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2005.10.29

『きまぐれオレンジロード あの日にかえりたい』(1988年)

この作品は望月智充監督のマンガの原作ファンには評判の悪い劇場版アニメです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1988年 スタジオぴえろ/東宝 日本作品
ランニング・タイム◆69分
プロット◆三角関係に決着がつく話しのようです。◆気楽に三角関係を楽しんだ支払いをする話しでもあるようです。
音楽 鷺巣詩朗◆和田加奈子の歌が3曲、内容によく合っているよい歌です。
東宝発売のLDにて。画質はよいです。

キャスト→VC
黒い服の男 春日恭介→古谷徹
緑色の瞳の鮎川まどか→鶴ひろみ
号泣する桧山ひかる→原えりこ
カメラマンの父 春日隆→富山敬
双子の妹 春日まなみ→富沢美智恵
双子の妹 春日くるみ→本多知恵子
飼い猫のジンゴロ→緒方賢一
喫茶店のマスター→屋良有作
春日恭介の友人 小松整司→難波圭一
春日恭介の友人 八田一也→龍田直樹
ひかるの母→川島千代子
まどかの姉→川村万梨阿
戻ってくれの馬男→鈴木勝美
予備校の熱血講師→山寺宏一
よくいるタイプの演出家→速水奨
やる気充分の堀越→丸尾知子


望月智充監督の演出はよいと思います。
演出は風変わりギミック満載となっています。でもギミック先行ではありません。
アニメはなんでもパンフォーカスになる押井守監督が合成を多用するのがなんとなくわかります。
アニメでも出来る逆ズームの手法。
主観ショットがやたら多い。ヒッチコック調です。
前後に動くショット多いです。
ショット効果音共に入り乱れています。効果音のかぶさりも多い。
アニメは作画が追いつかなくなるのでロングショットが使いにくい。
溶暗の使い方はよいです。
モノクロ→カラー→モノクロの手法のモトネタは?意外はよくある手法のような。
大人のキャラは顔を見せませんトムとジェリーのノリか?、ドラマの集約化か?、そんな感じのようです。

色々な演出手法はよかったりします。
効果音のかぶさりはサム・ペキンパー監督並みです。
色々な描写はアルフレッド・ヒッチコック監督の引用となっています。
キャラのクール?な感じは増村保造監督並みです。
コテコテな描写は溝口健二監督並みとなっています。
ハードボイルド・メロドラマとなっています。淡々と、ドロ沼に落ちてゆく話しでもあります。それでもキャラバランスが悪くならないのがこの作品のよいところです。
そんなわけで何というかアニメファン向けの作品ではないような感じに仕上がっています。

リミテッドアニメでも演技が出来る。
よくカット割りされたリミテッドアニメを見ると私はフルアニメよりリミテッドアニメのほうが好きなんだと再確認できます。

映画批評家双葉十三郎いうところの下手なモンタージュのこき下ろしで匙を投げるになっていない象徴のモンタージュ各種も上手いものです。

主人公の超能力が何の役にも立たない設定がよいです。
出来たら念動力でシナプスのつなぎ方を変えて都合のよい性格にする?、物理的に考えることや性格を変えることが出来るか?。
電話で呼ばれてベスパで向かうのみテレポートでは速すぎるのでしょう。どうやって来たのと突っ込まれます。

キャラクターデザインはよいです。
キャラデザインをリアルにしてくれとはこの作品のキャラデザインのことを言います。このくらいで丁度いいんだと思います。

この作品はアニメファンには受けが悪い、基準がわからん。
アニメファンの評は、よい、悪いを、作画とストーリーだけでやるようです。洗練された演出は関係ないようです。しょうもない。

で、この作品は原作のマンガのファンにも受けが悪いそうです。原作ファンにはさしずめ、きまぐれならぬ暴走オレンジロードか?。
私にはすれば原作を越えた作品、ご都合主義が情けなさすぎる原作の尻拭いアニメですとなります。

偶然なのか意図的なのか、私の偏見なのか、アルフレッド・ヒッチコック監督作品の引用が多く、視覚的に非常に凝っている和製ヒッチコキアンの最高作だと思います。
やたらと多い主観ショットが引用のメインの手法です。
明るい公園で暗い別れ話をするのはヒッチコック監督の意外な場所でサスペンスの手法と同じになっていすま。

『汚名』(46年)からの引用2点。
忘れさられたアイスクリーム、元ネタのワインからアイスクリームになっています。で、アイスクリームは見事なパンフォーカスになっています。
ひかるちゃんが、あみ棒を取りにゆくシークエンス、写真を見てハッとするがシーンが変わると平静を装っているとこがなんかそんな感じです。これも上手いものです。

花火があります。『泥棒成金』(55年)と花火2本立てになります。我ながらこれはこじつけっぽい。

黒みで絵の切り換え『ロープ』(48年)から、これもこじつけか?

