『燃えよドラゴン』(1973年)
この作品はロバート・クローズ監督、ブルース・リー主演の有名なカンフー・アクションのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1973年 コンコルド・プロ/セコイア・ピクチャーズ/ワーナー 香港=アメリカ作品
ランニング・タイム◆103分
原題◆Enter the Dragon
プロット◆仇をとったり任務を果たしたり少林寺の誇りを守ったりする話しのようです。
音楽◆ラロ・シフリン
ワーナー発売のDVDにて。英語版です。
画質は結構よいです。これで十分。1970年代風の画調ということです。
スクイーズ収録のフル表示。
画面サイズはワイド。上下に黒味あり。
音声はドルビーデジタル 5.1ch
キャスト
ブルース・リー→アジア系のリー
ジョン・サクソン→白人のローパー
ジム・ケリー→黒人のウィリアムス
アンジェラ・マオ・イン→リーの妹 ス・リン
ベティ・チュン→潜入したメイ・リン
シー・キェン→要塞島のボス ハン
アーナ・カプリ→マダム・タニア
ボブ・ウォール→用心棒のオハラ
ヤン・スエ→筋肉マンのボロ
ピーター・アーチャー→NZのパーソンズ
ジェフリー・ウィークス→依頼人のブレスウェード
ロバート・クローズ監督の演出はまあまあだと思います。
最初の方では真ん中に人がいるだけでワイドスクリーンをあまり上手く使っていないような感じでしたが途中からまともになりました。
香港ロケがたっぷりとあります。風俗描写が興味深い。香港の一般市民の姿もたっぷりとありますが香港に対する国辱になるのかもしれません。
ジョン・サクソンはホントに軽い。見た目が安い。白人であること以外、何のアドバンテージもない。代表作はもちろんこの作品のみです。
ジム・ケリーは期待のスター候補だったのに上手くいかないものです。
ワーナー・ホームビデオのタイトル
前説になります。VHSクオリティの画質が残念。
ブルース・リー未亡人のリンダ・リー・キャドウェルの前説です。
この人はブルース・リーが売れる前から結婚してるはず。
この前説があることは全く忘れていました。
前に見たときはスキップしていたのかもしれない。
初公開時には試写から数ヶ所のシーンがカットされていた。
哲学的なシーンがカット。これがひどいんです。ブルース・リーが電波系キャラになってしまうのです。
このDVDはノーカット版。本物の『燃えよドラゴン』を見ていただける。
ブルース・リーが1973年7月に試写で実際見たバージョンでノーカット版が彼の誇りですと話しています。
こんな前説だったのか。初めて見たような気がするではなくマジて初めて見た。
ワーナーのタイトル。
プロローグ。
練習試合のシーンから始まります。
模範試合?のシーン。サモ・ハン・キン・ポーが対戦相手。
このことはずっと知らなかった。そういえば似ています。
ここで「考えるな・・」というのかは思ったら違った。記憶はあてにならない。
師匠との会話で少林寺の名を汚したハンの名が出てきます。
師匠とブルース・リーの会話になります。英語です。
白人の依頼人と会うシーンになります。
依頼人のブレスウェードが登場。何ともさえない俳優です。このへんからもブルース・リーに対するサボタージュが感じられます。
少年と話しをするブルース・リーのシーンになります。
ここで「考えるな・・」のセリフが入ります。
ラロ・シフリンのスコアで素晴らしいタイトルとなります。
私が知ってるだけでTVシリーズ『スパイ大作戦』(1966~1973年)に、映画の『ダーティハリー』(1971年)、『燃えよドラゴン』と、この3作だけでもラロ・シフリンは天才だと思えます。
タイトル
Concord Productions Inc./Warner Bros.
