『空の大怪獣ラドン』(1956年)
この作品は特撮怪獣映画で初のカラーとなっています。まだ画面サイズはスタンダードですけど。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1956年 東宝 日本作品
LDにて。画質はまあまあ。絵のノイズはそのまま。音はプツプツとノイズが入りますがこれ以上進行しなければいいとしましょう。
プロット 突然出現したメガヌロンと続けて出現したラドンに苦戦する話しのようです。
音楽 伊福部昭
キャスト
佐原健二→炭坑技師河村繁
白川由美→炭坑夫 五郎の妹キヨ
小堀明男→やたら目立つ西村警部
平田昭彦→黒縁眼鏡の柏木博士
田島義文→記者の井関
松尾文人→葉山
草間璋夫→須田
山田巳之助→大崎
村上冬樹→南教授
高木清→水上博士
三原秀夫→航空自衛隊司令
津田光男→航空自衛隊幕僚 武内
向井淳一郎→防衛隊幹部
千葉一郎→警察署長
熊谷二良→田代巡査
今泉廉→地震研究所の砂川技師
門脇三郎→砂川技師の同僚
須田準之助→検視官
松本光男→磯川教授
水の也清美→由造の妻 お民
河崎堅男→組長 常さん
如月寛多→炭坑夫 捨やん
中谷一郎→炭坑夫 仙吉
榊田敬二→炭坑夫 多吉
緒方燐作→炭坑夫 五郎
鈴川二郎→炭坑夫 由造
重信安宏→別の工夫
黒岩小枝子→看護婦
手塚勝巳→ホテル支配人
大仲清治→ラドンに襲われた若い男
中田康子→ラドンに襲われた若い女
宇野晃司→新聞記者A
岡部正→新聞記者B
馬場都留子→お澄
一万慈鶴恵→はる
中島春雄→ラドン
本多猪四郎監督-円谷英二特技監督の演出はよいと思います。
本編の方は普通のメロドラマのレベルだと思えますがヒロインが登場するたびに泣いてるので少し湿っぽいのがマイナスとなります。
特撮の方は編集が上手いのは当たり前で効果音の付け方がまた上手い。技術的にはイマイチなとこにケチをつけてるよりこちらの方を評価すべきだと思います。
映画の手法自体がちゃんとしているので年月を経ても見られます。これが特撮技術だけならすぐに古びてしまいます。→特撮シーンのバージョンアップを重ねている印象がある『スターウォーズ』(77年)のことを言っています。
この当時の技術では、撮影のやり直しが効かなくて、映像を後から直すことも出来なくて、合成は勘と運の世界はなります、そうなると後は編集で何とかとするとなります。効果音の付け方も重要となっています。このハンデは凄すぎ。
巨匠の合成の切り方が見れます。
巨匠といえば円谷英二は自分のTVシリーズに自分が撮った東宝映画のシーンを流用しても東宝に文句を言わせないとこが何とも痛快です。当時は映画をソフトで売るなんて考えもしなかったので見過ごしていたかもしれません。現在では絶対に無理でしょう。それに現在の東宝では流用出来るシーンが皆無でしょう。
セリフでリードしてつなぐ手法はここでもやっています。脚本の基本的処置の図のようです。でも他の日本映画では案外見ません。
スクプロを使っています。この手法は本多-円谷では少ない手法です。
作画合成もよく使われています。この手法は結構多い。
クルマは古きよきアメ車です。当時としては物凄くデカくて豪華だったのでしょう。
プロローグ。
九州の阿蘇が舞台です。火山地帯に炭坑はないはずなのですが、炭坑がある設定にして話しは始まります。
マット画からパンニングして実景につながる手法が使われていました。最初から面白い手法できます。
炭坑夫 五郎と炭坑夫 由造がケンカしています。
仲裁する時に「黒ダイヤ云々」と言ってます。
炭坑に出勤する時にトロッコ改造の乗り物に乗り込んで行きます。興味深い風景です。
炭坑で水が出て一騒ぎとなり佐原健二扮する炭坑技師河村が調べに行きます。組長 常さんと仙吉にもう1人の4人。
死体を発見します。その死体を洗うシーンもあります。検死で刃物に切られたとのこと。
容疑者となる炭坑夫 五郎の妹キヨと話しをする炭坑技師河村。
出る早々湿っぽいキヨを演じる白川由美です。
炭坑内では警官の田代巡査と捨やんと仙吉が調べているとこです。怪しい音がする。腰抜けの仙吉を演じてるのが後に強面演技が得意技の中谷一郎と知りませんでした。結構似合っています。
構内水没の中で姿の見えないメガヌロンに3人次々と襲われるシーンはかなりなものです。
