『U・ボート』(1981年)
この作品はウォルフガング・ペーターゼン監督の潜水艦物の戦争映画のようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1981年/1997年 ババリア・フィルムズ 西ドイツ作品
ランニング・タイム◆208分
原題◆Das Boot
プロット◆U・ボートで地獄をみる話しのようです。
音楽◆クラウス・ドルディンガー
日本ヘラルド/ジェネオン・エンタテイメント発売のDVDにて。
1981年の136分から1997年に208分になった再編集ディレクターズ・カット版です。
画質はよいです。
スクイーズ収録のフル表示。
画面サイズはワイド。上下左右黒味なし。フルスクリーン。
DVC音声はドルビーデジタル5.1ch
◆ドルビーデジタル5.1chで見ました。控えめでなかなかよい感じ。
◆元のミニTVシリーズでのスタンダードサイズをワイドスクリーンにするため上下カットしてる割りにはあまり不自然さはありません。上手い。
キャスト
ユルゲン・プロホノフ→U-96の艦長
ヘルベルト・グレーネマイヤー→従軍特派員のヴェルナー少尉
クラウス・ヴェンネマン→機関長
ベルント・タウバー→クーリヒバウム航海長
アーヴィン・レダー→ヨハン機関兵曹長
ハインツ・ヘーニヒ→ヒンリヒ聴音兵兼通信兵兼衛生兵
オットー・ザンダー→友軍のトムセン艦長
ウォルフガング・ペーターゼン監督の演出はよいと思います。
狭い通路内をカメラはよく動きます。
荒れた海上の描写はまるで『パーフェクト ストーム』(2000年)のようです。同じ監督なので当然のことですか。
潜水艦の向きは重要です。この方向でどのような状況なのかが描写されるからです。
DVDにて。
著作権のアラート
日本ヘラルドのタイトル
U・ボート ディレクターズ・カットのタイトル。カタカナ表示。
コロンビア・ピクチャーズ
タイトル。
リストレーション オブ Twin Bros. Productions (Director's cut)
Bavaria Film Production
字幕の前説があります。1941年・・・
タイトルバックにはアクティブソナーのピン音が入ります。
海の中、U・ボートが姿を現します。これだけでよい作品と思わせます。
フランス ラ・ロシェ港。
ユルゲン・プロホノフ扮するU-96の艦長が登場。クルマで移動中
酔っぱらって繰り出している乗員達に絡まれます。
酒場です。歌手が出ています。歌が入ります。
知人のトムセン艦長がいます。
潜水艦出航前の大騒ぎとなっています。
港です。
出港準備となっています。
トムセン艦長の艦も係留されています。
U-96が出港となります。潜水艦は右向きに進行しています。
海上にて。ヘルベルト・グレーネマイヤー扮する従軍特派員のヴェルナー少尉が取材中となっています。質問してそれに答えるシーン。
これが潜水艦各部の説明描写にもなっています。乗員50人となっています。
設定で見ている人に潜水艦がわかりやすいようにしているようです。
食事です。
メキシコから来たドイツ人もいます。
ここで警報が発令されて急速潜航となります。
手の空いている乗員達はバラスト代わりに艦首に集まっています。人の重さで艦首を下げるわけです。
これは抜き打ちの演習でしたとオチがつきます。
次に耐圧テストで深く潜航します。深度計はMAX260mです。90mまでが安全とのことです。
海上航行の日々。
ヒゲが伸びています。何日か経過したとわかります。
レコードで歌が入ります。いい歌です。
通常生活の描写となっています。
電文が入ります。
U-37のマルテンス。これの援護に向かうようです。
魚雷室を取材中に油の染み込んだウェスを投げつけられる従軍特派員のヴェルナー少尉。少なくとも歓迎はされていないようです。
警報が発令されます。
潜航します。どうやら相手が遠過ぎるのか早過ぎるかで追いつけないようです。
単調な日々になります。
エンジン部の描写。ディーゼルエンジンです。
