『キングコング対ゴジラ』(1962年)
この作品は東宝特撮で最初の本格的に怪獣が対戦するVS物で、最初にして最高の出来だったりします。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1962年 東宝 日本作品
LDにて。画質はまあまあ。修正があるので画質によい所悪い所とムラがあります。画質はばらつきがあります。全体的にはよいとなります。2回目リリースのLDです。
1回目リリースのLDは半分近くがとんでもない画質で出すほうも出すほうなら買ったほうもよく買ったものだと思えるお粗末なLDでした。ジャケットのデザインだけはよかった。
プロット 怪獣2匹に悩まされる話しのようです。
音楽 伊福部昭
キャスト
高島忠夫→TVカメラマン桜井
藤木悠→TVディレクター古江
有島一郎→スポンサーの宣伝部多胡部長
佐原健二→東京製鋼の藤田
浜美枝→藤田の恋人でヒロインの史子
若林映子→史子の同僚のたみ江
堺左千夫→宣伝部の大林
加藤春哉→もう1人の宣伝部部員
平田昭彦→生物学の重沢博士
松本染升→原子関係の大貫博士
松村達雄→ファロ島の牧丘博士
田崎潤→自衛隊司令官
小杉義男→酋長
沢村いき雄→祈祷師
大村千吉→通訳 英語でした。
根岸明美→子持ちの原住民
本多猪四郎監督−円谷英二特技監督の演出はよいと思います。
技術的には粗末でしょうがこれが面白いこと。絵コンテがしっかりして、アクションの方向性がピタリと合っていて、編集が抜群に上手い。さすがサイレント映画の撮影出身の円谷英二は違います。
円谷英二の特撮はどう見てもリアルには見えないミニチュアに目をつぶれば映画的にはよく出来てると思えます。アラはいくらでもあるけど見てて面白いのでそんなことはどうでもよくなってしまいます。
絵コンテがあって編集もありますが効果音の使い方のタイミングにリズムが絶品です。
効果音の使い方は『機動警察パトレイバー2』(93年)に引用されています。
セリフでリードしてそのシーンにつなぐ手法が多用されていました。妥当な使い方がいい。脚本は関沢新一。
当時の時事ネタと思われるのがチェレンコフ光、3000年前の蓮。
これは当時のハイソサエティな暮らしの描写。団地にビフテキ。
この作品は個人的思い入れはありますが映画としては出来はよくないと以前は思いこんでましたが、本『映画術』でアルフレッド・ヒッチコック監督が言うところの『裏窓』(54年)のアクションシーンで「クローズアップショットを入れてリズムを付ける」というのは、どこかで見たことがあると思い出したのがこの『キングコング対ゴジラ』です、そう思って見ると洗練されたカット割りに編集のタイミングのよさ等が目について結構出来がいいじゃないとなりました。リアルとはほど遠いキャラや話しに加えて、どうひいき目に見てもリアルに見えないミニチュアや粗末な技術を気にせずに純粋に映画の手法だけで見るとこれが出来がいいのです。
プロローグ。
パシフィック製薬がスポンサーのTV番組が放映されています。
会社でこれを見てる有島一郎扮するパシフィック製薬の宣伝部多胡部長が自社提供番組を「つまらん」と言うだけで、この作品は面白そうだなとなります。
他にも「勝手にとんどれ」と面白いセリフを飛ばしまくります。セリフ1つ1つがいいギャグになっています。
宣伝部長の後に置いてあるマスコット人形が何故か気になります。
TV局にて。
パシフィック製薬のパシン錠のTVCMのシーンから高島忠夫ふんするTVカメラマン桜井と藤木悠扮するTVディレクター古江が登場。
キャラ紹介といったとこです。
北極海にて。
原子力潜水艦シーホーク号が遭難します。
ゴジラは鳴き声だけ登場。
ヘリコプターからの目撃シーンからゴジラが姿を現します。
さっそく某国軍隊を片づける見せ場があります。白熱光を吐くゴジラは絵になります。この白熱光の光線作画に効果音の使い方がいい。
ゴジラの白熱光で戦車のキャタピラーが切れるショット(ごく一瞬の短いもの)が案外記憶に残っています。記憶力とは面白いものです。
ゴジラの造形は作品ごとにかなり違っています。この作品のゴジラの造形は通称キンゴジと言われて有名です。いい造形です。
ファロ島から帰国した牧丘博士に話しを聞きに行くパシフィック製薬関係者の面々。
牧丘博士はいかにも学者らしいキャラです。
ところで「土人」と言ってました。放送禁止用語です。これはもう使えない言葉です。
パシフィック製薬の宣伝部多胡部長の押しでファロ島へ行くことになるTVカメラマン桜井とTVディレクター古江です。
この2人は貨物船に便乗してるみたいです。情けなくていいです。他にも情けなくていい描写が多くてこれがまたいいのです。
島に着いたら着いたで小型ボートで引き上げる貨物船乗員から「帰りますよ、いいですね」なんて言われてます。これは情けなくてブラックでよいシーンです。
ファロ島にて。
突っ込み担当の高島忠夫とボケ担当の藤木悠のコンビは最高です。
唯一の情報源が「酋長のラジオで聞いた・・・」てのは情けなくてよいです。
タコについて英語では通じないギャグがあったりします。何故かいい気分。
大ダコが登場してキングコングも登場して格闘となります。
巨大なる魔神となっています。キングコングは今使えたっけ?