ブルース・リー、ジョン・サクソンと並んで表示されてるのがアレです。
香港の空港名物のジェット旅客機の超低空飛行のシーンがちゃんとあります。
ラロ・シフリンの音楽は相変わらず最高です。
イントロデュースでジム・ケリーと出ています。期待のスター候補だったのに。
Bruce Lee→fighting sequences stager の表示があります。武術指導も当然ブルース・リーがやっていたわけです。
Raymond Chow→associate producerの表示もあります。当然といえばそうなってます。
ブルース・リーはタイトル1枚では出てなくて白人のジョン・サクソンと並んで出ています。
このタイトルの名前の出し方だけでブルース・リーは当時はまだまだハリウッドでは認められていなかったとよくわかります。
要塞島では銃は使えないとセリフで設定しています。
それでは刃物は?というとそこまでは言ってません。刃物が入ったらチャンバラになってしまうのでカンフーではなくなってしまいます。
香港にやって来るブルース・リー扮するリー。回想に至ります。
リーの妹が何故死んだのかが描写されます。
香港にやって来るジョン・サクソン扮する白人のローパー。回想に至ります。
ゴルフ場にて借金取りから取り立てにあいます。多額の借金があるらしい。
香港にやって来るジム・ケリー扮する黒人のウィリアムス。回想に至ります。
空手道場から、警官と揉めて乱闘となっています。
そんな感じでアジア系、白人、黒人、それぞれの観客専用の感情移入キャラをそろえているようです。
やはりブルース・リー主演という作りにはなっていない。ブルース・リーがハリウッドでこれまでちどれだけ苦労したかがよくわかります。
この作品のキャラ名がブルース・リーと同じリーというのも何というかアイドル映画というか素人を映画に使うノリです。
多分製作側が違う名前にすると主役が誰なのか観客にわからなくなると思っていたのでしょう。
香港の船には一応ナンバーが表示されています。
ちゃんと管理されてるかは別問題です。本当は適当なのでしょう。
船からひっきりなしに排水してるのが前から気になっていたけど・・・
これは日常的に浸水していてその排水なのかと思えてきました。多分これであってると思う。
このへんのロケの風俗描写が結構凄い。
香港のスラム街ををそのまま見せています。こういうのを白人の観客が喜ぶらしい。
要塞島に向かう船上にて。
船上で挑発しまくるニュージーランドのパーソンズをボートに乗せて流してしまいます。
要塞島に着きます。
夜8時に宴会が行われます。余興で相撲をやってたりします。怪しげな造形の獅子舞も出ています。
ロケはそのままだからいいけど、セットとなると、とたんにいい加減な考証でダメになるのは相変わらずのハリウッドスタイルです。
当局が送り込んでスパイ メイ・リンを部屋に呼んで話しをするブルース・リー。
翌朝には試合が始まります。
賭けて儲けようとするローパーとウィリアムス。カモの中年男が何というかいかにもなメガネとヒゲのアジア系ルックです。
あまり面白くないシーンでこのシーンは結構長い。
夜の探索に出かけるリー。
地下の秘密工場に入りかけますが結局戻ります。
有名なヌンチャクのシーンになるのかと思ったらまだでした。意外はのんびりと話しは進みます。見ているのが劇場のお子さまなら劇場内を走り回りたくなるでしょう。
次の日、妹の仇オハラと対決するリー。
このシーンは対戦の両者ともレベルが高いのでさすがに迫力があります。
ウィリアムスは夜の探索をしているリーを目撃したことを言わないことからハンに倒されます。正直言ってハンを演じるシー・キェンはアクションはあまり上手くないと思えます。
地下工場から雰囲気からすると『007 ドクター・ノオ』(1962年)の世界なのですからジョゼフ・ワイズマンに似ているからキャスティングされてアクションは二の次になっているのか?。喋っている時はいいのですがアクションになるとてんでダメです。
また夜の探索に出かけるリー。
地下の秘密工場に本格的に入ります。1時間と20分過ぎてようやく上半身裸となり有名なアクションシーンに突入します。
この辺に戦闘員役でジャッキー・チェンが出ているそうです。
戦闘員のジャッキー・チェンは2回ぐらいやられているようです。