海上を全速前進となります。当時の潜水艦は通常は海上航行をしています。潜航するのは戦闘や緊急時だけのようです。
目標は30隻の英国船団。U-32の支援とのことです。
荒れている海上を進みます。
潜航します。
海中の方が相手の音がよく聞こえるとのことです。
浮上します。全速前進となります。
船団を発見しますが駆逐艦がいます。
潜航します。潜望鏡深度であたりを伺いますが、潜望鏡に波がかかってよく見えません。上げ過ぎると潜望鏡が発見されてしまう危険があるとのことです。
魚雷発射の体制となりますが、駆逐艦は意外と近過ぎで魚雷を発射出来ずに潜航して逃げにかかります。
どうやら潜望鏡が発見されたとのことです。緊急事態となります。
U-96の聴音機ですがハンドルを回してマイクの指向性を調整しているようです。アナログのメーターはマイクの方向を指しているようです。
駆逐艦のスクリュー音が通過します。
となると爆雷攻撃となるわけでその後に爆発となります。
このスクリュー音が通過してから爆発するまでの沈黙の間がたまりません。サスペンスがあり過ぎとなっています。
またスクリュー音が接近します。爆雷攻撃からその後はまた爆発。
160m、180m近くまで潜航します。150mを保ちます。
別のスクリュー音が接近してきます。
今度は遠くに爆雷が投下されているようです。
それでも潜航したまま待機状態となっています。
浮上します。潜望鏡深度をとって辺りを伺います。
海上へと出ます。通常に戻ります。
荒れた海上を進みます。
潜航します。
またレコードをかけます。女性の歌が流れます。
海上へ。まだ荒れています。
潜航します。単調な潜水艦生活の日々の繰り返しをていねいに描写しています。
友軍のU・ボートを発見します。
荒れた海上にて。信号灯でコンタクトをとります。
トムセン艦長の艦でした。
潜航します。
嵐が2週間続いてるとのことです。
ようやく嵐が収まり通常の海上航行となります。
夜。敵の船団を発見します。商船5隻のみ。
接近して魚雷発射となりますが、いないはずの駆逐艦もいたので緊急潜航となります。バラスト代わりの乗員達の図があります。緊急時なのですが何となくユーモアがあったりします。
発射された魚雷ですが命中するまでしぱらくかかります。
音から1.2.3発と命中で2隻沈めたとなります。
駆逐艦が接近してきます。スクリュー音が迫ります。
そうなると次は爆雷攻撃で、間をおいてから嫌になるほど爆発するわけです。
敵側のアクティブソナーのピン音が聞こえます。距離は間近でかなり危険な状態です。
スクリュー音が通過して爆雷攻撃となります。もう嫌という感じです。
150m以上潜航します。
またピン音がします。別のが接近中。ピン音だけで参りそう。
190m
200m
210m
220m
230m
と潜航します。ここまで潜ると水圧で艦内のボルトが飛びます。浸水します。
スクリュー音が通過します。また爆雷攻撃です。
150m付近で、アーヴィン・レダー扮するヨハン機関兵曹長がヒステリー状態となります。
ハンドガンのワルサーP-38を持ち出す艦長。ヨハン機関兵曹長は他の乗員達に取り押さえられて機関室に戻されます。
今度は直接スクリュー音が聞こえてきます。
ここで従軍特派員のヴェルナー少尉は自分のベッドに入り頭から毛布を被ります。この現実から逃避したくなるのがよくわかります。
ヴェルナー少尉は眼が覚めます。何だか通常にもどったような。
6時間も攻撃を受けていたとのことです。
ようやく浮上にかかります。
海上に出たとこで魚雷が命中して炎上してる輸送船を確認します。とどめの魚雷を発射します。
ですが、炎上している船にはまだ乗員達が残っていました。6時間も何をしていたんだと艦長。
これを見ているだけでのU-96です。救助をしようにもU-96には救助装備も空いている場所もありません。何も出来ずに微速後退となります。
ようやく輸送船は沈没します。
電文が入ります。
海上航行となります。通常に戻ります。
謝罪に来るヨハン。この件を不問にするらしい艦長です。
左向きに進行するU-96。
方向が反対ということは帰港するのか?
