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2005.11.08

『黒の試走車』

この作品は増村保造監督、田宮二郎、叶順子主演の産業スパイ物のハードボイルド・メロドラマです。
私のお気に入りの作品です。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1962年 大映 日本作品
ランニング・タイム◆95分
プロット◆産業スパイに嫌気がさす話のようです。
音楽◆池野成 意外とよいスコアで妙に緊張感を盛り上げてくれます。
スカイパーフェクTV310衛星劇場にて。画質はよいです。

キャスト
田宮二郎→タイガー自動車産業スパイ朝比奈豊
叶順子→朝日奈の恋人でホステス宇佐美昌子
船越英二→タイガー自動車の企画部長平木公男
白井玲子→平木の妻愛子
高松英郎→タイガー自動車の産業スパイ部長小野田透
目黒幸子→小野田の妻久子
菅井一郎→ヤマト自動車企画室長馬渡久
長谷川季子→バーのママ秋元加津子
上田吉二郎→情報屋の的場捨松
見明凡太朗→タイガー自動車専務小栗喜八
谷謙一→タイガー自動車秘書嶋元辰郎
花布辰男→タイガー自動車技師長田所
小山内淳→事故って騒ぎを起こす芳野貫一
酒井三郎→ヤマト自動車デザイン課長森一男
中条静夫→岡村=コピー屋?
南方伸夫→工場主
町田博子→読唇術の女教師
夏木章→タイガー自動車組合専従者
早川雄三→タイガー自動車企画第三課長

増村保造監督の演出はよいと思います。
全編きびきびしたセリフ、動き、クールでハードボイルドな喋り方がいい。
これはハードボイルド・メロドラマだと思います。
俯瞰を効果的に使っています。ヤマト自動車のデザイン課長を締め上げるシークエンスの最後に俯瞰が使われます。俯瞰とはこのように使うのです。
ヘマしたあとの馬渡を画面に出さないのは正解でしょう。下手に出せば描写バランスが悪くなりますから当然の処置でしょう。
セリフといえば「キチガイ、パンパン、等」が気持ち良く使われています。ところで「パンパン」は放送禁止用語?

ヤマト自動車とタイガー自動車は新車の開発販売をめぐって互いに産業スパイを使って相手の新車のデザインやデータを盗もうしている。という設定です
タイガー自動車は社長が入院中で社長業は専務小栗喜八が代行している設定となっています。その入院中の病院の看護婦がヤマト自動車のスパイとなっています。

タイガー自動車の企画一課は産業スパイだとハッキリ言っています。
倉庫みたいなとこで出入り口が鉄のドアです。これが怪しい雰囲気を醸し出します。この課は高松英郎扮する小野田透がリーダーで部下は田宮二郎扮する朝比奈豊を含めて5人います。

料亭にて。
ヤマト自動車企画室長馬渡に偽資料を見せる陽動作戦はあっさりと見破られます。出直したまえと駄賃だとカネをやる。とこのシーンの締めもいい。

テストコースや工場はどこでロケしたのでしょう。
大映がコネがあるとこといったらどこかな?→筑波の有名なテストコースのようです。何て地名?→これは谷田部テストコースでした。
タイガー自動車のバイオニア・スポーツはイタリアのミケランジェロのデザインと称しています。これはミケロッティのことだと思われます。

コピー機導入のリベートは50万円です。
1962年当時は400万円で家と土地が買えたようです。ここからヤマト自動車のデザイン課長を締め上げるシーンとなります。100万円でデザイン画を買い取る話になってました。このシーンもなかなかのものです。クールな感じなのがいい。

ヤマト自動車会議室が見える隣りビルのトイレに案内する的場。
ここからタイガー自動車側は高速度撮影したフィルムを読唇術で読み取ろうとするシーンとなります。このオチもいい。
ところでこの読唇術の先生はモノホンの人?なんかそんな感じの人です。