髪の毛を掴まれて放り投げられる。
棒で頭を殴られるところ。これは殴られた本人がインタビューで話しています。
ヌンチャクでデモをするシーンはさすがに素晴らしい。スピードと切れのある動きです。
そんなこんなでクライマックスの大勢でのアクションとなります。
その他大勢の戦闘員組は要塞島側は白い道着、捕まっていた側は黒い道着となってて一目でわかりやすくしています。ローパーは黄色い道着、リーは上半身裸に黒のパンツとなっています。ここは映画的に非常に見分けがつきやすくなっています。
大勢が動いている中で微動せずに静止しているブルース・リー。
このショットでの存在感はさすがにアクションのカリスマ的存在と言われるだけはあります。素晴らしい。
要塞島のボス ハンと対決するリー。
ここの一連のアクションシーンではブルース・リーとハンを演じるシー・キェンでは2人のアクションの能力に差があり過ぎて、見ててブルース・リーが年寄りをいじめているように思えてしまうのが難です。
アクションシーンを長回しで撮るのを諦めてシー・キェンのクローズアップショットとスタントを編集で組み合わせて何とかすればと思えますがカンフー・アクションは基本的に吹き替えなしの長回しなのでそうも出来ないとこなのが悩ましいとこです。
長回しでと見せるとこはミュージカルのとダンスシーンと共通しています。
鏡の間にて。
ハンとの戦いの最中に師匠からの声が聞こえるリー。これでハンを倒します。
プロローグの伏線が生かされています。と思ってたら解説等から最初の公開時はプロローグの伏線のシーンはカットされていたのですか。伏線もなく声だけ聞こえるならリーは単なる電波系のキャラになってしまうような。これはひどいな。
このような演出では白人観客からすると、この作品のブルース・リーは老人を苛める電波系の謎のアジア人に見えるかもしれません。
そんなわけで製作側の度重なるサボタージュもブルース・リーの存在感だけでよい作品となりました。ブルース・リーはたいしたものです。
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随分前にテレビで観たことがあり、そのときは評判の高いブルース・リーのカンフーが見事な面白い映画だと思いましたが、それ以上の感銘は受けませんでした。
最近NHK・BSで放映されたので録画して久しぶりに観ましたが、今度は前回と違ってなかなかレベルの高い娯楽映画だと感じました。
前振りのあとのクレジットの背景で香港の風景がさりげなく描写されますが、これがとても印象的で、ラロ・シフリンの耳慣れたBGMもあって、ロバート・クローズの世界に一気に引き込まれてしまった感じです。 小船で迎えの船に向かうシーンとともに、ロイさんもおっしゃっているように香港ロケの場面が何ともいえない趣があります。
映画の中にはいろいろな名場面がありますが、私が一番好きなシーンはブルース・リーの妹が要塞島の無頼漢に襲われ、習得した拳法で絶望的な戦いを繰り広げる場面です。 あの女優の迫真の演技が強烈な印象で忘れられません。
ブルース・リーの拳法は文字通り目にも止まらぬ速さですが、駒落としでなく実際なのか気になります。
ジム・ケリーという俳優は初めてですが、気迫のこもったいい演技をしています。
これ以外に見ないですが、これきりで終わってしまったのでしょうか。
ブルース・リーの香港製映画も何本か観ましたが、映画のレベルが低くとうていこれに及びません。 ようやくハリウッドで活躍の機会を得た途端の死が惜しまれます。
投稿: ナカムラ ヨシカズ | 2015.06.22 21:36
ナカムラ ヨシカズさん、コメントありがとうございます。
ブルース・リーが今も健在だとしたら生きている伝説のクリント・イーストウッドみたいになってるのか、普通のアクション専門スターのスティーブン・セガールみたいになっているのか微妙なとこです。
それでも女好きで失敗作がやまほどあるケビン・コスナーや主役待遇にこだわり過ぎて監督や共演をないがしろにしてるアーノルド・シュワルツェネッガーみたいにはならないと思えます。
ジム・ケリーは『燃えよドラゴン』だけだったようです。
まだジョン・サクソンの方が他の映画でも活躍していました。
投稿: ロイ・フェイス | 2015.06.23 19:30