『裏窓』(54年)からの引用が2点。
2重コマで抱きあうキスシーン。
映画等のデート中にてシーンとシンクロしてないセリフ

シャワーの主観ショットは『サイコ』(60年)から。よく引用されるショットです。

ヘリコプターの効果音での同じ内容の別れ話を省略する『北北西に進路を取れ』(59年)から、

こんなに若いのに歳を取ってしまったキャラ3人。
この作品の主人公達3人は若くして歳を取ってしまいました。まるで『レベッカ』(40年)のヒロインのようです。
『レベッカ』(40年)では、ただの脅えるだけの小鹿ちゃんだったヒロインが色々な試練を乗り越えて、子鹿ちゃんぶりはどこかにいって立派な奥様に変わっていきます。すると旦那から「君は・・変わった、歳をとった」と言われるシーンがありました。これは旦那が自分勝手といえばそうですがアイロニーが効いてる興味深いシーンで「レベッカのジレンマ」といえそうです。

本編です。
主役3人の名前が出ます。
タイトルです。

プロローグ。
モノクロです。バイクが2台走ります。2月のバイクはマジで寒いです。
大学の合格発表の日です。
ここから主人公の春日恭介の回想となります。
一瞬の回想となります。このフラッシュバックが全編を占めています。


第1章。カラーになります。
喫茶店にて。春日恭介と桧山ひかる。鮎川まどかが遅れて登場。
アイスクリームのショットが長めに入ります。意図不明。

春日恭介の自宅にて。
アイスクリームを持ってきた桧山ひかる。
楽屋オチで和田加奈子の歌をCDで聴きます。歌を途中でフェイドで省略して時間経過を表すのはよい感じです。
桧山ひかるとキスをする春日恭介。桧山ひかるからのもらった風鈴の音が入ります。

ゼミにて。
春日恭介を待つ鮎川まどか。遅刻の春日恭介。口論となります。
ここに山寺宏一がVCの予備校の講師で出ています。「恋愛のもつれは・・・」のセリフでシーンを締めています。

バイクで走る鮎川まどか。
ビル上のアトムの看板はどこかで見たような気がしてたけど秋葉にあります。秋葉のはアトムペイントですが。

飛行船から、春日恭介と桧山ひかる。
押井守監督作品でおなじみの飛行船ですが、この作品でも飛んでいます。特に関連はないようです。飛行船の影でショットをつないでいます。

鮎川まどかの自宅にて。
姉夫婦との会話。まどか嬢は次女で末っ子キャラと何だかミスマッチとなっています。

飛行船の影から、桧山ひかるにとつなぎます。2回目のキスからキスからパンニングで昼から夜へとなります。
春日恭介はキスを2回もしてたようです。ならあれだけ粘られるのも当然の代償か?→あらゆる行為には代償が付き物である。

鮎川まどかの自宅にて。
春日恭介に恋い焦がれる図の鮎川まどかです。
なかなかのコテコテな描写となっています。もっとコテコテでもよかったような。


第2章。
春日恭介の自宅にて。
友人2人と春日恭介。友人2人は騒がしいだけでした。
勉強をするエクスキューズ。私にはいまだにわからないことです。
ジンゴロはバルコニーの柵の上に座っています。妙に気になる。

ミュージカルの稽古中からゼミへと。
音楽とシンクロしているシーンになっています。こういうのは好きなのです。

お祭りにて。双子の妹と春日恭介の友人2人のやかましい写真のギャグがあります。
三角関係の3人がそろっています。

鮎川まどかの自宅にて。
鮎川まどかと桧山ひかる。
春日恭介の写真のある部屋に桧山ひかるが編み棒を取りに行くシーンがあります。驚いた表情を隠すとこがいい。

土手にて。
鮎川まどかと桧山ひかる。まだそんなに険悪にはなっていません。

鮎川まどかの自宅にて。
雰囲気に合った歌が入ります。浴衣。花火の夜。

で、奥の手を使い春日恭介に電話する鮎川まどか。
これは効き目充分でスクーターで急行する春日恭介となります。
待つ鮎川まどかで黒味のとこで絵を切り換えるギミックな手法があります。
駆けつけた春日恭介と鮎川まどかが抱きあうとこで二重コマの手法があります。
まどか嬢がキスを避けたのは?→まだ三角関係の決着がついていないからだと思えます。