炭坑事務所では記者達が押し掛けています。田島義文扮する井関が目立っています。
キヨの家に河村が来たとこにちょうどメガヌロンもやってきます。
人を呼んで大勢やってきますがどうなるわけではなく大騒ぎとなります。出水事故で待機している警官隊や白装束の一隊がやってきます。
メガヌロンはボタ山に逃げます。追跡する追っ手一行。やけに目立つのは小堀明男扮する西村警部。
拳銃で撃ちまくりますがあまりダメージは与えられず。
ボタ山で2名殺されてその手口からメガヌロンがこの事件の犯人と推定されます。
メガヌロン1匹で大騒ぎなのに、実はこのメガヌロンは卵から孵ったばかりのラドンの餌だったりします。
増援に自衛隊がやって来ます。重機関銃を装備しています。
メガヌロンは炭坑内に逃亡します。追う自衛隊を加えた一行。
重機関銃で攻撃をします。空薬莢が出る描写があります。これは日本映画にしては珍しいディテール描写です。
石炭を満載したトロッコをメガヌロンにぶつけます。スクリーンプロセス使用。
このトロッコ攻撃でメガヌロンは動かなくなります。
奥に進みますがまだ他のメガヌロンがいます。ここで落盤となって河村技師は取り残されてしまいます。
平田昭彦扮する黒縁眼鏡の柏木博士が登場してメガヌロンについての説明があります。ここで発掘された蓮の種から花が咲いたと時事ネタが入ります。
地面陥没のシーンとなります。
柏木博士から地震研究所へ電話があって砂川技師の説明となります。
調べに行きます。陥没のマット画との合成のシーンがあります。
マット画みたいとこに動く人間はどうやって撮ったか不思議です。
人間は取り残されてた河村技師です。記憶喪失となっています。
豪華なアメ車で炭坑事務所に戻り炭坑付属の病院に入院します。メガヌロンの写真を見せられますが記憶は戻らず。
阿蘇噴火の兆しとの話しがあります。
謎の飛行物体のシーンとなります。追う自衛隊北原機。反転してきた謎の飛行物体に撃墜されます。この一連のシーンはいいです。
各国の被害状況の描写。ラジオニュースの間に1回だけ謎の飛行物体のショットが入ります。これだけでモンタージュになっています。
ラドンが各地で暴れるとこは古典的なモンタージュで処理されていました。ここでは沖縄はまだ外国です。そんな描写でした。
有名な無謀なアベックがラドンに襲われるシーン。
上空を通り過ぎるラドンの影が強烈。どうやって撮ったのか不思議です。
警察にて放牧されている牛が消えるとの訴えがある描写が入ります。
続いてアベックの遺留品のカメラのフィルムに謎の飛行物体の一部分があります。これを柏木博士に見せると推定としてプテラノドンでは?となります。
記憶喪失の河村技師は小鳥の卵が孵るとこを見て記憶が甦ります。
メガヌロンが大勢いるとこに巨大な卵があります。爆音と共に卵が孵りラドンが誕生します。さっそくメガヌロンを次々は喰います。
記憶の戻った河村技師の話しから現場を調べに行きます。影も形もありませんが卵の殻の一部だけが見つかります。
捜索中にまた落盤となります。これで作業はお終いです。
次のシーンでは額に絆創膏の柏木博士となります。妙に芸が細かいです。殻のRから全体の大きさをコンピューターで計算します。
当時のコンピュータのイメージが見られます。まだ記憶装置となる回転するテープリールもないホントにイメージだけのような感じです。
対策会議となります。
阿蘇山と陥没した地点。炭坑のあたりと見当つけます。
調べに行くジープ3台。ここでラドンが姿を現します。
ここが『『機動警察パトレイバー2』(93年)に引用されているシーンです。ラドン登場のシーンから飛び立つまでがそのままではないのですが何となく感じが似ています。ラドンがヘリコプターになるセンスがいい。
発見の知らせに行くジープをラドンが上空を通過して強風で片づけます。
ラドンは上昇してこの場を去ります。追う自衛隊機F86の描写。
ラドンが飛んだ後には白い航跡の残るシーンが少し長めにあります。印象に残ります。
ラドンは佐世保に入ります。
ここから西海橋のシーンとなります。避難するエキストラですがバスガイドは笑っててセリフの吹替でごまかしてあります。まあいいけど。
ラドンは西海橋の下に着水します。自衛隊機はまだ攻撃します。
しばらくしてからラドンは再び飛び立ちます。西海橋から離れてから反転して西海橋のすぐ上を通過して西海橋を崩壊させます。