このキングコングの造形がイマイチと評判が悪いけど、まあ御愛嬌ということにしましょう。
で、キングコングはあっさりと捕獲されて船で日本に運ばれます。
ゴジラの方は南下を続けて列車の特急はつかりを止めています。
ここはエキストラの数が凄いそうです。
勘違いで恋人を捜しに来た浜美枝扮するヒロインが巻き込まれています。
日本近海にて。
キングコングは目を覚まして暴れ始めます。
しょうがないのでキングコングの乗せたイカダごと爆破しようとします。爆発することで本編から特撮へと切り替わる編集が絶妙です。
那須高原辺りにて。
キングコング対ゴジラの第1ラウンドとなります。
ゴジラが圧倒的に強くて多胡部長の応援もむなしくキングコングはすごすごと退散となります。50円硬貨で運勢を占うとこが何故か印象に残ります。
ここでのゴジラはやたらと白熱光を吐きまくる危険きわまりない奴って感じで、この対キングコング戦でゴジラは一応岩を投げつけられてから白熱光を吐くようになっていたようです。描写バランスが取れています。
ゴジラを落とし穴に落として毒ガス責めにする埋没作戦。
送電線に100万ボルトの電気を流す電撃100万ボルト作戦。
等、色々とやっている自衛隊。一応ゴジラは進路を変えているので成果はあったようです。
送電開始とスイッチを入れ変電所の切り換えが変わるシーンがいいカット割りです。何回でも見れます。
松戸に接近するキングコング。
電撃100万ボルト作戦を敢行する自衛隊。
キングコングはこの送電線を突破して首都圏に向かいます。電気に強いらしいキングコングです。
都内のキングコング。
地下鉄銀座線の高架は後楽園あたりのようです。ここでの地下鉄車両を手掴みするクローズアップショットの使い方もいい。
キングコングの手に捕らえられたヒロインは人形(ギニョール)は腕が動くようになっています。分かってしまえば何てことはないけど知らないで見ると妙にリアル。
今度はキングコングに捕まった浜美枝の悲鳴が凄いです。
キングコングへの攻撃を中止させる事情説明となります。
で、人質?救出とキングコング捕獲作戦開始となります。
キングコングを眠らせる麻酔弾を3連射を2回やりますが、この発射と炸裂のタイミングが絶品です。爆発の規模や回数が多ければいいのではないとよく分かります。
キングコング輸送作戦となります。
輸送作戦時にキングコングの上にいる作業者はアニメで処理されています。
ヘリコプターからワイヤーでキングコングを吊って空輸となります。
富士山麓上空でキングコングを切り離します。この切り離す描写がいい。ワイヤーが切れるタイミングがいいのです。
遠景のゴジラはギニョールで描写しています。
ちなみにギニョールとはフランス語で人形のことです。何か大げさで特別な語感がしますが実は普通の言葉でした。星新一のエッセイ『きまぐれ星のメモ』(かなり記憶が怪しい)にて、セメントのフランス語がベトンだったのと同じパターンです。
富士山麓上空で切り離されるキングコング。
落下してキングコング対ゴジラの第2ラウンド開始となりますが、あまり情勢は変わらず勝ち目は薄いキングコングです。
岩を投げつけたのはいいが勢いが止まらず大きい岩に頭をぶつけるキングコング。伸びているとこをゴジラから白熱光が放射されてキングコング絶対絶命の危機となります。
ここで雷雨が発生して雷が次々とキングコングに落ちます。
復活するキングコング。このキングコングは電気でも動くのか。フランケンシュタインと同じなのですか?