極秘電文が入ります。
スペインのビゴで補給してイタリアのラ・スペチアへ向かえとのことです。
ジブラルタル海峡を通過しなくはならないのです。
ビゴで特派員と機関長を下ろすことにする艦長です。
ビゴ沖で浮上するU-96。
補給といっても港でドック入りするわけではないようです。極秘に海上で落ち合うようです。
補給船ヴェーザー号に入る艦長達。補給船内は豪華で潜水艦内とは別世界です。
話しがくどいヴェーザー号の船長です。
また電文が入ります。特派員と機関長が潜水艦を降りる件は却下となります。
補給は完了となり海峡に向かうU-96。
また右向きに進行しています。
夜、ジブラルタル海峡沖のU-96。
海上から潮の流れに乗って進入する手はずのようです
そこをいきなり空襲されるU-96。
被害は甚大です。急速潜航というか勝手に沈んでしまいます。
だから最初から無理な計画なんです。
沈むのが止まらないU-96。
210m
220m
240m
260mとなり深度計の針はMAX表示を振り切ります。
もう大変な280mぐらいでU-96は海底に着底します。これ以上は沈まない状態です。ですがこれで敵側からU-96の位置はわからなくなります。不幸中の幸いとは、このことかも。
被害状況を調べます。被害は相当なものです。
280mなので艦内のボルトが飛んでまた浸水となります。浸水地獄でもう死にそう。
バッテリーを調べるのに酸素マスクが必要です。機関長が調べます。
このバッテリーは有毒ガスが出るので危険なのです。当時は安全よりこの形式の電池しかないので使っていたのでしょう。
直すというのはホントに大変なことなんです。機関長はヨレヨレです。
残りの空気を集めて一発勝負に出るようです。
その前に修理を完了することが条件ですが。
8時間のはずが15時間経ってもまで修理が完了しません。
ようやくマジで修理が完了となります。「いい仕事だ」と艦長。
日本では仕事を終えても「いい仕事だ」とはなりません。すぐに次だとなります。下っ端がたるまないようにしているようです。キリがなくてやんなる。
指令室で皆の前で状況を説明する艦長。
浮上出来たら、逃げて、帰港するとのことです。
浮上開始の手順となります。
深度計を振り切っていた針が震えて動きます。針がゆっくりと戻ります。
260m
250m
240m
230m〜
浮上となります。艦は左向きとなっています。
開けたハッチからの外の空気を吸う乗員達です。気持ちはよくわかります。
肝心のディーゼルエンジンは始動するのか?。始動しました。
左向きで進行するU-96。
通常に戻ります。
フランス ラ・ロシェ港に帰還するU-96。
これで一息というとこに空襲となります。
沈没するU-96。あれだけのことがあってようやく戻ったら港で沈没とは、ああ無情といった感じです。
エンドとなります。
この作品では敵の連合国側は全く描かれていません。
この手法は日本映画だけかと思っていたけど結構あるようです。それはも日本とドイツだけなのかな。
ドイツはメートル法なようで深度はメートルで判りやすくなってます。
アメリカのNFLではないのだからやっぱりヤードではピンとこないよ。
もちろんミニチュアを使っています。
これも日本スタイルな特撮と言ったほうがいい感じの出来でした。それでも水滴の描写にはかなり気を使っているようです。あまりこれが目立つとリアル感スケール感が削がれます。
この頃になるとすでに索敵装置のソナーや対潜水艦兵器の爆雷が使われていて潜水艦はかなり不利になっているようです。
爆雷を投下する駆逐艦のスクリュー音が通過したら爆雷がいつ爆発するのかとスリルを堪能しました。
で、結局ジブラルタル海峡突破は出来ずに(そりゃそうだ。半死半生でまた海峡突破なんて出来る訳がない)またプロローグで出港した港に戻ってしまったようです。
この当時の潜水艦は通常は水上航行して攻撃や回避の時だけ潜行するとどこかで読んだ覚えがある。要するに大半は水上航行という訳です。
潜水艦の乗組員はバラスト代わりで潜行の時は艦首に集合となり浮上の時は艦尾にとなってました。何となくユーモアがあったりする。
小沢さとるの潜水艦物のマンガ等で予備知識はたっぷりあったので戦術的な面白さを堪能しました。
潜望鏡の窓に波がかかり潜望鏡深度が深過ぎるのではと思ったらやはり潜望鏡深度が浅過ぎると潜望鏡自体が発見されやすいのでそうしていたとなってました。凝っているじゃない。
で、小沢さとるのスタイルは正直言って水の存在が希薄なのがマイナスポイントになります。これもこれでいいけど。
この作品は水の存在を浸水シーンでたっぷり味合わせてくれます。ホント見てて堪能しました。ホントこれは力作です。
E機関と称しているのは要するにバッテリー駆動のモーターのことを言ってるようです。
警報を「アラーーーーーット」と言ってます。わかりやすい。
艦長役のユルゲン・プロホノフはリーダーを見事に演じていました。リーダーとはこのようなものです。
この後がB級一直線でもこの作品があるから別にいいのです。
『U・ボート』(1981年)は潜水艦映画の標準になっているようです。それはそうでしょう。当然といえば当然のことです。
そういえばウォルフガング・ペーターゼン監督は『ザ・シークレット・サービス』(1993年)も撮っていたんです。それならハズレのわけがない。
U・ボートはドイツ人の魂なのか?
そんなわけでこれはホントの戦争映画の力作でした。傑作です。
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