ひかるちゃん、残念ながら電話1本で逆転の図でした。最初からそうなっていたのだよ。

公園にて。春日恭介と桧山ひかる。
春日恭介から別れ話となります。
苦い、恭介、ひかるの横顔2人ショット。
ひかるちゃんが恭介に会いに行く前に歯をみがくのはキスの為なんだね。これはホント芸コマです。それにしても見てる法は別れ話とわかっているから、またアイロニーがキツイのです。。
不吉の象徴 恭介はいつも黒い服のようです。
別れ話の時から黒い服の男かと思ったら最初からそのようでした。

桧山ひかる、呆然の図からミュージカルの稽古につながります。
春日恭介に電話する。桧山ひかる。
まだ携帯電話がないので公衆電話を使用しています。


第3章。
ゼミにて。筆談する春日恭介と鮎川まどか。
別れ話はこじれていると報告の春日恭介。それもそうだなと鮎川まどか。

ビルの展望台にて。夜景。
春日恭介と鮎川まどかです。
とてもくつろぐような雰囲気ではないようです。

春日恭介の自宅にて。
桧山ひかるから電話あり。風鈴を引きちぎる春日恭介。
これで桧山ひかると切れたならいいのですがそうはいかないようです。

春日恭介の自宅に来る桧山ひかる。
追い返します。このような描写を繰り返し入れてます。

ヘリコプターのショットから始まります。
また明日と鮎川まどかと別れてから階段を上る春日恭介。
階段の上で待つ桧山ひかる。
無視して通り過ぎる春日恭介。
別れ話の繰り返しをヘリコプターの音をかぶせて省略する手法があります。これは上手い。
涙が地面に染み込むショット。実写では出来ない涙のショット、悲しいほどリアルを越えた描写となっています。

雨の夜、喫茶店にて。
鮎川まどかと桧山ひかる。
「なにもしなかった」は桧山ひかるの印象的なセリフ。
鮎川まどか「ひかる、私たち、もう三人ではいられないんだね」と返します。よいセリフです。
で、サヨナラの言葉もないホントの別れの図となります。これは凄いです。

劇中映画『タッチ』(86年)が唐突に入ります。
すごい対比になっている劇中映画『タッチ』(86年)の描写です、その能天気ぶりは何でも簡単にセリフで処理してしまうとこです。見てて腰が抜けそうになります。
これはデート中の春日恭介と鮎川まどかが映画を見ている設定です。

映画館を出て街中でデート中の春日恭介と鮎川まどか。
年号を答えながらデートしています。セリフとずれているキスシーン。『裏窓』(54年)みたいです。
写真ボックスでのシーンは最高によい感じです。
この作品のキャラ達は1969年生まれなとなっています。

桧山ひかるの自宅にて。
TVでは戻ってくれの馬男が登場。このシリーズ定番のギャグが入ります。原作からの由緒正しいギャグとなっています。少し変えているのがいい。

春日恭介の自宅にて。
桧山ひかるがやって来ます。
これがホントの別れのシーンとなります。
号泣する桧山ひかる。
歌が入り、雨が降ります。

春日恭介と鮎川まどか。
歩道橋にて。事後説明の春日恭介。まどか嬢の言い分はイマイチよくわかりません。

エピローグ。
回想からモノクロのプロローグに戻ります。
ミュージカルを省略する手法となっています。ミュージカルのシークエンスをサイレントで処理したのは上手いです。
カラーのフラッシュバックが入ります。これが悲しいのです。

後タイトルとなります。
和田加奈子の歌が流れます。作品内容によく合っているいい歌です。

最後にミュージカル公演を終えた桧山ひかるの1ショットとなります。
これは救いのシーンなのかも?、これで再見が出来ます。


後味は意外と悪くなかったりします。この内容で後味が悪くないのが凄い。
ボンクラ監督が作るとクドくなって見るに耐えなくなるとこが淡々と仕上げています。
そんなわけで原作ファン、アニメファン向けではないけどハードボイルド・メロドラマのよい作品でした。


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