価格競争に破れたヤマト自動車の馬渡は破壊工作を仕掛けてきます。
新車のパイオニア・スポーツで事故って訴訟騒ぎを起こす芳野貫一。このやり方は今はやっていない?似たようなことは右翼がやっていますか。
タイガー自動車側の感想が「日本を満州だは思ってやがる」だと。

スパイをやってた婦長の金銭感覚「だって三倍くれたから・・・」のセリフはブラックです。で、あっさりと証言を撤回して寝返る図があります。ここもあくまでもクールな描写なのです。

船越英二扮するタイガー自動車の企画部長平木公男は社長の娘と結婚していて養子のようなものです。高松英郎に締め上げられる取り調べシーンは凄いものです。
この後に会社を辞める田宮二郎が鉄のドアを「開けてください」というとこで妙に緊張感がありました。

取り調べで刑事のたとえ。
殴ったり、だまし討ちで自白させて「刑事がよく使う手だ」と、それだけで済ましてしまいます。これは凄い。増村監督は刑事もヤクザも同じ扱いになってます。これも1つのポリシーです。

豪華なキャストで、どなたも好演していました。
田宮二郎は途中から元気がなくなります。でも主役なのでラストには決めセリフがあり決めてくれます。
その代わりに全編に渡り高松英郎が頑張っています。奥さんに仕事キチガイと言われています。
ライバルのヤマト自動車企画室長馬渡久を演じる菅井一郎が特にいい。満州から戻った元特務機関上がりという設定で、いかにもなそんな雰囲気があります。知らないで見てたときは本物の人かと思っていました。
上田吉二郎のキャラはいい。嫌みな笑い方で登場して「私ですよ」のセリフ。

船越英二はいつものように好演していました。
大企業によくいる何か不始末があった時の記者会見謝罪要員か、死んだ人に全てを押し付けてそこで捜査を止めるための自殺要員なタイプ。
迫真の演技をしていました。この作品では演じるキャラクターの関係で他の作品で見られるいつものユーモアはありません。船越英二の大映での代表作は?→たくさんありすぎてわかりません。

ヒロインのキャラクターがいい。他の女性キャラの描写もいい。
叶順子は白と黒のスリップ姿でいいです。増村保造監督作品のヒロイン標準の喋り方。ぷっきらぼうというか、ぶ愛想というか独特の喋り方なのです。クールで湿っぽいとこがこれっぽっちもないヒロイン。これがいいんです。
「何故キスするの?」「君を愛しているからさ」のやりとり。ここに入力すると何てことはないけど映画を見るとこれがいい。ハードボイルド・メロドラマのゆえんです。

タイガー自動車の技術部長は誰なんでしょう。どこかで見た顔なんですが。→花布辰男でした。

ヤマト自動車はマイペット・スポーツ、タイガー自動車はパイオニア・スポーツ。新聞広告が並んでいる図。この価格がポイントで産業スパイがしのぎを削っていることになっています。
ラストに映るパイオニア・スポーツは何のクルマの流用なのかよくわからん。

これは傑作です。何回見てもテンションの高さに圧倒されるよい作品でした。増村保造監督の演出の秘密は結局わかりませんでした。不思議な監督です。


『黒の試走車』(1962年)は『斬る』(1962年)と2本立てで公開されていました。
『斬る』が三隅研次監督、市川雷蔵主演の様式美全開の時代劇。
『黒の試走車』が増村保造監督、田宮二郎主演の産業スパイ物ハードボイルド・メロドラマ。
私としては『斬る』と『黒の試走車』の組み合わせは史上最高のプログラム・ピクチャー2本立てとなります。


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コメント

船越に使われているスパイ看護婦を演じた女優の名を教えてください。

shiolaboさん、コメントありがとうございます。

調べたらどうやら、
響令子→看護婦の山中とし子
のようです。

せっかくのコメントですからもう少し何か書いて下さい。シンプル過ぎて返事のコメントが遅れました。

 ご回答誠に有難うございます。
 実はこの頃の映画についてなにかまとめたいと思っています。
 響令子出演作はほかにはどのようなものがあるのでしょうか。
 この映画で吐く「オールドばばあ云々」のセリフに感じ入りました。
 

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