こえてもお構いなしのお喋りとなります。
送られて帰宅するイブ。
男はスミス刑事と名乗ります。
日を改めてパブにて。
メイドのネリーと交渉するイブ。
シャーロットのメイドを交代してもらいたいとなるわけです。
イブは自分を記者と言ってます。かなり無理があるような感じですが、これで話しは進みます。
自宅にて。
メイドのコスプレをするイブです。
メガネをかけた主観ショットがあります。メガネをかけたり外したりでフォーカスが合ったりぼけたりとをやっています。
よく見る手法ですが、この作品が初めてなのか?それならたいしたものです。
シャーロットの家の前にて。
メイドのドリスになっているイブ。ここにヒッチコック監督が登場。地元の英国で撮ってるので編集でカットはない筈です。
家に入りますがスミス刑事他1名もやって来ます。もう1人はバイヤード刑事。
メイドのドリス=イブはスミス刑事と顔を合わせてはこまるのですれ違いのサスペンスとなっています。
シャーロットは新しい男フレディといます。
高飛車な感じがいいマルレーネ・ディートリッヒです。地でやっているのかもしれません。
刑事2人と合うシャーロット。無難に対応しています。
イブはスミス刑事と会わないように四苦八苦しています。
そんなわけで会ってはいけない人に会わないように苦心するとこがこれまた丁寧に仕上げてあります。これで随分と堪能出来る。
帰宅するイブ。
スミス刑事が来ています。母と話し中。
父がやって来ます。別居中なので母は歓迎していません。
刑事とは知らずジョナサンのことをさりげなく喋る父です。慌てるイブです。
ピアノを弾くスミス刑事の図。
シャーロットの舞台です。
父と打ち合わせのイブ=ドリス。
マルレーネ・ディートリッヒの歌が入ります。ディートリッヒは歌手活動でも有名なので当然吹き替えではなく本人が歌っているはずです。
ジョナサンが来ています。楽屋でシャーロットと話しをしています。
血のついたドレスは始末していないと言うジョナサン。脅迫となっています。
で、刑事が楽屋を捜索しているのを邪魔するイブです。ジョナサンは逃げます。
母の自宅近くで父と相談中のイブ。
帰宅するとジョナサンが来ています。母に名を紹介するとこではジョナサン、イブ、イブの父3人同時にそれぞれ別の偽名を言ってたりします。ジョナサンの名は結局ロビンソンとなったらしい。
ガーデン・パーティとなります。
タクシーのイブとスミス刑事。
ドリスを捜しているとスミス刑事です。
キスシーンになります。この辺はルーティンな進行となっています。
ガーデン・パーティ会場です。
雨が降っています。さすが英国は雨が多い。日本ではサッカーJリーグの試合があると雨が降ります。プロスポーツのライバルであるプロ野球関係者が雨乞いでもしてるのかと思ってしまうほど雨が降ります。
メイドのネリーがいます。イブをゆすりに来たようです。
イブはフレディに呼ばれてシャーロットのとこに行ってメイド仕事になってしまいます。
雨が上がり、父もやって来ます。
イブのジェスチャーが読めずに困惑のネリーと父ですが、どうやらわかったようで交渉にかかります。ネリーにカネを支払う父。
これでネリーは退場のようです。なんてことがないキャラでした。
小道具の人形を調達しようと射的をする父。
お笑いの一席となっているらしい。あまり面白くないんですけど。
この人形に血を付けて男の子に持たせて舞台上のシャーロットに持っていかせる父。これで反応見るわけです。さすが英国人は悪趣味です。
シャーロットは動揺してメイドのドリスが呼ばれます。これでメイドのドリスがイブということがスミス刑事にわかってしまいます。
母の自宅にて。
さてどうするかと相談中にスミス刑事が来ます。
父がスミス刑事に提案します。メイドのドリスがシャーロットにゆすって証言を取るということらしい。やっぱり英国人は悪趣味です。
劇場です。
隠しマイクを仕掛けています。で、事は始まります。人気のない場所では話しをとイブがもちかけます。
隠しマイクの場所でイブとシャーロット。
人形の話から血のついたドレスの話となります。シャーロットはジョナサンがやったと言います。嘘ではないようです。
そんなわけで目的とは違った結果になってしまったイブです。
シャーロットは速記のメリッジ刑事と犬の話をしています。
これでマルレーネ・ディートリッヒの出番は終わりです。結構好演でした。やっぱりスターは違います。
地下に逃げたジョナサンと一緒のイブ。
話しをしているうちに真相がわかってきます。
実は回想はでまかせだったのです。ジョナサンはサイコな性格な危険人物でしたとなります。このキャラは当時では目新しいようです。
ラストが少し弱いようです。これではヒロインはだまし討ちをしたようで犯人が可哀相に見えてしまいます。何か上手いオチがなかったものか。
エンドとなります。
マルレーネ・ディートリッヒがまともに喋る作品を初めて見ました。いい声です。得意の歌までサービスしてくれます。
ヒッチコック監督はは映画生活の始めはドイツ表現主義から来たからディートリッヒのことは知らない筈がない。本『映画術』ではディートリッヒのことは全く触れてなかった。もしかして上手くいってなかったのか?
ジェーン・ワイマンは小林聡美に似てる。好演です。
マイケル・ワイルディングは『山羊座のもとに』(49年)から続けて出演してたんだ。2作出ていることになります。
父親役のアリステア・シムは誰かに似ていると思ったら、吉本新喜劇の辻本茂雄の親爺コスプレ姿に似ています。
「つまらない物には、面!」とやるのかと期待してしまいましたが、それはありませんでした。
登場人物が多すぎるにも難の1つです。
いらないキャラが多いような。ディートリッヒの男はいらない。家政婦は脅迫する必要はないような。詰め込めるだけ詰め込みましたという感じです。
そもそもジェーン・ワイマンとマルレーネ・ディートリッヒのどっちがヒロイン?となっているのがこまったものです。
そんなわけでケチはつけたけど意外と面白い作品でした。失敗作ではないと思えます。
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