事情説明の「ポパイがほうれん草・・」はアメリカでは受けるセリフでしょう。
帯電したキングコングは反撃開始となります。
忌忌しい白熱光を吐くゴジラの口に樹を食わせます。ゴジラは白熱光を吐いて樹を燃やして吐き出します。その燃えた樹を受けてキングコング不屈の闘志の図があります。これは私のお気に入りのいいシーンです。
キングコングとゴジラを熱海城に接近します。
キングコングがゴジラの白熱光をかいくぐって不屈の闘志の図があります。
この戦いで熱海城は崩壊します。でも肝心の崩壊するシーンはハッキリと描写されていなかったりします。撮り忘れ?→それはないでしょう。
もみ合ったままのキングコングとゴジラが海中に没します。
地震があって、断崖の樹が落ちるとことカットバックするとこがあります。
キングコングが沖に浮上します。南方へと進路を取ります。
富士山麓でのキングコング対ゴジラの決戦ではキングコングが落とされてからラストまでアクションは右から左へと動きに統一されていて熱海城を破壊してい海中に没してコングだけが画面奥にフェイドアウトしていきます。アクションの方向性がよく考えられているわけです。さすがサイレント映画の撮影出身の円谷英二特技監督は違います。。
この1連のシーンではクローズアップショットを入れてリズムを付ける手法が光ります。ここは特撮でここは実物大のセットとかゴジラの尻尾だけとか色々と分かりますが入れるタイミングが申し分ないので不満はない。上手いものです。
エンドとなります。最後もゴジラとキングコングの鳴き声で締めています。いいセンスです。
高島忠夫はカメラではなくキャメラと発音していました。
ヒロインがファニーフェイスの浜美枝とバタ臭いルックスの若林映子です。
他のキャストの方々も好演していました。
そんなわけで、これはいい娯楽作品です。
ゴジラといえば1954年は『七人の侍』と『ゴジラ』が公開された年で2本とも世界的に有名な作品となっています。この2本は本編は湿っぽいけどアクションはいいという共通点という印象があります。
黒澤明と円谷英二は不仲でしょうね。雲の撮り方からして、俺の絵コンテ通りの雲が出るまでいくらでも待ってやるわいの黒澤で、雲ならミニチュアかマット画で作って編集で仕上げてしまうぜいが円谷ですから。
作風が全く違うし色々と資料を読んでも同じ東宝なのに全く接点がない。目に付くのは森谷司郎と中野昭慶の助監督同士で電源を取りあったなんて話しくらいです。
黒澤明と円谷英二の共通の友人といえば本多猪四郎監督なんですがインタビューはそれぞれに別れて比較のコメントなんてオフレコなのか読んだことがありません。両方によく出ていた俳優の土屋嘉男に聞いてほしいものです。
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こんばんは。
「キングコング対ゴジラ」はゴジラシリーズ初のカラーで、モノクロの前作2本とは打って変わっての陽気な作風になりましたね。冬眠から覚めてマッチョになったゴジラ。日本猿をそのままデカくしたようなキングコング。自衛隊の策略で風船猿と化したコングの能天気な飛行に、ゴジラの「対メガロ」とはまた違った不自然な笑えるドロップキック。そして殆ど漫画の登場人物達の演技・・・・・・(爆笑)。
能天気に物語は展開しますが、思えばこの映画は登場人物の殆どが気の毒な体験をしますよね。番組の視聴率稼ぎの為に危険なファロ島へ送られた弥次喜多コンビ。ゴジラ&コング両方に襲われるヒロイン・ふみ子さん。コングに恋人を奪われる藤田さん。視聴率稼ぎに連れてきたコングには逃げられ、その後は多大な責任を負わされると思われる宣伝部長。毎度の事ながら怪獣に振り回される自衛隊と一般市民(今回は島民も)。
それでも私が一番可哀そうだったのは、ファロ島に生息するトカゲちゃん。何をしたという訳でも無いのに、たまたま尻尾を握ってしまった弥次喜多の一人にブンブン回された挙句に崖下へ捨てられ、もう一人にライフルの追い撃ち・・・・・・(汗)。
全身画像を見ましたが、可愛い♪可愛い♪♪こんな可愛いトカゲちゃんを酷い目に遭わせるなんて、私にはとてもできません。何て事するんだ!!弥次喜多コンビ!!
可愛いトカゲちゃん、どうか弾が外れて生きている事を祈りたいです。
つい取り乱しましたが(苦笑)、「キンゴジ」は観客動員数がダントツ1位の1255万人で未だに記録が破られていないのですよね。日米怪獣対決の傑作、これからも不朽の名作であり続けるでしょうね。
投稿: A-chan | 2019.10.23 17:53
A-chanさん、コメントありがとうございます。
ファロ島にて、英語版では何て翻訳したのか興味深い日本語でしか通じない本物のタコと田湖宣伝部長の勘違いギャグがよかったと思います。私のお気に入りのギャグです。
投稿: ロイ・フェイス | 2019.10.25 09:30