この西海橋崩壊の編集が絶品です。サイズの違うショットの微妙な繰り返しの編集になっているのがいい。
西海橋は1955年に完成したそうです。当時の有名な建造物を破壊するのが東宝特撮のパターンなのでこの作品ではここが破壊されているわけです。
西海橋は渦潮が名物とのこと。ということはラドンが着水して渦が巻いてるのではないようです。
ラドンは福岡に入ります。
ビル街の上空を通過したとこでの衝撃波の描写があります。
それに続いてどう見てもミニチュアなビルの中をどう見てもモノホンの人がいるとこがあったりして驚かされます。どうやって撮ったのでしょう。
電車が転倒すると底に普通の赤いリード線が見えてミニチュアと嫌でもわかってしまいます。現在なら後から消せるのですがこまったものです。
街のミニチュアで中で今は亡き黒人キャラのカルピスの看板が見られます。
ラドンが少し羽ばたいただけで強風がおこり大惨事となります。
自衛隊も総攻撃をかけます。
もう少しというとこで上空に別のラドンが登場します。
飛び立つ地上のラドン。2匹とも逃亡します。
燃え盛る街にタイアップのダットサンと森永ミルクキャラメルのネオン。これお約束のシーンです。
対策会議があります。
帰巣本能で阿蘇に戻っているはずとのことでヘリコプターで捜索してラドンを発見します。
登場するヘリコプターはシコルスキーS51らしい。スカイパーフェクTV370ヒストリーチャンネルでのヘリコプターに関するドキュメンタリーを見てわかりました。多分そうだと思う。
対策会議があります。
ラドン攻撃方法の説明。ミサイルで総攻撃をして阿蘇山の噴火も誘発させようとのこと。結構アバウトで無謀な感じもします。後のことは考えていません。
住民退避の描写が入ります。東宝特撮作品には必ず入れてあるシーンです。
ミサイル搬入の描写とカットバックとなっています。
前線司令部になっている地震研究所に河村技師に会いにやってくるキヨ。そんなに簡単に来れるのかというのは無しにしましょう。
攻撃開始となります。
ミサイル連射雨あられのシーンは何回見てもいいです。ここの編集は見事です。爆発の連続にリズムをつけるために発射のショットを入れるとこが抜群の心地よいタイミングになっています。
ミサイル攻撃ばかりでは単調になると思ったのか戦車の砲撃とかを挟んでいるのがまた優れ物です。一部のスタッフの方々には申し訳ないけどミニチュアの出来とは全然関係ないとこがよかったりします。
阿蘇噴火で前線司令部は後退します。
ラドン2匹が巣から出て上空でヘリコプターのようにホバリングして待機します。ラドンがホバリング出来るのか?というのは考えないことにしましょう。
噴火も大きくなります。溶岩の流れる描写が入ります。
1匹が落下して溶岩に飲まれます。もう1匹も徐々に落下して溶岩に呑まれてピアノ線が切れて片方だけで吊られる有名なシーンとなります。
ラドンは死に至りエンドとなります。
佐原健二は若くてそこらへんにいるアンちゃんみたいです。あまり技師には見えないような。
なりゆきで西村巡査長を演じる小堀明男が指揮官のようになっていました。
田島義男はTVシリーズ『ウルトラQ』(65年)のままのノリでした。
平田昭彦がロイド眼鏡をかけてる作品はあった?この作品では普通の黒縁眼鏡でした。今さらながら平田昭彦は驚くほど若くして死んでしまったのかと感慨深い。
白川由美と二谷友里恵とよく似ています。珍しいケースだと思います。父の二谷英明に似ては可哀想です。
当時の大映の社長 永田雅一の愛人で有名な中田康子が被害者役で出ています。
中田康子は知っていましたが同じ被害者役の大仲清司が元阪急ブレーブスのプロ野球選手とは知りませんでした。
小ネタで、
ラドンはデボラ・ハリーとイギー・ポップのデュエットするビデオクリップ『Well Did You Evar!』に出ています。鳴き声と怪しいシルエットだけですけど。
以前から本編が湿っぽいのがマイナスという印象がありました。で、今回見てもそうでした。ヒロインの白川由美は登場するたびに泣いています。これでは湿っぽくなるはずです。こまったものです
話しは結構早い。これは意外でした。
そんなわけで本編が湿っぽいけどよい作品でした。正直言って面白い。
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